少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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092-01

 特に問題無く初配信を終えた翌日。

 

 プレイするゲームを決める為、事前にマンジュウにお勧めのゲームを送るように募集しておいたのだが、それなりの数が送られて来ていた。

 

 私はその中からプレイするゲームを決め、朝から配信を始める。

 

 「おはよう、人類達」

 

 

 :おはようございますお嬢様

 

 :昨日の今日で早いっすね

 

 :今日は雑談?

 

 

 「今日はゲームをプレイする」

 

 

 :おお!

 

 :何するの?

 

 

 「プレイするのは『ダウンフォール3』だ」

 

 マンジュウで薦める者が多かったからな。

 

 どのようなゲームかは調べていないが、マンジュウでの情報によると広大なオープンワールドで活動するゲームで、続編も出ているらしい。

 

 そして、このゲームの最大の特徴は自由度で、各地で起こる様々な問題を解決する方法も一つでは無いという。

 

 能力次第では全て暴力で解決する事も、話し合いで解決する事も可能なようだ。

 

 更に、全く関わらないという選択も出来るらしい。

 

 

 :良いね!

 

 :4も面白いよ

 

 :自由度の高いゲームだからお嬢の判断が楽しみ

 

 

 「殆どの者は知っているようだが、一応私が知っている範囲で説明しておこう。ダウンフォール3はオープンワールドで、設定された最終クエストをそれなりに自由に活動しながら達成するゲームのようだ」

 

 

 :説明が雑w

 

 :でも大体あってるw

 

 

 「詳しく知りたい者は自分で調べると良い」

 

 

 :確かに調べた方が早いかも知れないけどw

 

 :配信見れば分かるやろ?

 

 

 「では始めよう」

 

 私はそう言ってゲームの画面を出す。

 

 画面の構成は左下にアバターを置き、その上にコメントを表示、そして残りはゲーム画面にした。

 

 ひとまずこれで進め、見にくいようならまた考えよう。

 

 さて……最初はキャラ設定か。

 

 色々と選べるようだがこのままで良いな。

 

 

 :何も変えずに終わっただと!?

 

 :キャラクリで一時間はかかると思ってたのに……

 

 :躊躇無くデフォ選びおったw

 

 :男キャラにしたのか

 

 :ほら、設定上はお嬢様に性別は無いから……

 

 

 ゲームが始まるとまず現在人類を取り巻く環境と世界観の説明が入り、それから自由に動けるようになった。

 

 ふむ、シェルターの様な所で生活しているのか。

 

 その後、しばらくうろついていたが何も起きない。

 

 

 :お嬢様、メニューのクエストを追跡にするとマップとミニマップに目的地が出るよ

 

 :メニューから追跡するんだぞ

 

 

 コメントに多くの助言が寄せられる。

 

 それらのコメントを見た後、メニューからクエストを追跡に切り替えた。

 

 「教えてくれてありがとう。しかし、このゲームは随分と親切だな」

 

 以前触れたゲームにはあまりこういった機能は無かったような気がする。

 

 私はマップに表示された目的地を確認しながら礼を言う。

 

 

 :どういたしまして

 

 :確かに最近のゲームは親切だよな

 

 :昔はヒント無しで探し回ったもんだけど

 

 :あれ?お嬢って俺達と同年代?

 

 :数十億年生きてる超越者だから知ってて当然やろ?

 

 :あっ……そっすね!

 

 

 コメントは目に入っているが好きにさせておいてクエストを始める。

 

 最初のクエストなだけに簡単だったが、最後に主人公に手を出して来た幼馴染の女をどうするかの選択があった。

 

 

 :早速選択肢だ!

 

 :慰謝料を求めるのか、許すのか、殺すのか……さあどうする?

 

 

 私は即座に「殺す」を選ぶ。

 

 

 :全く迷わずに殺しおったw

 

 :まあ、相手も殺す気で攻撃して来たし……

 

 :ちなみに、金を貰った後に殺す事も出来るし、許した後に殺す事も出来る

 

 :貰える金も死体から取れるから、殺すなら意味は無いけどな

 

 :意味あるよ、貰った後でも死体に金や装備がまた入ってる事があるから

 

 

 なるほど。

 

 「そのような事も出来るのか、覚えておこう」

 

 私はそう言いながら死体から金を漁る。

 

 このゲームでは金が重要だとコメントに書いてあったからな。

 

 

 :こわっw

 

 :慈悲は無い!

 

 :殺せば解決するだろ?

 

 :クエストに出て来るNPCの大半が殺されたり……しないよね?

 

 

 ゲームではあるが、それでも今の所は意味も無く殺す気は無いな。

 

 

 

 

 

 

 ストーリーを進めると主人公はシェルターを追放され、町を探す事になった。

 

 その後、マップのクエスト追跡マーカーの方へ歩いていると男のNPCが駆け寄って来て親し気に話しかけて来た。

 

 

 :あっ……このイベントは……

 

 :早いな

 

 :うざい奴来たw

 

 

 話しかけて来た男が話している所に、新しく3人の男が現れる。

 

 借金の取り立てに来たらしいが、主人公に話しかけて来た男は「俺に金は無いがこいつが払う」と言い始めた。

 

 選択肢で「関係無い」と答えると、男達は持ち物を奪おうと襲い掛かって来た。

 

 そのまま戦闘へ入り、私は拳銃などの戦利品を得た。

 

 

 :ランダムイベントなんだよなこれ

 

 :能力高いと説得出来たり相手がビビッて引いたりするけど、初期に来ると戦闘にしかならない

 

 :逃げる事も出来るけどね

 

 :どっちにしてもこいつらは弱い

 

 :お嬢様を巻き込んだ男はどうなるのか……

 

 

 さて、私を利用しようとした報いを受けて貰おうか。

 

 私は武器を構えて男に近づく。

 

 

 :武器構えて……あっ

 

 :もうあいつの未来が見えたんだけど

 

 :結構な数のプレイヤーが同じ事してるから普通だろ

 

 

 私は言い訳をする男を一度許し、金を貰った後に殺して持ち物を漁る。

 

 すると、その中に十分に借金を返せるだけの金があった。

 

 「金があるのに普通に借金を返済しなかったのか」

 

 そう言うと、コメントが流れる。

 

 

 :返したら金が無くなるから……

 

 :返さなくて平気になれば全部使えるし

 

 :身代わりを探してたんだぞ

 

 :お嬢様が奴隷にされればいったんは引くからな

 

 

 「なるほど、それで私を利用しようとした訳だ」

 

 

 :そういうこと

 

 :こいつはかなりのプレイヤーが殺してる

 

 

 「当然だな。私は私を利用する者を許す気は無い」

 

 

 :まあ、利用されて許す人は少ないよね

 

 :ちなみに、許すとまた出て来て同じ事繰り返すぞ

 

 :やった事無いから知らないけど、マジかw

 

 :殺さないと何度でも来るから、最終的に殆どのプレイヤーが殺してるNPC

 

 

 「余計な事をする前に処理出来たな、では先に進むとしよう」

 

 私は物資を全て回収すると、目的地に向かって移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 野生動物を処理しながら町に到着した私はクエストをこなしながらストーリーを進めたのだが、ここで問題が起きる。

 

 町に居る実力主義者達が現在の副町長を含む多くの人質を取り、町の最重要施設である浄化槽と小型核融合炉のアクセス権を要求して来たのだ。

 

 クエストでそれなりに面識のあった町長から解決を頼まれた私は、交渉で報酬を少し増やしてから問題解決に向けて動き出した。

 

 

 :これは悩んだな

 

 :解決も出来るけど、こっそり向こうについて一緒に乗っ取る事も出来るよ

 

 :これって無視するとどうなるの?

 

 :ランダムでどっちかが勝つ

 

 

 全員同じ部屋に立てこもっている事を確認した私はすぐに方針を決めた。

 

 このゲームがどれだけ自由に行動出来るか分からないが、駄目なら駄目なりに話が進むだろう。

 

 そう考え、窓から複数の手榴弾を投げ込んだ。

 

 

 :ふぁっ!?

 

 :やりおったw

 

 

 直後に爆発音が響き犯人達と人質達は全滅。

 

 クエストクリアとなった。

 

 「数人残る事も想定していたが、上手く行ったな」

 

 

 :クリアになってて草

 

 :超越者に人の心など無い

 

 :これで良いのかw

 

 :人の心は無いのかって言おうとしたけど人じゃなかったわ

 

 

 「人質に友人が居れば慎重に考え行動したと思うが、知らない者達だったからな」

 

 

 :気持ちは分かる

 

 :知らん相手の為に命はかけないよな

 

 :一応、クエストで一度話してる奴もいたぞ

 

 :俺は助けた、ゲームの中でなら命を懸けられるぜ!

 

 

 「この主人公の実力では即座に鎮圧する事も不可能だっただろう。町長も解決方法は問わないと言っていたし、この方法が一番安全で早いと思う」

 

 そう言いながら町長に報告すると、微妙な反応が返って来た。

 

 

 :町長は「助ける方法」を問わなかっただけなんじゃないかなぁ……

 

 :犯人ごと爆破するとは思ってなかったやろな

 

 :町長の失敗は……お嬢様が人質を助けると思っていた事だ

 

 

 「問題無く解決したので次のクエストに向かうか」

 

 

 :ソウデスネ

 

 :……問題無い!

 

 :問題無いと言え、という圧を感じる

 

 

 

 

 

 

 次の目的に進んでいると、武装した人間達が一組の男女を捕らえている現場に通りかかった。

 

 中々良さそうな装備だ、出来れば貰っておきたい。

 

 こちらにはハンドガンしか無いが、隠れながら弱点である頭部だけを狙えばどうにかなるだろう。

 

 

 :まさか……

 

 :やるのか?結構強いぞ

 

 :お嬢様が人助けをなさるとは……感激でございます。

 

 :誰だお前w

 

 

 現実や一部のゲームでは距離があればあるほど弾丸が落下する。

 

 しかし、このゲームの弾丸はどれだけ離れていようと落ちる事無く、照準した所に着弾しているようだ。

 

 ならば命中させる事は自体は問題無い。

 

 問題は頭に撃ち込んでも全く体力が減らなかった時だが、その時は後退しながら削ってみよう。

 

 私はスニーク状態で照準を頭部に合わせ、連射する。

 

 ……いけるな。

 

 不意打ちで五発撃ちこみ一人殺した私は、相手に発見される前に物陰へと隠れた。

 

 

 :一人やった!

 

 :おい、あの距離で全弾頭に当てたぞw

 

 :白狼見て能力高いのは知ってたけど、やっぱすげぇな

 

 

 警戒している相手を隠密状態を維持したまま一人ずつ殺して行き、やがて最後の一人が死んだ。

 

 

 :プロかよw

 

 :結局警戒はされたけど見つからずに全員やったなw

 

 

 私は捕らえられた男女を放置し、死体から装備を回収して主人公の装備を整える。

 

 

 :人助けかと思ったら装備が欲しいだけだった!?

 

 :そんな事だろうと思ってたよw

 

 :このままでは先代に申し訳が……。

 

 :なんか執事っぽい奴が湧いてるぞw

 

 

 装備を整えた私が捕らえられていた男女を開放すると感謝され「お礼をしたいからいつか来て欲しい」と主人公に家の場所を教えてから去って行った。

 

 

 


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