少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 あまりにも簡単に終わらせてしまう事に不満がある方も居ると思いますが、ご了承ください。

 細かく書く時は書くと思いますが、作者自身がこういったタイプの作品が好みなのでこうなる事が多いと思います。


 最後に少し時間が飛びます。





093-10

 

 ブイライブでの話し合いからある程度の時が経ったが私はまだ復帰しておらず、現在はバーチャルニュウチューバーになる前の生活に戻っている。

 

 以前の話し合いによって決まった行動は速やかに実行に移されたが、それだけで問題が解決すると考えている者は一人も居なかった。

 

 私が日々を過ごしている間も各所が動き、騒動を治めようと奮闘している。

 

 最近までテレビや雑誌、ネットなどに今回の事に対して語る私の姿が連日のように取り上げられ、それと同時に過去の私の映像やライブの様子なども繰り返し放送されていた。

 

 友人からも、有料チャンネルで連日アイドルクレリアの特集が組まれ放送されている、と聞いている。

 

 最初期に比べれば多少おさまって来ているものの、まだ落ち着いたと言えない状況だ。

 

 私の情報が全世界に広がった後、京介からも連絡があった。

 

 彼は現在フラワープロダクションの役員になっているのだが、フラワープロダクションも今回の騒動を治める為に動く事を決定したらしい。

 

 礼を言う私に、彼は「フラワープロダクションがここまで大きくなったのはクレリアさんのおかげです。それに……個人的にも子供の命を救ってくれた恩を返しきれていませんから」と答えた。

 

 京介は私が引退した際に望みを言わず断っていたのだが、以前彼の子供が難病といわれる病を発病した際に望みを聞き、治療している。

 

 私の元にやって来た時、彼は一度断った事を気にしていたらしく、心中が穏やかでは無かった。

 

 難しい表情をする彼に「生きている内に望みを言わない場合、お前が死んだ後にも聞きに行くつもりだった。これで安らかに眠れるな」と告げると、彼は突然涙を流し呆れたように笑った後、頭を下げしっかりとした口調で「お願いします。僕の子供を助けて下さい」と言った。

 

 どうやら彼はその時の恩を返したいらしい。

 

 私が「貸し借りはあの時点で無くなっている」と言うと「友人を助ける事にそれは関係無いですよ」と返された。

 

 恩返しだという事は分かっていたが、友人である彼がやりたいと言うのなら好きにさせる事にした。

 

 そして、この事態に娘達が黙っている訳も無く、あの子達も色々と動いている。

 

 どうやら私をバーチャルニュウチューバーとして復帰させたいらしい。

 

 ニュウチューブ自体は数日で接続出来なくなっていた状態から回復したようだが、そこから更に月下グループが手を貸して色々と行っているようだ。

 

 今後は出来るだけ問題が起きないようにする、と言っていたな。

 

 何かあれば報告するように言ってあるので、連絡が来ないのなら任せて問題無いだろう。

 

 更に、今回の件で周囲にそれなりの影響が出た。

 

 バーチャルニュウチューバー自体の知名度が上がり、天津凪とブイライブ四期生達の周囲にも多少の騒ぎが起き……最終的にチャンネル登録者数が急激に伸びた。

 

 私はその報告が来た時、確かにそうなってもおかしくは無いな、と納得していた。

 

 一部の視聴者達は、お嬢様が天津凪のチャンネルに出ていた事を知っている。

 

 その為「天津凪はクレリアの自宅で働いているメイド」という話が広がり視聴者が急激に増え、四期生達は私と同期であった事で話題となり、こちらも急激に視聴者が増えた。

 

 問題があればすぐに報告するように皆に伝えたが、風香も同期達も手に負えないような問題は起こらなかった。

 

 むしろ、知名度が上がった事を喜んでいたな。

 

 

 

 

 

 

 「思わぬ出来事で名前はかなり売れたけど……維持するのが大変そうだなぁー」

 

 配信を終え、そう言いながら私はベッドに寝転がる。

 

 同期のお嬢様であるクレリアさんがあのアイドルのクレリアさんであった事が公表されてそれなりの時間が経っている。

 

 今回、私達も「あのクレリアの同期」という理由で注目され、知名度を得たけど……。

 

 〖今の登録者数は維持出来ないだろうなぁ〗

 

 おっと、思わずロシア語が出ちゃった。

 

 日本語にも慣れたけど、呟く時はつい母国語が出ちゃう。

 

 うーん……どれだけ残ってくれるかなぁ。

 

 クレリアさんの同期だと言ってもそれだけだしなー。

 

 ベッドで転がって考えていると、スマホが鳴る。

 

 着信音は私の一番のお気に入り、クレリアさんの「イモータルプリンセス」だ。 

 

 「もしもーし」

 

 「ナタリア、今クロスコード出来る?」

 

 電話に出るとベティがそう聞いてきた。

 

 「出来るよー」

 

 「じゃあお願い」

 

 「ほいほい」

 

 返事をしながらクロスコードを起動し、参加する。

 

 「あ、こんばんはナタリアさん」

 

 すると、気が付いた沙織が挨拶して来た。

 

 「こんばんはー」

 

 私も挨拶を返す。

 

 「ベティさんに呼ばれたんですか?」

 

 「うん」

 

 「二人共、来てくれてありがとう」

 

 ベティが私達に声をかけて来た。

 

 「平気だよ」

 

 「丁度時間が空いてましたから平気ですよ」

 

 わざわざ呼ぶなんて何かあったのかな?

 

 「今日は二人に相談があって呼んだのよ」

 

 「なんですか?」

 

 沙織が聞いたから私は黙って居よう。

 

 「配信でお嬢様にメッセージを送ろうと考えているんだけど……参加しない?」

 

 おっ!いいね!

 

 「やるやるー!」

 

 これから楽しくなると思ってたのにこんな事になっちゃったからね。

 

 電話やクロスコードで話した事しかないけど、私はお嬢様の事を気に入ってる。

 

 あのクレリアさんだと知っちゃった今では緊張しちゃうけど、それは変わらない。

 

 おっと……それはそうとして、皆に言いたい事があるんだった。

 

 「あのさ……テレビでとかでクレリアさんの声明って言うか、今回の事に対するコメントが放送されてるじゃない?」

 

 「はい、そうですね」

 

 「最初はどのチャンネル見ても同じ映像しか無かったわね」

 

 テレビも番組中止してずっとクレリアさんの特集してたからねぇ。

 

 「それでさ……クレリアさんって本当に50歳超えてるのかな?」

 

 うん……私が言いたいのはこれだ。

 

 世界中の女性に喧嘩を売るような変わらぬ美貌……と言うか、テレビで過去の映像が流れてたけど、全く変わらないんだけど。

 

 「……言いたい事は良く分かります」

 

 「ウィクペディアに載ってる事だけど、世界でも珍しい奇病の影響らしいわよ?」

 

 「それは私も読んだけど……ちょっと羨ましくなったりしない?」

 

 クレリアさんにはクレリアさんの苦労があるんだろうけど……やっぱり羨ましいという気持ちはなくせないよー。

 

 「まあ……正直ちょっと羨ましくはあるわね」

 

 「気持ちは分かりますが、彼女から見れば老けて行くのは健康である証拠だと思うんです……だからあまり声を大にして言えないというか……」

 

 「あー……そっか。そうともとれるのかぁ……」

 

 もしかしたら彼女自身は皆と一緒に老けて行きたいと願っているかも知れない。

 

 ……でもなぁ。

 

 私は、問題無く若く美しいと言われるのは基本的には10代、限界で20代までだと思ってる。

 

 多分、30代に入ると「綺麗」と言われてもお世辞のように感じちゃうと思うんだよね。

 

 確かに30代でも綺麗な人はいるけど、殆どは化粧で誤魔化している。

 

 よく化粧品のCMで女優さんがすっぴんで綺麗な肌を見せてるけど……あれは違う。

 

 あれは「すっぴんに見える化粧」をしているだけだからね。

 

 「やっぱり羨ましいなー」

 

 私がそう言うと、ベティと沙織の笑い声が聞こえた。

 

 2人だって本当はそう思ってるでしょ!

 

 

 

 

 

 

 バーチャルニュウチューバーのお嬢様がアイドルのクレリアである事が世界に知られてから約半年が過ぎ、2038年の8月を迎えた。

 

 私は談話室で用意された牛乳を飲む。

 

 周囲では数人の娘達が話に花を咲かせている。

 

 もうすぐ「お嬢様」としての配信が再開される予定だ。

 

 この半年で同期達の応援配信などが行われ注目を集め、その後に各国も動き出した。

 

 その結果、騒動はこの半年でほぼ治まっている。

 

 今回、国が動いたのは娘達の命では無く、国の方から申し出て来たという。

 

 騒動の規模の大きさに危機感を感じたらしく、アメリカと日本、そして中華連合の三国が連絡を取って来たらしい。

 

 カミラはあの三国が同時に申し出たのは偶然では無く、事前に話し合った結果だと言っていたな。

 

 私が日本に多く滞在し活動の拠点としている事を理由に、日本の総理大臣が交渉役を押し付けられていた、という話も聞いた。

 

 今回の出来事が落ち着いた後、ブイライブからもう一度謝罪され、原因となったノートパソコンを放置した社員は降格、減給となった。

 

 この社員は本来ならば解雇になる予定だったが、最終的に私が阻止している。

 

 私は始めから原因となった社員をどうこうするつもりは無かった。

 

 元々ばれても構わないと考えていたからな。

 

 ただ、わざわざ助ける気も無かったので、処分はブイライブ側に任せて放置していた。

 

 しかし、ある時社員の中で動きが起きる。

 

 瞳を始めとした多くの者達が私に彼の優秀さや、どれだけお嬢様の為に動いていたかを語り、解雇だけは許して欲しいと訴えて来るようになったのだ。

 

 私は全ての話を聞いたが「なぜあのような単純なミスをしたのか疑問に感じる程に優秀」という印象を受けた。

 

 その上かなり熱狂的なクレリアのファンで、あのまま解雇になってしまったら絶望し自殺するのではないか……と周囲から本気で心配されていたようだ。

 

 私は一度だけ彼に会ったが、その時の彼は表情の抜け落ちた顔をして現れ「申し訳ありませんでした」とかすれた小さな声で謝罪し、ゆっくりとその場に土下座をしたまま動かなかった。

 

 その時の彼の精神状態はかなり悪く、辛うじて自分を保っている状態だった。

 

 周囲の者達が「あのまま解雇になってしまったら絶望し自殺する」と判断した事は、それほど間違っていなかったと思う。

 

 他者が聞けばまともな謝罪には聞こえなかっただろうが、私は彼が心から後悔し謝罪した事が分かる。

 

 そのため、私は謝罪を受け入れて処分を延期させた。

 

 処分を延期させた理由は、これまでの仕事の優秀さに対してあまりにも簡単なミスをした事に疑問を感じたからだ。

 

 その後、私は今回の事について調べて貰ったが特に証拠は見つからず、本当に彼がミスをしただけ……という事が分かる。

 

 何かあるかも知れないと考えていたが、こんな時もあるだろう。

 

 私も時々娘や友人が呆れるようなミスをする事があるので何も言う事は無い。

 

 最近、自身の人気に対する認識の甘さを指摘されたばかりだしな。

 

 こうして彼自身のミスである事が確定した後、私は社員達の嘆願について考える事にした。

 

 彼が優秀である事は分かっているし、故意でもない。

 

 そして、人類間でどう判断されるかは知らないが……私の感覚では起こしたミス自体はここまで罰せられる物では無い、と考えている。

 

 更に、デビュー前……私がバーチャルニュウチューバーになる事が決定した時から私の活動を支えるために動いていた。

 

 これらを加味し、彼の解雇は阻止する事にした。

 

 色々と考えているが、そもそも私は知られてもかまわないと考えていた。

 

 恐らく、例え故意であっても私が彼に何かを思う事は無かっただろう。

 

 方針は決まった。

 

 今後も彼の能力はブイライブの為に使って貰う。

 

 そう決定した後、私はすぐにブイライブに話を通した。

 

 その結果彼の処遇は降格、減給に落ち着き、ブイライブ内の問題は終了した。

 

 

 

 

 

 

 ぬるくなった牛乳を魔法で冷やしなおし、口に運ぶ。

 

 私は、自身が譲れないと感じる事は絶対に譲らないが、それに当てはまる事が非常に少ない。

 

 そして、基本的にそれ以外の事はどうなろうと構わないし、起きた事を楽しんでいる。

 

 だから私は引退という形でも構わなかったのだが……。

 

 最終的に娘、友人、ファン、国が動き、私はバーチャルニュウチューバーの世界へと戻れる事になった。

 

 国は別な理由もあったようだが、とにかく多くの者達が「お嬢様」の為に動いてくれた今の世界も楽しく感じる。

 

 この先、他の世界に足を延ばす事もあるかも知れないが、地球は最後まで楽しもう。

 

 

 

 

 

 

 後日、私は動いてくれた親しい者達に礼を言いに行った。

 

 その際に、友人の一人が「バーチャルニュウチューバーを先にやった方が良かったかもね」と言っていたが、アイドルにスカウトされる前にバーチャルニュウチューバーに誘われていたらどう反応していただろうか。

 

 今回は単純なミスから問題が大きくなったが、人類社会に混じっていればこういった事はそれなりに目にする。

 

 何がきっかけで大事になるかは分かりにくい物だな。

 

 勿論、これは人類社会だけでは無く、宇宙規模でも起こり得る事だ。

 

 広い宇宙を彷徨う大きな星が偶然地球に向かうかも知れないし、他の星系の知的生命体が訪れる事もあるかも知れない。

 

 今までの事を考えると……私が居なかった場合、地球は高い確率で無くなっていたのではないだろうか。

 

 

 





 社員の彼の出番はこの先あるかは分かりません、現時点では名前も無いです。


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