バーチャルニュウチューバー情報交換スレ
239:名無しさん
おい!これ見ろ!
【お嬢様の正体】
240:名無しさん
ん?何があった?
241:名無しさん
お嬢様がクレリアだった!
242:名無しさん
は?
243:名無しさん
マジ!?
244:名無しさん
これちょっと前にテレビで放送されたブイライブ特集の時の映像だよな?
よくメールの内容に気が付いたな
245:名無しさん
声が似てると思ってたんだよ!
246:名無しさん
似てる所か本人じゃねーか!!
247:名無しさん
はっきり確認出来るし確定じゃん!
248:名無しさん
これどうなるん?
黙ってたって事は隠しておくつもりだったんじゃないの?
249:名無しさん
この動画の再生回数がえらい事になってるし、他のサイトでもきっと取り上げられてるよな
250:名無しさん
ヤバくね?
251:名無しさん
一度広まったらもう止まらないだろ……
引退してからずっと消息が分からなかった伝説のアイドルだし情報が全く無いからみんな黙ってただけで絶対に気になってるはず
世界中のファンが食いつくだろうな
252:名無しさん
大丈夫なのかな?
253:名無しさん
正直不味いと思うよ?
今でも彼女のファンは多いし
254:名無しさん
これもしかするとお嬢様の活動が終わるぞ
255:名無しさん
え?何で!?
256:名無しさん
恐らくファンの多くがお嬢様チャンネルのメンバーになるだろうし配信を見る
俺も見るしお前らも見るだろ?
でも世界中に俺達を含め彼女のファンがどれだけいると思う?
それが一斉に動くんだぞ
257:名無しさん
ああ……そういう事か
258:名無しさん
どういう事?
259:名無しさん
集中するファンのアクセスにニュウチューブが耐えられないんだよ
クレリアが所属してたフラワープロダクションの公式チャンネルは登録数が2億を超えてるけど、実際のファン数がその程度じゃないのは分かってるし
そんな数に対応出来ないだろ
260:名無しさん
おぉぅ……
261:名無しさん
やべぇ……
262:名無しさん
住んでる地域や生活があるから同時に全員って訳じゃないだろうけど、それでもどれだけの数になるか……
公式チャンネルの1%だけだとしても二百万
だけどそんな数でおさまる訳が無いし、きっと争うようにアクセスする
無理だと思う
263:名無しさん
駄目じゃん……
264:名無しさん
これ投稿した奴もコメントからするとファンなんだろうけど
彼女の事を考えるなら何もしない方が良かった
まあこいつがやらなくても他の誰かがやってたと思うけど
265:名無しさん
もうどうしようもないと思うけどブイライブにこの事を連絡する
266:名無しさん
手遅れかも知れないけどその方が良いね
267:名無しさん
私もメールした
268:名無しさん
頼む早く気づいてくれ
269:名無しさん
なあ……ライブみたいに事前に別な所でチケットを購入して、その人だけが配信に入れるようにしたらどうかな?
それでサーバーを1000万人まで耐えられるようにするとか
270:名無しさん
いけるかも知れないけどどれだけ手間がかかるか分からんぞ
後サーバーの増強は出来るだろうけど無駄が多すぎる
271:名無しさん
クレリアは月下グループの令嬢だし、やろうと思えば個人で出来そうじゃない?
お嬢様専用のサーバーとか
272:名無しさん
世界最大のグループだし本人も相当稼いでるし……意外と余裕なのでは?
273:名無しさん
あれ?なんか行ける気がして来たぞ?
274:名無しさん
彼女がバーチャルニュウチューバーを続けたいと思ってなかったら多分引退して終わりだぞ……
ブイライブ社内にある自分のデスクで資料をまとめていると、大声で声がかけられた。
「瞳さん!」
振り向くと、顔をこわばらせた後輩が息を切らしている。
「どうしたの?」
「不味い事になってます……これ見て下さい」
そう小声で言う彼女が、スマホを見せて来る。
「え……?何よこれ……」
彼女が見せて来たのはテレビのニュース速報だった、そこには「伝説のアイドルバーチャルニュウチューバーへ!」というテロップが出ていた。
何で……何処から!?
いつかはバレると思っていたけど、これは……。
「瞳さん!どうしますか!?」
その声で我に返る。
……やれるだけの事はやらないと!
「各部署に連絡、緊急会議よ。社長にもすぐ伝えて!」
「はっ……はい!」
他の芸能人なら何も問題無かった。
だけど彼女は違う、人気の規模とファンの数が違い過ぎる。
昔「彼女に関する事は大抵大事になっていた」という説明を何処かで見たわね……。
私はそんな事を思い出しながら走った。
現在、私は千穂の家で千穂、美琴と共にくつろいでいる。
「クレリアちゃん、聞きたい事があるんだけど……」
テレビを見ていると、千穂が声をかけて来る。
「何だ?」
私は千穂の方へ振り返る。
「……クレリアちゃんってバーチャルニュウチューバーやってるよね」
言い方からするともう分かっているようだな。
美琴はテレビに集中していて私達の会話を聞いていない。
「やっている」
私は千穂にそう答える。
「やっぱり。たまたま見たんだけどあの声と雰囲気で……」
「あっ!?」
千穂が話している途中で、突然美琴が声を上げる。
《番組の途中ですがここでニュースをお伝えします》
美琴とテレビの声に反応したのか、千穂が美琴へ視線を移す。
千穂と同様に私が彼女の方へ目を向けると、彼女はテレビを見つめている。
テレビはつい先ほどまで旅番組が放送されていたはずだが、ニュース番組に変わり私の事が報道されていた。
《元アイドルのクレリアさんがバーチャルニュウチューバーとしてデビューしていた事が判明しました。クレリアさんは人類最高のアイドルと呼ばれ全世界に広く知られていますが、引退後から現在まで……》
こうして報道されているという事は……何か決定的な証拠が漏れたか?
噂程度でここまでするとは思えないからな。
「クレリアちゃん……これ」
千穂は少し不安そうな表情をしている。
「ねえ、これって本当?」
美琴が私の方を向いて言う。
「本当だ」
「やっぱり」
「美琴も気が付いていたのか」
「私が気が付いたのは最近だけどね」
美琴はそう答えながら頬杖をつく。
「今日は確認しようと思ってたんだけど、聞いた直後にこうなるとは思って無かったなぁ……」
千穂はそう言いながらニュースを見ている。
「大丈夫なのこれ?」
心配そうな表情を浮かべる美琴が聞いて来る。
「知られる事自体は問題無い」
「そう……それなら良いけど」
彼女は私の答えを聞いてほっとした表情を見せた。
「でも、ここで知られたのは意外だったんじゃない?」
千穂が私に尋ねて来る。
「そうだな。私はまだ知られる事は無いと思っていたが……恐らく何処かから決定的な証拠が漏れたのだろう」
故意かどうかは分からないが、恐らくブイライブ内だろうな。
そう考えながら会話を続ける。
「しかし、この程度の事がここまで大きく報道されるとは思っていなかったな」
引退した元アイドルがバーチャルニュウチューバーになっただけで緊急放送を行うとは。
私の言葉を聞いた千穂と美琴が、驚いた表情でこちらを見た。
「クレリアちゃん?……貴女、自分がどれだけ影響力を持っているかを知らない訳じゃないわよね?」
美琴が少し責める様な口調で言って来た。
「確かに活動中は有名になったが、引退してもう十数年経っている。人類にとっての十数年はかなりの時間だろう?」
今までも様々な流行があったが全て数年以内に廃れて行った、人気があったとはいえ十年以上経った私の影響もかなり減っている事だろう。
「はぁ……クレリアちゃん慎重だし、頭も良い筈なのに……何で時々こうなるんだろう?」
千穂が頭に手を当て、溜息を吐いて言う。
「意外と力業で解決していた事も多かったと思うけど……まあそれは置いといて。クレリアちゃん?貴女は全く気にしてなかったんだろうけど、まだまだ『アイドルクレリア』の人気は高いままなのよ?」
美琴が諭すように声をかけて来る。
「テレビで私の歌が取り上げられる回数は減っているし、様々なランキングからも消えているぞ?」
これは娘や友人と見ているから間違いないはずだ。
「テレビで取り上げられる回数が減っているのは今活動している人達をないがしろにしない為。後、ランキングに無いのは殿堂入りしているからよ」
美琴は私にそう断言した。
「正直、私はクレリアちゃんの歌を放送する必要は無いと思ってるけどね」
続いた千穂の言葉に美琴が頷いている。
放送する必要が無い、か。
「何故だか分かる?」
千穂が私に問いかける。
「現在も高い知名度があるからか」
恐らくこれが答えだろう。
二人の言った事が正しいのならば、私の歌は現在も多くの人類に聴かれているという事だからな。
私の言葉を聞いて、美琴が話し始めた。
「その通りよ。ニュウチューブを始めとした色々な動画サイトにはクレリアちゃんの映像や歌を使った動画があるし、今も貴女の歌を聞いてる人は多いの。そして、貴女の事を知らなかった世代からもそれらに触れてファンになる子が出て来る。実際に健太と葉子ちゃんも私達が聞いていた歌を耳にして貴女のファンになったのよ?」
すると、今度は千穂が口を開く。
「後は……そうだ。音楽配信サービスにはクレリアちゃん専用コーナーがトップにあって今も売れ続けてるよ?」
「クレリアちゃん」
突然、美琴が真剣な表情で私を見て話し出す。
「……貴女、自分の人気の高さを甘く見過ぎてる。十数年で消えるような人気なら『人類史上最高のアイドル』なんて言われる訳が無いのよ。本当にクレリアちゃんが見向きもされなくなるには……人類から忘れられるにはまだまだ時間が必要だわ」
「そうか、私の考えが甘かったな」
美琴の話を聞き、私は自分の考えが甘かった事を認めた。
「前から分かってたけど、クレリアちゃんって考える時は必要以上に考えるけど気にしない時は本当に気にしないよね……」
千穂がそう言いながら私を見ている。
彼女達に対して必要以上に思考を読む気は無いので正確には分からないが……恐らく感心と呆れが半々、といった所だろうか。
恐らく、これからも私は守る対象には必要以上に手を回し、興味の無い事にはあまり関わらないのだろうな。
さて、考えを戻そう。
お嬢様がアイドルクレリアだと知られた訳だが、これからどうなるだろうか。
私はそう思いながら二人の会話を聞く。
「これ……また騒ぎになる気がするんだよね」
千穂が美琴を見て暗い声を出す。
「そうね、お嬢様があの『クレリア』だと知ってファンが……世間が黙っている訳が無いわ。クレリアちゃんがどうにかなるなんて事は絶対無いと思うけど、面倒な事にはなりそうよね」
そう言う美琴の声も少し暗い。
「お前達には何も問題は無いから気にするな」
アイドルとしてデビューした時や引退後に友人達には迷惑をかけたので、現在はそういった事に対する対策はしてある。
「その辺りはクレリアちゃんを信じてるから心配してないよ?」
「私達が気になっているのはお嬢様としての活動の方、ブイライブとニュウチューブの事よ」
「うん……もう『お嬢様』として活動するのは難しいかも……」
二人からそう言われて私は考える。
……確かフラワープロダクションの公式チャンネルの登録者数は2億程だったはず。
私のファンがその登録者の1%だとすると約二百万人、その中の半数が実際に行動を起こさなかったとして約百万人。
更にその内の四分の一が睡眠、仕事、学業などでアクセスしないと考えてもまだ二十五万人ほどいる。
この数ならば問題無さそうだが、実際どうなるかは分からない。
もっと多い可能性もあるからな。
もし騒ぎにならなかったり、なったとしてもニュウチューブに問題が無いのならそのまま活動を続ければいい。
配信が不可能になる状態になった場合は引退して数百年程時間を空け、私の事が完全に忘れられている事を確認してから再開しよう。
その場合、バーチャルニュウチューバーという文化自体が消えている可能性もあるが……その時はまた別の何かがあるだろう。
そんな事を考えながら、私は二人と会話を続けた。