この作品の注意事項
・作者の自己満足
・素人の作品
・主人公最強
・ご都合主義
・辻褄が合わないかもしれない設定
・注意事項が増える可能性
等が含まれます。
以上をご理解したうえでお読みください。
読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。
私は死んだ彼女を埋葬し、村を取り壊す。
さて、どうしようか……リンガイルを覗いてみるか?
あんな旗無かったはずだが……。
リンガイルに着いたが、町の色々な所に白地に金の王冠ある旗がかかっている。
道行く人に聞いた所、ルセリア王国の国旗らしい。
飲み込まれたか、時間の問題だったからな。
モー乳販売店があったので色々と買った、店員は見知らぬ者に変わっていた。
私は宿を取りこの町に暫くいる事にした。
数日後。モー乳を瓶のまま飲み歩いていると、念話が来た。
『師よ、よろしいでしょうか?』
『どうした?』
『直接会ってお話したい事がありまして、ウルグラーデに来ていただけませんか?』
珍しいな、わざわざ私を呼び出すとは。
『分かった、急ぎか?』
『可能でしたら』
それを聞いて私はウルグラーデに転移した。
『今町の外だ。これから学校に行く』
『はい。お待ちしています……受付で名を名乗ってくださいね』
『分かった』
私は念話を切ってウルグラーデに入っていく。
ウルグラーデの神殿は私が言った通りに名を自由神に変えており、名前は無くしていた。
巫女達にはそうするように言っておいたからな、彼女達は私が言うならと受け入れてくれた。
私は学校へと大通りを歩いていく。何やら物々しい、武装をした者が多く見回っている。
「えっ!?」
歩いていると驚いた声と何かが落ちる音が聞こえる、振り向くとメガネをかけ灰色の髪をした老婆がこちらを見て小さい紙袋を落としていた。
「大丈夫か?」
私は袋を拾い、老婆に渡す。
「え、ええ」
「気を付けるんだな」
そう言って学校に向かおうとした時。
「……クレリア?」
つぶやきが聞こえた。
「何故私を知っている」
私は振り返る。
「本物?」
「何を言ってるんだ?」
震えながら私に近づいた彼女が私を抱きしめた。
「おい?」
「急に居なくなって私がどれだけ心配したと……」
泣き始める老婆、周りの視線が集まる。
「とにかく目に付かない所に行くぞ。来い」
私は老婆を連れて移動したが途中で家に来て欲しいと頼まれ、こいつが誰か気になった私はついて行く事にした。
家の者は出かけているらしい、一般的な作りの家に案内され椅子に座った。
「で?お前は誰だ?」
「年取ったもんね……分からないか」
苦笑いする彼女。
「ヘレンよ、ヘレン・ワーズ」
その名前を聞いた時、背中まで伸びる灰色の髪を三つ編みにして眼鏡をかけた少女が浮かぶ。
「ヘレンなのか?」
「そうよ」
彼女はメガネの位置を直す。
「久しぶりだな」
「何してたの?どうしてまだその姿なの?」
私は彼女に隠す所は隠して話しをした。
「貴女森人のハーフだったのね……やっぱり」
彼女は当時から年齢にそぐわない力を持つ私を怪しんでいたらしく、そうでは無いかと思っていたらしい。
それから彼女と話をして色々な事を聞いた。
ヘレンが魔法学校の元教師で、今は事務職をしている娘が居る事。孫は教師として働いている事などを聞いた。
そうして時が過ぎ……。
「……いかん」
「どうしたの」
紅茶を飲む途中で固まった私に聞いてくるヘレン。
「約束があったんだ、また後でな」
そう言って家を出ようとする。
「今もちょっと抜けてるのね」
後ろから笑い声が聞こえた。
ティリア魔法技術学校の受付で名を名乗ると、校長室に案内された。
ケインと二人になると彼は紅茶と茶菓子を用意してソファへと私を案内した。
「遅かったですね?」
私の前に紅茶を置く。
「途中でヘレンに会った」
納得顔になる彼。
「彼女の子供も孫も学校に居ますよ」
「遅くなってしまったが急ぎの話なのだろう?」
私は話を促した。
「ええ……実は……」
彼は話し出す。
ウルグラーデはティリア魔法技術学校がある事と正統な神の巫女が居る事でルセリア王国からの独立を今まで守っていたが、大きくなったルセリア王国が物資の流通を規制した上で武力をちらつかせ取り込もうとし始めた……と言う事らしい。
「ケイン、入るわよ」
そこまで話した時に女性の声がして誰かが入ってくる。
「今は来客中なんですが」
「ごめんね、でも例の事でね」
言葉を交わす二人を私は見ていた。
「ごめんなさい、話している途中……で……」
私のを見て驚きををあらわにする女性。十八前後かな……しかし見た事があるような気がするな。
「クレリア!」
彼女は私に飛びついてくる。
「ミナ、失礼ですよ」
「ミナ?」
私は女性を見る。
「そうよ!あなたを超える魔法使いになる、ミナ・トリアムよ!」
それから落ち着きを取り戻し話をした、私が森人とのハーフである事などおおよそヘレンにした話と同じ事を伝えた。
「次期校長で……ケイン校長の妻?」
「そうよ」
そうか、ケインとミナがな。
「何よ……好きになった物は仕方ないでしょ」
私が二人を見比べていると、仄かに顔を赤くして言ってくる。
ケインが咳払いをして言う。
「クレリアさんお願いします……流通を規制され攻められれば町は長く持たないでしょう。無理を承知でお願いします……ルセリア王国の軍を共に撃退し、王国に所属している町と同等の地位と自治権を認める条約を結ばせて欲しいのです」
「あたしからもお願いします。貴女はケインと並ぶ大魔法使い……どうか私達と町と学校の未来に力を貸して……!」
頭を下げる二人。ヘレンとミナは知らない仲では無いし、何よりも……。
私は頭を下げているケインを見る。今まで力を尽くしてきた弟子の頼み、断る気は無い。
「分かった。力を貸す」
「……ありがとうございます」
「ありがとー!」
悔しそうな嬉しそうな不思議な表情をしているケインと、喜び突っ込んでくるミナ。
「では、これからの事を話そうか」
私は胸に張り付いているミナを引きはがして言った。
二人と話した所ウルグラーデの方針として徹底抗戦する事は決定済みで、冒険者ギルドと警備隊、自警団も結成され町の内部にも目を光らせているらしい。
更に私が各地の巫女を誘拐し姿を隠した際に「ウルグラーデの神殿の巫女が神に謁見し巫女の血統を守っている」という事を広めて他の町の神殿の正統性を無くしているため、他の町から自由神を信仰する冒険者達が集まって来ている。
まあ他の神殿はかなりお粗末になっているらしいな。髪が黒くなかったり染めようとしてまだらだったり、目も黒くない。
まあそうなるだろうな、元々黒髪黒目はこの世界の人類には居なかったのだから。
臨戦態勢の町を見て回っている私は念話をつなぐ。
『ケイン』
『どうしました?』
『私は人の範囲で戦うぞ?勝利は約束するがまた神だ何だと騒がれたくないからな』
念話しながら店でモー乳を買う。
『そうですか……』
『何だ?何かあるのか?』
モー乳を飲みながら話す。
『師は人間の力の範囲を知っていますか?私はやりすぎる気がするんですが』
黙ってしまう私。
『それに力を出していただかないと戦力を覆せないのですが……』
『うーむ……分かった。多少は名が広がってもいい、弟子と知人と弟子の学校の生徒達の未来のためだ』
『申し訳ありません』
ギルドの周囲や、町の広場には応援に来てくれた冒険者の為の施設が設置されている。
『気にするな。たまには弟子に頼られるのも良い物だ』
『……はい』
そこまで気にする必要は無いのだが、ケインならこうなるか。
「いいか!隣にいる者と連携して並ぶように位置取りをしろ、穴を作るな!」
私がウルグラーデの学校の客室で過ごして二週間程が過ぎ、ルセリア王国の軍がやってきた。
外壁から見る限りは昔リンガイルで相手した数の……2.5倍ぐらいか?多いのか少ないのか分からんな。
「負傷した者は無理をせず後退しろ、治療を受けてから戦線に戻れ!」
「援護魔法部隊は自分と前衛の防御、攻撃魔法部隊は用意した高台から後方の敵の排除、攻撃魔法部隊の防衛部隊は攻撃魔法部隊を守り抜け!」
私はケインに頼み一人で遊撃だ。冒険者の皆は私の事は特に気にしてないだろう。
「弓部隊は高台の前から山なりに射撃して敵を狙えよ!」
さっきから説明しているのはウルグラーデのギルド長だ、以前とは別人になっているな。
「……ん?君!君はどこに配属されている?」
一人離れて聞いていた私にギルド長が言う。
「ケイン校長から役目を受けている」
そう言うと彼は私をじっと見つめている。
「……そうか。頼む」
そう言った後もしばらく見てくる。
「私に何か用でもあるのか?」
「いや、すまん……そういう訳じゃないんだ。ただ昔親父が一瞬で振られたって言ってた少女に似てる気がしただけだ」
そう言って苦笑いするギルド長。
「相手もとっくにいい歳になってるだろうに」
「そりゃそうだな」
彼は笑って移動していった。
両軍がぶつかり戦闘をしている中、私はまだ町の中にいた。
いつもの女神軽装備は変わらないが、敵が多そうだから大剣を使うつもりだ。
私は外壁へ飛びあがり戦場を見る。でこぼこした大地で前衛がぶつかり合い、空中は弓や魔法が飛び交っている。
敵は訓練を受けた兵士のようだ。
まあやる事は同じだ、取り敢えず魔法使いが一番厄介だから排除しておくか。
多い所は……あの辺りか……。
戦場中央、敵陣の奥から多くの魔法使いらしき気配がする。
……魔法が多く放たれているからこれは見ただけでも分かるな。
さて……行くか。
私は魔法部隊の上空にやって来ると、火球を打ち込んでから降下する。
爆音と共に直径数メートルのクレーターが出来た。
「なっ!?なにがあった!?」
「何処からか攻撃が!?」
騒ぐ敵の声を聞きながら魔法使いに切りかかり、一振りで相手の頭を落としていく。
「敵襲だー!!」
周囲から敵が集まり、全方位を敵に囲まれる。
私はその敵を大剣を振り回して薙ぎ払っていく。
次々と切り裂いていると、敵の声が響く。
「離れろ!魔法が行くぞ!」
周りの敵が距離を取り、生き残った魔法使いと周囲の魔法使いが私に向かって魔法を打ち出す。全て火球だな……では。
「離れて居れば安全と言う訳でも無いぞ?」
私は炎の壁の輪を自分の周りに作り、その輪を一気に広げる。
「あっ……」
「うあぁ!?」
敵の攻撃魔法は炎の壁に飲み込まれ、火力の高さで一瞬で燃え尽きる敵兵達。
そして燃え尽きる仲間を見た他の兵は、必死に逃げ出し始めた。
逃げられれば追いはしない、頑張るといい。
「はっ、はっ……くそぉーーーー!!」
炎の広がる速さから逃げきれずに燃え尽きて行く敵兵士、私の周りに円状に赤く熱を持った地面のみが残った。
「化け物……」
それを見ていた範囲外の敵兵の声が聞こえた。
この程度で化け物は無いだろう。
私はそう思いながら背後にファイアボールを打ち込み、正面の敵に突っ込んで行く。
初戦は私が魔法使いの本隊とその周辺を消滅させたので優勢だった。
ウルグラーデ側もそれなりに死傷者が出たようだが。
私は前線から離れた本隊に行ったのであの距離から私であると判別出来る者は居ないかもな。
私は姿を消し、町に戻った。……最初から姿を消したまま戦えばよかったんじゃないか?
私は学校に行き、校長室を訪ねた。
「ケイン……校長」
ミナも居た為、咄嗟に校長を付ける。
「あ、クレリア先生」
ソファに座っていたミナが振り向き言う。
「私は先生では無い」
そう返して私はソファに座った。
「なんでわざわざ校長ってつけるの?結構年も近いんじゃないの?」
ミナが私に言う、ケインが付けて欲しいと言ったからだな。
「そうですね。校長はいりませんよクレリアさん」
ケインがそう言ってソファにやってきた。
「そうか、分かった」
ミナが紅茶を私の前に置く。
「私達は立場上戦争にあまり出る訳にはいかないので……心苦しいですね」
ケインがミナの隣に座りながら言う。
「教育者が率先して人を殺すのはな」
「いざとなれば戦いますが」
私が言うと、ケインが言葉を返す。
「まあ、お前達はまだここに居ろ」
そう言って私は紅茶を飲む。
「そう言えば、聞いた話だと敵の魔法使いの本隊を誰かが叩き潰したらしいわね?」
ミナがカップを置いて言う。
「私がやった」
二人が私を見る。ケインはやっぱりと言った表情、ミナは小声で「やるぅ」と言った。
「やはりそうでしたか、お疲れさまでした」
「多少派手に戦ったのだが、中々楽しかったぞ」
「やっぱりすごいのね貴女って」
感心する彼女。
「貴女にとって人間との戦いは遊びの様な物でしょうからね」
「殺す事を楽しんではいない、敵でないなら殺さないぞ」
私はケインを見る。
「それだけ実力差があるって事でしょ?」
ミナはケインと私を交互に見ながら口を挟む。
「そうだな」
私はそう言ってから話を変える。
「それで……ケイン。向こうは何か言って来たか?」
「特に何も……恐らく今度はもっと大規模な軍になるでしょう」
彼は私を見た後、手元のカップに目を落とす。
「クレリア、貴方が本当に強いのは分かったけど無理しちゃだめよ?」
「大丈夫だ。あの程度ならな」
紅茶を飲み終わるまで三人で話をして過ごした。
それから一月程何事もなく時が過ぎ、私はヘレンの家と校長室、客室を行ったり来たりする生活をしていた。
大半は客室で魔法の更なる可能性を探していたが。
そしてある日。偵察に出ていた冒険者の一人がルセリア王国の大規模な軍がウルグラーデに向かっているのを発見した。
その報告と共にウルグラーデは警戒態勢から臨戦態勢に移行した。
外壁から見ると遠くにルセリア王国の軍とウルグラーデ義勇軍が見える。
ウルグラーデは流通を減らされている状態だが、まだ問題は起きていない、更にこの一か月程は冒険者達が周囲の資源を集めていたのでその影響もありそうだ。
私が居る事を知らない者達は、どのような戦いをしてもこのままでは負けるのは時間の問題だと分かっているはずだが……諦める気は無いようだ。
今回から私は姿を消して戦うつもりなので会議にも参加していない。
大分敵の軍勢が多くなった。魔法使いの部隊の規模も数も前回とは違う。
ティリア魔法技術学校を卒業した者もいるかも知れないな。今は他の学校もあるらしいから魔法使いも増えているだろう。
どちらにしても敵になるなら殺す事は変わらないな。
再び戦闘が始まった。守りを固めて準備をしても数の差はどうにもならないようだ、持ち堪えてはいるが押されていく。
その光景を眼下に見ながら私は敵陣へと向かった。
私は姿を隠したまま上空から敵陣の魔法使い部隊へ突入する。
「なっ!?」
「なんだ!?」
「急に味方が吹っ飛んだ!?」
姿を隠したまま大剣を振り回し、次々と魔法使い達を殺していく。
「何かいる!!足跡が付いてる!!」
ああ、そうか。地面に立っていると足跡は残るな、地面は柔らかい所もあるし。
私は宙へ浮かび再び攻撃を開始した。
「足跡も消えた!?」
「このままじゃやられるだけだ!やられた仲間の辺りへ魔法を叩き込むしかない!」
混乱した魔法使い達の中の一人が叫んでいる。
「そ……それはっ!?」
「このままじゃ一方的に殺されるだけだぞ!!」
「くっ!!」
そう言って周りの魔法使い達が敵を殺している場所にファイアボールを打ち込み始めた。
私は特に気にする事無く魔法使い達の中を斬り進む。
「居るのか居ないのか……畜生!何なんだ!!」
全く変化が無いからか敵の魔法使いが叫ぶ……当たっているぞ?効いていないだけだ。
それから私はこの魔法使い部隊を全滅させ、新たな魔法使いの部隊へと飛び立った。
こうして私は次々と魔法使いの部隊を潰して行き、今最後の部隊を潰していた。
「一体何故こんな事に……」
そう呟いた魔法使いを殺す。
相手からすれば何もないのにいきなり仲間がバラバラになる訳だからな。文句の一つも言いたくなるだろう。
魔法部隊を壊滅させた私は、空から軍がぶつかり合っている前線を見る。
自軍の魔法部隊が全滅した事が伝わったのか敵の前線部隊にも動揺が広がっているようだな。
その後攻め切れなくなったルセリア王国軍は撤退して行った。
「それで……まだ何もないのか?」
校長室で私、ケイン、ミナがソファに座り話し合う。
「ええ……いまだに王国からは何も……」
どことなく暗い表情のケインに聞いてみる。
「完全に流通を止めて放っておくだけでもこの町は終わりそうな物だが……なぜやらないか理由は分かるか?」
そう聞くとミナが代わりに答えてくれる。
「詳しくは知らないけど貴族の名誉とかなんとからしいわよ?何の意味があるかは知らないけど」
鼻で笑いながら呆れた表情で言う。
「本当に意味が分からんな」
貴族の名誉のために兵士達は死ねるのか、人はやはり面白いな。
「今回の事で手加減は出来ないと考えたのか、流通は完全に止められました」
私を見るケイン、ミナもその言葉を聞いて表情を暗くする。
「次は手加減無しの軍勢が来ると思います」
私は本気を出すのが遅いと感じるが、敵は簡単に勝てると考えていたのだろうな。
「今度は私達も出る事になると思うわ。もう教育者がどうこう言ってられないもの」
「だがこれをしのげば国を超える力がある事が示せる。攻め込まれたくなければ認めろと言えば上手く行くかも知れないぞ?」
私の言葉に頷く二人。
「結局……力が上である事を示さなければ不可能なのですね」
呟くケイン。
「自分の意見を通すためには種類はどうあれ力が必要だ。お前も知っている事だろう?」
全てを敵に回しても気にならない強さがあれば何も問題は無いと思う。
あれから約二か月程が過ぎたある日、ウルグラーデは全方位をルセリア王国の軍に囲まれていた。
「全軍では無いだろうが町一つには十分すぎる数だな」
校長室で話し合う私達。
「確かに、町一つに向ける戦力では無いですね……」
「ようやく本気になった訳ね。義勇軍と私達三人で勝てるかしら……」
対面に居るケインとミナが言葉をこぼす。
「……この町の戦力では全方位を守る事は出来ません」
「私達でどこまで援護できるかしら……」
二人の表情は暗い。
「ミナはともかくケインは何故暗い顔をしている、私が居るだろう」
私がそう言うとミナが独り言の様に呟く。
「いくら何でもこの戦力相手じゃ勝てるかどうか……」
「……こうなる前に話が付くと思っていたのです」
国の貴族共が名誉だなんだと言い出す前ならそうなったかもな。
「思った様にいかない事はいくらでもあっただろう?……誰だってそうだ」
自分が魔法や錬金術を練習していた頃を思い出す。
失敗をわざわざ話したくなど無いが、人と暮らしている時にもそんな事はそれなりにあった。そう言うとケインは顔を俯かせる、そんなケインをミナは心配そうに見つめる。
「そして……それが面白いんだよ」
思わず薄い笑みを浮かべてしまう。
二人は私を見る。
「思い通り……確かにそれはそれで愉快だろう。だが私は全てが自分の思った通りになるなどつまらないと思っている」
私は二人を見る。
「私が思いもよらない発見や行動。それは見ていてとても面白い……それが私にとって不都合であったとしても不愉快では無いんだ」
「……どうしたのクレリア?」
訝しむミナ。
「このままでは勝つ事は難しい……そうだなケイン?」
「はい」
私を見つめ答える。
「私一人でやる……お前達は此処に居ろ」
「……それは」
「ちょっ!?ちょっと……無茶よ!いくら強くてもあの数を貴女一人でなんて無理よ!」
言葉に詰まるケインと私に詰め寄るミナ、私はミナの頭に手を伸ばし撫でる。
「任せておけ」
そう言って私は校長室から出て行く。後には固まっているミナと姿勢を正し頭を下げるケインの姿があった。
さっさとやってしまおう、私は姿を消しウルグラーデのかなり上空へ飛ぶ。
下を見ればウルグラーデを包囲するルセリア王国の軍が見える。
私はウルグラーデに防御魔法を張り。自分の周囲に威力を上げた火球……かなり大きい物を複数作りだす。
小さくともあの程度の軍を吹き飛ばす事は出来る。だが、天から光が落ちて行く様を人々に目撃させなければならない。
そして私は周囲を包囲する軍に向かって火球を打ち出した。
打ち出した火球はかなり大きいにもかかわらずみるみる小さくなっていき……閃光と爆炎を巻き起こし軍を飲み込んだ、遅れて私にも轟音と熱風が届く。
その炎が消えた後町の周囲に残っていたのは赤く融け、抉れた大地だけだった。
このやり方はつまらないが大掃除には向いている。
その後ウルグラーデはルセリア王国に自治権を認めた上で他の町と同じ地位を約束する条約を認めさせ、自治都市ウルグラーデとなった。
もっと有利な条件も付けられたはずだがケインはそれをしなかった。それが戦争の火種になると考えたようだ。
その辺りは好きにすると良い、そこからはケインのやる事だ。
そして現在私は校長室でミナに問い詰められている。
「クレリア……貴女何者なの?あんな……あんな魔法ケインにだって無理だって分かる……ケインは知ってたの?」
ミナは正面に座っている私から隣にいるケインに視線を移す。
「ケイン。私はこうなると分かってやったんだ……だからもう隠さなくていいぞ」
「そうですか、師がそう言うのならもう構いませんね」
「え?師って?ええ……?」
声をかけると私を師と呼ぶケイン、戸惑うミナ。
「師の事をお話しますよ」
そう言って私の事を説明し始めるケイン……お前がするのか。
ケインが話を終えた。ミナはまだ声を発さず俯いている。
暫くそうしていたが彼女は勢い良く顔を上げて言った。
「私だけ知らないとか酷いじゃないにょ!」
何とも言えない沈黙が辺りを包む、彼女は顔が赤くなっている。
「……私はそういう何かなんだ、黙っていて済まなかったな」
「私は師が話すなと言った事は妻にも話す気は無いですからね」
噛んだ事を流して会話する。
「私は貴女を超えると言ったけど……」
赤い顔のまま私を見る。
「貴女が何者でも負ける気は無いわよ」
「ミナらしいな」
ミナは笑い、私も薄く微笑む。
やがて彼女の顔色は元に戻ったが私の話題は続く。
「それだけ長い寿命なら私も目標がいなくなる心配はしなくてよさそうね。もし何処かに行ってもたまには会いに来てよね」
「まだこの町に居るつもりではあるが……用があるなら念話で呼べ」
私の隣に移動して話す彼女。
「あの時の魔法ってどうやってるのよ」
「それはな……」
「私達が出来るのそれ……?」
「知らん」
「じゃあ……」
一人で紅茶を飲むケインに微笑ましく見守られながら、魔法談議に花を咲かせた。
「ウルグラーデに家を……ですか」
「ああ」
数日後、校長室で会話する私とケイン。
「学校に居ても構いませんよ?」
「悪くは無いがやっぱり自分好みの家が欲しくてな」
二人共紅茶を口にする。
「そうですか。では費用はこちらで出しますよ」
ケインが紅茶を置きながら言う。
「いいのか?」
「今回の事で返しきれない恩を受けましたからね」
私も紅茶を置く。
「特に気にしていないぞ」
「私が気になりますので」
お互いに顔を見て言う。
「そうか。それで気が済むならそうするといい」
「購入する家が決まったら連絡をください。どの家でも構いませんよ」
「分かった」
こうして家を買いに不動産に行ったのだが、名前を名乗ると「お客様は運が良いですね」と言われある物件を紹介された。
クレリアと言う名前の者だけが今の持ち主と顔合わせをして、合格すれば無料で屋敷が貰えるらしい。
「なんだそれは」と思ったが、気になった事があったので会ってみる事にした。
物件の屋敷で顔合わせと言われたので、約束の日に地図を見ながら向かう……この道はやはり……。
着いた場所にあったのは以前住んでいたあの屋敷。
私は鉄扉を開けて庭を歩く。あの時いつか作りたいと思い、彼女達に言った池があった。
屋敷の扉を開け、リビングに入ると三人の年老いた女性が座っていた。
「久しぶりだな三人娘」
私がそう言うと、彼女達は涙を流し私に抱き着いた。
その後いきなり居なくなった事を三人から叱られ、話をした。
彼女達はそれぞれ家も家庭も持っていたが、この屋敷はずっと管理していたらしい、いつか私が戻って来た時のためにあのような条件を付けたようだ。
今まで数回クレリアと言う者が来たが別人で、きっともう駄目だろうと思いつつも取り消す事が出来ず、そのままにしていた所に私が来た……という事だ。
あの時譲って貰った家を返すと言われ受け取る事になり、私は再びあの家に住むことになった。
ケインに無料で家が手に入ったと伝えないとな。
時折訪れる彼女達と語り合う日々を送る事になりそうだ。
最後の大軍勢が一番あっさり終わる、主人公がその気になったら仕方ない。
今回は姿を消したまま戦ったけど、あまりにもつまらないのでどうしようかと悩む主人公。