少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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090-03

 

 前回の配信は凪がボスを殺した所で終了した。

 

 風香から聞いた話によると前回の配信も切り抜きされ、投稿されているらしい。

 

 それから今後の配信予定の話を聞いた。

 

 彼女は普段様々なゲームをやっているが、今回は白狼をクリアするまで他のゲームの配信は行わない様だ。

 

 理由を聞くと、彼女は「あまり期間を空けると腕が鈍っていつまでもクリア出来ないかも知れないので」と答えた。

 

 

 

 

 

 

 彼女は毎夜配信を続け、休日には長時間の配信も行った。

 

 そして現在、ゲームは最終局面に入っている。

 

 「この感じだと、そろそろラスボスでしょうかね……」

 

 

 :良くここまで来れたよな

 

 :最初はあんなにポンコツだったのに……成長したな

 

 :これが最後だよ

 

 

 ゲーム内では燃え盛る城下町が見える丘で、主人公と一人の男が対峙している。

 

 「続けていればそれなりに慣れてきますからね」

 

 彼女がコメントに言葉を返す。

 

 やがてムービーが終わり、戦闘が始まった。

 

 「さて、恐らくこれが最後……最後ですかね?今日で終わらせるつもりでやって行きますよ!」

 

 

 

 

 

 

 翌日の夜。

 

 風香は白狼の配信を行っている。

 

 前回は配信終了時間の10分程前に止めを刺し、喜んだ直後に第二形態がある事が発覚し敗北、配信を終了した。

 

 最後の敵である事は間違い無い様なので、今回で終わる可能性は高い。

 

 「さて!前回、第二形態がある事が判明した訳ですが……今回の配信中に倒します!」

 

 

 :あの時のなぎちゃんの反応は笑ったw

 

 :「嘘でしょー!?」って叫んでたなw

 

 :ギリギリでようやく倒したと思った敵が更に強くなって回復するとか鬼畜ですわw

 

 :がんばれ!

 

 :ここまで来たんだ、倒そうぜ

 

 

 凪はコメントを見た後、ボス戦へと挑み始めた。

 

 

 

 

 

 

 ボス戦へ挑み始めてから約四時間後、遂に凪は第二形態のボスへ致命の一撃を打ち込んだ。

 

 「やった!やったぁ!」

 

 コントローラーを置いて喜ぶ凪。

 

 :きたー!

 

 :長かった戦いがついに終わる……

 

 :最後油断しないで!もう一回入力あるよ!

 

 

 「えっ!?……あっ!?」

 

 入力が残っているというコメントを見たのだろう、凪が慌ててコントローラーを握るのと、再入力指示が出たのはほぼ同時だった。

 

 「危なかった……これで最後!」

 

 

 :いけぇー!

 

 :止めを刺せ!凪!

 

 

 凪は指示されたボタンを入力し、ボスに止めを刺した。

 

 「流石にもう無いよね……?」

 

 そんな心配をする凪をよそにムービーが流れ、やがてエンディングが流れ始めた。

 

 「終わったー!」

 

 

 :お疲れー!

 

 :クリアおめでとー!

 

 :これはノーマルエンドかな?

 

 :さて、別エンドを目指して最初から始めようか

 

 

 「取り敢えずエンディングを見ましょう」

 

 クリア出来た事が嬉しいのだろう、明るい声で彼女はそう言った。

 

 

 

 

 

 

 エンディングが終わり、彼女はプレイの感想を話し始める。

 

 「難しかったですが、とてもやりがいのある面白いゲームでしたね」

 

 

 :お嬢様の力も大分あるけどな

 

 :たまに手助けしてたけど、声出さないだけで毎回いたのかな?

 

 :その辺どうなのなぎちゃん

 

 

 「お嬢様はいつもいらっしゃいました、見ていただけの時があるだけですね」

 

 

 :お嬢様も意外と暇なんやね

 

 :仕事とかはしてないの?

 

 :何歳なんだろう

 

 

 「そういう事は教えられません。お嬢様の許可があれば別ですが……」

 

 その辺りを許可なく話せば処罰の対象になる恐れがある為、彼女も話せない事を明言する。

 

 

 :お嬢様次第か

 

 :そら上司?なんだからそうよ

 

 

 「お嬢様が『良い』といえば、本来禁止されている事でも許されますから」

 

 

 :すげぇ

 

 :王様みたいだな

 

 

 「でも、お優しい方ですよ。その力の使い方もお嬢様らしい使い方をされています」

 

 

 :ほーん

 

 :例えばなんかある?話せればだけど

 

 

 風香は私の方を確認しながら話し始める。

 

 「そうですね……以前、お嬢様の給仕をしていたメイドに、その場で一週間の休暇を与え精密検査を受けるように指示したんです」

 

 ん……?

 

 そんな事をしただろうか?

 

 そう思っている間に話は進む。

 

 

 :ほうほう

 

 :超絶ホワイト!

 

 :お嬢やるやん!

 

 

 「その後、彼女が病院に行った事で判明したのですが……彼女は病気でした。早期発見だったために治療は問題無く、現在はその彼女も復帰していますが『気が付くのが遅れていたら助からなかった』と医者から言われたそうです」

 

 ……思い出した。

 

 以前、メイドの一人の様子に違和感を感じて体を調べた所、病魔に侵され始めているのを発見した事があったな。

 

 

 :マジかよ

 

 :お嬢って医者なの?

 

 :部下の命を救う、上司の鏡

 

 

 彼女は私を確認しながら話を進める。

 

 「医者は『自覚症状も全く無く、精密検査をしなければ発見出来ない物だった。発見出来たのは運が良い』と言っていたようですが……」

 

 我が家の優秀なメイドを病気程度で失いたくは無いからな。

 

 

 :お嬢様が行けって言ったんだよな?

 

 :お嬢様は医者がそう言った病気を見ただけで察したの……?

 

 :偶然?

 

 

 「偶然でしょうかね?その一月ほど前にメイド達は通常の健康診断をやっていたのですが……」

 

 

 :おいおい……確信をもって指示したって事か?精密検査しないと分からない病気を?見ただけで?

 

 :聞けば聞くほどお嬢様が何者だか分からなくなるんだけど

 

 :お嬢は今もなぎちゃんの近くにいるんでしょ?お嬢ってどんな感じなの?

 

 

 「そうですね……」

 

 私はこちらを見る風香に対し、頭を横に振る。

 

 「お嬢様からNGが出ましたので、これ以上は話せません」

 

 外見の特徴を言えば流石に思い当たる者もいるだろうからな。

 

 

 :だめかー

 

 :そら身バレしそうな話は駄目だよな

 

 :まあ、お嬢が凄いって事は分かった

 

 

 「さて……この話はここまでにして、今からこれからの予定を少し話そうとおもいます」

 

 

 :お、次は何すんのー?

 

 :お嬢様と一緒にやれるゲームやって欲しい

 

 

 「次はホラーゲームを考えています」

 

 

 :ホラゲか

 

 :なぎちゃんは良い反応しそうだけど、お嬢様が驚く姿が想像出来ねぇ……

 

 :意外と怖がりで可愛い声を聞かせてくれるかも知れないぞw

 

 

 「それと、ホラーゲームは次回の配信では無く、その次にやる予定です」

 

 

 :あれ?そうなん?

 

 :ん?じゃあ次回は何するの?

 

 

 「最近は毎日集中力を使うゲームをしていたので、雑談を挟もうかと思いまして」

 

 

 :なるほどね

 

 :良いんじゃない?

 

 :お嬢様は来るの?

 

 :お嬢に質問コーナーとかある?

 

 

 「お嬢様、どういたしますか?」

 

 風香が私の判断を仰ぐ。

 

 「答えたくない質問には答えないが、それでも良いというのなら構わない」

 

 

 :やったぜ!

 

 :お嬢様の正体がついに分かる

 

 :いや、正体がばれる事には答えないだろ

 

 

 「お嬢様が了承して下さったので質問も受け付けますが……あまり変な質問をしない様にして下さいね?」

 

 

 :ひぇっ……

 

 :トーンがガチで怖い……

 

 :お嬢様を思うメイド魂が……

 

 :ポンコツでもメイドはやはりメイドだった

 

 :白狼クリアしたんだからもうポンコツじゃないだろ!

 

 :そのプレイ中に結構やらかしてるんだよなぁ……

 

 

 「お嬢様なら正直平気そうですが……それでも駄目ですからね?皆さん」

 

 その後、凪は最後の挨拶へと移り、配信を終わらせた。

 

 


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