少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。



022-02

 

 ジークとミアリスを奴隷化した後、私はルセリア神王国を去りウルグラーデに戻って来た。

 

 取りえずジークが言っていた事を確認しよう。

 

 私はティリア魔法技術学校のケインとミナの元へ向かう、聞けるのはあの二人位しか思いつかない。

 

 

 

 

 

 

 「突然すまないな」

 

 「いえ、師ならばいつでも来ていただいて構いませんよ」

 

 私は校長室のソファに座り出された紅茶を飲む。

 

 「実は聞きたい事があってな」

 

 「何よ、聞きたい事って」

 

 ケインの隣に座っているミナが問う。

 

 「今までルセリア神王国の首都ルセリアに行っていたんだが」

 

 「え!?」

 

 「……問題は無かったのですか?」

 

 行く事を伝えていなかったせいか驚くミナと心配するケイン。

 

 「そこで王国の者に奴隷にされそうになったのだが……」

 

 「何やってんのよ……」

 

 「私は心配していませんが」

 

 ミナは呆れた声を出し、ケインはそんな事を言う。二人とも私の正体を知っているためか落ち着いているな。

 

 「ケイン。お前さっき私の心配をしたのではないのか?」

 

 「怒らせたら一瞬で首都ルセリアが消えてしまうかもしれないと……」

 

 心配そうな表情のケイン。

 

 「お前、私を何だと思っている?」

 

 「自分勝手で我が儘な人外だと思っております」

 

 ケインが微笑みながら答えた。

 

 「間違ってはいないが今の所人間を滅ぼす気は無いぞ?」

 

 「今の所って……そんな事をサラッと言う上に本当に出来ちゃうから困るわよね……」 

 

 ミナが紅茶を持ったまま溜息を吐く。

 

 「やらないぞ?」

 

 「はいはい」

 

 軽く流すミナ、私は聞きたい事を改めて聞く。

 

 「で……だな。その時私を狙った者が私を巫女と呼んでな?聞いたんだ、「何故私を巫女だと思っているんだ」……とな」

 

 二人は……なんだか微妙な表情をしているな。

 

 「そしてそいつは「現在正統な巫女である黒髪黒目の巫女はウルグラーデにしかいない、でもその髪と目は本物にしか見えない」と大体こんな感じの事を言った」

 

 二人は黙ってしまった、ミナが何やら残念な者を見るような表情をしている。

 

 「……それで師は何を聞きたいので?」

 

 「ウルグラーデでも私の事はそう思われていたりするのか?」

 

 ケインの質問に答えると二人は呆れたような表情をする。

 

 「クレリア……貴女もう少し自分の事気にした方がいいわよ?」

 

 「そうですね……師は私が若い頃から周りの事をあまり気にしない方でした……いえ、気配りをする時はするのですが……」

 

 「ん?んん……?」

 

 頬杖をついて言うミナと目頭を揉みながら言うケイン、二人の反応に変な返事をしてしまう。

 

 「ハッキリと言わせて貰うと、貴女ウルグラーデの人達に森人のハーフ巫女だと思われてるわよ」

 

 「森人のハーフは自分で決めた設定だからな、しかし巫女だと?」

 

 そう言った私にケインとミナが言う。

 

 「師は自分の姿を見た事がありますか?正統な巫女である黒髪黒目の巫女はウルグラーデにしかおらず、師は見事な黒髪黒目です」

 

 「ここまで言って分からないの?貴女は凄いのか間抜けなのか……黒髪黒目は巫女の血統だけ……そこで黒髪黒目の貴女がうろついてたら巫女としか思わないでしょ?」

 

 ああ、普通に生活していたが確かに周りの者からするとそう言う事になるのか。

 

 「では、誰も私の素性について聞いてこなかったのは?」

 

 「黒髪黒目は巫女しかいないのにわざわざ「巫女ですか?」と聞くと思う?」

 

 「絡まれたりした時、周囲の者が助けてくれたり治安維持隊の到着が早いのは?」

 

 「神の巫女が絡まれてたら大抵助けるだろうし、すぐ治安維持隊に連絡するでしょうね……絡んで来た奴らは外から流れて来たか、神を信じない奴らだったんじゃない?」

 

 私の質問にミナが次々答える、開き直ってこのまま過ごそう。

 

 「ウルグラーデの巫女達は貴女の事を知って居る者がまだ生きていますし、否定しないでしょうしね」

 

 ケインが補足してきた。

 

 「ああ……あの時の」

 

 「はい。師が巫女達を集めて姿を隠した時にウルグラーデの神殿に預けられた巫女達です」

 

 やはりあの時の巫女達か。

 

 「まだ若いはずだよな?」

 

 「いえ……皆さん人間としてはもうよいお歳ですよ?師は寿命が長すぎて時間の感覚が少しおかしいですね」

 

 微笑みながら言うケイン。

 

 「森人もそれなりにおかしいと思うが」

 

 「そうかもしれません」

 

 それを聞いて苦笑いをするケイン、ミナも笑っている。

 

 しかし私は自分が思っていた以上に目立っていたんだな。

 

 髪と目の色を変えるのはウルグラーデ以外の人間の国でやっておけば平気か?

 

 それ以外は今まで平気だったしな。

 

 

 

 

 

 

 ある日、私は何となくガンドウに訪れた。道中雨に見舞われた、あまり雨は好きでは無いが特に問題は無かった。

 

 町にも雨が降っていたようで、到着した時には晴れてはいたが道や町並みは濡れていた。

 

 濡れた町並みが昼の日光をキラキラと反射させている。

 

 「お嬢!来てたのか!?……お嬢ならもしかしたら……」

 

 ガンドウの自宅に向かって歩いていると横から声がかかる。

 

 振り向くとガンドの弟子の一人が駆け寄って来た……最後の呟きは聞こえたぞ、何かあったな。

 

 「ついさっき着いた所だ、それで?何があった?」

 

 そう言うと彼は気まずそうな顔をする。

 

 「……なんでわかったんだ?」

 

 「聞こえない様に言ったつもりだろうが呟きが聞こえたぞ」

 

 「あー、すまん……これでどうにかなるかもって思ったらつい」

 

 頭を掻いてうつむく彼、話は聞くだけなら聞くぞ。

 

 「で?何があった?」

 

 「町の一つが魔物の群れに襲われて壊滅したんだ……逃げてきた奴が言うにはデカい蟻みたいな生物がわいて来たらしい」

 

 いつもより声が暗い、まあ町が一つ潰れたとなれば当然か?

 

 「魔物か?」

 

 「多分な……詳しくはガンドさんから聞いてくれるか?今は会議室に居ると思う」

 

 「分かった」

 

 行く先を会議室に変えて歩き出す、蟻か……小さい蟻と似ているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 会議室に着いた私は扉を数回叩き返事を待って入っていく。会議室にはガンドを始めとした国の運営陣が揃っていた。

 

 「お嬢じゃねぇか、いつ来てたんだ?」

 

 「ついさっきだ、自宅に向かう途中お前の弟子の一人に話を聞いてな。町が一つ潰れたらしいな?」

 

 声をかけて来たガンドに答える、彼は苦い顔をした。

 

 「お嬢に話したのか……まあ構わねぇか」

 

 「詳しくはお前に聞くように言われたのでな、聞きに来たぞ」

 

 そう言うと私は空いている席に座った、私は相談役の様な物なので文句は出ない。

 

 「俺達でどうにかするべきだと思うが……もし手伝ってくれるんなら助かるのは間違いねぇ」

 

 「では、私が説明いたします」

 

 そう言って来た大地人女性にガンドが頷くと、説明を始める。

 

 「約三週間前、私達運営陣に報告が来ました。町の一つが壊滅したと……私達は報告を聞いてすぐに調査部隊を送りました」

 

 三週間前か。

 

 「生き残りの証言では町の拡張で山を掘っていた所、空洞につながり……そこから蟻のような大きな生物が這い出して来たようです。大きさは恐らく八十センチ前後だそうです」

 

 そう言って両手で長さを表しながら話す彼女。意外と小さい……いや、一般的な蟻の大きさを考えればかなり大きいか。

 

 「町に偵察に行った部隊の報告によれば……大半の者は食い殺され餌になったようです。そして魔物と思われる蟻は一匹一匹がそれなりに強い上に数があまりにも多いようです。偵察部隊も町に蟻が溢れている状況を目撃しすぐに撤退を選択したそうです」

 

 町は蟻の魔物の巣になったかも知れないな。

 

 「現在壊滅した町の付近の他の町の住人も避難しています。そして現在どうやって蟻を駆除するかを話し合っています」

 

 「広範囲を攻撃する武器は開発していないのか?」

 

 私が質問するとガンドが答える。

 

 「魔法なら出来るんだろうが武器はな……魔法武器も聞いた感じじゃ数が多すぎて無理だ……周囲の魔力を使ってどうにかできれば良いんだが、ないものねだりをしても仕方ねぇ」

 

 魔道弓で捌ける数でも無いだろうしな。まあ彼らだけの問題で収まらないかもしれないし手を貸すか、試したい魔法もあるし。

 

 「お前達が良ければそいつらを私の魔法の実験台にしていいか?」

 

 「お……おう?良いけどよ……町ごと消えて無くなったりしないよな?」

 

 そう提案すると、不安そうな表情をするガンド。

 

 「消滅はしないはずだ……それにそんな事を言っている場合ではないかもしれない」

 

 「どういうこった?」

 

 彼は私に尋ねる。

 

 「ガンド様、クレリアさんはこのまま蟻が増え続ければ私達はもちろん、地上に居る多くの生物が飲み込まれるかもしれないと危惧しているのだと思います」

 

 先程説明をしていた彼女が私の考えていた事を代弁してくれた。

 

 「彼女の言った通りだ……もしかしたら事は大地人だけの問題では無くなるかもしれない。さっさと駆除しないとどうなるか分からんぞ」

 

 彼女と私の言葉を聞いて彼は私に言う。

 

 「町は建て直せばいいだけだ。好きにしてくれ……俺達が引き金を引いちまった問題だが……どうか頼む」

 

 「気にするな、何もしなくてもいつかは地上に出て来ただろう。それに魔法の実験台が手に入った」

 

 頭を下げるガンドに薄い微笑みを浮かべて言う、どれ程の効果があるか楽しみだ。

 

 私は援護や同行者はいらないと告げ、早速壊滅した町に向かった。

 

 

 

 

 

 

 随分大量に居るな。

 

 上空から壊滅した町を見ると、蟻達が建物の上をせわしなく動いている。

 

 大地人の死体は無いな……運ばれたか?

 

 蟻達は山肌に出来たいくつかの穴に出入りしているようだ、どれかが町の住人が開けた穴で残りは多分これまでの時間で増えた物だな。

 

 さて、実験をかねて駆除するか。

 

 私は早速魔法を発動する。

 

 新しく作った雷の魔法だ、まずは軽く雷撃。

 

 空中から地面に落ちて着弾地点から円状に雷が広がる、蟻達はびくりと震えると動かなくなる。

 

 次は周囲に影響を出さない魔法の実験だ、雷槍……まあ呼び方はどうでもいいか。

 

 放たれた雷の槍が一匹の蟻に突き刺さる。

 

 蟻はすぐに煙を吹いて地面に崩れ落ちる。周囲に大量に居る他の蟻は何ともなさそうだ、成功だな。

 

 後は雷球か。アリの少し上に雷の塊が発生する、周囲のアリに次々と雷を放ちながら私の思った通りに動く。

 

 中々上手く行ってるな。さて次は広範囲の攻撃魔法だ……周囲と攻撃する範囲を分断して内部に雷を充満させる魔法だ、名前は……雷嵐でいいか。

 

 そう考えている私の眼下では町が丸ごと結界に包まれ、雷によってまばゆく輝いている。

 

 魔法が終わり、結界を解くと熱風が広がった。

 

 町を見ると蟻は全て燃え尽き、町全体が溶けている。

 

 ある程度強くすると雷も強力な火の魔法とあまり変わらない様な気がする。

 

 あまり町は壊さないと言ってしまったが、これはすべて建てなおしだろうな。

 

 後で謝ろう。

 

 私はそう思いながら巣穴の方へ向かい、穴の一つに到着した。

 

 この穴は流石に私でも入れる大きさでは無い。

 

 巣穴の中の気配を探ると地下深くにまだ蟻が残っている、少し違う個体が女王蟻か?

 

 入れないならここから焼いてしまおう。

 

 私は巣穴の入り口から炎を内部に送り込む。

 

 しばらく炎を送っていると周囲の山肌が熱を持ち始めた。

 

 しかし地下の温度はまだ上がっていないようで、蟻が生きて動いている気配がする。

 

 火力と勢いをもう少し上げるか。

 

 送っている赤い炎が黄色くなり始める、やがて白くなり一気に勢いを増す。

 

 穴の周りは溶け始めているが届くだろうか?そう思った直後に生きていた蟻の気配が消えてなくなる。

 

 私はすぐに炎を止めた。

 

 水でも良かったか?しかし炎の方が効果が高そうだからな。

 

 熱を出す魔法は強力だがすぐ周囲が燃えたり溶けたりする、一見耐えられそうな物でも意外と溶けてしまう。

 

 女王蟻が消えればもう平気なはずだが、一応周囲に生き残りが居ないか探っておこう。

 

 

 

 

 

 

 周囲の確認も終えて蟻の駆除をガンド達に報告した後、彼らは町の復旧に取り掛かる事を決定し調査隊を送り込んだ。

 

 その後、調査隊から町の状態の報告を受けたガンドはすべての建物の取り壊しと再建設を決定し、すでに再建設の計画が始まっている。

 

 「すまないなガンド。結局町は建てなおしになるのだろう?」

 

 私はガンドの執務室で詫びた、建物を駄目にしてしまったからな。

 

 「気にすんな。蟻共をほっとく方が間違いなくヤバかったんだ……言ったろ?建て直せばいいだけだってよ、死んじまった奴らの仇を取ってくれてありがとよ」

 

 彼は多少疲れたような表情で笑って言う。

 

 「そうか」

 

 私としては実験が出来て満足だ。仇を取るという考えは無かったが彼の気が済むならわざわざ否定する事も無い。

 

 「しっかし……何やったんだ?すでに冷えてたらしいが……石の建物も地面も町が丸ごと溶けていたと報告が来てるぞ?」

 

 「魔法の実験だ」

 

 「むぅ……俺達は苦手だが……やっぱすげぇんだな魔法ってのは……」

 

 顎に手をやって唸るガンド。

 

 「使い手による、私はこの世界では上位だと思っている」

 

 上位だとは思うがどこにどんな実力者がいるか分からないからな。

 

 「本当にそうなんだろうな」

 

 彼は笑いながら言う、その後お茶を飲み私はガンドウの自宅に帰ってしばらく滞在した。

 

 

 

 

 

 

 しばらく滞在していたガンドウを離れ、私は現在森林国家ユグラドの首都ユグラドに来ている。

 

 国は成長を続けているだろうか?

 

 もう国の発展に関わっていない私は国がどの程度大きくなっているのか把握していない。

 

 私は最近、この国に来た時は世界樹の元で過ごす事が多くなった。

 

 私が会いに行くと何となく嬉しそうな気配を感じるし私も居心地がいい。

 

 太い木の枝に座り木の幹に背を預けてのんびりと過ごす事が多くなった。

 

 夕方近くに世界樹の元に向かうと、大勢の森人が世界樹に集まっている。

 

 「何をやってるんだ?」

 

 「あ、クレリアさんこんにちは」

 

 私は近づいて森人の一人に声をかけた、声をかけられた彼は私を見て挨拶をする。

 

 「実はですね。世界樹に魔物らしき何かが住み着いているようで……目撃した者が言うにはやや緑がかった黄色をしたそこそこ大きい生物らしいんですが……」

 

 「分かっていないのか?」

 

 そう言うと彼は困ったような顔をする。

 

 「一部しか見えなかった上にあっという間に世界樹の上の葉の茂みの中に引っ込んでしまったらしくて……」

 

 「それでこの状態という訳か」

 

 私は世界樹の周りをゆっくりと飛び回っている森人達を見る。

 

 「これだけ大きい世界樹の中からそこそこ大きいとしても一匹の魔物を見つけるのはかなり難しくて、見つからないんですよ……」

 

 世界樹は今も成長を続けているようで気が付けばますます大きくなっている。

 

 もう他の樹と全く別物だ、空から見ても森の中から飛び出しているためかなり目立つ。

 

 魔物が住み着いているか……もしそうなら世界樹から助けを求める気配がしてもおかしくないと思うのだが……。

 

 世界樹の気配はいつもと変わらない、私を認識していつもの様に嬉しそうな気配を出している。

 

 世界樹自身は気にしていないようだが。

 

 「私がここでのんびりするついでに見て来るから全員戻ってくれないか?人が多いと出てこないかもしれないしな」

 

 「え?まあ、クレリアさんが言うなら構いませんけど……では近くの詰め所に居るので何かわかったら教えていただけますか?」

 

 「分かった」

 

 そして私の頼みを了承してくれた彼が声をかけて全員を集め、私が調べる事を伝えると、みんなは私が言うならと引き上げてくれた。

 

 さて皆が引き上げて私だけになったが、普通に探したら中々見つからないだろう。

 

 世界樹が大きすぎる。

 

 と言う訳で世界樹全体を気配察知した、やる気になれば簡単に見つける事は出来る。

 

 今は世界樹の上方の中心近くを進んでいるな、時々止まっては再び動いている、何かしているのか?

 

 さっさと捕まえるか。私は世界樹の上方に飛んでいき気配に近づく、巣を作っている鳥や他の動物を横目に目的の場所にやって来た。

 

 気配を完全に消しているため相手は気が付いていない、私は魔法で目的の生物を拘束する。

 

 「キッ!?」

 

 鳴き声らしき声を出してもがくが解ける事は無い、私は捕らえた生物をよく見る。

 

 大きさは一メートル前後で四足歩行の蜘蛛に近い体型だ。濃い緑色の大小二つ、合計四つの目を持っているようだ。

 

 頭や足など全身が緑がかった黄色い毛でおおわれている、少し触ってみよう。

 

 ほう、かなり肌触りがいい。

 

 私が触っている間も「キッキッ!?」と鳴いているが全身の毛のおかげか思った以上に可愛らしい見た目だな。

 

 可愛らしくても危険かどうかは分からない。殺しても良いが世界樹が無反応だったのが気になる。

 

 どうしようかと思っていると世界樹が困ったような、焦ったような気配を出し始めた。

 

 分かりやすく捕らえている魔物の頭にマジックボックスから取り出した剣を向けると、気配が強くなる。

 

 これはつまり……この魔物は世界樹にとって必要と言う事か?

 

 剣をしまうと気配は少し和らいだ、逃げてしまうと困るので脚以外の拘束を解く。

 

 「キッ?」

 

 脚以外が楽になったのを感じたのか不思議そうな声を上げる魔物、私は落ち着かせようと頭を優しくなでる。

 

 「怖がらせて悪かったな。害が無いのなら殺したりはしない」

 

 私は出来るだけ優しく声をかける、通じるとは思っていない。

 

 この私の行動に安心したのか世界樹の気配は落ち着いた。魔物も落ち着いたように見える、こいつは何を食べるのだろうか。

 

 私は肉や錬金用の植物などを魔物の前に置いてみるが反応しない、そして錬金用の昆虫を置いた時に反応を示した。

 

 「キッ!」

 

 前かがみになって虫の方へ行こうとする。こいつは虫が好きなんだな、他の物をしまって虫を少し増やして拘束を解いてやる。

 

 魔物は昆虫に向かって行き食べ始める。世界樹がこの魔物を気にしなかった、むしろ守ろうとする気配を発したのはこの魔物が他の害虫を食べるからかも知れない。

 

 世界樹にとってこの魔物はいて欲しい魔物な訳だ。となると名前が分からないのは困るな。

 

 「これからお前は毛蜘蛛だ」

 

 「キッ?」

 

 虫を食べている魔物に言うと反応が返って来た、取り合えず世界樹にとって害の無い魔物だと分かったからこの問題は解決だ。

 

 

 

 

 

 

 その後世界樹にとって害が無い事を詰め所に居る森人に伝える。

 

 当然だがエルフィにも連絡はいっていたようで、家に帰って風呂に入っているとエルフィが訪ねて来た。

 

 私は部屋に入ってもらい体を乾かして彼女の待つリビングへと向かう。

 

 「今日はなんの用だ?何か飲むか?」

 

 風呂上がりのモー乳を飲みながら言う。

 

 「飲み物はいらないわ。世界樹に住み着いた魔物について聞きたくて来たのよ」

 

 「ん?害は無いと伝えたはずだが?」

 

 私は彼女の反対側のソファにモー乳を置いて座った。

 

 「貴女、「害は無い」としか言わなかったでしょう?もう少し姿とかどういった魔物か知りたいのよ」

 

 そう言えばそうだったな、私の中で納得して終わらせてしまっていた。

 

 「悪かった、もう少し詳しく話すべきだったな。では今分かっている事を話そう」

 

 「ええ、お願い」

 

 そして私は現在判明している大きさ、外見や虫以外に食欲を示さなかった事や世界樹にとって必要な魔物なのでは無いか、といった話をした。

 

 「なるほど……虫しか食べないなら世界樹に問題は無さそうね」

 

 私の説明を聞いて安心したように言うエルフィ。

 

 「むしろ他の害虫を食べるからな、それが世界樹の助けになっているはずだ」

 

 「貴女の話だと結構可愛らしい見た目なのよね?見てみたいわ」

 

 エルフィは外見に興味がわいたのか見てみたいようだ。

 

 「普段は何処にいるか分からないし降りて来るかも分からないからな、難しいと思うぞ」

 

 「そうかぁ……」

 

 エルフィは残念そうではあったが納得し、雑談に移る。

 

 今回の事は問題が起きない様にすぐに森人達に説明された。

 

 その後、世界樹でのんびりしていると毛蜘蛛が私の隣にやって来て寝るようになり、私はその肌触りの良い毛に横たわるようになった。

 

 

 




 毛蜘蛛のイメージは「バチュル」で検索して頂くとイメージしやすいと思います、その姿を一メートルほどに大きくして色を変えてリアルにしたような感じですかね。

 大事になりそうな事件を実験のついでにサラッと片付ける主人公。

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