・作者の自己満足
・素人の作品
・主人公最強
・ご都合主義
・辻褄が合わないかもしれない設定
・注意事項が増える可能性
等が含まれます。
以上をご理解したうえでお読みください。
読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。
新たな場所で生活を始める私とクログウェルは一度周囲を見て回る事にした。
「別々に見て回ろう。私は山脈上空から見えた海沿いをゆっくり時間をかけて見て行こうと思う」
「わざわざ時間をかけるのか?」
「それが良い、場合によるが」
理解出来ないと言った表情をするクログウェル、彼女には分からないかもな。
「まあよかろう、我も好きにするからな。何年でも時間をかけるといい」
「そこまでかかるかは分からないが、何かあったら念話で伝える」
その後クログウェルは海とは逆の方向へ飛び立っていった。その姿を見送り、私は海へと飛び立った。
雪の降る浜辺を歩いていく、大分北の方だからか気温が低く、遠くの海には氷がちらほらと浮かんでいる。
積もった雪の中に生えている木や植物は向こうの大陸の物とは違うようだ。
役に立ちそうな物は採取しながら進む。
誰も居ない雪の積もった浜辺を、雪を踏みしめながら歩く。
ふと振り返ると私の足跡だけが長く残り、遠くの足跡は既に雪に埋もれて消えていた。
こちらの大陸にも知性のある生物が発生している可能性はある、居て欲しいと思いつつ海を横目に歩みを進める。
どれくらい歩いただろうか。岩場を越え、入り江を通り過ぎ、ひたすら歩き続ける私にクログウェルから念話が届く。
『クレリア、聞こえるか?』
『聞こえているぞ』
『ある程度我は見て回ったが……まだ海沿いを歩いているのか?』
『ああ、歩いている』
『その海沿いに小さき者の住処らしき物があったぞ』
『確かか?』
『規模は以前見た物より小さいが間違いないだろう。住んでいる者達も似ている姿をしていた』
『ありがとう、行ってみる。場合によってはしばらく帰らないかもしれない』
『分かった、好きにするがいい……我は新しい魔物の味を確かめるのでな』
早速何か捕まえたのか?取り敢えず海沿いにあるようだから向かってみよう。
歩くのを止めて空に上がると、遠くに見えた。確かに小さい、規模としては村だろう。
見つからないように近場に降りて歩いて村に近づくと、外で作業をしていた男性が私に気が付く。
「ん?こんな所で……見た事の無い姿しているな……何だお前?」
そう言った男性は私から見ても見覚えの無い姿だった。全体としては人だが頭には角が生え肌は青黒く、目は縦に瞳孔が開いていた。
服は向こうの大陸と大差は無さそうだな、彼は私を見て警戒しているようだ。
「みんな!何か来やがった!来てくれ!」
男がそう言うと数人がやって来たが、私を見ると身構える。私は数人から遠巻きに囲まれる形になった。
「お前達に危害を加える気は無い、この場所の事を聞きたいんだ」
「おまえみたいなよく分からねぇ奴に話す事なんかねぇ!どっかいけ!村に近づくな!」
そう一人が言うと残りの者も騒ぎ立てる、これは一旦出直すか。
「一度帰る、また来るよ」
「二度と来るな白い奴め!」
肌が白いのが珍しいのか?そう言えば確かに白い肌の村人は一人も見ていないな。
力ずくで入り込むのは気が進まなかった私はじっくりと関わる事を決め。一度村から離れ翌日にまた来ようと考えた。
「……また来たのか」
あれから私は一日一回彼らの元を訪れた。
一か月過ぎた頃から反応が変わり始め、二か月が過ぎた今は警戒されずにため息を吐かれる程度になった。
「言っただろう?危害を加える気は無いと。私はお前達の事が知りたいだけだ」
そう言うと村人達が話し合いを始めた。
「……どうする?」
「どうするって言ってもな……」
「確かに何もしてこないけど……」
「……急に暴れるんじゃないかしら?」
「それなら最初から襲い掛かって来たんじゃねえか?」
「今も話を聞いているだけで何もしてこない。確かに俺達とは見た目が違うけど話は通じるし……」
「もう二か月よ?我慢強く毎日会いに来て……小さい子だし……流石に可哀想になって来たわ」
「……分かった。村長に話してくるから待って貰え」
何とかなりそうか?
その後私は質問攻めにされ、村長の預かりとなった。
取り敢えず受け入れられたと考えていいだろう。
村長からこの村はクギラと言う漁村だという事も聞いた。
最初は周囲の者から見張るような視線を受けていたが、漁の手伝いをしながら共に暮らし、時間が進むにつれ彼らの警戒は薄れて行った。
そして共に暮らし始めて半年程経つと、警戒される事は無くなった。
その間に彼らから色々な事を聞いた。この村の所属が「バウムルスト王国」と言う国である事、彼らが個人の事を「魔人」と呼び、総称を「魔族」と呼ぶ事。
体も少し調べさせて貰った。
その結果、魔人は確実とは言えないが魔物か魔獣から進化した可能性が高い。
一般的な獣から進化した獣人とは違い、強力な魔物や魔獣から進化したと考えられる彼らは全体的に基礎能力が高いように感じた。
「……そして、この村を見つけた訳だ」
「なるほど……この大陸以外にも土地があって貴女のような者達が住んでいる場所があるんだねぇ……」
現在は世話になっている村長の家で村人と共に宴会中だ。その時に私の事を詳しく教えてくれと言われたので別の大陸から来た事を話した。
「最初に話していたらすんなり受け入れていたか?」
私がそう言うと村長は頭をひねって言う。
「難しかっただろうねぇ。あまりにも見た目が違うからね……何を言っても警戒していたと思うよ……?」
「そうか。どちらにしても同じだったか」
そう言った私に、村長は頷いた。
「他の大陸ね……俺達が気にする事じゃねえな」
参加している魔人の男が話す。
「そうだな、クレリアじゃなきゃ海を越えられないんじゃ……そいつらが来ることは無いよな」
彼らには私が見た目通りの歳では無い事を教えている。
「そうだな、もし越えられるようになったとしても大分時間がかかるだろう」
「きっとその頃にはこの場にいる奴は誰も残ってないな!」
私の言葉に男の一人がそう言って笑う。そうだな、私以外は生きていないだろう。
「クレリアさんや、ワシは感謝しておるよ」
急に村長が感謝を告げて来る。
「いきなりどうした?」
「この村の魔道具をよくしてくれただけでなく、魔法をよりよく使えるように教えてくれた……貴女を受け入れた自分の判断を褒めてやりたくなる」
「私こそ受け入れてくれて助かった。村長が受け入れると決めなければどうにもならなかったかも知れない」
「ワシがした事はそれ位だがね」
「見た事も無い姿のよそ者を受け入れる判断は難しかっただろう。大半の者なら守りに入り受け入れようとはしなかった筈だ」
「それならば二か月以上も毎日毎日ワシらの村を訪れるのも大変だっただろうに」
「それほど大変では無かった」
そう言うと村長は笑って果実酒を渡してくる、ここでは果実酒は貴重品だ。
私はそれを受け取って一気に飲んだ。
「……他の町へ行くのだろう?」
果実酒を飲んだ私に村長が尋ねる。
「教えて貰った町に行ってみるつもりだ」
「ここは小さな村だから大事にはならなかった……教えた町は大きい……どうなるか分からないよ……?」
「いざとなればどうにでも出来るから心配するな」
そう言うと村長は苦笑して言う。
「ならばもう何も言わないよ、気を付けてな……」
宴会は終わり深夜になった。私は与えられた部屋でクログウェルに念話をつなぐ。
『クログウェル、今いいか?』
『む、寝ようと思っていたのだが』
『すぐ終わる』
『分かった、それで?』
『新しい町に行こうと思う』
『魔人共の町か……』
滞在中に時々クログウェルに念話して大体の話はしてある。
クログウェルは順調に暮らしているようで、ミナとの取引もしっかり出来ていると言っていた。
『貴様の事は心配していない、貴様をどうこう出来る者が居るとは思えないからな。こちらの事は気にせずに行ってくるといい、何かあっても念話があるだろう?』
『確かにな、では行ってくる』
そう伝えて念話を切った。後は村人に挨拶して向かうだけだが、気になる事もある。
それは魔法と魔道具があった事だ。
この村には魔道具があり、魔法を使う者も僅かだがいた。
私はこの大陸に初めて来た。と言う事は私が来る前に誰かが魔道具と魔法を伝えたか、魔人が作ったのだろう。
私は誰かが伝えた可能性が高いと考えている。名前まで一緒なのだからそう考えるのが自然だと思う。
取り敢えずその辺りはまた後で考えよう。
問題は次の町の事だ、この村では上手く行ったが次はどうなるだろうか。
いきなり殺しにかかって来ないと良いが、そうなったら滅ぶのは魔族の方だ。
数日後、村人に別れを告げて教えて貰った町へと出発した。