何となく毎週の投稿をしてきましたが、最低でも作者が納得出来る物を投稿したいので、間に合わなくなった時は毎週投稿は終わりにします。
ある雨の降る日の午後、私が自宅で本を読んでいるとスマホが着信を知らせる。
マネージャーの瞳からか。
「どうした?」
私が電話に出てそう言うと、瞳はすぐに本題へと入った。
「予定している四期生のオフコラボ配信の事でお話がありまして」
「何だ?」
配信後、瞳にも話をしているが、その時は特に何も言われていない。
何かあったのだろうか。
「こちらの準備が整うまで延期して頂きたいんです」
何をするのだろうか。
「配信日はまだ決まっていないから構わない、何かするのか?」
「せっかくの同期全員初オフコラボなので、全員3D化してから行いたいと思いまして」
「3D化か、三人が喜ぶだろうな」
「元々皆さんを3D化させる予定はあったんです。なので、このタイミングで行う事になりました」
「分かった、待とう」
「ありがとうございます」
「他の三人にこの話はしたのか?」
「まだしていません。クレリアさんに納得して頂くのが最優先でしたから」
「そうか……そうだ、聞きたい事がある」
3Dで配信するのなら確認しておかなくては。
「何ですか?」
「オフコラボ配信は私の家で行う予定だが、3Dでの配信は可能なのか?」
「それは……機材と専門のスタッフが必要なので、ブイライブ本社で行う事になってしまいますね……」
申し訳なさそうな声を出す彼女。
なるほど……娘達に頼んでみるか。
「瞳、少しこのまま待っていてくれ」
「はい、構いませんが……」
私は瞳に一言告げ、念話を繋ぐ。
『カミラ、話せるか?』
『平気よ、どうしたのお母様』
『お嬢様と同期3人の3D化が決まったが、3D配信には機材と人員が必要らしい。自宅で私を除いた3人の3D配信をしたいのだが、用意出来るか?』
『……機材は市販しているの?』
『待ってくれ、瞳に確認する』
『分かったわ』
「瞳、3D配信に必要な機材は市販されているか?」
私は通話したまま待機している瞳にそう問いかけた。
「え?……えーと、誰でも買えると思います。個人で買う人はほとんど居ないと思いますが……」
「ありがとう」
彼女に礼を言い、私はカミラへ念話する。
『誰でも購入出来るようだ』
『それなら全く問題無いわね。人員は外部の者を使う気にはならないから……侍女隊から希望者を募って覚えさせればいいでしょう』
『希望者が居なければブイライブ本社で行っても構わない、強制はしないようにな』
『分かっているけれど、そんな事を気にする必要は無いと思うわよ?みんなお母様の手伝いをしている時はいつもより嬉しそうだし……既に希望者が集まってるもの。いつもの事ながら反応が早いわ』
少し笑いながらカミラが言葉を伝えて来る。
『何か問題は?』
『無いわ。彼女達は人類機器の操作程度、簡単に覚えられるもの』
侍女達の能力は現在もゆっくりと成長しているからな。
『そうか、では3D配信が出来るように準備をしておいて欲しい。もし何か問題が起きた時は連絡してくれ』
『分かったわ』
カミラの返事を聞き、私は念話を切った。
「瞳、予定通りコラボ配信は私の家で行う」
「まさか……自宅に機材を導入する気ですか!?」
彼女は私が何をしようとしているか察したのか、大声を出した。
「そうだ」
「クレリアさんなら機材も安い買い物なんでしょうけど……ブイライブのスタッフがご自宅に行く事になりますよ?」
「人員もこちらで用意する、そうすれば後は通常の配信と変わらないだろう?」
「んー……」
何かを考えているのか、瞳は軽く唸り声をあげてから沈黙する。
「……当日は私も参加します、それが駄目なら許可は出来ません。後、クレリアさんの自宅に環境が整っても今後3Dコラボ配信をする際には基本的にブイライブ本社の方に来て貰う事になります。それでも良いですか?」
しばらく沈黙を続けた後、彼女ははっきりとそう言った。
やはり本社のスタジオの方が色々と都合が良いのだろうな。
ふむ……彼女が家に来る事も、今後ブイライブ本社で3D配信をする事も特に問題無い。
自宅の機材は一人の時にも使えるから無駄にはならないだろう。
「それでいい、当日はよろしく頼む」
「そうですか……では四期生のオフコラボはクレリアさんの自宅で行いましょう」
「決まりだな」
「3Dモデルを用意するのは時間がかかると思います、しばらく待ってください」
「その辺りは任せる」
無いとは思うが、娘達が「3Dモデルを作る」と言い出したら既にブイライブが作っていると話そう。
あの後、瞳が同期の三人に話を伝えた所、全員大喜びだったという。
初の同期全員とのオフコラボは3D化作業の終了待ちだ。
家の機材などの配信準備は行うが、それ以外の事はまだ早い。
少なくとも3D化作業の終了予定日が決まらなければ、配信予定日も決められないからな。
私達は今の所、いつも通りに活動を続けている。
「こんばんは。人類達」
:こんばんは!
:見に来たぜお嬢
:今回の上納金です ¥50000
:〖今日もお美しいです〗 ¥10000
「今日は『ライフ・グロウ』をやるが、その前に一つ伝えておく事がある」
:おーあれか
:ライフ・グロウ好き
:ん?伝えておく事?
:長くなる予感
:何かあったのかな?
「以前行うと言った四期生オフコラボだが、延期となった」
:マジすか?
:〖中止じゃなくて延期?〗
:スケジュール調整かな?
「オフコラボ自体は行う予定だ。だが少し時間が必要になった」
細かい事は言わないように頼まれたからな、この程度にしておこう。
:ふむ……
:これは……まさか3D化なのでは?
:あり得る
:初の四期生全員コラボに合わせて……とかやりそうだよな
かなりの人数が3D化を予想している。
簡単に予想出来る事だったようだ。
さて……伝える事は伝えた、ゲームを進めよう。
様々な予想が流れる中、私はゲームの説明を始める。
「さて……これからプレイするライフグロウは、地球の環境や生命を操作し人類に進化させ、最終的に宇宙に到達させる。というゲームだ」
:ゲームが始まるぜー!
:延期の事は他の三人の連絡を見よう
:お嬢はあんまり話さないからなw
:それがいいんじゃないか
「マンジュウでは、超越者である私に是非このゲームをやって欲しい、という意見が多く寄せられている」
:お嬢が人類を作ったのか……
:あなたが神かw
:俺達は超越者の戯れから生まれたんだぞw
「そして今回はネタバレ禁止だ。皆、注意するように」
:はーい
:ネタバレ禁止来ましたか
:今回は生暖かく見守ろうと思いますw
「では始めよう……まずは難易度選択か。最初はノーマルにしておこう」
私はいくら時間がかかっても問題無いが、見ているのは人類だからな。
:難しくしてぐだってもあれだからね
:まあ難易度は好きにして良いんじゃないかな
:ぐだるよりはクリア出来る難易度がいいよ
こうして、私は人類を宇宙へと導くゲームを開始した。
「最初の単細胞生物は生まれたが、そこから増加も進化もしないか……」
そう私は呟く。
ゲームを開始してから約一時間程、私は生命を生み出す事には成功したが、そこから行き詰まっていた。
:ネタバレは出来ないから俺達は頑張れとしか言えないw
:これ位は平気かな?海中の成分の種類、割合、後温度が重要だよ
:結構難しいんだよなこれ
私は実際に単細胞生物が生まれてから人に至るまでを見て来たがずっと見ていた訳ではなく、これまでの生命の状態や環境など大雑把にしか覚えていない。
記録する気も無かったので、そういった本や魔道具も存在しない。
しかし、当時の環境を再現出来たとしても、このゲームが上手く行くとは限らない。
現在の人類は当時の環境を推測は出来るが、実際に確認する事は出来ないのだから。
全く役に立たない、という事は無いかも知れないが……可能な限り思い出しながらやってみるか。
「もう一度調整してみよう」
私は当時の記憶とコメントのヒントを元に再調整を始めた。
大気は……私達は全く影響が無いので気にしていなかったが、今とは成分の割合がかなり違ったような気がする。
気温も今より高かったはずだ。
その影響で、あの頃の海は今と比べて全体的に暖かかった……と思う。
うろ覚えな記憶をもとに、私は曖昧な調整を行い続ける。
私にとって生命は簡単に作れる物だが、自然に発生する事は稀であると思っている。
だがこのゲームをやっていると、生命が生まれ、進化していく事の難しさがよく分かるな。
魔法人類が滅んだ後、再び生命が生まれるまで億を超える年月を必要としたのも頷ける。
そんな事を考えながら様子を見ていると、単細胞生物が増え始めた。
「増え始めたな」
:おめでとう!
:やった!
:俺達が生まれなくなる所だったぜ……
「まだまだここからだが、一つ先へ進めた。ブロックされる事を恐れずにヒントをくれた者達に感謝する。ありがとう」
そう言っている間に、多細胞生物も生まれている。
:どういたしまして!
:警告は来てないしこの位なら平気なんだな
:警告来たらその配信の間は大人しくするから平気だよ
もしブロックされていたら解除するように言おうと思ったが問題無かったようだ。
あの騒ぎの後から私の配信は娘達がコメントを監視していて、問題があると判断された際は警告が送られる。
ただ、その一度でブロックされる訳では無く、その配信中にもう一度問題があると判断されるコメントを書き込まなければ次回の配信で警告が解除される。
なので、ある程度の問題発言ならば1配信に1回は可能な訳だ。
だが、間違い無く悪意があると判断された場合は即座にブロックされ、永久に解除される事は無い。
現在、ネットには匿名性がある。
実際は絶対という訳では無いらしいが、基本的に匿名性は非常に高いようだ。
ただ、それも娘達には意味が無い。
私が聞いたのは最近の事だが、彼女達は世界中に張り巡らされたネットワークを自由に扱えるようになっている。
いつの間に行えるようになったのかは分からないが「主様がアイドルであった時、余計な創作物が無かったのはこの対策があったからです」と言われたので、私がアイドルをしていた頃には既に行っていたようだ。
人類のパーソナルコンピューターは魔力的な物が使用されていない科学的な物だが、利用出来るらしい。
娘達の本体は元々魔動機だが……魂と人格を得たパーソナルコンピューターのような物になっているのだろうか?
予想以上に娘達が世界を掌握している事に気が付いた一件だったが、特に止める気は無い。
だが、そこまでやっている娘達も手の届かない所はあるという。
手紙やネットワークが届いていない田舎などの、特定の方法や環境下で行われた事は把握出来ない、と言っていた。
ただ、完全にする気は無く、その辺りはそのままにするらしい。
勢いに任せて書いていたら侍女達がサイバー戦に強くなりました。
特に詳しい訳では無いので、間違っていてもこの作品内ではそういう物だと流してもらえると助かります。