例えると一年ほどで死んでしまうネズミを見てこんなに早く死んでしまうのかと感じる感覚に近いのかも知れません。
更に主人公が何かに集中しているときはもっとひどく、カゲロウの様な扱いです。
数時間から数日でいつの間にか死んでいなくなっている、と言った感覚ですかね。
この作品の注意事項
・作者の自己満足
・素人の作品
・主人公最強
・ご都合主義
・辻褄が合わないかもしれない設定
・注意事項が増える可能性
等が含まれます。
以上をご理解したうえでお読みください。
読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。
ウルグラーデに戻り過ごしていた私は、ある日ふと思った。
ルセリア神王国の首都に行った事が無い。
以前から場所は聞いていたが今まで完全に忘れていた。
私はルセリア神王国首都ルセリアに向かって出発した。
道中は馬車を利用してみたが多少雨が降った程度で特に何も興味を引くような事は無かった、そして首都ルセリアに着いたのだが。
大きい都市だ。
首都ルセリアを見た感想はこれだった。
高い防壁がかなり長く広がっている、何十年か経つと都市はこれほど大きくなるのだな。
道中で聞いた栽培魔法が無ければここまで大きくはなれなかっただろうな。
栽培魔法とは人間が作った作物用の魔法だと言う。
聞いた感じではかなり無駄が多そうだが、それでも効果はあるようだ。
都市の入り口で馬車のまま簡単な検査などを受けてから大きな門をくぐっていく。
人々の声が飛び交い、馬車が行きかう大きな大通りをしばらく進むとこの馬車の終点だ。
町中を移動する馬車はまた別らしい。
私は適当な人間に宿の場所を聞き、まず宿を取りに向かった。
「いらっしゃいませ!」
明るい声で迎えられる、私は受付へ向かって女性従業員に話しかける。
「宿を取りたいのだが」
「はい、ご宿泊ですね。何日お泊りになりますか」
微笑みを浮かべて聞いてくる。
「取り敢えず一週間頼む」
「かしこまりました」
彼女は手続きをしながら話しかけてくる。
「随分とお若いようですがお一人で?」
「ああ、私は森人のハーフでな。こう見えても成人しているんだ」
そう言うと彼女の手が止まる。
「……申し訳ありませんが、この宿は亜人種はお断りさせていただいております」
亜人種?聞いた事が無いが……。
「亜人種とはなんだ?なぜ泊まれない?」
「……亜人種とは人間以外の劣等種の事を指します。泊まれないのは人間のお客様が不愉快な思いをしない為です」
いつの間にか人間の国ではこんな扱いになっているのか。
次からは人間と言う事にしよう。
「分かった、邪魔したな」
「いえ、お気になさらず……二度と来ないのであれば問題はありませんよ」
微笑みながら言う彼女だが隠しきれない侮蔑と嫌悪を感じた。
今まで来ていなかったがこんな状態だとは。
宿を出た私は他の宿を通行人に聞き人間として宿を取り二階の部屋に入る。
随分ひどいものだな、数十年前までは共に暮らしていたというのにな。
そう思いながらモー乳を取り出して飲む……うむ、美味い。
モー乳を飲み終えた私は宿に夕食はいらないと伝え、食事がてら町を見て回る事にした。
見た感じではかなり広い都市だからな。
暖かい日差しの中、私は町中を歩き出した。ウルグラーデも大きかったがここは更に大きそうだ。
しばらく歩いていると質素な服を着ている人間以外の種族、ここの言い方だと亜人種がそれなりに居るのが分かる。
みんな首、手首、足首の何処かに輪を付けている。周囲の扱いから察するに彼らが奴隷なのだろう。
死ぬほどではないようだがあまり状態は良いようには見えない。
奴隷は安いのか?安く簡単に手に入るなら使い捨てでも良いかもしれないが、高価で使える奴隷であったならそれなりの待遇をして力を発揮してもらった方が良いと思う。
それと彼らが付けている輪から魔力を感じる、魔道具か。
奴隷に付けているのだからろくな物ではなさそうだが。
周囲を眺めながら歩いていると自由神の神殿がある。いつ出来たかは知らないがもしかしたら巫女達を集めた時にここにも来ていたかもしれない。
今ほど大きい町では無かっただろうが、分かる訳が無いな。
あれから町並みを見ながら歩いていたのだが、宿でどんな施設があるか聞けばよかったと考え、一度帰る事にした。
宿で従業員に話を聞き、部屋で聞いた施設の整理をする。
王城、自由神神殿、宿屋、共同浴場、食料品店、賭博場、闘技場、売春宿、奴隷商店、トロトス魔法学校、王国戦士団本部、王国戦士団各詰め所、王国魔法士団本部、王国魔法士団各詰め所、ギルド商会本部、飲食店、武防具店、魔道具店、錬金術店……。
この都市にやって来た者が行きそうな主な施設はこれ位らしい。
従業員が言うには住んでいる者もすべて把握していないらしく、小さい店などは分からないと言っていた。
取り合えず聞いた所から選んで立ち寄ってみようか、どこに行くか……。
まずは行った事が無い所に行くか……よし、まずは奴隷商店に行こう。
今からでは時間が足りなそうだし、明日の朝に行こう。
翌朝を迎え、朝食を取り宿でここから一番近い奴隷商店を聞いて向かう。
移動のための馬車に乗り、降りた場所からしばらく歩くと、大通りに面した分かりやすい場所に店はあった。
「いらっしゃいませ、どのような奴隷をお探しで?」
店に入ると複数の店員が客の相手をして居たがすぐに人間の女性店員が話しかけてくる、良く見ると彼女も奴隷のようだ。
「奴隷を買いに来るのは初めてなんだが、まずは奴隷の説明を聞きたい」
「かしこまりました。ではこちらへ……ご説明させていただきます」
そう言って彼女は私を並んでいるソファの一つに案内し説明を始める。
「私どもの店舗で奴隷を実際に見て選んでいただき、設定金額をお支払い頂きます。その後個室にて隷属魔法による主人の変更と奴隷具の装着が行われます」
「奴隷具とはなんだ?」
私が質問すると彼女は左手首についた輪を私に見せながら答える。
「奴隷具とは隷属魔法の解除を防ぐ魔道具です。外そうとしたり隷属魔法の解除をしようとすると激痛を与えます……ほとんどの場合激痛に耐えられなくなり諦めるか気絶します」
「自殺などは?」
「他者による攻撃や事故では死んでしまいますが隷属魔法によって命じられない限り自殺は出来なくなっております」
隷属魔法の解除に対抗する魔道具を作ったんだな。
淡々と答える彼女は説明を続ける。
「奴隷の価格は年齢、容姿、体型、種族、能力などで変わります」
そう言いながら奴隷のリストを見せて来る、彼らで言う所の亜人種が大半だな。
「奴隷になる者はどういった理由がある?」
「罪人や借金が主な理由です……親が子供を売る。またはその逆あるようです」
淡々としているが親が子を売るというあたりで少し表情が暗くなった気がするな。
「他には奴隷になる者は居ないのか?」
「他と言いますと?」
彼女は首をかしげ聞いてくる。
「村を襲ったり誘拐したりといった事で奴隷になる者は居ないのか?」
私がそう言うと周囲が一瞬静まるが、すぐに騒めきを取り戻す。
「当店ではそのような奴隷は扱っておりません」
「その言い方だと他の店では居ると言う事になるが」
「いえ、それは……」
彼女が言葉に詰まると、彼女の背後から身なりの良い青い短髪の痩せ気味な男が近づいてくるのが見えた。
「お客様、ここからは私がご説明いたします……お前は他のお客様のお相手をしてきなさい」
男の言葉に「かしこまりました」と答えて彼女は席を立った、代わりに男がソファに座る。
「誰だ?」
そう言うと彼は微笑んで言う。
「店主のスレイル・フリズンと申します。どうかお見知りおきを」
「そうか、私は名乗らないがよろしく頼む」
そう言うとスレイルは頷いて答える。
「構いませんとも。そういったお客様もいらっしゃるので」
「そうか、所でこの奴隷の一覧なのだが亜人種が大半だな」
「ええ、私どものメインは亜人種ですので。他の町の亜人種奴隷を集めております」
微笑んだまま説明をする彼。
取り敢えず聞けることは聞いておくか、本当の事を言うかは分からないが。
「ルセリア神王国には亜人は奴隷以外ほぼ居ないと言って良いよな?」
「……そうですね」
何かを感じたか言葉に間が空く彼。
「居ない筈の亜人が罪人として、借金をしてこの国では奴隷になるのか?」
彼は苦笑いをしながら私に言う。
「お客様もこの国の人間であるならお分かりでしょう?亜人種は存在が罪なのです……つまり全員が罪人なのですよ」
いきなりおかしな事を言い始めたぞ、どうすればここまで考えが偏るんだ。
私の内心をよそに彼は続ける。
「その罪によって彼らは我々人間の奴隷になる訳ですね。罪人の村を見つけたのなら裁かなくてはなりませんから」
これは、余程統治者のやり方が上手かったのかそれとも魔法が関わっているのか……。
「一つ聞きたいのだが、その考え方は一般的な物なのか?」
「ええ、多少の差はあるかもしれませんが一般的だと思いますよ?」
質問した私に「何を当然の事を」と言いたげに答える。
「お客様もしばらくここに住めば亜人の罪深さが、奴隷の良さが分かると思いますよ」
そう言って両手を胸の前で組んで笑うスレイル、罪人が奴隷になるのは自業自得かもしれないが存在が罪と言うとはな。
「そうか、良く分かった。今度は買うつもりで来させてもらおう」
「お待ちしておりますお客様」
挨拶をかわして奴隷商店を出る。この状態で現在出来ている他種族の国とぶつかったら戦争にしかならない気がする。
それならそれで面白そうだが……さて次はどこに行くかな。
それから賭博場に行く事に決めた私は、町の賭博場の一つにやって来た。
「ガキかよ……いらっしゃい。好きな席について参加しな」
冒険者か傭兵か?武装した男が入り口に立っている。
「初めてやるんだが、説明は聞けるのか?」
「中に居る誰かに聞きな、二つ出来るゲームがあるから好きな席に座ればいい」
中に入るといくつかのテーブルがあり一つのテーブルごとに主催者が二人ずつ居て、取り囲むように人が座っている。
私は空いていた席に座ると主催者にやり方を聞く、見た目が子供なので軽く驚かれたが説明してくれた。
千ウェンから千刻みでかける事が出来る。
サイコロと言う正方形に切り出した骨に一から六までの数字が振ってありそれをコップに入れて振り、出た数字の合計が偶数か奇数かを予想するゲームらしい。
かける金額をテーブルに置き手元に配られた木の棒を偶数なら縦に、奇数なら横にして置いた金の手前に置き、当たれば掛け金が二倍になり外れれば奪われる……と。
「もう大丈夫だ、始めてくれ」
「では再開します」
私が言うと賭けが再開する。
奇数にしてみようか、千ウェン……中鉄貨一枚をテーブルに置き棒を横にして置く。
「二の二の四、偶数だ」
私の前に置いた金が回収される。
勝とうと思えばいくらでも勝てるだろうが面白くなくなるからな。
「次だ、さあかけてくれ」
主催者の言葉に他の参加者が賭けて行く、次も同じ千で奇数だ。
「三の一の四、偶数だ」
むう、当たるまで奇数で行くか?変えるべきか……。
「次だ、かけてくれ」
千で奇数だ、そろそろ来るはず。
「六の五の十一、奇数だ」
当たった。私の元に二千ウェン戻ってくる……これは普通にやったら儲けるのは難しいな、遊びでやめておくべきだ。
次はトランプと言う四種の絵柄ごとに一から十三の数字が書かれた五十二枚のカードといくつかの追加カードで遊ぶものらしい。
掛け金は百ウェンから百刻みで、役と言う決まったカードを揃えて勝敗を決めるらしい、役を覚えて勝負開始だ。
まずは百ウェンかけて参加する……五枚の手札が配られる、十、四、一、二、三か……ここは十を捨てよう。
次に来たのは一だった、私の負けか。
その後数回やったがこちらも勝つのは難しかった、カードを手に入れる事が出来るのなら家で勝ち負けだけ競って遊ぶ方がよさそうだ。
手に入れる方法は無いか聞いた所、店で普通に売っていると言われたので店に行って購入した。
私は今日はここまでにしようと馬車に乗り、宿へと向かった。
宿で一晩を過ごし、朝食を宿の一階で食べていると宿の入り口から武装した二人の男女が入って来た。
二人は宿の従業員と何か会話をしていたが、従業員が私を指さすと二人は私の元へやって来て、男の方が私に話しかける。
「食事中に申し訳ない。我々は王国戦士団の者です……聞きたい事があるので一緒に来ていただきたい」
「申し訳ないと思うなら食べ終わるまで待ってくれ」
私がそう言うと彼らは難しい顔をして黙る、待ってくれるのか。
「待たせたな、用はなんだ?」
食事を終えた私は二人に聞く。
「貴女に奴隷商店での営業妨害と賭博場での不正の疑惑がかかっています」
男が姿勢を正したまま答える。
「どういう事だ?」
「どうと言われましても言ったままの事ですが?」
私の言葉に女が言葉を返す。
奴隷商店では確かに少々突っ込んだ事を聞いたが、賭博場では私は負けているぞ。
「私は賭博場では負けているんだが不正をして賭けに負けるのか?」
「賭けの勝ち負けと不正の有無は関係ありません」
「そもそも不正をしてないと思うんだが、内容は?」
「貴女に話す事ではありません」
どうもおかしい、私を無理矢理連れて行こうとしているように感じる。
そう考えていると男の方が話しかけてくる。
「もしも貴女が無実であるならば謝罪いたします。私達についてきていただけませんか?」
断るのは簡単だが、何があるか分からないのは面白そうだ。
「良いぞ。連れて行ってくれ」
「助かります」
了承すると男が微笑む、女の方は真剣な顔のままだ。
宿の前に止まっている馬車に乗り込むと何処かに出発する。
「どこに行くか聞いても良いか?」
「王国戦士団の本部です。そこで詳しいお話を致します」
男が答える、見に行こうと思っていたがこんな形とは思わなかった。
何があるのかと少し期待しながらどれくらい経っただろうか、ゆっくりと馬車が止まった。
「到着いたしました……どうかこちらへ」
先に降りた二人の後について行くと屋敷のような……屋敷と言うより学校の事務所の様だな。この建物に入るようだ。
連れていかれた応接室に入りソファに座ると待っているように言われ、私を連れて来た男女の団員は退室していった。
しばらく待っていると使用人らしき人物がやって来て紅茶を入れてくれた。
紅茶に何か入っているようだ。
私は薄く微笑みを浮かべて紅茶を飲む。
睡眠薬だな、そう言えば相手の思惑に乗ってやった事が無いような気がする。
性格が悪いと自分でも思うが寝たふりをしてみよう。
寝たふりをしてしばらく待つと扉が開いた。
目を瞑ったまま探ると感覚で探ると、高そうな装備の男女二人とそれより劣る装備の女一人が入ってくる。
「寝ているわね。本当に真っ黒ね……まさか見つかるなんて、ジークから連絡が来た時は驚いたわよ」
高そうな装備の男はジークと言うのか……明るい赤色の髪を短く切りそろえた男だ、優しそうな顔だが体格は良いな。
「僕も最初報告を受けた時は半信半疑だったんだけど……奴隷商店と賭博場の者がほとんど見ていたようでね、見間違いでは無いと判断した」
「ミアリス団長、始めてもよろしいですか?」
少し装備の劣る女が高そうな装備の女の方を向いて話す。
と言う事はこいつはミアリスか……濃い金髪を長く伸ばした女。
鋭い目つきの一般的な体格の女で胸は私並みに無いな。
団長と言っていたからこの中では一番階級が上か?
「ええ、すぐにやって頂戴。まずは奴隷化しなければ始まらないわ」
ミアリスが言うと恐らく部下の女が私に魔法をかける。
隷属魔法をかける気か、正直何もしなくても効かないと思うが……。
かけられた事で隷属魔法は理解した。
改良してこの女にかけてやろう……女の魔力を押し返して一気に隷属魔法をかける。
すると女が腕に着けていた腕輪が砕け散る、なんで砕けたんだ?
「魔道具が!?お前!何が起きた!?」
男……ジークが異常に気が付いて私の奴隷に声をかけてくる。
私は目を開けて起き上がる。
「答えていいぞ」
「なっ!?」
私がそう言うと二人の驚きの声が聞こえ、奴隷になった女が震えながら話し出す。
「隷属魔法を……返されました……私とは比べ物に、ならない魔力で……隷属魔法を防ぐ魔道具も……」
咄嗟に構えて離れたミアリス、ミアリスはゆっくりと扉を開けようとする。
「逃がすわけ無いだろう」
「ちっ!」
舌打ちをするミアリス、すでに音も遮断し物理的にも通る事は出来ない。
おまけに人払いの魔法もしっかり使っている。
「あっ……」
声がした方に目線を戻すとジークが私が奴隷にした女の心臓のあたりを突き刺していた。
私を奴隷にしようとした女だ、特に守ってやる気は無い。
「ふむ。敵に回ったなら処分した方がいいと言う事か?」
「お前は何者……いや、何なんだ?」
そう尋ねる私にジークが剣を向けながら言う。
こいつ中々良い剣を持っているな、魔法金属製の剣だ。
「お前達に言う気は無いな。それよりもどうせ逃げられないのだから私の質問に答えてくれないか?」
「それは……どうかな!」
ジークと言ったか?こいつは身体強化に加えて剣にも魔力を通している。
一瞬でソファに座っている私に接近して喉を突いてくる、獣人並みには早いな。
私は首の手前で剣の切っ先を摘まんで止める。
「っ!?」
一瞬驚愕するような表情をしたジークだが、即座に剣を手放し横にそれる。
「ウインドブレード!」
直後にミアリスの魔法が放たれる。
魔法の発動を感じていた私は自分の表面に薄く防御魔法をはる、なくても平気だと思うが一応戦いだからな。
ミアリスのはなった魔法は天井から床まで調度品なども含めて私以外の全てを縦に切り裂いた、私がかけた結界があるから部屋を貫通はしていないだろう。
「くくっ」
「くっ!二人がかりでこれか!」
口元を緩ませる私に予備の剣を抜いていたジークが叫びながら切り込んでくる。
首を狙った横薙ぎをしゃがんでかわしつつジークが手放した剣を拾う。
その瞬間私の立っている場所に上から石の杭が複数落ちて来るが即座に後退し、ミアリスに多分死なない程度に押さえた風の爆発魔法を撃つ。
ミアリスは防御魔法を張りながら飛びのいて威力を抑えたようだ。
結界を張っておいてよかった。何もしていなければ部屋の外まで被害が出ていたな。
ジークの攻撃を捌きながら空中に風爆弾を作りミアリスを牽制する。
私が相手だから分かりにくいがこの二人は強いと思う。
「強いなお前達は、もう少し楽しませてくれ」
「そう言われてもっ!嫌味しか聞こえないよっ!」
大抵の相手はジークの最初の一撃で突き殺されているだろう。
ミアリスのウインドブレードは並みの防御魔法や防具はそのまま切断する威力だった。
連携も私でなければ対応出来たか怪しいな……この二人は私が知っている中でも上位の強さだな。
「まあ私を奴隷にしようとした事は許す気は無いが」
「どうしたものかなっ!折角手が出せそうな巫女が来たって言うのにこんな化け物だとは……巫女ってのは皆こんなに強いのかっ!?」
私と斬り結びながら言葉をこぼすジーク。
みんなこの強さだったら逃げてはいないと思うぞ。
しかしこいつ、私を巫女と言ったな。
「ジークと言ったな?お前何故私を巫女だと思っているんだ?」
「……むぐうっ!?」
私は横やりが入らない様にミアリスを拘束して問いかける。
「ミアリス!?」
何もないように見えるのに全く動けず声を出せない彼女を見て声を上げるジーク。
「はは……最初からやろうと思えばやれた訳だ……この立場になってここまで馬鹿にされるなんて思って無かったよ……」
彼は構えをとかなかったが疲れたような声で言う。
「もう一度聞くが……何故私を巫女だと思っている?」
私を悔しそうに見ている彼にもう一度問いかける。
「……その綺麗な黒髪と黒目を見て巫女以外に何を思えと言うんだい……?」
諦めたのか溜息をついて答える……黒髪黒目……なるほど。
「現在正統な巫女である黒髪黒目の巫女はウルグラーデにしかいない……そして君のその髪と目は本物にしか見えない……それだけの事だよ」
そうか……黒髪黒目は元々この世界にはいない、それを隠しもせず人間の首都を歩くなんて自分は巫女だと言っているような物か。
しかし狙う理由は……そうか。
「正統な巫女の血が欲しかったと言う事か?」
そう言うと彼はミアリスをちらりと見てから言う。
「そうだよ……数十年前に各地の巫女には逃げられてしまったらしいからね。ウルグラーデも今の所手も出せないみたいだし……昔大敗したらしいから慎重になってるんだろうね」
「私を狙ったのは失敗だったな」
「……本当にね」
彼は覚悟を決めたような顔になっている。
「聞く事は聞いただろ?殺すなら殺しなよ。実力差ははっきり分かった……遊んでただけなんだろ?」
私はミアリスの拘束を解く、しかし彼女は攻撃しようとしない。
「ジーク……」
「来るなミアリス」
ミアリスはジークに近づこうとするが止められる。
「貴女を奴隷にしようと考えたのは僕だ、僕の命で彼女は見逃して欲しい」
「ジーク!?」
自分の命と引き換えにミアリスを助けて欲しいと言うジークと驚き声を上げるミアリス。
「ん?死にたくないならなぜ私に襲いかかったんだ?」
私がそう言うと二人は黙ってしまった。
奴隷にしようとしなければ、殺そうと襲いかかってこなければ普通に会話したというのに。
「お前達では私が何もしなくても傷一つ付けられないだろう。だがそれでも明確に命を狙って襲って来たんだ、殺されて当然だと思わないか?」
「ぅ……」
口ごもる彼、この二人も戦っているのなら自分の言っている事が受け入れられないのは分かっているんじゃないのか?
「なら……なら私を奴隷にすればいいわ!何でもさせればいい!どう!?」
「ミアリス!?何を!?」
「このままじゃ殺されるわ。生きるには彼女の……いえ……ご主人様の奴隷にだってなるわ……あなたに死んでほしくないのよ」
「僕は君を何とか助けたい……」
ミアリスが突然叫んだかと思うと会話を始めた。
こいつらとの戦いは中々楽しかったが奴隷として欲しいかと言われると特に欲しくもない。
目の前で何やら演劇の様な事をしている二人を見ながら考える。
「彼は王国の戦士団の、私は魔法士団の団長よ。この国や面白そうな事の情報が手に入る可能性もあるわ」
演劇から復帰したミアリスが私を見て言う。ジークも団長だったのか、巫女一人によく出て来たな。
「ミアリス!?それは……!」
「ここで殺される位なら国も売るわよ。私はあなたと生きたいの……それに奴隷になったら拒否権なんてないもの」
「それなら僕も奴隷になるよ」
「ジーク……」
一人増えた。しかし情報か、確かに私一人ではどうにもならない事かも知れない。
「良し。お前たち二人を私の奴隷にしよう」
「私はミアリス・イムと申します、ご主人様」
「僕はジーク・メルテックと申します、ご主人様」
二人は跪いて言う。
「クレリア・アーティアだ。それとご主人様はやめろ」
こうして成り行きで王国の戦士団と魔法士団の団長を奴隷とした。
二人には死に関する事などをまず縛り、奴隷になった事を私の許可なく他言しない事、私が来た時は怪しまれない様に対応する事を命令する。
それから私から聞きに来た時のみ伝え、情報は送らなくても良い事。
いつも通りに生活して良い事など、色々と決めて早々に町を出た。
今度来る時は髪と目の色を変えて来よう。
サイコロ賭博は実際に作者が予想してランダムダイスで行っています。
トランプも無料のポーカーゲームで実際にやった結果です。
わざわざランダムっぽく考えるよりも実際にやった物を書けば楽かなと思いました。
ジークとミアリスを殺さずに奴隷にするのが大変でした、主人公的には殺して終わりでも良いのでどうにか生かす選択をさせるために無理があったかもしれません、彼らの情報が話に登場するかは不明です。