この作品の注意事項
・作者の自己満足
・素人の作品
・主人公最強
・ご都合主義
・辻褄が合わないかもしれない設定
・注意事項が増える可能性
等が含まれます。
以上をご理解したうえでお読みください。
読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。
獣王国カルガを後にした私は、魔工国ガンドウの町の一つを訪れた。
そこで私は山肌に開いた居住区と思われる洞窟から大量の水が流れ出し、町を水浸しにしているのを目撃した。
周囲では大地人達が慌ただしく動いている。
私は大地人の一人に近づいて声をかけた。
「水脈でも掘り抜いたのか?」
「あん?……おう。町の拡大の為に掘っていたんだが地下水脈をぶち抜いちまったらしい、幸い犠牲者は出なかったが見た通りの状態だぜ」
彼は水をせき止める壁を作りながら言う。
「どうするんだこれは」
「どうするっつってもな……もう埋められないしこのまま水源にするしかねえかもな」
こちらを見ずに彼は作業を続ける。
「このまま壁で囲って水路にでもするのか?」
「取り敢えず周りに水が行かねぇようにしてるだけだ。その後魔法で地面を掘って水路にするんじゃねぇかなぁ?」
「そうか、気を付けてな」
「おう」
話を終えて首都であるガンドウへ向かった。
街道を歩きガンドウへ着いた私は国王であるガンドの工房へやって来た。
ガンドは居なかったが、彼の弟子が工房で作業している。
「あれ、お嬢。今日はガンドさんはいねぇぞ?」
弟子の一人が私に気が付いて声をかけてくる。
「特に用がある訳じゃない、何となく来ただけだ」
「そうか。お嬢なら自由にしていいと言われてる、ゆっくりしてってくれ」
弟子達は私と面識があるので特に気にせずにそう言うと作業に戻って行った。
ゆっくりと言われたが、炉の熱やハンマーの音が響く場所は落ち着ける場所とは言えないだろう。
工房内を見て回るが目新しい物は無いな、魔道武器は何処かに厳重に保管してあるだろう。
いくら親しくても国の機密は教えてはくれないだろう。
そう考えると魔道弓を見せて使わせてくれたのはかなり信用されている方だと思う。
「邪魔したな、外を回ってくる」
「おぅ、また来ると良い」
近くに居た弟子の一人に一声かけて外に出る。
やっぱりあの中は暑いな、外が涼しく感じる。
遠くに見える山肌に畑が見える。この場所の環境にあった物を栽培しているからこの国の大地人達は他の国とは食べている物が多少違う。
森人と獣人は環境が似ているが食べ物の好みが違うので育てる作物に差が出ている、特に獣人は大半は肉が好きだから畜産が大人気だ。
しかし……食べ比べたが私は魔物の方が美味しく感じる。
街中を歩いていると見覚えのある女性大地人が居た。
国の運営陣の一人だった気がする。
「あ、クレリアさん良い所に来てくれました」
彼女が私を見つけて呼ぶ、私は彼女の元に歩いて行った。
「問題でも起きたか?」
そう言うと彼女は首を横に振り話し始めた。
「いいえ。問題では無いのですが……今、畑で作物を育てていますよね」
「そうだな」
私が教えた事だしな。
「……その方法を使って果樹を育てて、果物を収穫出来ないかと考えていまして」
「ふむ……」
「クレリアさん?」
声を上げた私に首をかしげながら言ってくる彼女。
「いや。なんでもない……しかし果樹か……恐らく問題無いと思う」
果樹の事をすっかり忘れていた私は誤魔化す事にした。
他の国にも教えておこう。
「増やしすぎても駄目にするだけだが……大地人は果物が主食では無いだろう?」
そう言うと彼女は苦笑いする。
「実はですね……大半の大地人はジャカイモなどが好みなのですが、中には果物が好物な者も居てですね……」
「好物を用意してやりたいと言う事か?」
そう言うと彼女は恥ずかしそうに言う。
「それもですが……その、私もその中の一人でして……」
「果物好きと言う事か」
「はい……」
なるほど、自分の為にも実現したい訳だ。
気にする事は無いのに、食の種類が増えるのは良い事だ。
「それでですね。クレリアさんならこの場所でも育つ果物の木をご存じではないかと思いまして」
「食料の種類が増えるのは良い事だ、ここの環境でも育つ果樹を教えよう」
「ありがとうございます!」
嬉しいのか声が少し大きくなる、声を上げた後周りを気にして顔を赤くする。
「よし、ガンドの所に行って許可を貰いに行くか」
「はい!」
こうしてガンドと会い許可を得た彼女はみんなと一緒に私から果樹についての話を聞き、果物が好きな仲間と果樹園作りに奮闘する事になった。
後日、他の国に行った時に果樹園の事を教えておいた。
ある日私は首都ユグラドに訪れた。
町に入る少し前から激しい雷雨に見舞われ、私は風雨を遮断して汚れない様に浮かんで移動している。
すぐにユグラドの自宅に駆け込み風呂に入って引きこもった、激しい雨と雷の音が聞こえる。
いっその事魔法で雲を吹き飛ばそうかと考えていた時、今までとは比べ物にならないぐらいの轟音がした。
近くに落ちたな。
どこに落ちたかは分からないがこの雨なら火事にはならないだろう。
そう思いながら温めたモー乳を飲みながら雨が上がるのを待っていると、風雨の音に紛れて家の扉を叩く音と声が聞こえた。
「クレリアさん!いませんか!?クレリアさん!」
私はのそりと立ち上がり扉の方に向かう。
「まだ帰っていないのかしら……一体どうすれば……」
「何だこんな時に……」
扉を開けると風と雨が室内に入ろうとするが、全て遮断する。
「クレリアさん!良かった……神木が……世界樹が落雷で傷を……!」
落雷……雷魔法を作ってみよう。
必死に話すエルフィを見ながら私はそんな事を考えていた。
「どうにかできませんか!?このままでは世界樹が死んでしまいます!」
あの木が雷程度でどうにかなるだろうか?一応雷雨が終わったら見に行くか。
「あれだけの木だ、簡単に死にはしないだろう」
「しかし表面が大きく裂けているのです!」
今までにだって落雷くらいあっただろうに……初めて雷が落ちたのか?
「落ち着け、今までもあった事だろう?」
「確かにありましたがあれ程の傷を負った事は無かったのです……」
暗い表情で言うエルフィ。
「この雷雨が収まったら見に行く、それまで大人しくしていろ」
「でもっ……」
面倒になった私は彼女を眠らせた……ソファに寝かせておこう。
モー乳が冷めてしまった、私はモー乳を温めなおし飲み始めた。
その後一時間半ほどで雷雨はおさまり、雲の切れ目から光が差し込んで来た。
約束通り世界樹の様子を見に行くか。
足が汚れるので浮かびながら世界樹の前まで移動し、裂けた樹皮の状態を確認する。
……やっぱり問題無いな。ただの樹なら真っ二つだったかもしれないがこの大きさの樹がこの程度で死ぬとは思えない。
「クレリアさん!」
世界樹の診断を終えてそのまま枝に座っていると下にエルフィが走って来た。
「いま木の状態を見ていた所だ、やはり問題無かったぞ」
「え?でもあんなに裂けているのに……」
戸惑う彼女、状態をしっかり見れば納得するだろう。
「エルフィ、ここまで来られるか?」
「え?は、はい……あまり早くは飛べませんが」
そう言うと彼女は浮かび私の元までやって来る。
「見てみろ」
私は裂け目を彼女に確認させる。
「あ……」
声を洩らす彼女に言う。
「広範囲に裂けているが表面の樹皮だけだ。お前達で言えば皮膚が切れただけ……下手したらエルフィが気にしていなかった落雷の時の方が状態としては重かった可能性もある」
「あぅぁ……」
変な声を上げて赤面する彼女、大事なのはわかるがもっと確認した方がいいと思う。
「まあ、もしもと言う事もあるからな……もう少し冷静になった方がいいとは思うが、すぐに私に助けを求めた事は間違っていないかもしれない」
「……はい……」
エルフィは顔を手で押さえたまま小さい声で答える、彼女はしばらくの間顔を赤くしてプルプル震えていた。
その後、世界樹の大きな裂け目は問題無い事をエルフィが森人達に伝え、大きな騒ぎにはならずに終わった。
彼女の醜態の拡散も私のみに抑えられた。
「面白い物を見られた」
「クレリアさん!絶対言わないでくださいよ!?」
すべては私次第だな。
世界樹騒ぎも大事にならず収まった数日後の深夜。
私はユグラドに滞在したまま雷魔法を研究していたのだが、私に念話のような何かを送ってくる者が居る事に気が付いた。
誰だ?はっきりとした意思ではない……私を呼ぶような、来て欲しいと思うような……とても希薄でぼやけた意思を感じる。
私は普段は使わなくなった感覚を広げて送り主を探す、そしてそれはすぐに見つかった。
世界樹か。
送り主は世界樹だった。
こんな面白そうな呼びかけに答えない訳がない。私は家を出て世界樹に向かって歩き出した。
涼しげな月明りが地上を照らし、遠くから生物の声がかすかに聞こえる……中々気持ちがいい。
世界樹の元に行くと夜の闇にうっすらと薄い緑色に輝く世界樹の姿があった。
樹皮の裂け目の部分が周囲より光を発しているように見える。
そこに誘導していると考えた私は光を発する裂け目に飛んでいく。
これは……。
その裂け目から琥珀色の液体……恐らく樹液が湧き出していた。
「……持っていけと言う事か?」
世界樹に向けて話しかけると木の葉がさわさわと鳴る。風は感じなかった、恐らく世界樹の返事だろう。
私は入れ物を作り、どんどん樹液を採取していった。かなりの量になるが大丈夫なのか?
「もう大丈夫だ、無理をするな」
樹皮に手を当てて言うと、樹液は減っていきただの裂け目へと戻った。
「ありがとう、大事に使わせて貰う」
そう言って木の根元に降りると、上から何かが落ちて来る。
なんだ?……世界樹の果実?
落ちて来たのは世界樹の果実だった。
私にくれたのだろうとマジックボックスにしまうと、次々に落ちて来る。
「おい、もう十分だ。お前の気持ちは分かった」
かなりの量が落ちて来た上に止まる気配が無いので声を上げるとぴたりと止まった、樹液の時といい言葉が分かるのか?
私はただ状態を確認しただけで治療した訳ではない、この礼は貰い過ぎだ。
……確か世界樹も魔素を吸っているはずだな。
私は根元に近寄り手を当てると体から魔素を生み出す。
確認してみると私が生み出した魔素を世界樹がどんどん吸っているのが分かる。
しばらく魔素を与えていると目の前に実が一つ落ちて来た、もういいと言う事だろうか。
私は魔素を止めると世界樹をひと撫でして家に向かう。
振り返ると世界樹の光はすでに消え、いつもの夜が広がっていた。
家に帰り世界樹の樹液を一口食べてみたが、濃く爽やかな甘い香りと濃厚だがしつこくない甘さがとても美味しかった。
私の表現力では上手く伝えられないな……実際に食べてみなければ分からない味かもしれない。
世界樹から樹液を貰ってから数日後、朝になり久々に町中を散歩しようと私は外に出た。
朝の冷たい空気が気持ちいい。町中を歩き回りやがて広い魔法訓練場の隣を通りかかるとエルフィと数人の男女の森人達が集まっている。
その横にはかろうじて人型と言えるような……一般的な人の大きさの太った人形が一体居た。
何か面白そうな事をやっている、興味がわいた私は彼女達の元に向かった。
「おはようエルフィ、皆もおはよう」
「クレリアさん、おはようございます」
挨拶をするとエルフィと皆は挨拶を返してくる。
「朝から頑張るな」
「いつもの事ですよ、クレリアさんは朝から何故ここに?」
エルフィが言う。
「散歩の途中に通りかかっただけだ、エルフィ達が見えたから挨拶に来たんだ」
「そうでしたか」
「それにこいつに興味をひかれてな」
「あ……」
私の言葉に言葉を詰まらせるエルフィ、見られてはまずい物だったりするのかな?
「問題があるなら黙っている事は出来るぞ?」
そう言うと、周りで会話を聞いていた男性森人が発言する。
「先生なら構わないと思いますよ。先生の意見や考えを聞いてみたらどうでしょう?」
「……そうね……クレリアさんなら構わないかしら」
男性森人の言葉を聞いてしばらく考え込み、答えを出すエルフィ。
「いいのか?」
「ええ、貴女なら信用できるし貴方ほどの魔法使いの意見も聞けるなら助かるし……」
確認する私に返すエルフィ、何か行き詰っているのかな。
そう思っているとエルフィは説明を始めた。
「これは「ゴレム」と言う土人形よ」
「土人形が何かの役に立つのか?」
私の疑問に彼女は答える。
「役に立つわ……いずれは」
「このままでは駄目なんだな」
「ええ。これはね……もっと大きくした上で数を揃え、兵士として使うのが目標なのよ」
「ほう……」
思わず声を洩らす私、彼女は話を続けた。
「私達森人は魔法は得意だけれど肉体的にはあまり強くない」
「身体強化の魔法があるだろう?」
疑問を投げかける私に彼女は言う。
「身体強化魔法を使うなら攻撃魔法の方がかなり効率がいいのよね」
別な何かで不得意な分野を補おうと言う事か?
「それで、魔法で作れる土や石で作ってみようと言う事になったのよ。もちろん上手く行けば金属製のゴレムも挑戦したいと思ってるんだけど……」
そう言って隣にある土人形を見る、どう見ても役に立つようには見えない。
「出来たのがこれか」
「そうなのよね……」
彼女は疲れた声で言った。
「具体的にどうしたいんだ?それによって難易度が変わりそうだが」
「そうね最高の物を目指すのであれば……」
そう言って彼女が言った理想は……。
森人の誰でも使える魔法である事。
作り出した者の命令を守る様にする事。
出来るだけ高い耐久力と近接戦闘能力。
材料は魔法で作り出せる物か出来るだけ簡単に手に入る安価な物である事。
「……なるほど」
「どうかしら……かなり難しいとは思うけど」
「今のお前達では無理だな」
「むぅ……」
彼女の理想を聞いた私は答えると彼女は唸る。
私なら恐らく可能だが森人達では現時点ではどうやっても不可能だと思う。
画期的な新技術や素材が見つかればあるいは、という所だろうか。
「とは言えやってみなければ何とも言えないか。予想以上に上手く行くかも知れないし、もっと難しいかも知れない」
「……手伝ってくれるの?」
「面白そうだからな。私が思いつかなかった挑戦だ……全員私が手伝う事に反対しないのなら是非開発してみたい」
「私は反対なんてしないわ。貴女が手伝ってくれるなら心強いもの……皆はどう?」
私が協力を申し出るとエルフィが全員に確認する。周りの森人達は全員私の協力を許可してくれた。
「ありがとう。それとこの研究で得る事になる技術や知識は森人達の女王または王……現在はエルフィになるが、その者の許可が無い限り他者に教えない事を約束する」
駄目だと言われても勝手に開発はしたと思う。
だが考案者の許可なく広めたりはしない。
「分かりました。そこまで考えてくれてありがとう……貴女なら守ってくれると信頼できるわ」
私の宣言にエルフィは微笑んで答えた。周りの森人達も次々に信頼を口にしてくれる、元から裏切る気は無いが悪い気分では無い。
「そうと決まれば私は研究に入る。家にいるから何かあった時は来い、研究の進み具合は私がエルフィに伝えに行くとしよう」
「待って、貴女には研究に集中して欲しいの。私達も全員で研究するけどこの中で貴女は一番優れた魔法使いよ……私が貴女の家に行くわ、良い?」
余計な時間を使わせたくないのか。
私としてはその方が嬉しいが。
「そうか、それで良いならその方が助かる。伝えに行くと言ったが正直行くのを忘れそうだと思っていた」
「気持ちは分かるわ」
彼女はそう言って笑った、こうして私のゴレム研究をする日々が始まった。
名前ありのキャラが増えると大変なので出来るだけその他の方は名前が出ないようにしています、ただ後々使えると思った時は名前が付きますが。