少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。



023

 

 私は現在ウルグラーデの自宅のソファに座っているが、寝ている女の子に抱き着かれて身動きが取れないでいる。

 

 「あら、ルーテシアはクレリアお姉ちゃんが本当にお気に入りね」

 

 「嫌という訳では無いが、なぜこんなに懐かれているのか理解出来ない」

 

 子を産んで五年ですっかり母親になったミナが私の飲み物を持ってきてくれた。

 

 子供が生まれてから時折私がケインとミナの娘であるルーテシア・イヌス・トリアムの面倒を見ていたため、ミナも必然的に私の家によく来るようになった。

 

 「生まれてからよく会っているからじゃない?」

 

 私の隣に座ってルーテシアの頭をなでるミナ。その表情は愛しい娘に愛を注ぐ母の顔なのかもしれない。

 

 「お前達夫婦が私にばかり世話を頼むからだろう」

 

 「だって貴女に預けておけば安心だし……世界で一番安全な場所と言っても過言じゃないもの」

 

 「まあ、引き受けた以上は預かっている間の安全は出来る限り保障するが」

 

 向かい合って私の膝の上に乗り、私の体に身を預けて眠る彼女を見る。ミナよりは薄い緑のセミロングで柔らかい髪質をしているため撫でると意外と気持ちいい。

 

 「話は変わるけど、新しい国が三つも出来ていたのね……ルセリアはどうするつもりなのかしら」

 

 娘の頭をなでながら話すミナ。

 

 「どうだろうな、この国は他の種族の事をすでに下に見ている。はいそうですかと交流するかどうか」

 

 「そうよね……娘が……この都市が巻き込まれないと良いけど……」

 

 心配そうに自分の娘を見る彼女。

 

 確かにルセリアに所属しているから狙われる可能性はある。その上戦ってもぎ取った自治権だからルセリア神王国にもあまり良く思われていないらしいな。

 

 奴隷達に聞いてみるか?手を出すつもりは無いがどうなっているのかは知りたいからな。

 

 

 

 

 

 

 私は姿を消して首都ルセリアにやって来た、私はジークの執務室に入り声をかける。

 

 「ジーク」

 

 彼は咄嗟に剣を抜く体勢になる、中々良い反応をする。

 

 「主?」

 

 「そうだ、見つかると色々面倒そうだから姿を隠して来た」

 

 今までに何度か来ているがジークは私を「主」ミアリスは「お嬢様」と呼ぶ。

 

 「今日は何の用だい?」

 

 ぱっと見は独り言を言っているようにしか見えないだろうな、言葉遣いは自然にするように言ってある。

 

 「取り合えずミアリスも呼べ」

 

 「分かったよ」

 

 そう言うと彼は部下を呼びミアリスに連絡をした、それぞれの本部が違う場所にあるからしばらくかかるか。

 

 そうして執務を続けるジークを横目に魔法を解いてソファでくつろぐ。

 

 すると部屋の扉がノックされた。

 

 「ジーク?来たわよ」

 

 「ミアリス一人か?」

 

 他の者が居ないか確認するジーク。

 

 「部下がいるけど?」

 

 「重要な事だ……君だけ入ってくれ」

 

 「分かったわ……貴方達は別室で待機していなさい」 

 

 部下らしき複数の返事が聞こえ、ミアリスが入ってくる。

 

 「ジーク重要っていったい何がっ……お嬢様」

 

 「重要だよね?」

 

 「確かに重要だわ」

 

 そんな二人のやり取りを聞きながらモー乳を飲む。

 

 「さて今日は聞きたい事があってな、知らなくても咎めはしないから正直に話せ」

 

 「はい」

 

 ソファの体面に座った二人の返事が重なる、私は二人に問いかけた。

 

 「明らかになった他種族の国についてルセリアはどう動くか分かるか?」

 

 そう聞くと二人は考える仕草をしていたがミアリスが話し始める。

 

 「今の所私達にもどうするかの方針は通達されていないわ。武力で何かをするつもりなら私達には必ず命令が下るはず……だからまだ上の者達はどうするかを考えていると思うわ」

 

 その言葉にジークも頷く、相手の国力も分からないから流石に即戦争を仕掛けたりはしないか。

 

 「お前達の予想で構わない、どう動くと思う?」

 

 そう尋ねると今度はジークが答えた。

 

 「まず間違いなく仲良くはしないと思うね。今この国に亜人種と仲良くしようなんて人間はいないよ……いたとしても表には出せないよ、国に居られなくなる」

 

 「そうね、どんな方法を取るかは分からないけれど滅ぼそうとすると思うわ」

 

 二人ともこのまま仲良くとはいかない予想か、まあ私もそうなると思っているが。

 

 「……主は人間が亜人を滅ぼして奴隷にしても気にしないのかい?」

 

 「私もそれは考えたわ、お嬢様は亜人達の味方では無いの?」

 

 二人が私に聞いてくる、亜人寄りなのは間違いないかもな。

 

 「構わず好きにすると良い。私は彼らとも交流を持っているが助ける気はない、この四国がどうなるかを見ていたいだけだ。繁栄するのか、滅びるのか……あるいは新たな種族が現れるのか、私の予想以上の何かが起こるのか、実に楽しみだ」

 

 彼らは真剣に私の言葉を聞いていたが、じんわりと汗をかいている。

 

 「この世界に生まれた知的生命達が一体どこに辿り着くのか。ゆっくりと楽しませてもらうつもりだ」

 

 二人は俯いて小刻みに震えている、どうしたんだ? 

 

 「これから時々どうなっているか聞きに来る、まとめて報告書を作っておけ。……いや、これからは何か起こる度にウルグラーデの私の家に送って来い。出来るか?」

 

 「わ……分かったよ主」

 

 「分かったわ……お嬢様」

 

 これでルセリアの動きはそれなりに分かるだろう。他の三国は必要なら直接行けばいい。

 

 

 

 

 

 

 それから半年ほどが過ぎ、獣王国カルガに私が訪れた時にルセリアとカルガが国境の村を巡って小競り合いをしたと聞いた。

 

 「お互い引かずにそのままか」

 

 「そうだ、村を渡す訳にはいかないからな」

 

 執務室で話す私とベキア。小競り合いの理由を聞いてみると、詳細は分からないが人間達が獣人達を村から追い出そうとしたらしい。

 

 当然彼らは断るが人間側も諦めずに少々もめたようだ。

 

 「で?その村はどうなったんだ?」

 

 「もちろん俺達の物だ」

 

 腕を組んだままニヤリと笑うベキア。

 

 「他の方向へ広げた方がいいんじゃないか?」

 

 「もちろんそうだが、国境を固めておかないと奴ら勝手に入り込んでくるからな」

 

 彼はしかめっ面をする。

 

 「流石に国同士の戦争に私は加担しないぞ」

 

 私が加担すると加担した側が絶対に勝ってしまうだろう、それは面白くない。

 

 「分かってるよ」

 

 他の二国も人間が入ってこない様に防衛を優先しているのだろうか。

 

 そして私はいつもの様にしばしこの国での生活を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 それからこの二国は小さな小競り合いをし続けた。

 

 お互い大事になるような事はしなかったが、始めから良くなかった人間と獣人達の関係は人間側が獣人を始めとする亜人種を劣等種として見下している事もあり、改善する事は無かった。

 

 程なくしてこの二国はお互いに国境近くに砦などを作り始め、軍備を増強し始める。

 

 他の二国もこの状況に危機感を感じて各国間に砦を作り、もしもの時の為に軍備を増強し始め、緊張が高まっていった。

 

 各国は自国を守るために準備を進めている筈だが、私は戦争をして人間を、亜人種を、お互いを滅ぼしてしまいたいという憎悪を持っている者がいると考えている。

 

 ここまで来てしまったら各国が戦争を続けられないほどに疲弊するか、種族などどうでも良くなるほどの危機が訪れない限り争いの絶えない世界になりそうだ。

 

 どうなろうと楽しみだから構わないが。

 

 ウルグラーデは私の本拠がある都市だからウルグラーデとその付近は守ろう。

 

 もし世界的に戦争になってモー乳の供給が切れたら困る。私の愛飲している飲み物と好物のデザートが無くなってしまう。

 

 

 

 

 

 

 私は各国が着々と戦争に向かっているのを見ながら色々と考えていた。

 

 私の予想ではカルガは負けると思っている。少なくとも今のまま戦争になれば期間は分からないがいずれ絶対負ける。

 

 国として数十年先に成立し成長してきたルセリアはカルガよりはるかに強大なはずだ。

 

 国力を上げるために奴隷になっている亜人種を使って現在も各技術を研究開発しているだろう。

 

 私を奴隷にしようとした者達が隷属魔法を防ぐ魔道具を付けていたように、人間の国ならではの新しい魔道具や武防具、魔法などが作られているはず。

 

 そして人間達自身も変化している、例として挙げるなら私の奴隷となったジークとミアリスだ。

 

 かつて人間の中にあれ程の強さを持った者は居なかった。

 

 鍛え方か、新たな技術か、種としての進化か。間違いなく人間達も強くなっている。

 

 私が住んでいるウルグラーデも戦争に備えて準備をしているらしい。ただ、攻めるためでは無く巻き込まれないために軍備を整え物資を備蓄しているようだ。

 

 

 

 

 

 

 獣王国カルガとルセリア神王国が険悪になってから一年後。

 

 各国はすでに砦を建設し軍を配置して軍備を整え終わり、一年の間に二国間の関係はますます悪化していた。

 

 ウルグラーデも戦力を整え防御を固め、物資を備蓄して出来る限りの準備はしたようだ。

 

 戦争の気配が近づくにしたがって各町の間を移動する者は減っていき、どの町も守りに入っている。

 

 普通に生活していてもどこか緊張感が漂うウルグラーデ。

 

 そのウルグラーデの家で過ごしている私の元に、現在ミナとルーテシアが遊びに来ている。

 

 「おねーちゃん抱っこ」

 

 「おいで」

 

 ルーテシアが私に抱っこをせがんで来たので抱っこしてやる。

 

 私の体は十三歳前後の体格なのでいずれ抱っこも出来なくなるな。

 

 「……この一年で何だか町の空気が重苦しくなったわよね」

 

 私の代わりに飲み物を用意しているミナが呟く。

 

 「戦争の気配をみんな感じているのだろう。この町も所属はルセリアだ、巻き込まれる可能性はある」

 

 「世界がこんな事になるなんて思って無かったわ。私が子供の頃はみんな一緒に暮らしていたのに……」

 

 そう言いながら彼女は二人分の飲み物をテーブルに置きソファに座る。

 

 私は用意して貰ったモー乳を飲みながら彼女に言う。

 

 「この流れはもう止まらないと思う」

 

 「巻き込まれなければ良いけど……」

 

 何となくミナの声は元気がない、戦争よりも娘が心配なようだ。

 

 「ここに戦火が及ぶかは分からないが安心しろ、ウルグラーデとその周辺は守る気でいる」

 

 「そうなの?貴女が守るなら安心だけど……どうして?」

 

 彼女は私の正体を知っているからな。私がこの世界の変わっていく様を楽しんでいる事も知っている。

 

 だからこそわざわざ私がこの町だけ守る理由が分からないのかもしれない。

 

 「モー乳とデザートを守るためだ」

 

 「……え?」

 

 彼女は気の抜けた返事をする、私は好物を守る。

 

 「戦争の影響でモー乳とデザートが無くなったら困る。だからウルグラーデとその付近にあるモー牧場を守るんだ」

 

 「もう……何も言えないわ」

 

 呆れたように彼女はソファにもたれて上を向く。

 

 「おねーちゃんモー乳飲みたい」

 

 抱っこしているルーテシアがモー乳を欲しがる、私はコップをルーテシアの口元に持って行ってやる。

 

 「んく……んむ……」

 

 「何か……私よりも懐いてなーい?」

 

 モー乳を飲むルーテシアを見ながら不貞腐れたようにミナが言う。

 

 「心配するな、どんなに私に懐いているように見えても子供にとって母親は特別だ。お前が愛情を注いでいる限りお前を超える者は居ない」

 

 「そうなのかなー」

 

 頬杖をついてむくれる彼女。

 

 「私は子供を産んだ事は無いし産めるような存在でも無いが子育ての経験は多い、上手くもなる」

 

 「年季が違うかー……」

 

 「そういう事だ」

 

 二人で話しているとモー乳を飲み終えたルーテシアがミナに言う。

 

 「ママ」

 

 ミナに手を伸ばす彼女、ミナはすぐに立ち上がり彼女を私から受け取る。

 

 「ママが不貞腐れているのを感じたようだぞ」

 

 「そうなのかなぁ……?」

 

 私がそう言うとミナはルーテシアを抱いたまま微妙な表情をする。

 

 それから他愛のない話をしていると家の扉がノックされる、ルーテシアはすでに寝てしまっているようだ。

 

 私が扉を開けるといつも手紙を持ってくるローブの女性が立っていた。顔が見えない一般的なローブの姿だが彼女はルセリアの魔法士団の団員だろう。

 

 「確かに受け取った」

 

 そう言うと一礼して去っていく、手紙を開封しながらソファに戻り内容を確認する。

 

 それはジークとミアリスからの手紙だった。

 

 その手紙にはルセリア兵がカルガの部隊を強襲し殺害、逃げ延びた獣人が獣王国カルガに伝えた事で獣王国カルガとルセリア神王国が戦争状態になった事。

 

 戦争状態になった事で自分達も戦場に出る事になるので会いに来ても居ない可能性が増える事と手紙はこれからも送るが頻繁に送るのは難しい事などが書かれていた。

 

 「戦争が始まったか」

 

 「えっ?」

 

 ルーテシアを抱いて紅茶を飲んでいたミナが声を上げる。

 

 「戦争……始まったの?誰からの手紙?」

 

 「ルセリアにいる私の情報源からの手紙だ、開戦した事を知らせてくれた」

 

 「いつの間にそんな事を……いえ、それよりも……始まったのね」

 

 浮かない顔のミナ、この都市は守るから平気だぞ。

 

 「今日の所は帰れ、ケインのそばを離れるな」

 

 そう言うと彼女は頷き、眠ったルーテシアを抱きなおし帰って行った。

 

 私は戸締りをしてソファに座る。

 

 ジークとミアリスの二人は強かった。

 

 他の者もあそこまででは無くとも実力者であるなら、国力で大きく差がある上に兵強さも大きな差が無い事になる。

 

 カルガは苦戦を強いられるだろうな。

 

 

 


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