少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 ちょっとした情報のお礼でやりすぎだと感じる方もいると思いますが、主人公にとってはちょっとしたお礼なんです。





087-04

 この環境に揉まれた精神でも流石に動揺したのか四人はしばらく黙っていたが、やがてヌヌが小さな声で言う。

 

 『信じられないわよ……そんな話……出来る訳無いわ』

 

 彼女の精神はそんな事など出来ないという否定と、「もしかしたら」という期待が激しく渦巻いていた。

 

 「出来る。お前達は魔法の事をある程度学習したようだが、魔法は奥が深い」

 

 『……だとしても、体を戻すとか、元の世界の過去に戻すとか……そんな事本当に魔法で出来るのかよ……?』

 

 リンもヌヌと大して変わらない精神状態のままで私に問いかけて来る。

 

 「一定以上の魔力と魔法技術、そして私の力があれば可能だな」

 

 魔法だけでは難しい事もあるからな、その辺りは魔法とは異なる私の力が必要になる。

 

 『魔法と……クレリアさんの力……?』

 

 『クレリアさんは魔法以外にも何か力を持っているの?』

 

 東山が呟き、エリノーラが尋ねて来る。

 

 「詳しくは言わないが、今お前達に提案した事が可能なだけの力はある」

 

 『そんな事が出来るなら……クレリアさん……クレリア様はまさか……異世界の主神なのでしょうか?』

 

 エリノーラは突然そんな事を言い始める。

 

 「様は必要無い……確かに信仰対象となった事実もあるが、私は神では無いな」

 

 『そうですか……本物の神と言葉を交わす事が出来たと思ったのですが……』

 

 私の返答を聞くと彼女は残念そうな声色で言うが、内心では私の否定をあまり信じていない様だ。

 

 『以前なら素直に信じて喜んでたんだろうけどな……』

 

 リンがそんな事を呟いた。

 

 『クレリアさん、俺は貴女が嘘を言っているとは思ってない。だけど俺は……俺達は素直に信じる事が出来ない、出来なくなってしまった。……だから証拠が欲しい』

 

 東山は真剣な声でそう言った。

 

 「証拠は見せる事が出来ないが、一つだけ正直に答えてくれないか?」

 

 『……なんだい?』

 

 彼の言葉に答えず質問した事で不信感を持ったのか、彼は少し低い声で答えた。

 

 「実際に出来るかどうかは別として、戻れるなら戻りたいか?」

 

 私がそう言うと四人から怒りと悲しみが溢れ出す。

 

 『戻りたいに決まってるだろ!?訳も分からず連れて来られて殺し合いを強要されて!!終いにはこの姿だ!!皆が居なかったらとっくに死んでた!!』

 

 外部に聞こえていたら建物中に響く様な声で叫ぶ東山。

 

 強い感情の発露を感じながら、私は四人の言葉を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 「では、こうしよう」

 

 叫ぶだけ叫び、黙ってしまった四人に私は話しかけた。

 

 『……何?』

 

 エリノーラが少し敵意の籠った言葉を投げかけて来る。

 

 「お前達がどうしたいかも聞けたからな。礼として今すぐお前達を以前の姿に戻し、元の世界に送る事にする」

 

 私はそう言いながら他者に感知されない為の対策を施す。

 

 『えっ!?』

 

 『嘘だろ!?』

 

 『ちょっと待って!?』

 

 三人の驚く声が重なって聞こえる。

 

 その声を聞きながら、私は準備を進めて行く。

 

 向こうの世界や宇宙に出来るだけ影響を残さないようにしておきたいからな。

 

 『今すぐだって!?』

 

 東山も焦ったような声を上げた。 

 

 この世界には魔竺族と聖朱族以外に何か居そうだからな、出来る時にやっておく。

 

 「信じなくてもいいぞ」

 

 よし、準備は整った。

 

 『……本当に……出来るのか?』

 

 「向こうで判断するといい」

 

 『待っ……』

 

 次の言葉を言い切る事無く、一体の棄獣が静かにこの世界から消滅した。

 

 

 

 

 

 

 四人を元に世界に戻した後、私はこの世界について考える。

 

 私が魔竺族、聖朱族の二種族以外に何かが居そうだと感じたのは、棄獣と召喚魔法の存在だ。

 

 この二つだけ技術が突出し過ぎている。

 

 もしかすると、聖朱族側にある廃器と呼ばれている存在も似た様な物なのかも知れない。

 

 棄獣に施されていたのは魂を傷付けずに別の肉体に移すだけの簡単な物だったが、それでも魂を扱えている事は事実。

 

 召喚魔法と比べて、どちらがより難しいかは内容と個人の得手不得手によるが……少なくとも私が見て来た魔竺族ではどちらも可能だとは思えない。

 

 私は魔竺族と聖朱族、それぞれに突出した魔法技術を持った者が居ると考えていた。

 

 しかし、僅かとはいえ魂に手を出しているのなら……彼等の中に技術を隠している者が居る可能性よりも、彼等に力を貸している第三者が居る可能性の方が高いと考える。

 

 出来れば一度、実際に召喚が行われる所を見ておきたいな。

 

 そう思いながら、私はこの場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 翌日、私はスピナウで魔力の高まりを感じた。

 

 これは……召喚魔法を使う為の物か?

 

 それとも別の理由か。

 

 私は確認する為、魔力が集まっている場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 認識阻害を行い現場へ訪れると、床に描かれた魔法陣がある大きな部屋に大勢の魔竺族が居た。

 

 全員、目を閉じて一定の間隔で並び、床の魔法陣を囲んでいる。

 

 昨日の今日で運が良い。

 

 しかし、あの時の物とは魔法構成が少し違う。

 

 という事は……健太は聖朱族側の召喚魔法に選ばれたのだろうな。

 

 そんな事を考えながら観察していると、魔竺族の一人が口を開いた。

 

 「大いなる我らの神よ。今ここに我らの力を捧げます」

 

 そういった後、その魔竺族も目を閉じる。

 

 このままでは魔力が足りない筈だが……どうするつもりなのだろうか。

 

 そう思いつつ見ていると、突然魔法陣に魔力が満ち……魔法が発動する。

 

 魔法陣の周囲は光に覆れていたが、私には魔法陣中央に五人の人型生命体が現れるのが見えていた。

 

 やがて光が消え周囲の魔竺族が動き出すが、私は既に別の事に意識を向けていた。

 

 見つけたぞ。

 

 騒ぐ被害者達の声を聞き流し、私は次の目的を決めた。

 

 

 

 

 

 

 魔法陣に魔力を送り込んだ存在に会う事にした私は、召喚現場からすぐに離れた。

 

 送り込んで来た魔力をもとに相手の位置を特定したのだが、どうやら相手は惑星ドーンラグル付近の宇宙にいる様だ。

 

 隠蔽はしていない様だから、感知を宇宙にまで広げていればすぐに発見出来ていたな。

 

 健太を狙った召喚魔法では無いが、効果は同じだったのでこちらも地球を除外した召喚魔法に変更して貰おう。

 

 素直に聞き入れてくれると話が早いのだが、どうなるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 あら……下僕が助けを求めているわね。

 

 目を閉じ、彼等の祈りを感じ取る。

 

 良いでしょう……魔神であるこの私の力を貸してあげましょう。

 

 忌々しい聖神と聖朱族を滅ぼす為ですものね。

 

 さあ……私のために戦って死になさい。

 

 それがお前達の存在理由よ。

 

 力を貸した後の彼等の様子を見ていると、突然前方に気配が生まれる。

 

 何かが来た……?

 

 「……何者ですか?」

 

 「お前が魔竺族に力を貸している存在か?」

 

 目を開けると、忌々しいほどに整った顔をした子供がこちらを見ていた。

 

 ここに来るとはそれなりに出来るようですね。

 

 あくまでそれなりのようですが。

 

 

 

 

 

 

 転移で移動すると、地球の人類に似た容姿をした女が目を閉じて微笑んでいた。

 

 私が認識阻害を解除すると気が付いたようで、こちらに声をかけて来る。

 

 「……何者ですか?」

 

 「お前が魔竺族に力を貸している存在か?」

 

 私がそう問いかけると、女はゆっくりと目を開け、こちらを見た。

 

 ふむ……今の時点では大した力は感じないな。

 

 「ここに誰かが来るなんて初めてね。どうしたのかしら?」

 

 余裕のある態度だ、自分が圧倒的に格上だと疑っていないのだろう。

 

 「魔竺族が使用している召喚魔法はお前が教えた物か?」

 

 「そうよ。素晴らしいでしょう?数ある世界から使えそうな物を集める物よ」

 

 「特に素晴らしいとは思わないが、その事で話がある」

 

 「はぁ……私の作った魔法のすばらしさが分からないなんて愚かな子ね……そうだ!私が教えてあげるわ!」

 

 落胆した様な様子を見せた女だが、突然私に色々と語り始めた。

 

 情報を提供してくれるのなら聞いておこう。

 

 あの召喚魔法を素晴らしいと評価する彼女の考えは理解出来ないが、何か理由があるのだろうか?

 

 単純に、魔法が得意では無いのかも知れないな。

 

 ならば地球を除外し、効率を良くした構成を薦めてみるか。

 

 断る事を許す気は無い。

 

 健太もあの四人と同じ目にあっていた可能性が高いからな。

 

 

 

 

 

 

 それからしばらくは誇るように魔法について語ったが、やがて話は身の上話へと変わって行った。

 

 彼女は魔神で、気が付いた時には聖神というもう一人の神の様な男とドーンラグルを管理していたという。

 

 しかし聖神とは気が合わず、やがて分かれてそれぞれに世界を管理するようになったらしい。

 

 それからしばらくはただ世界を見ていたらしいが、あまりにも何も無い事に飽きてしまい、彼女は魔竺族を作り出した。

 

 その後、自らが作り出した魔竺族を見ていた彼女は、同時期に聖神が聖朱族を作り出していた事を知る。

 

 やがて聖神を滅ぼして真のこの世界の管理者になろうと考え始め、魔竺族と聖朱族を争わせている……と言う事らしい。

 

 流石に、ここまで色々と話すとは思っていなかった。

 

 もし彼女が格上だったとしても油断が過ぎると思う。

 

 「聞きたい事があるのだが、良いか?」

 

 「何でも聞きなさい、貴女にでも分かる様に教えてあげるわ」

 

 私の言葉に彼女は優しく答えた。

 

 「聖神と聖朱族を滅ぼしたいというのは本気か?」

 

 そう聞くと、彼女はこちらを馬鹿にしたような口調で言う。

 

 「貴方は何を聞いていたの?本気に決まっているでしょう」

 

 そうするとますます良く分からないな。

 

 「では、何故直接手を出さない?」

 

 「何言ってんの?」

 

 彼女は不機嫌そうな表情を浮かべて言う。

 

 「お前が直接聖朱族を攻撃しないのは何故だ?聖神の居場所を知っているならば、何故直接殺しに行かない?」

 

 彼女の話を聞けば多くの者が今の私と同じ疑問を抱く筈だ。

 

 「そこまで分かっていながら何故自ら動かないのか?」と。

 

 「これだから下等な者は駄目ね。そんな事出来ないわよ」

 

 その返しに違和感を感じる。

 

 「何故出来ない?」

 

 「出来ない物は出来ないのよ」

 

 呆れたように言う彼女。

 

 「試した事はあるのか?」

 

 「……そんな事しないわ、不可能なのだから」

 

 少し苛ついて来ている様だが、返答がおかしい。

 

 「試しもせずに何故そう言い切れる?」

 

 「何なのよアンタ!?慈悲を見せて付き合ってやったのに訳の分からない事を聞いて来て!これ以上その話をするなら殺すわよ!?」

 

 突然、彼女の機嫌が一気に悪くなる。

 

 ふむ……明らかにおかしいが、彼女が誰に何をされていようとこちらの目的を達成出来れば構わないか。

 

 「分かった、もうやめておこう」

 

 「それで良いのよ、死にたくなければ言葉には気を付けなさい」

 

 まだ不機嫌だが、取り敢えず悪化する事は無くなったな。

 

 「話は変わるが、本来の目的を話したい。聞いてくれるか?」

 

 「何よ」

 

 「魔竺族に使わせている召喚魔法を変更して貰いたい」

 

 「あら、どうして欲しいの?」

 

 「私の用意した構成を使ってくれ」

 

 「へえ……私に使って貰いたいの?私以上の物を用意出来るなら使ってあげても良いわよ?」

 

 そう言って彼女は微笑む。

 

 「では実際に構成を組むから見てくれ」

 

 私は地球と人類の事を特定出来ない様に調整した召喚魔法を彼女にも分かる様にゆっくりと組み上げて行く。

 

 組み上げていく途中、彼女から怒りと焦りのような感情が滲みだして来た。

 

 「この構成を使って欲しい」

 

 彼女にも知覚出来るように組み上げた構成を見せて言うと、彼女は不貞腐れたように口を開く。

 

 「嫌よ。何で私がそんな事しなくちゃいけないの」 

 

 彼女の思考から伝わって来るこの感情は……。

 

 「出来るならやって欲しい」

 

 「嫌だって言ってるでしょ」

 

 ……間違い無い。

 

 「お前……やりたくないのではなく、出来ないのだな?」

 

 私がそう言うと、彼女の心から憎悪が溢れた。

 

 「調子に乗るなよガキが……」

 

 突然言葉使いが変わったな。

 

 こちらが本性か?

 

 「これが出来ないのならお前でも使えるように改良しよう、それを使ってくれれば良い。もし望むなら少しだけ魔法の手ほどきもするが……どうする?」

 

 いきなり出来ない事をやれという気は無いし、敵対したい訳でも無いからな。

 

 「下等生物がぁ!神である私をコケにして生きて帰れると思うなよ!」

 

 突然彼女の表情が変わり、体から魔力が溢れる。

 

 黒い輝きが迸り、周囲に吹き荒れた。

 

 普段は力を抑えているのか。

 

 しかし、それでも今の彼女は地球がイシリスであった頃のカミラよりは強い、という程度だ。

 

 「魔力紋だったか?それは魔力の無駄だ、止められるなら止めた方がいいぞ?」

 

 そう言った瞬間。

 

 「死ね」

 

 彼女はそう言ってこちらに掌を向け、赤黒い塊を放った。

 

 私は至近距離から放たれた攻撃を測定、分析する。

 

 魔力を破壊や消滅の力に変えているのかと思ったが、これは一般的な魔法と同じだ。

 

 構成を始め、圧縮、集束……他にも色々と甘い。

 

 魔法の実力が全てだと言うつもりは無いが、仮にも神を名乗る者がこの程度で良いのだろうか?

 

 これでは普段私が使用している障壁も破れないと思うが、念の為に心構えはしておこう。

 

 そう考えながら、私は障壁で彼女の攻撃を受ける。

 

 着弾した赤黒い塊は膨張して爆発し、周囲を吹き飛ばしていく。

 

 爆発の色が違うが、こちらの炎は赤黒いのだろう。

 

 「神の慈悲にも限界があるのよ?」

 

 そんな魔神の声が聞こえてくる。

 

 他の世界にも神を名乗る者が多く存在する事は分かっているが、全員がこの程度では無いと思いたい。

 

 やがて黒い炎が消え、何事も無く立っている私を見た魔神の顔が歪む。

 

 「……少しはやるようね」

 

 再び攻撃を放つ構えを見せる魔神。

 

 もし本当に神だったとしても、それは「神という名の種族」というだけの事。

 

 私には数多く存在する種族の内の一つとしか思えない。

 

 こいつは地球がイシリスと呼ばれていた頃のカミラよりは強いと感じるが、現在の娘達と比べるとかなり弱い。

 

 そう考えた直後、周囲は光に包まれた。

 

 

 




 長い時間の中で主人公と娘達が強くなっているので主人公視点での評価は酷いですが、魔神である彼女の強さは今までの登場キャラの中では強い方です。


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