少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。





026-02

 アドルの体の事を説明した後、彼の魔力制御訓練を行うようになったのだが、私が鎧を着なくてもいいように他の者が来ないようにしてくれた。

 

 彼は「教えて貰うのだからクレリアがわざわざ鎧を着る手間を取り除くのは当然だよ」と言っていた。

 

 そして今も訓練中だ。彼は訓練場の床に座り、私の握り拳より二回りほど小さい水の魔力球を作って維持していた。

 

 「まだ出来て無いぞ、大きさも小さいし形も悪い。今の状態を維持しながらまずは形を少しずつ完全な球体に近付けろ」

 

 「くっ……」

 

 魔力が多いのは良いな、無理をしても魔力が尽きる心配が無い。

 

 「魔力球の中心から周囲に広げるように魔法を使え、その際に魔力の出力を一定に維持しろ」

 

 もう一時間ほど続けている。これだけの時間集中して行えるのは凄いが流石にもう無理か。

 

 「あ」

 

 彼の声と共に水の魔力球が弾けた、魔力のバランスを崩したな。

 

 「休憩にしよう、しばらく楽にしていろ」

 

 「分かったよ先生」

 

 彼は「教えてもらうからには先生と呼ぶよ」と言って私を先生と呼ぶようになっていた。

 

 「先生、悪いけどまた手本を見せてくれないか?」

 

 「またか、まあみる事も訓練にはなるか」

 

 私は空中に小さい水の魔法球を作り出す、綺麗な魔法球は空中に微動だにせず浮いている。

 

 「ここから拡大させる」

 

 そう言いながら綺麗な球を維持したまま魔法球が大きくなっていく、私の頭ほどの大きさにまで大きくして止める。

 

 「いつ見ても凄いな……」

 

 アドルが魔法球を見ながら呟く。こいつなら出来そうな気がするんだが、生まれた時から魔力を操作して周囲を見ていた訳だしな。

 

 「まだまだお前はこれからだ、大きく出来たら今度は縮める訓練をするからな」

 

 私はそう言って魔法球を最初の大きさに縮める、彼はじっと魔法球を見つめている。

 

 「そして次は速度を上げる」

 

 私は早めに大きくしたり小さくしたりを数回繰り返す。

 

 「まあ他にも上の難易度はまだまだあるが、とりあえずはこの辺りまでだ」

 

 そう言って魔法球を消滅させる。

 

 「僕はさ……」

 

 「ん?」 

 

 彼が私を見て言う。

 

 「最初はなんだかんだいって、戦えば僕が勝つと思ってたんだ。僕より強い奴なんてきっといないって思ってた」

 

 「お前の世界は狭いな」

 

 「確かに狭かったよ……かなり僕は強い、そうだよね?」

 

 「そうだな、その歳では間違いなく強い」

 

 「だけど君と訓練をして世界の広さを知った……この世界には君のような使い手が沢山いるのかい?」

 

 「安心しろ、自分で言うのもなんだが私はこの世界で最高クラスの使い手だと思う。私を超える者はいるかどうか分からないと思う」

 

 彼は大きく息を吸い吐いた。

 

 「よかった、これより上はいないんだね……自信が砕け散る所だったよ」

 

 「成長に邪魔になる自信なら捨ててしまえ、お前は魔力は大きいが細かい制御が全く出来ていない。大げさに言うならケーキを切るのに斧を全力で振り下ろしているような状態だ。魔法で吹き飛ばすには問題無いがそんな制御で目に魔力を回したら再起不能所か目が砕けるかも知れないぞ」

 

 「あっはっは……はぁ……色々予想外だったなぁ……」

 

 彼は苦笑いして言うと後ろに倒れる。

 

 「今日はここまでにしておこう。もし時間があるなら部屋で水の魔法球で練習しろ、水以外はやるなよ?」

 

 「大丈夫だよ先生……そうだ、夕食を食べに行っていいかな?魔法の話も聞きたいし」

 

 倒れたまま返事をして言ってくる。

 

 「いいぞ、私の分も持って来い」

 

 「じゃあ二時間後位に行くよ」

 

 熱心なのは良い事だ。どこまで上達するか楽しみだ、そう思いながら部屋へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 アドルが魔力制御訓練を初めて一か月と少しが経った。

 

 彼は王としての義務があるため訓練出来るのは短くても数日置き、長ければ十日以上間隔が空く事もある。

 

 だがアドルは早く魔法制御を上達させたいのかそれなりの頻度で夕食を私と取る、訓練をする時間は取れなくても夕食時の座学だけでもしたいようだ。

 

 時折フィーアも私に会いに来る。ほとんどの時間をこの室内で過ごしている私は特に気にする事無く彼女の訪問を受け入れている。

 

 そして今日の夜はフィーアが来ていた。昼頃から降り始めた雨音が外から聞こえる。

 

 「今日はクッキーを持って来たわよ」

 

 「では紅茶でも入れようか」

 

 「私はクッキーをお皿に出すわね」

 

 そう言って私は部屋に彼女が用意してくれた紅茶を入れる、彼女はクッキーを皿に出している。

 

 私が紅茶を入れて持って行くと彼女はクッキーを一口食べて飲む。

 

 そんな彼女を横目に私は紅茶にモー乳を入れている、彼女はそれを見ると私に言う。

 

 「貴女いつも紅茶にモー乳を入れてるけど美味しいのかしら?」

 

 私は少し前から紅茶にモー乳を入れるようになった、これがなかなか美味い。

 

 「美味いぞ?少し飲んでみるか?」

 

 そう言って私は彼女にカップを差し出す、彼女はカップを手に取り少しだけ飲む。

 

 「……あら?美味しいわね」

 

 「そうだろう?私はこちらの方が好みなんだ」

 

 「私も今日は入れようかしら……モー乳をいただいてもいいかしら?」

 

 私のカップを返しながら彼女が言う。

 

 「いいぞ。量は自分で調節して丁度いい量を見つけろ」

 

 「貴女のお勧めは?」

 

 「モー乳多めが私は好きだな、モー乳六に紅茶が四だ」

 

 「あら?それだとメインがモー乳になるんじゃないかしら……?」 

 

 「その方が美味いからいいだろう」

 

 彼女は少しずつモー乳を入れて味を確認している、やがて納得したのかモー乳を置いた、彼女はモー乳が三割程が好みらしい。

 

 「私はこれ位かしらね……うん、美味しいわ」

 

 彼女は美味しそうに紅茶を飲む、モー乳の美味しさを分かってくれたか。

 

 「息子の訓練はどう?上手く行っているかしら?」

 

 私がクッキーをかじっていると彼女が聞いてくる。

 

 「魔力は高いが制御は悪いな。彼にも言ったが……ケーキを切るのに斧を全力で振り下ろしているような状態だ」

 

 「私が教えてあげられなかったから……でも出来なければ目は見えないのよね?」

 

 「そうだな、逆に言えばそれさえ出来れば見える。悪い条件では無いと思う」

 

 「そうね……もう治る事は無いと思っていたもの」

 

 彼女はしみじみと語る、その姿を見ながら私は気になった事を聞いた。

 

 「この国では地位を得るのに実力も必要なようだが、フィーアもそれなりに強いと言う事か?」

 

 そう言うと彼女は苦笑いして答える。

 

 「それなりには戦えるわ……でも息子には及ばないし貴女と比べたら子供のような物よ?」

 

 「私から見れば大半の者は子供と言える」

 

 「ふふ……そうだったわね。お母さん……いえ、お祖母ちゃんかしら?」

 

 「もっと差があると思う」

 

 そう言うと彼女は笑う、こうして彼女と時間が許す限り語り合った。

 

 

 

 

 

 

 私は久々にウルグラーデに戻り、ミナの家へ行く。

 

 ルーテシアに会いに行くのだが、ついでにアドルが約束を守っているかも確認する。

 

 「はーい、あら?久しぶりね。こんな朝早くにどうしたの?」

 

 「ルーテシアに会いに来た……平気か?」

 

 「大丈夫よ、ルーテシアはリビングにいるわ」

 

 「急に悪いな」

 

 「念話で連絡してくれれば良かったのに」

 

 「忘れていた」

 

 そんな会話をしながらリビングに行くとルーテシアが絵を描いていた。

 

 「お姉ちゃん!」

 

 私に気が付いた彼女は立ち上がり飛びついてきた、私はしっかりと抱きとめる。

 

 「また少し大きくなったな」

 

 私の胸にぐりぐりと顔を押し付けて甘えるルーテシア、まだ数か月程しか経ってないはずだが随分甘えて来るな。

 

 彼女を抱っこしたままソファに座る、ルーテシアはくっ付いたまま動かない。

 

 「今は情報をくれる貴女の友人の所……ルセリアに居るのよね?」

 

 飲み物を用意していたミナがそう言いながら戻って来た。

 

 「ああ、また戻るつもりだ。今日はルーテシアの様子を見に来たのと、ついでだがウルグラーデに何か変わった事が無かったかと思って聞きに来たんだ」

 

 「ルーテシアは貴女に会えないのを寂しく思っているわ。今のその状態を見れば分かるでしょうけど」

 

 ミナが私にくっ付いたまま離れないルーテシアを見て言う、私は彼女の頭を撫でながら話を続けた。

 

 「最近ウルグラーデはどうだ?」

 

 「そうね……戦争が終わって少しだけど元に戻り始めたわ。何より戦争が終わったっていう事実が雰囲気を良くしているわね」

 

 「そうか」

 

 「後はあれね、ルセリア神王国からのウルグラーデの扱いがいきなり良くなったらしいわ」

 

 「良かったじゃないか」

 

 しっかり約束は守られているようだ、約束を違える事は無いと思ってはいたが確認は大事だ。

 

 「理由が全く分からないらしくて自治体のみんなも困惑していたわ」

 

 「理由はどうあれ良くなったのならそれでいんじゃないか?」

 

 ミナは飲んでいた紅茶のカップを置いて言う。

 

 「それはそうなんだけど……理由も目的も分からなくて不気味なのよね」

 

 「まあ何かあっても最終的には私がいるんだ。よく分からなくても問題無ければ良いだろう?」

 

 「……それもそうね……」

 

 考え込んでいた彼女は微笑みを浮かべるとソファに背を預けた。

 

 「話は変わるが、ルーテシアは他の子供と普段遊んでるのか?見た事が無いんだが」

 

 「たまに遊んでいるけどこの子は外で駆け回るより室内で絵を描いたり本を読んだりする方が好きみたい」

 

 「その辺は個性だからな。あまりにも酷くないのならそのままでも良い気はする、親であるお前達の教育方針次第か」

 

 「私達も無理強いはするつもりは無いけどね」

 

 ミナは私に張り付くルーテシアを見て言う、私はルーテシアを隣に下ろした。

 

 「やー」

 

 声を上げて私の膝の上に乗ってくる彼女、私は諦めて抱きしめた。

 

 結局その日は泊まる事になり一晩一緒に寝た後、くっ付いて離れないルーテシアを説得し、ルセリアに向かった。

 

 あの子は私に懐き過ぎている気がする、外に意識を向けて貰うためにしばらく会わない方がいいかもな。

 

 

 

 

 

 

 アドルに魔法制御を教え初めて半年。

 

 まだまだ未熟ではあるが視力を取り戻すには十分になったと私は判断した。

 

 そして彼に一日時間を作らせ、視力を取り戻せるか試す日がやって来る。

 

 「私が教えた通りにやってみろ」

 

 訓練場に立って集中するアドル。

 

 良い感じだ……これなら上手く行くだろう。

 

 「よし……その状態を維持しろ……ゆっくりと目を開けるんだ」

 

 そう言うと彼はゆっくりと目を開き眩しそうにする。

 

 眩しいと言う事は見えていると言う事だ、上手く行ったか。

 

 しばらく眩しそうにいていたが慣れて来たのかしっかりと目を開く。

 

 「見える……色が……光が……目が見える……」

 

 彼は泣く事は無かったが、その声は震えている。

 

 「おめでとう」

 

 「先生……顔は魔力で見ていたけど色が付くともっと美人だな」

 

 「その感覚を忘れるな。繰り返し続ければ自然に魔力を流せるようになり、意識しなくても出来るようになる。毎日一回は必ず行え、いいな?」

 

 「……分かったよ、ありがとう先生」

 

 「これで私が教える事はもうないかも知れないな、今日の所はここまでだ。明日から一日一回、忘れるな」

 

 そう言って部屋に戻る、やる事はやったしそろそろウルグラーデに帰るか。

 

 

 

 

 

 

 その日の夜アドルが私の部屋を訪れた、彼は珍しく真剣な顔をしていた。

 

 「クレリア……今までありがとう」

 

 「まあ私もお前の事を調べる事が出来たしな、それくらい構わない」

 

 「それで……この後はどうするんだい?」

 

 「以前住んでいた町に帰ろうと思っている」

 

 「どこだか聞いてもいいかな?」

 

 「駄目だ」

 

 「……僕は帰らないで欲しいと思っている」

 

 「それは出来ないな。だが数少ない友人だ、たまには会いに来る」

 

 「頼む……僕は君に一目ぼれした……僕の妻としてこの国で暮らして欲しい」

 

 ああ、彼もか……こうなる可能性を失念していた。

 

 「無理だな、私はお前を友だと思うようになっているが、それだけでしかない」

 

 私は異性間の愛やら恋やらは分からない。

 

 家族としてや友人としてなら何となくわかるような気がしているが。

 

 「せめて会えるように居場所を教えてくれないか?」

 

 「教えたらお前、何かしてくるだろう」

 

 「頼む!会いに行けないのは耐えられないんだ……」

 

 「新しい相手を探せ。私がお前の気持ちを受け入れる事は無い」

 

 「まっ……」

 

 そう言ってウルグラーデに転移する。

 

 友人のままならこれからも会っていただろうが、こうなった以上二度と会う事は無いかも知れない。

 

 

 




 主人公は一応凄い美人という設定なのでこうなる事はよくあります、いちいち描写していると話が進まないのでしていませんがとてもモテます。

 アドルは顔だけを見ていた訳ではありませんが一目ぼれしているのでやはり美人である事が占める割合は大きいと思います。



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