頭の良いキャラをいつか書きたいけれど、作者より頭が良いキャラは書く事が不可能らしいのでうまくごまかす事が出来たらいいですね、何とかそれっぽくしたいです。
後、最初また時間飛びます。
この作品の注意事項
・作者の自己満足
・素人の作品
・主人公最強
・ご都合主義
・辻褄が合わないかもしれない設定
・注意事項が増える可能性
等が含まれます。
以上をご理解したうえでお読みください。
読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。
ウルグラーデに住み二十年が過ぎた。
ヘレン、アリアナ、ルフレ、ユリアルマは既に逝き、ルセリア王国はルセリア神王国と名前を変えた。
世界が少しづつ変化する様子を見ながら、私はまだこの屋敷で日々を過ごしていた。
この二十年でウルグラーデからいつの間にか戦神信仰という新しい宗教が広がっていたが私は気にしていなかった。
後にケインとミナから先のルセリア神王国との最後の戦いで使った私の魔法が原因だと聞いた。
姿を隠していた事と人類では不可能な威力もあって、戦神が戦いに介入したと考える者が現れたらしい。
私は放っておく事にした、ケインとミナは言わないだろうしな。
「いらっしゃいませー」
私は今行きつけのモー乳販売店に居る。まとめて買っておいても良いのだが時期によってモー乳も味が違うのでこまめに買いに来ている。
ふむ、今日はモー乳プリンがあるな。
「モー乳の大瓶十本とモー乳プリンを五個頼む」
「いつもありがとうねクレリアさん」
店員の女性が私に声をかけながら用意をし始める、二十年通えば覚えられて当然だな。
「ここの製品はお気に入りだからな」
「嬉しいわ」
そう言って笑いを零す。彼女はこの店の店主の娘だ、彼女がお手伝いしている頃から私は来ているからな。
「ありがとうございましたー」
その声に後ろ手に手を振る。
モー乳をしまって通りを歩いて人とすれ違っていると、突然男の声がした。
「おい、お前!ぶつかっておいて何も言わねぇのか!」
気にせず歩こうとして直後に後ろから伸びてくる手をかわす。
「何か用か?」
振り向いて言う。
「何か用だと!?ぶつかったら謝る様に言われてねぇのか!」
脅す様に言ってくる。
「確かにぶつかったら謝るべきだな……だがお前には当たっていないな」
「俺がぶつかったって言ってんだよ!」
そう言って睨みつけてくる。
「大人しく因縁を付けた事を謝るのならこのまま許してやるぞ?」
そう言うとポカンとする男、その後顔を赤くして怒り出す。
「てめぇ……!」
「そこ!何してる!?」
男が掴みかかろうとした所に声がかかる、武装した三人の男女がこちらに近づいてくる。
彼らはこの町が自治都市になった際に作られた治安維持隊の隊員だろう。
治安の維持や犯罪者の逮捕など都市内を担当している。
外敵からの防衛には警備隊があり、それらはウルグラーデ自治軍に分類されている。
「くっ……」
男は逃げだした。逃げたら捕まえてくれと言っているような物だぞ。
「奴を追え!」
二人が男を追いかけ、残った隊員が話しかけてくる。
「大丈夫ですか?」
「ああ、助かった。触れても居ないのにぶつかったとうるさかったからな」
隊員は身をかがめ目線を合わせて話す。
「治安維持隊が巡回しているから何かあったら言うんだよ?」
「分かった」
あの男は治安維持隊に救われたな。場合によってはこの町から人が一人消える所だった。
「ではこれで、良き日を」
隊員はそう言って去っていった。
この「良き日を」という言葉は、治安維持隊のお決まりの挨拶の様な物だ。
いつ誰が言い始めたかは不明だがいつのまにか使われていたそうだ。
再び通りを歩きだす、私は今は金を稼ぐような事はしていない。
ケインに無料で屋敷が手に入った事を話したら大金を押し付けられた。
要らんと言ったら「せめてお金だけでも受け取ってください」と頼まれてしまった。
「モー乳を買う資金にさせて貰う」と言うと「ぜひそうしてください」と笑っていた。
当てもなく歩いていると、路地を少し入った所に居る二人の獣人が話している事が耳に入った。
「お前はどうする?」
「……ここにも思い入れはあるし、同じになるとは……」
何の話だろう、少し立ち聞きさせてもらうか。
「俺は行くよ。考えたくは無いけど……確かにまた起きるかもしれないんだ」
「そうか……」
そう言うと獣人の一人が路地から出て行く。詳しく聞きたいが話してくれるだろうか。
私は興味に負け残っていた獣人に自白誘導をかけて質問した。
判明したのは人間が奴隷を作った事を知った都市に住んでいない獣人達が対抗する為に集結しているという事だった。
一応獣人の集まっている場所も聞いた。覗いてみるのも面白いかもしれないな。
更に噂だが獣人だけでなく人間や他の種族を信用出来なくなった大地人や森人も同じような動きをしているらしい。
確かにいきなり隣人を奴隷にするような者と一緒に居たくは無いかもな。
ケイン達はこの事を知っているのだろうか。
私は校長室に訪れて得た情報について聞いた。
「そんな話が……」
「その反応からすると知らないな?」
私とケインはソファに座って話していた。
「噂でしかないが大地人や森人も同じような動きをしているらしいぞ」
ミナは外出中らしい。
「ウルグラーデに住んでいる同族を誘っていると言う訳ですか」
「恐らく他でもしているだろうな」
ケインは溜息を吐く。
「隷属魔法によって有無を言わさず奴隷にされれば当然かもしれませんね……」
「またあんな事が起きるかもしれないと思うのは当然か」
私は視線をケインに向ける。
「そうですね……この町では奴隷は居ませんが、信用出来ないと考えてしまうのは……当然ですね」
「いつから動いていて、今どれほどの規模なのかは分からないが……場合によっては新しい国が出来るかもしれないな」
紅茶を一口飲む。
ケインは視線を下げて言う。
「国が出来る事自体は構わないのですが、それらの国と戦争になりそうですね」
ふむ……力を付ければ指導者にもよるが……人間達は勿論、共に暮らす同族に対しても復讐として奴隷にしようと戦いを仕掛ける可能性は……あるな。
「面白そうだ、国が増えて世界がより賑やかになるぞ」
そう言うとケインが困ったような顔をする。
「扇動しないでくださいよ?」
「私は関わりはするが何かをしろとは言わないぞ?……もし戦争が起きたならそれは彼らの意思だよ」
「そうですか」
ケインは紅茶を見つめている。
「私は彼らの手伝いをしてくる」
「予想は出来ますが、なぜです?」
「何となくだ、興味がわいたとか気になったから……とでも言おうか?」
ケインは苦笑いをする。
「師のお好きなように」
その後、獣人以外の正確な場所が分からない為、誘っている者を捕まえて場所を聞こうと考え通りを歩いていた。
そこにミナが誘われたとケインから念話が来たので、その現場に行き周囲を探った。
「……があるだろう?」
「……かに……だが……」
路地裏から会話が聞こえる……私は少し近づく。
「これからも大丈夫だと言えるのか?」
「ううむ……」
二人の森人、もう一人は悩んでいるようだ。
「同族同士で身を守るべきだ。俺達は仲間が奴隷になるのを黙って見て居たくは無い」
「……分かった。俺も行くよ」
そう言った森人と握手をする勧誘していた森人。
さて、自白してもらおうか。
勧誘されていた森人には眠って貰い、勧誘していた者に森人の集まっている場所を聞く……神木……世界樹?もしかしてケインが居た村の辺りじゃないか?
その後大地人が多い場所をうろついて大地人の勧誘者を見つけ、同様に場所を聞き出した。
これで三種族の集まっている場所が分かった訳だが……どこから行こうか。
正直何処からでもいいので、紙に数字を書いてその辺りの子供に選ばせた。
その結果森人、大地人、獣人の順番で訪れてみる事に決まった。
あった。あの大樹だ……空を飛び森人の集結している場所に向かうと大きな木が見えて来た。
大樹……世界樹の根元に降り立つと世界樹が迎えてくれたような気がした。
お前も恐らく一万年以上生きてるんだよな。
「貴女!そこで何をしているの!?」
一人の森人の女が笛の様な物を吹くとみるみる森人が増えて行った、その手には杖や剣などの武器が握られている。
以前にも似たような事があったな。
私はそう思いながら世界樹が傷つかないように距離を取った。
その途端に私に矢や風、水、土の魔法が殺到する。
火を使わなくなったか、成長したな。
そう思いながら殺到する魔法を全て防ぐ。
「……馬鹿な」
森人のつぶやきが聞こえる。
「申し訳なかった……私に敵意は無い。そもそも私は森人のハーフでもあるんだ……ここに森人が集結していると聞いて力を貸したくてやって来た」
「……人間に見えるけど?」
私の見た目に突っ込んでくる森人。
「私は森人の特徴が出なくてな、良く誤解される……奴隷の問題が起きた当時、私はリンガイルに居た事とこの見た目のおかげで被害を受けなかった」
今考えた適当な言い訳……全て嘘では無いが、私の言い訳を聞く森人達。
「信用できないわね」
そう答える森人。証明も出来ないからな……流石に無理かと諦めかけた。
「町長!?」
「先生!?」
すると後から来た森人達が私を見て叫ぶ。
「知り合いなの?」
信用できないと言った森人が彼らに問いかける。
「お前も話なら知ってるだろ?昔リンガイルをルセリア神王国から守り切った最強の町長だよ!」
「昔私達に魔法を教えてくれた大恩人だぞ!」
そうか……ケインがまだ生きてるんだから年長者の中には当時魔法を教えていた者達が残っていてもおかしくないな。
「なに!?こいつ……この方が?」
「ああ!あの町は町長がいる間奴隷も作らなかったし、今も姿が変わらず生きているんだからハーフなのも間違いないぜ」
「急に辞めて消えてしまったんだけど、町長!どこに行ってたんですか!」
「お久しぶりです!先生!また会えて嬉しいです!」
私に声を上げる森人達、悪いが全員は覚えていない。
「大事な用があってな。数十年ほど町を離れていた、リンガイルを守れたのは皆の力があったからだ。そして教え子達……久しぶりだな、元気そうで何よりだ」
「そうだったんですね……皆!この人は大丈夫だよ!むしろ最強の人が仲間になるんだ!大歓迎だぜ!」
「はい!先生こそお元気そうで嬉しいです!」
私の言葉に大はしゃぎの森人達、それを見て周囲の森人達も納得したのか武器を下ろす。
「申し訳ありません。ただこちらの事情も分かっていただきたいのです」
そう言って一人の森人女性が頭を下げた後、握手を求めてくる。
「いや、謝るのは私の方だ……いきなりここに侵入したのは私だ。この見た目で警戒される事を考えておくべきだった、済まなかったな」
握手に答えて言う。
「私はエルフィ・マルマロウと申します。現在ここに集結している森人達をまとめている者です」
彼女は金髪をポニーテールにした胸の大きな女性だ。
「クレリア・アーティアだ……昔森人達の魔法の教師とリンガイルの町長をしていた、今は特に肩書は無いな」
失敗するかと思われたが私を覚えていた森人達のおかげですんなりと受け入れてもらう事に成功した。
それから私は家を貰い住む事になった。私を知らなかった者達はかつて私が森人に魔法を教えたのだと知ると態度を改めた。
エルフィが言うには集団戦闘に関する事や町の運営に関する事のアドバイスが欲しいらしい……戦闘はともかく運営はまともに参加していなかったんだが。
それでも出来るだけ覚えている事を教えた。役に立ったかは分からないがエルフィは伊達に森人をまとめている訳では無いようで、私が教えた事から考えを膨らませ色々やっているようだった。
集団戦闘の訓練をしながらエルフィに知っている事を助言しているある日、エルフィが訪ねて来た。
「急に悪いわね」
「構わない」
彼女をソファに座らせて飲み物を用意する、私に対する言葉遣いは普通にしてもらった。
「紅茶で良いか?モー乳もあるぞ?」
「紅茶をお願いするわ」
私は彼女に紅茶を用意する。
「さて、何か用か?」
飲み物を用意し私も対面に座り、彼女に問う。
「ええ、実は食料の見通しが良くないの」
「自給出来ないと言う事か?」
私は彼女に目を向ける。
「ええ、このままでは周囲の森に影響が出てしまう……森が死んでしまうかもしれない」
森の資源を取り尽くしてしまいそうなのか?
「自分達で作ればいい。食料を生産し家畜を育てれば解決する」
「やってはいるけど育てるのは難しいし時間もかかる、とても間に合わないわ」
俯く彼女を見ながら考えているのは巫女達と過ごした時作った農耕魔法だ。
あれなら誰でも使える、更に言えば彼女達は魔法の適性が高い森人だ。教えれば食料問題は解決するだろう。
「よし、私の作った魔法を教えよう」
「まさか……何とかする魔法があるの?」
私は彼女に農耕魔法を教える事にした。
「……更に出来た農作物の一部を家畜の餌にすれば成長を促進して家畜の卵や乳も良く取れるようになるだろう。これらは私がある村で実際に使って効果を確認している」
農耕魔法の説明をすると彼女は食いついた。使い方や注意点、副次的な効果も説明する。
「……凄いわ、これなら食糧問題が一気に解決出来る」
「この魔法があれば少ない人数で広い畑を維持出来る。魔法資質や適性が高い森人ならなおさらだ」
「貴女は私達の種族に魔法を教えた先生なのよね……どうやってこんなに魔法を極めたの?」
私を見つめてくる彼女。
「まあ色々あってな」
そう言うと触れられたくない事だと思ってくれたのかそれ以上の追及をやめ、顎に手をやって考え始める。
「今すぐに始めれば十分に間に合う……クレリアさん。申し訳ないけれど行きますね」
そう言って席を立つ。
「頑張れよ。この場所がどうなるかはお前達次第だろうからな」
そう言うと彼女は頷いて出て行った、これで生活基盤は出来たかな?
それから一年後。
私が教えた農耕魔法によって森人達は周囲の環境を壊さずに安定した食料を得た。
これからどうなるかは分からないがこのままならこの場所に永住出来るかもしれない。
私は一度他の種族の様子を見ようと一度ここを離れる事を伝え、大地人の集結地へ向かう事にした。
大地人の集結地は山間部だった。
彼らはそこまで排他的になっておらず、私が持っていたロドロフとミシャの印が付いた古い武防具や魔道具を見ると完全とは言えなかったが信用はしてくれた。
「俺達も場所を作ろうと色々してるんだが、どうしても場所がねぇんだ。何とかなんねぇか?」
用意してもらった家に来ているのはガンド・ルブラス。大地人達の元締めをしている男だ。
茶色い短髪のぼさぼさ頭でいかつい顔をしている。
農耕魔法を教えた事で完全に信用は出来なくても私の知識と技術は当てに出来ると考えているようで、悩みを言ってくる。
住む場所か……そうだな……。
「時間をくれ。何とかしてみよう」
「おう、期待してるぜ……アンタの知識と技術は信用できるからな」
そう言ってガンドは家を出て行った、さてどんな物を作ろうかな。
「クレリアさんよ。どうするつもりなんだ?」
私はガンドを連れて山のふもとにやってきた私は採掘魔法を使って見せる。
「おお!?」
山肌の岩がくり抜かれていく、あっという間に洞窟が出来上がった。
「大地人でも使える様に詠唱を組んである。これで山脈を切り開きアリの巣の様につなげればいくらでも住む事が出来るし、雨風も関係なくなる」
「おおぉ……」
ガンドは洞窟を見て呻いている、話を聞いてるんだろうか。
「すげぇぜ!クレリアさんよ!それは俺達でも使えるんだよな!?」
私に振り向くガンド。
「お前、私の話を聞いていたか?お前達でも使える様に詠唱を組んだと言っただろう」
「これでいくらでも広げられるぜ!」
そう言って喜ぶガンドだが注意点もある。
「これから注意点を説明する。これを怠ると作業している者が全滅する可能性もある……しっかり聞いて絶対に守れ。いいな?」
「……おう」
そう言うと、「全滅する可能性」に反応したのか真面目な顔になる。聞かないと実際にそうなるかもしれないからな。
それから掘り進める時の注意や空気を通すようにしなければならない事など、注意点をしっかりと伝えた。
「お前……忘れるなよ?」
「仲間の命に係わるっつー事が良く分かった、忘れねぇよ……」
こうして彼ら大地人は住処を山間部や山の中腹、麓に広げ大きくなっていった。
そして一年ほどが過ぎた頃、私は彼らに一時的に別れを告げ獣人達の元に向かった。
私は以前は狼獣人の集落にしか行っていなかったが、町になった元集落には色々な種類の獣人が居た。
私が集結地に行き手助けをしたいと言うと意見が割れる。
「自分達の為に助けを借りるべき」と言う頭脳派の獣人達と「言いたい事は分かるが他の種族の奴の力など借りたく無い」と言う肉体派の獣人だ、分かるなら賛成してくれ。
そしてまあ……どうなったかと言うと……。
「うらららららぁ!」
「あたらねぇ!?」
「しゃあっ!」
「ふんっ!」
「ふっ!」
「くそっ!」
様々な方向からの攻撃を飛び回り、受けて、弾いて、躱す。
結局力を見せろと言う事になり戦う事になった、こいつらは変わっていない。
最初は一対一で戦っていたのだが私の強さを見た獣人達が「自分とも戦え」と沢山挑んできた為、面倒になった私が「全員まとめてかかって来い」と言った所、私対獣人軍団になった。
「どうした!これだけいて私一人倒せんのか!?」
私も楽しくなり、獣人達を煽る。すると更に獣人の数と勢いが増した。
「なめんなあああぁぁぁぁっ!!」
声を上げた一人の獣人、二足歩行にした熊を引き締めたような姿の男。
獣人達の長である熊の獣人、ベキア・ルトロムが突っ込んでくる。
「来い」
「うぉらああぁぁぁぁ!!」
隙の無い素早く破壊力のある突きを繰り出してくるベキア、私はその腕を土台に逆立ちをしてそのまま回転し、後頭部に膝を入れた。
「っが!うおおおぁぁぁ!」
私のいた場所にもう片方の腕を振るが私は彼を蹴って離れる。
「逃がさねぇぞ!」
着地を狙って他の獣人も殺到してくる。
私は獣人の一人が空中で繰り出してきた蹴りを受けてボールの様に飛んで行き、木の上に着地する。
「何とも無いな」
首をかしげながらそう言うと獣人達が再び飛びかかって来る、それから私と獣人達の戦いは長く続いた。
「いやぁ完敗だ!認めるしかないじゃないか!」
戦闘以外では意外とまともなベキアが言う。
「認めてくれたようで何よりだ」
今はベキアの家で二人で話をしている、あの後獣人全員が疲労で倒れるまで戦ったのだ。
「……クレリアさん。あんたは自分を森人とのハーフだって言ったけど……」
ベキアは真剣な目で私を見つめる。
「あの強さはそんなんじゃ説明出来ないな。あんた……一体何者なんだ?」
多少やりすぎたか。
「私は皆と同じこの世界に住む一つの存在だよ。多少違うだけだ」
「はぁ……深くは聞かないよ。その気になれば俺達全員を殺せたはずだしね」
どこであっても数が集まれば食料の問題は起こるようで、頭脳担当の獣人から食料の補充について知恵を貸して欲しいと言われた。
「……素晴らしい魔法ですな……我々にも使えるのですね?」
獣人達から声が上がる。
「獣人でも使える様に調整している、問題無いはずだ」
彼らに農耕魔法を教えると他の種族同様その効果にすぐに食いついた。
「戦闘が苦手な者達に覚えて貰いましょうか」
「そうですな。戦士達には戦う事に集中して貰いたい、内政は我々が支えなければ」
こうして獣人達にも農耕魔法が広まる事になった。
それから一年と少しかかって彼らの食糧事情が安定すると、私は一時的に離れる事を告げてウルグラーデに帰った。
各種族の所に約一年ずつ、合計約三年程を過ごして私はウルグラーデに帰って来た。
これから国に至るのか、分裂してしまうのか、消えてしまうのか……どうなるかは分からないが楽しみにしていよう。
彼らに頼んで通貨を統一硬貨のままにしたのは正解だった、国ごとに変わると私が面倒だからな。
私は自分の屋敷に戻りソファに座る。少しゆっくりしたらモー乳販売店に行こう。
それから私は五年程、三種族の町とウルグラーデを往復して過ごした。
約五年程私が各種族の町とウルグラーデを往復している間に、各種族の町は都市を超えて急速に発展していた。
ある日、私はいつもの様に森人達の都市に来ていた。
周囲の地域には農地や畜産場が広がり各町の道も整備され安全を維持出来るように頑張っているようだ。
更に治安維持と外敵からの防衛の為の治安維持隊と警備隊が作られた。
この辺りの名前はウルグラーデやルセリア神王国と同じになった。
他の二種族も同じ物を作っている。
他の種族が攻めて来る事も三種族達は考えていて、軍や防衛の為の建物も作っているみたいだな。
「こんにちはクレリアさん」
私はやって来たエルフィをソファに誘導する。
「わざわざ来るとは何かあったのか?」
貰った家でモー乳を飲んでいたらエルフィが会いに来た。
「改めてお礼を言いたかったのよ」
紅茶を用意しながら聞く。
「私の暇潰しみたいな物だよ」
「それでもよ……ありがとうございますクレリアさん。私達に知恵と魔法と技術を与えてくれて」
紅茶をエルフィに出し、座った所で彼女は頭を下げた。
「知っている事だけで力になれない分野も多くあったと思うが……その感謝は貰っておこう」
彼女は頭を上げて微笑む。
「私は国を作ろうと思います」
「そうか」
真剣な表情の彼女を見る。
「一緒に名前を考えてくれませんか?」
「私にセンスを期待されても困る」
私はそう言ってモー乳を飲む。
「私もある訳では無いわよ」
エルフィが苦笑いを浮かべた。
その後二人で話し合い、国の中心である世界樹のあるこの都市をユグラドと名付け「森林国家ユグラド」とする事に決まった。
私は大地人の住処にやって来た。
山間部や山の中腹、ふもとに都市は拡大し、周囲にも大小の町が出来た。周囲の鉱石資源もあり順調に彼らの住処は広がって行った。
治安の維持や防衛のための組織や制度も完成した。農耕魔法によって畑と家畜も数を増やし、要所には防衛の為の砦が作られた。
「これは?」
私はガンドが渡してきた大きい弓の様な物を見る。今いるのは武器を作っている工房だ。
「これは俺達が開発した魔道弓だ」
「ほう……詳しく聞いても良いのか?」
私は弓を眺める。
「クレリア嬢になら構わねぇよ」
ガンドが言うには大地人は魔法資質や適正が低い者が多く、効果的な遠距離攻撃魔法を使える者が少ない。
それを何とかしようと開発したのが魔道武器で、魔道弓と言うらしい。
魔道武器は主に彼らが苦手な遠距離の戦闘に使う物が考えられており、これが第一弾なんだとか。
魔道具の技術を流用して今まで人の手で行っていた引き絞り、放つという動作を僅かな魔力で自動で行う。
自動化のおかげで大型化を可能にし威力と飛距離、時間当たりの発射数が増加している上に魔力が切れない限り肉体的な疲労をかなり減らして撃つ事が出来る。
「矢は手でセットしなきゃならねぇがそれだけだ、その上接近されても体力は残っているから戦える」
そう言って笑うガンド。
「これは凄いな……武器に魔道具の回路を組み込んで魔法を発動する物はあるがそれを動作の自動化に使うか」
聞けば「なるほど」と思うがその発想が出来るかが問題だ、少なくとも私は今まで考えた事が無かった。
「これは戦いを変えそうだな」
弓をガンドに返す。
「ただ、簡単に作れるもんじゃねぇんだ……量が用意出来ない」
彼は弓を眺めている、量産は難しいか。
「今の所、要所にいくつか配備出来れば良いぐらいか?」
「そうだな……魔道弓は部品が摩耗しない限りずっと使える、数の関係で同時には無理だが交代でずっと撃ち続ける事が出来る」
弓を慎重に収納して戻ってくる彼。
「狙うとすりゃあ……前衛じゃなくて後方に控える魔法使いだろうな」
「命中精度は?」
「良くはねぇな。魔法使いの集団に撃ち込んで誰かに当たればいいくらいか……数が居れば誰かに当たんだろ?」
そう言って彼は笑った、面白い物を見せてもらった、私は礼を言うとウルグラーデに帰った。
後日。再び訪れた時に中心の都市をガンドウと名付ける事、国を作るつもりである事とその国に「魔工国ガンドウ」と名付ける事を聞いた。
久しぶりに私は獣人の都市にやって来た。他の種族の様に農耕や牧畜、治安の維持などの制度が整い各町や村との道と彼ら獣人独特の獣道が作られていた。
獣道とは何だと聞いた所、一見道に見えなくても獣人達はそこを使って行き来する事が出来る道だそうだ。
他の種族にばれないよう移動したり、奇襲したりと色々と使えるらしい。
更に肉体強化魔法も改良を重ねられ、単独での戦闘能力は大きく上がった。
他の種族が彼らと戦うなら相応の装備か人数、効果的な作戦が必要になりそうだ。
「どうかな?皆も大分強くなったよ」
ベキアは私の隣で嬉しそうだ、今私は鍛錬場で戦闘を見ている……鍛錬場で戦う獣人達は確かに良い動きをしている、他の種族とは比べ物にならない。
「油断すると負けるぞ」
そう言うと彼は私を見る。
「あー……油断はしないように言ってはいるけど元々の気質と言うか……中々上手くは行かないよ」
ばつが悪そうな表情をする彼。
「もし大勢や強力な敵と戦う時は頭脳担当の連中と話し合えよ?」
「当然さ、分かってるよ」
彼は胸を張る。
「話し合った事を守る様にも言っておけよ」
「……分かってるよ」
彼は何とも言えない表情になった、頑張れ。
再び訪れた際にいつの間にか都市の一つの名前がカルガになり「獣王国カルガ」と言う国になっていた。
他二種族の都市もさほど間を置かず建国を宣言して国となる。
こうして世界にはルセリア神王国、森林国家ユグラド、魔工国ガンドウ、獣王国カルガの四国が存在する事になった。
他の種族の行動が遅いかも知れませんが、実際にそう(同族を集めて身を守る)考えて行動に移せる者は中々居ないと言う事で。
丁度同じ時期に三種族が国を……と言うのも無理があると思いますが他の種族が集結してると言う噂を聞くなりしてこのままではまずいとそれぞれが危機感を持った……とかそんな感じでどうかよろしくお願いします。