少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 現在の各国の文化と技術をしっかりと考えていないのでおかしい所があるかもしれません。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。







021-01

 

 各新興国にギルド商会が出来てから四年が経った。

 

 森林国家ユグラド、魔工国ガンドウ、獣王国カルガの三国は今も成長を続けている。

 

 三国はもう国として完全に形になった。

 

 これからは領地を広げるのかこのまま維持するのかは分からないが、もう私が何かする事は無くなるだろう。

 

 そう思いながら休憩がてら首都であるカルガの中を散策していると、大通りで並んだ大勢の獣人が都市の外へと進んで行くのが見えた。

 

 あれだけの数を集めるとは、何かするのか?

 

 興味を持った私はベキアの所に向かい話を聞いてみる事にした。

 

 

 

 

 

 

 「それは開拓部隊の準備だよ」

 

 ベキアは私の正面のソファに座って言う。

 

 「森を切り開いて村にするのか?」

 

 「ああ、そろそろ領地を広げようと思ってね」

 

 「簡単に出来るのか?」

 

 彼は考えるそぶりを見せる。

 

 「簡単ではないかな。森の奥を切り開いて安全に過ごせて自給出来るだけの拠点を作るのは意外と大変だよ」 

 

 「それまでは野宿の様な物か」

 

 「獣人は村の場所を稀に変えるから、慣れてはいるよ……きっと周囲の資源を取り尽くさないように自然と習慣になって行ったんだと俺は思ってる」

 

 彼は大きい木のコップで水を飲む、私も用意された紅茶を飲んだ。

 

 「食料を自分達で作る事で移動する必要も無くなった。ギルド商会の事もある……クレリアには返しきれない恩を感じてる」

 

 彼は私を見る。

 

 「この国に興味がなければ見捨てていたかもな」

 

 「理由はどうであっても俺達は実際に救われた」

 

 そう言った彼に私は僅かに笑う。

 

 「好きに思っていればいい」

 

 「そうさせてもらうよ」

 

 そう言って彼は笑った……だが私はその気にならなければ本当に見捨てただろう。

 

 「所で……その開拓、私も行って良いか?」

 

 「それは構わないけどな……」

 

 言葉に詰まる。

 

 「何かあるのか?」

 

 「散々世話になって開拓まで手伝って貰うのはな……俺達の気持ちの問題があるんだ」

 

 彼にしては珍しく言い淀んでいるな。

 

 「何が言いたいんだ?」

 

 「出来るだけ助けるのは最低限にして欲しいんだ」

 

 「私がやれば早いぞ?」

 

 「だから俺達の気持ちの問題なのさ、これ以上借りを増やしたくないんだよ」

 

 両手を組み、私を見つめる。

 

 「……分かった出来るだけついて行くだけにしよう」

 

 「ありがとう、頼むよ」

 

 「場合によっては気にせず手を出すからな?」

 

 そう言うと彼は頷いた。

 

 私がこうやって提案を聞いて動くのは彼らを気に入っている証拠かもしれない。

 

 気に入らない者の言う事など私は聞かないからな。

 

 それに誰かの頼みを聞いて助けるのも中々楽しいと感じているのも確かだ。

 

 こうして私は獣王国カルガの開拓部隊に、彼らの仕事を見届けると言う名目でついて行く事になった。

 

 

 

 

 

 

 部隊は村を作る為の防衛や耕作など目的毎に分かれていて、それらをまとめて一つの開拓部隊として送っていると聞いた。

 

 更に交代でずっと作業をする事で無防備になる時間を無くし、拠点の素早い構築を目指すらしい。

 

 私は大まかに聞いた内容を思い出しながら部隊の後方で歩いていた。

 

 馬車などは道が悪すぎて入れない、その代わりマジックボックスを覚えている者が集められている。

 

 マジックボックス持ちはまだまだ貴重だ、容量が大きければその重要性は一気に上がる、どの場所でも優遇されるだろう。

 

 恐らく防御の硬い部隊の中央付近で守られているだろう。ある程度安全を確保して本国との行き来が可能になるまでは現地でどうにかしなければならない。

 

 様々な物資を保管出来る彼らの存在は部隊の生命線ともいえる。

 

 そして私は周囲からどうしていいか分からないような目が向けられている。

 

 わざわざ名を広めている訳では無いから国内にも私を知らない者は大勢いる、獣人では無い……けれど部隊の上の者は特に何も言わない。

 

 私がどういった立ち位置なのか分からないのかもしれないな。

 

 「少し良いか?」

 

 私は移動して部隊の隊長に声をかける。流石に各部隊の隊長などのまとめ役にはベキアが私の同行を認めていると伝えられている。

 

 「何でしょうか?」

 

 「目的地に到着する迄の時間はどれ位かかるか分かるか?」 

 

 隊長は少し考える仕草をした後答えてくれた。

 

 「上手く行けば一週間ほどだと思います」

 

 「上手く行けばか」

 

 「はい。道中の下調べはしていますが、魔物の領域は何があるかわかりませんから」

 

 彼は真面目な声で言う、流石に良い人材を集めているな。

 

 

 

 

 

 

 初日は小型の獣などが来た程度で終わった。隊はそれぞれに野営をして交代で見張りをする、全員に負担が分散するように考えているようだな。

 

 私も割り振られた野営で食事をする。しかし道中は木が無く、馬車は無理でも人は通れる様になっていたな。

 

 その事を訪ねてみると、前々から下見を行い部隊を送る為に軽く木を伐採して迷う事が無いように経路を作っていたようだ。

 

 本格的な整地は拠点を作って安定してからすると言う。

 

 それも含めるとかなり以前からの計画なのか。

 

 周囲では隊員が作業をこなしている。ベキアも良くここまで練度を上げたな、暴走や勝手な行動をする気配が殆ど無い。

 

 開拓部隊だから特に優秀なのだとは思う。

 

 魔物の縄張りの真っただ中でそんな事をしたら被害が大きそうだしな、人員には気を遣うだろう。

 

 「そろそろお休みください」

 

 私のそばに歩み寄りながら隊長が促してくる、ここは大人しく寝た振りをしておくかな。

 

 「分かった、休ませてもらうよ」

 

 焚火の周囲に大き目の仮設テントが並ぶ。

 

 私は女性扱いなので女性用の物に入る、薄いベッドロールの上に寝転び渡されていたマントをかける。

 

 寝る事が無い私は目を閉じ、周囲の気配を探りながら時間をつぶした。

 

 一度魔物が近づいて来たのを感じたがすぐに離れて行った。

 

 

 

 

 

 

 明け方に私は魔物が群れで向かって来ているのを感じた。

 

 まだ遠いが誰も気が付かないようならベキアには悪いが教えるか。

 

 「魔物だ!戦闘準備!」

 

 魔物がだいぶ野営地に迫った時、甲高い音と叫ぶ声が聞こえた。

 

 周囲で寝ていた女性隊員が飛び起き隣に置いてある装備を付け始める。

 

 取り合えず様子を見に行こうと外に出ようとすると、隊員に止められてしまった。

 

 「外に出ても良いけど焚火の辺りから離れないでね!」

 

 そう言って飛び出していく隊員達、外に出ると防衛や治療の準備など皆忙しそうに動いている。

 

 何かしても良いが……出来るだけ手を貸さない約束だしな。

 

 程なく魔物は討伐された。魔物達の死体は部隊の補給物資になり治療と食事をした後、野営地を解体して移動が始まる。

 

 

 

 

 

 

 最後尾を移動中、頭上に果実が生っているのを見つけた。

 

 風魔法で果実を切って落とす。

 

 落ちてくる果実を水魔法で受け止めて洗い、風魔法で皮をむく。

 

 「……どうした?食べるか?」

 

 気が付けば隣にいる隊員が私を見ていた、私は風魔法で切り分けようとした。

 

 「……いえ、貴女が食べて下さい」

 

 「そうか」

 

 私は切り分けるのを止めて果実に噛みついた。

 

 酸っぱいが甘みもある、みずみずしくて爽やかな味と言えるかも知れない。私が知らない美味しい物もまだ森にあるんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 二日目、三日目は多少の魔物の邪魔はあったが特に問題無く進んだ。

 

 そして四日目、昼にはまだ少しある時間に森の木々の上に何かが集まって来ているのを感じた。

 

 上を取られると不利だ、これは少し言っておくか。

 

 「ちょっといいか?」

 

 私は隊長の所へ行き声をかける。

 

 「何でしょうか?」

 

 「森の木の上に何かが集まって来ている、大型の生き物では無いが数がそれなりに居るぞ」

 

 そう言うと隊長の顔が引き締まった。すぐに各隊に連絡が行き警戒状態に移行し彼らも集まっていた存在を発見した。

 

 小型の魔物で、長い手足と尻尾で森の中を移動し油断している獲物に上から集団で襲い掛かるようだ。

 

 隊が警戒し始めると諦めたのか散って行くのを感じる。

 

 「もう大丈夫だ、奴らは散って行った」 

 

 「ありがとうございますクレリアさん」

 

 隊長が礼を言ってくる。

 

 「よく私が言った事をすぐ信じて行動に移したな?」

 

 彼の方を見ると彼も私を見た。

 

 「上からもしもあなたが何かを警告した時は絶対に信じて即行動するように言われています……その言葉は間違っていませんでした」

 

 そう言って一礼し去って行った、私が必ず口を出すと読んでいたのかな。

 

 その後、散発的に襲い掛かってくる魔物達を物資にしながら進み、目的地に到着したのは出発してから九日目の昼前だった。

 

 途中から時間は気にしていなかったが予定より遅いな。

 

 

 

 

 

 

 到着した開拓部隊は即座にそれぞれの行動を始めたようだ、詳しく聞いていないがみんな忙しく動き回っている。

 

 私は特に何もせず予定地の中をうろついていたが、声がかかる。

 

 「すいませんが到着したとはいえ周囲の安全は保障できません。部隊の中心にいて下さい」

 

 一人の長身の女性隊員が私に話しかけてくる。それに答える前に両手で箱を抱えた短身の女性隊員が言う。

 

 「彼女は大丈夫だ、魔物なんかに負けるような人じゃない」

 

 今度から大勢に紛れ込む時は全員に通達して貰おうかな、お互いに手間だ。

 

 「しかし危険では?」

 

 長身女性隊員が短身女性隊員に言う。

 

 「彼女は例の戦いの人だぞ」

 

 「えっ?彼女が?」

 

 長身女性隊員が私を見る。

 

 「例の戦いというと、戦士達との集団戦の事か?」 

 

 私が聞くと短身女性隊員が私の方を向いて言う。

 

 「はい。私は見ていました……あの時の貴女のとてつもない強さは今もはっきりと覚えています」

 

 「失礼しました、ご自由にどうぞ」

 

 長身女性隊員がそう言いながら軽く頭を下げ、去っていく。 

 

 「気を付けてな」

 

 「はい。そちらもお気を付けて」

 

 私の言葉に返して短身女性隊員は目礼をし、仕事に戻って行く。

 

 その後うろついていたが特に興味を引くような物も無く、私は結局焚火の前で座ったまま動き回る隊員達を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 仮設の拠点を作っても安全には程遠い。

 

 ここからは交代しながら昼夜問わず拠点の構築、周囲の安全確保、樹木の伐採と資材の確保、農地の作成など多方面にやるべき事は多いらしく、まだまだこれからだという事を聞いた。

 

 到着した日の夜。交代要員はすでに就寝し、あちこちに焚火と松明が用意され、場所によっては明かりの魔法もかかっている。

 

 昼間の内に広げた土地は僅かだったがぽっかり空いた空から差し込む月明りが周囲を照らしている。

 

 木々を伐採して月明りが届く場所を増やせればそれだけでもかなり違いそうだ。

 

 周囲からは作業の音に混じって何かの鳴き声らしき様々な音が聞こえる。

 

 私は夜の見張りに入れてもらい周囲の気配を探りながら魔法を使い手元で色々とやっていた。

 

 水球を出したり凍らせたり、炎で文字を書いたり、土で色々な物を作ってみたり、風で葉っぱを自在に動かしたり……遊びや暇潰しの様に見えても行う内容の難易度を上げれば魔法の訓練になる。

 

 水氷土火風が交じりあった球体を作り出してみる。これが一番難易度が高いかも知れない、それそれの干渉を防ぎながら完璧に制御しないと崩壊する。

 

 ……ん?

 

 曇って来たと思えば僅かに雨が降って来た。

 

 私は雨の日があまり好きでは無いから雨が降ると大体家に引っ込むのだが……今はそんな事を言っていられない場所だからな。

 

 このぐらいなら焚火は消えないだろう。

 

 私は自分の体を雨から守りながら魔法球で時間を潰す。

 

 途中で通りかかった隊員が驚いたような表情でこちらを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 夜明け前に雨は上がった。

 

 日が昇り始めた辺りで魔法球を消し、交代の隊員が起きて来るのを待つ。

 

 曇り空で日が昇っても少し暗いな。

 

 交代の時間が近づくと交代する隊員が作業を中断して集まった。

 

 警備だけは交代の穴を作らないため直接交代要員が向かって交代する。

 

 私は集まって来た一人に声をかける。

 

 「どの担当か知らないが上手く行きそうか?」

 

 声をかけられた優し気な隊員の男は私のそばに近寄って答える。

 

 「僕は建築担当の一人だよ。魔法や魔道具があってもすぐには出来ないね……ただ問題がある訳じゃないからこのままなら予定通りに完成すると思うよ」

 

 「そうか、それは良かった」

 

 「君は獣人では無いよね?どうして参加したんだい?」

 

 そう聞いてくる、特に悪い感情がある訳ではなさそうだ。

 

 「ベキアの……国王の知り合いでな。この開拓が上手く行くように見届ける役目を頼まれてな」

 

 実際は私が行きたいと言って用意された立場だが。

 

 「国王の……道理で隊長達が何も言わない訳だ」

 

 そう言って笑う。

 

 話しているうちに交代要員が揃ってやって来た。

 

 彼らはこれから食事をしたり風呂に……風呂はあるのか?まあ体を拭いたりして寝るのだろう。

 

 私も入りたいし……風呂を作ろうか……うん、やはり風呂は欲しい。

 

 無ければ作ろう。

 

 

 

 

 

 

 開拓部隊の大隊長……ここでの最高指揮官に許可は貰った。

 

 まずは寝た方がいいと言われ、昼間に魔法で作ると周りが騒ぎそうだという理由もあり夜を待つ事にした。

 

 テントに行き風呂場の間取りを考えながら夜を待ち現在に至る。

 

 場所は仮設食堂の隣だ、そばに川が流れていて排水に便利だから決めた。

 

 まずは魔法で石の大き目な建物を作り中心を壁で分割して男女の入り口を作る。

 

 中心を分割している壁を中心に線対象になる様に脱衣所を作り、同じように浴場に浴槽と洗い場を作る。

 

 仮設の風呂場だしこれ位でいいか……。

 

 それなりの出来に納得した私は、マジックボックスから魔力保存用の魔道具とお湯を出す魔道具を取り出して埋め込み管理室を作った。

 

 そこから水路を男女の浴槽につなぐ、人数が居るから浴槽は大きく作った。

 

 洗い場の水道に通すお湯も同じように魔道具を配置して最後は浴槽に合流させる、浴槽からあふれたお湯と洗い場で使ったお湯は排水溝から川に排水する。

 

 上手く行ってるだろうか?

 

 魔力を補充し魔道具を作動させて女湯の方に行くと既にお湯が出て来ている、湯温も良い感じだな。

 

 洗い場の水道を開けると手元にしっかりお湯が出て来る……そうだ、桶も用意しないとな。

 

 すぐに木材で適当な数の桶を作り浴場の入り口近くに積み上げた。

 

 石鹸もある程度は用意しておいてやろう。あくまで私が入るためのついでだが、無くなる前に本国と流通が出来る様になれば取り寄せられるだろう。

 

 男湯の方も一通り確認して問題が無い事を確認した私は、お湯が満ちるのを待ってしばし風呂を楽しんだ。

 

 その後大隊長に浴場を作った事と時折魔力の補充が必要な事、入る少し前にお湯を出す魔道具を作動させる必要がある事など必要な事を伝え、夜の見張りに戻った。

 

 

 

 

 

 

 翌日。浴場が出来た事に対する反響は大きかった、特に女性隊員が大喜びした。

 

 誰が作ったのかと質問もあったが大隊長は何も言わなかった。

 

 一部の隊員は私の方を見ていたが……知らんな。私が風呂に入りたかったんだ。

 

 風呂に入れるようになったみんなは身体的にも精神的にも負担が減ったように見える、実際に当初の予定よりある程度早く作業が進んでいった。

 

 開拓で一番の難所は、開拓し始めてから拠点が完成するまでの間だと思っているが……これからは少しずつ楽になっていくのだろうか?

 

 それから時折地上の魔物と、極稀に空の魔物の襲撃があったが、大きな問題は起こる事は無く拠点は村と言って良い状態に作り上げられた。

 

 

 

 

 

 

 拠点が村として完成し、昼夜問わず作業をする事が無くなってから三日間休養を取った。

 

 人員の余裕が出来たのでこれからは本国に向かう街道の整備に取り掛かるらしい。

 

 「しかし、ここまで来るのに何日かかった?それだけの距離を整地するのはかなりかかるのでは無いか?」

 

 整備開始の日の朝、私は近くに居た部隊の女性隊長と話をしていた。

 

 「間違いなく時間がかかる作業ではありますが、こちらからは全体の半分以下で済むはずですよ」

 

 「何故だ?」

 

 問いかける私を見ながら彼女は説明する。

 

 「出発時に街道整備をしていたのを見ませんでしたか?」

 

 まったく気にしていなかった、していたか?

 

 「見ていないな。忘れていると言う事は無いと思いたいが」

 

 「そうでしたか。実は私達開拓部隊が出発するより前から本国側からも街道整備をしているんです」

 

 「……なるほど、言いたい事が分かった」

 

 開拓した村側と本国側から道を作っていってつなげる訳だ、これなら村側は半分以下で済む。

 

 「まあそういった方法を取っているので、こちらの負担は半分以下になる訳です」

 

 そう言って笑い彼女は続けた。

 

 「更に言うと道を作る場所は我々が移動してきた道なので一から整備する訳ではありませんから」

 

 「開拓は大変なんだな」

 

 「それでも国を大きくするにはやらなければいけませんからね」

 

 彼女はクスリと笑ってそう言うと「もう行かなくては」と言って去って行った。

 

 私は魔法なりこの体の力なりで簡単に整地して魔法で家を建てるが、一般的な開拓がここまで手間のかかる物だとは知らなかった。

 

 私が魔法を使って村を作った時、それを見ていた巫女達が驚いていた理由が今分かった。

 

 これだけの手間と時間がかかる開拓をあっという間に、それも一人でやれば驚きもする。

 

 

 

 

 

 

 私もついて行き街道整備を見物していたのだが、地面をひたすらに固めて平らにして行くという単純な物だった。

 

 しかしこれはもどかしい。

 

 魔法で一気に平らにして石の道でも作ればいいと思う。

 

 出来るだけ見守る事にしよう、周囲の安全確保でもしようか。

 

 気配だけは探っておこう。

 

 身体強化と地面を平らにする作業は相性がいいのか、石や岩を道の外に放り投げ、木の根などを引き抜いて、でこぼこだった道を順調にならして行く。

 

 だが、いくら距離が半分以下で順調でも一日の大半は食事や睡眠などに使う事になる。

 

 それに作業中の警備と野営地の警備や維持に人数を取られて作業出来る者が思ったより少ないのも原因か。

 

 更に整備が進めば野営地も移動させなければいけないしな。

 

 私の様に食事も睡眠も休憩もいらないのなら楽なんだが、獣人達には不可能だろう。

 

 本国側は早いだろうからそちらに期待だな。

 

 

 

 

 

 

 最終的に本国側の整備部隊に合流するまで天候や魔物の妨害もあり一か月近くの時間がかかった。

 

 私はその時点で開拓部隊と別れてカルガに戻ったが、まだ魔物の不意打ちを防ぐために道沿いの木をある程度切り倒したり、魔物を追い払ったりとやる事はあるらしい。

 

 帰って来た私は開拓が上手く行った事を伝えるためにベキアの元に向かう。

 

 「どうだった?開拓は」

 

 「中々楽しかったぞ。目標を持ち一生懸命に動く生物を観察するのは面白い」

 

 案内されたソファに座り笑みを浮かべる。

 

 「……それは良かったけど……上手く行ったんだよね?」

 

 真剣な様子で聞いてくる。

 

 彼の元に詳しい報告が行くにはもう少し時間がかかるのだろう。

 

 「問題無く開拓は終わった。犠牲も無く村としても問題無いだろう」

 

 「そうか。よかった……」

 

 ほっとした様子のベキア……心配になる気持ちは分かる。彼らも弱くは無いがそれでも脆い事には変わりないからな。

 

 しばらく雑談した後、また留守にする事を伝えてこの国を後にした。

 

 

 




 開拓にかかっている時間はこんなものだろうかと適当に決めています、知識のある方からすると早すぎたり遅すぎたり簡単すぎたりするかも知れませんが、魔法や魔道具があるので色々違うと言う事で。

天候の描写を忘れていました、最初は雪とか降らせてたはずなのに忘れてしまうとは、何も書いて無い場合基本的に晴れの日と言う事でお願いします。






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