・作者の自己満足
・素人の作品
・主人公最強
・ご都合主義
・辻褄が合わないかもしれない設定
・注意事項が増える可能性
等が含まれます。
以上をご理解したうえでお読みください。
読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。
クギラを出て町に向かう、町の名前はニルンと言うらしい。
歩く事はせずに飛んでいく、早く見てみたい。
教えて貰った方角にしばらく飛び続けると、遠くに大きな町が見えて来た。
恐らくあれがニルンだな。
さてどうするか。姿を消せば入れるだろうがずっと消えたままでは会話も買い物も出来ない、ばれれば侵入者扱いだろうな。
ローブでも着るか?それでも顔を見られたら駄目な気はするが。髪を顔の前に垂らして……いや、それも怪し過ぎるか。
そんな事を考えながら町から十分に距離を取った場所に下りて歩いて向かう。
一応ローブだけは着てみた、堂々と行けば意外と平気かも知れない。
町をつなぐ広い街道らしき道に出て進む。馬車に似た乗り物も行き来しているが、馬ではなく魔物のような生物が引いている。
周囲を進む魔人達の姿は様々だ。髪の色や長さ、瞳の色、角の形と色、肌の色や魔物に近い体の特徴は向こうの大陸の人類にはない。
ちらりと見える牙からすると歯にも差異がありそうだ。
翻訳魔法が無ければ言葉も違ったのだろう。向こうの種族と会った時が大変そうだな、恐らく出会うのはかなり先だと思うが。
ローブを着て深くフードをかぶっているため今は誰も私に気が付いていないようだ、このまま行ければいいが。
そのまま進み続けると町の入り口が見えて来た。しっかりとした防壁に囲まれ、大きな門が開いている。
特に一人一人確認はしていない、これならいけそうだ。
特に止められる事も無く門を抜け、町の中に入る事が出来た。
まずは宿を取るか、そこで私は気が付く。
この国の通貨が無い。
すっかり忘れていた。これはどこかで手持ちの物を売って金を作るしかないな。
「いらっしゃいませ」
私は道行く魔人から買い取り店があるかを聞き、やって来た。
金を少し取り出して買取を頼む、売れるだろうか?
「……金ですね、少々お待ちください」
俯き気味な私が金塊を出すと店員は色々と確認をして重さを確認して戻ってくる。
「この量ですと十万ウェンですね」
「……何だと?」
思わず呟いてしまった。
「ご不満でしたでしょうか?」
「いや、買い取ってくれ」
「では金額をご確認ください」
「問題無い、ありがとう」
「ありがとうございました、またのご利用をお待ちしています」
私は店を出て歩きながら考える、私の前にここに来ている者がいる可能性が大きく上がった。
この硬貨、ウェンと言う名前も同じな上、描かれている模様が違うだけで他はすべて向こうの大陸の人類の硬貨と同じだ。
自然とここまで同じになるとは考えにくい。国の通貨を変更出来る立場、恐らく国の中心に近い人物にこの通貨を知っていた者がいる。
いつ来たかは知らないが今も生きているかは分から無いな、森人だったらまだ生きているかも知れない。
取り敢えず金は出来た、宿を決めてしばらくこの町を見て回ろう。
買取の店は魔人に聞いたが、出来るだけ顔を合わせて話したくは無い。
私が魔人では無い事がバレるかもしれないからな。
広い町を歩き回り、宿の看板を見つけた私は店の中に入っていった。
「いらっしゃいませ」
「一週間ほど泊まりたいのだが」
「かしこまりました……料金はこちらになります」
「分かった」
提示された料金を支払う。部屋の鍵を受け取り、風呂の時間などの説明を受けて二階の部屋へ向かう。
部屋に入ると私はローブを脱いでソファに座る。
風呂は大浴場か……入れる訳ないな、一発でばれる。
朝一番に入ろうか、見られたら忘れて貰おう。
翌朝の一番に入ったが運よく誰も来る事は無かった。
浴室にあった硬めのブラシは何に使うか分からなかったが。
私は数日町を見て回っていた。
今日は闘技場に行くつもりだ。ルセリアにもあったが結局見ないまま離れてしまったからな。
宿を出て闘技場に向かう。魔獣車と言ったか?それに乗って闘技場前の広場まで移動した。
闘技場の入り口にあった説明では、国が運営する人気の娯楽で、魔人同士、魔人と魔物、魔物同士などの戦いが行われていると書いてあった。
重犯罪者の処刑を見せ物にする時もあり、その時の入場券は高値が付くらしい。
どちらかが降参するか戦闘不能になるまで戦い、勝者には賞金と名誉が与えられる。
敗者には治療はされるが何も無いようだ。
すべての試合は賭けも行われていて、当たればその時に設定されている倍率で返って来るようだな。
大きな町には規模の差はあっても一か所は闘技場があるらしい。
魔人は戦いが好きなのか。ルセリアの闘技場は知らないが、同じような物だったのかもしれない。
今日は三試合あるようだ。魔人同士と……魔人と魔物、後は魔物同士か。
最初の魔人同士を見てみようか。
金を払い専用の紙のカードを受け取って中に移動する。簡単な石の長椅子が階段状に中央の広場を取り囲んで並んでいる、大きなすり鉢みたいだな。
中段の適当な場所に座って待っていると席は魔人で埋まった。人混み特有のざわつきの中、闘技場の中心に一人の男が現れると静まってく。
やがて男が大きな声で話し出した。
「ようこそ!ニルン闘技場へ!本日の第一試合は魔人ジズと魔人バルヌの戦いです!」
魔法で声を大きくしているのだろう、遠くてもよく聞こえる。
今はそれぞれの戦士の紹介のような事を話している、どちらも中堅の戦士で魔法も近接もそこそこ出来るらしい。
説明が終わると二人の男の魔人が広場の両側から現れた。
確か、私から見て左がジズ、右がバルヌだったな。
客達は歓声を上げてそれぞれの戦士を応援している。
戦士はそれぞれ用意された物から選んだ装備で戦うらしい。二人とも軽戦士のような装備でお互いに剣だ、組み合わせも色々考えているのかもしれない。
一進一退の攻防は見ていて面白い。
実力に関係なく真剣な戦いは思わず見入ってしまう何かがある。
戦いは剣技と魔法の両方を駆使した戦いだが、どちらも傷を増やしながらも決定的な攻撃は受けていない。どちらかのスタミナか集中が切れるまでは続くか?
そう思いながら見ていたが、バルヌの動きが僅かに鈍ってきている……む。
大きな歓声が起こる。バルヌの動きが遅れた瞬間にその太腿をジズが薙ぐ、深くは無いが厳しい状態だな。
私は痛みを知らないが冒険者達などに聞いている「痛みは動きを阻害する」と。
スタミナ切れに太腿の傷、逆転出来るだろうか。
ズボンが血に濡れて行くバルヌは更に動きが悪くなる、もう降参した方がいいと思うが。
動きが鈍っても剣と魔法を攻撃に、防御に上手く使って粘るバルヌ。
上手くジズの攻撃の隙が大きくなるようにしているようだ。
「これはいいのか?」
思わず出した私の声は、特大の歓声にかき消された。
バルヌに誘導されたジズはバルヌの脇腹を捕らえたが……バルヌはジズの首を突き刺していた。
バルヌが剣を引き抜くとジズは崩れ落ち地面に血を広げていく。
その一方でバルヌは魔法で治療を開始していた。
あれは間違いなく死んだのではないか?私は隣にいる魔人に姿を晒さないように聞いてみた。
「すまない、闘技場は初めてなのだが……殺していいのか?」
「ん?あんた今まで見た事無いのか?珍しいな……どちらかが降参するか戦闘不能になるまで戦うってルールは知ってるよな?」
「知っている」
「戦闘不能は死亡も含まれるんだよ、死んだら戦えないだろ?」
「なるほど。ありがとう」
「おう、あんたも楽しんでいきな」
そう言って隣の魔人は席を立った……そうか、戦闘不能は気絶などだと思っていたが、死亡も含まれるな。
確かにさっきの魔人が言った通り、死んだら戦闘不能だ。
金と名誉を求めて死ぬか。合意の上なら覚悟はしていただろう、退場するバルヌと職員らしき者に引きずられていくジズの死体。
地面に赤い筋を引きながら連れていかれるのを見て「魔人も血は赤いのか」と思いつつ闘技場を後にした。
周囲の客は興奮が冷めていないようで、いたるところで先程の戦いについての話をしていた。
私も戦いは嫌いでは無いが……。
私は友人が出ていたら止めるだろうか?それとも友人の選んだ道だと受け入れるか?
試合で死んだら生き返らせて文句を言うかもな、私は闘技場正面の広場でそう考えた。
さて、残り二試合ある訳だがどうしようか。魔人と魔物はそれほど楽しくなさそうだし魔物同士もあまり興味が無い……やめておくか。
闘技場を離れた私は様々な店が立ち並ぶ通りにやって来た。
歩きながら店の前の品物を眺めていると、店の前で二人の魔人が何かやっている。
「ちょっといいか?……それは何をやっているんだ?」
「ん?ああ……これはオセロと言う遊戯だよ。この白と黒の……」
私が聞くとそのまま説明に入る赤い髪の魔人男性。
これは決まった範囲に交互に色違いのコインを置いて行き、挟むと自分の色に変わる。
最終的に自分の色が多く残った方が勝ちと言う物らしい。
「面白そうだな、これは売っているのか?」
「この店で売ってるよ。気に入ってくれたなら買ってくれると嬉しいな」
そう聞くともう一人の青い髪の魔人男性が言ってくる、一つ買っておこう。
「買おう」
「ありがとう……あの……金額がだいぶ多いのだけど?」
「面白そうな物を作ってくれた礼だ」
「え?……ちょっとお客さん?」
「じゃあな」
多く金を渡し商品を受け取って人混みへ紛れ込む。
これからより面白い物を作る事に期待して少しだが多く渡した。
換金出来る物は山ほどマジックボックスに入っている、換金する手間はかかるが実質金の問題は無いのと同じだ。
そうだ。こっちにはモー乳は無いのだろうか?……探さなくては。
食料品店を回っていると、それらしい瓶入りの白い飲み物があった。
一旦転移で戻り大量に買っておこうかとも思ったが、これなら飲めるだろうか。
ラキ乳か、買ってみよう。
私はラキ乳と名の付いた飲み物を一本買って店を出る。
そして買ったばかりのラキ乳に口を付けた。
……モー乳に似てはいる。多少癖があるがまた別な味わいがあるな。
うん、美味しい。
これは買いだな、私は店に戻りラキ乳を二十本購入した。
用意してくれた店員は「ここまでまとめて買う人は珍しい」と言って笑っていた。
こちらにいる間はしばらくこのラキ乳を飲もう、モー乳を切らす前に気が付いてよかった。
よし、好みに合った飲み物も手に入れたし食事をしに行こう。
美味そうな店を探そう。
私は近場で見つけた食堂に入った。
内装は質素だが客の出入りは多かった、これならば不味くは無いと思う。
「焼肉定食お待ち!」
トレイに一式揃った定食が運ばれてくる。タレが絡んだ薄切りの肉と野菜、スープと皿に白いコヌと言う粒が山盛りになっている。
料金の割に量があるな。特にコヌが山盛りだ、私はコヌを食べてみる。
味はほぼ無いが弾力がある……これは他の食べ物と一緒に食べた方が良いな。
薄切り肉を口に入れると甘辛い味が広がる。
これはコヌと合う……私は黙々と食事を勧め、全て食べ終えた。
「ありがとうございましたー」
料理を食べ終わり店を出た私は最初に買取をしてもらった店に行き、また少しの金塊を売り金を補充してから宿に帰った。
私は宿の自室に戻ると考えた、風呂に自由に入れる宿を探そう。
「ちょっといいかな?」
宿の職員に声をかける。
「何でしょうお客様?」
「部屋に風呂が付いている部屋はあるか?」
「こちらの宿にはありませんが、他の宿にはついている所もありますよ」
「そうか。すまないがそちらに行こうと思う、明日で宿泊は終わりで頼む」
「かしこまりました、またお越しくださいね」
翌日。今までの宿を出て部屋に風呂のある宿へと移った、値段はそれなりに高くなったが風呂が優先だ。
宿を移って数か月は経ったと思う。
毎日色々な料理店で食事をして店を見て回った。私が魔人で無い事はその間全くバレる事無く、問題無く過ごす事が出来ていた。
いつもローブを着ている変な人物、程度は思われていそうだが。
私は闘技場に試合をよく見に行くようになった。自分でもここまで見るようになるとは思って無かったが、一対一の命懸けの真剣勝負は見ていて面白い。
何回も見ているうちに必ずしも殺す訳では無い事も分かった、倒れて動かなくなれば生きていても戦闘不能で負けになるし、降参する者もいた。
現在私は劇を見て出て来た所だ。
魔人の戦士が魔族の王女と駆け落ちし、最後に王女の父親に戦士が殺され王女が後を追う。悲劇と言えばいいのか?
そんな話だったのだが、何故王女が自殺したのか全く理解出来なかった。
大勢の魔人が行き交う大通りを進み、部屋に戻る。
そしてすぐに部屋に付いている風呂に入った。
宿の値段がそれなりに高いので近い内にまた換金をしないとな。
今度は多めに換金しておこう。
一人用の小さい浴槽だが、私は体が小さいのでそこまで狭くは感じない。
だがやはり広い風呂の方が良い。
備え付けの石鹸もそこまで悪い物では無かったが、私が作った物に比べるとどうしても劣るので自分の物を使っている。
私はこの国の事を考える。
現在滞在している町が所属している国の名前はバウムルスト王国というようだ。
意外とバレずに暮らせていたからすっかり忘れていたが、他の国もあるのだろうか。
誰に聞いても分かるだろうがわざわざ聞くとな何故知らないのか怪しまれそうだ、考えすぎかもしれないが。
本屋にも行ったがそれらしい本は見なかったが、もう一度しっかり探してみるか。
明日はまず金の換金をして本屋だな、そう決めて風呂を楽しんだ。
いつもの換金店にやって来た私は、いつものように金塊の買取を頼む。
「いつもありがとうございます。現在、少々お時間をいただきますがよろしいですか?」
「構わない」
「ではそちらのお席でお待ちください」
店内の椅子に座って呼ばれるのを待つ。
しばらく特にやる事も無いので店内を見て待っているとようやく私の番号が呼ばれた、いつもより長く待ったな。
「こちらが換金額です。どうぞご確認ください」
「……確かにあるな。ありがとう、また来るよ」
「またのご来店をお待ちしております」
換金店を出て少し歩くと同じ武装をした男の魔人二人が私の前を塞いだ。
「こんにちは。我々はこの町の治安部隊の者ですが……フードの方、少々お話を聞かせていただけますか?」
「私か?」
「失礼、女性の方でしたか。あくまでもお話のみです、詰め所の方に同行して頂きたいのですが……良いでしょうか?」
声で性別は分かるか。対応は丁寧だが、本当にただ話を聞きたいだけか?私の後ろにもう一人いるのは念の為か。
礼儀正しく話しかけて来た者を無下にするのもな、バレたらバレたでそろそろ他の町に移動すればいいか。
「分かった、案内してくれ」
「ありがとうございます」
魔人の一人がそう言うと私は三人に連れられて治安部隊の詰め所に案内された。
連れてこられた部屋は普通の応接室のような場所だった。丁寧に対応しておいて牢屋の可能性も考えていたが考え過ぎだったようだ。
「こちらをどうぞ……さて、話を聞かせていただきます。私は治安部隊の小隊長を務めているザニメアと申します」
「クレリア・アーティアだ」
私が名乗るとソファに座り自分の紅茶をいれていた彼が一瞬止まるが、すぐに元に戻る。
「それで?なぜ私が連れてこられたんだ?」
「数か月前なのですが、他の町で金塊の盗難がありまして……そこにローブを着た人物が頻繁に金塊を換金していると報告があった物で……」
「ああ……それは怪しむな。ただ私は数か月前はクギラと言う小さな漁村にいたから関係ないと思うぞ?」
「なるほど……申し訳ないがフードを取って頂けますか?一応目撃者の証言と違う事をはっきりさせておきたいので」
やはりこうなるな、声が漏れないように外部との音は遮断しておこう。
「取っても構わないがいきなり攻撃しないでくれよ?」
「ええと……どういう事でしょうか?」
戸惑う彼を見ながら私はローブを脱ぐ。
「なっ!?魔人では無い!?」
驚きの声を上げ腰を浮かすザニメア、剣に手をかけているのは仕方ないか。
「私はこの大陸の外から来た他の種族だよ」
「大陸……他の種族……?」
「まあ聞いてくれ」
こうして私は彼に説明した。他の大陸、そこに住む人々、私が新たな大陸を目指してやって来た事を。
彼は脱力したようにソファに寄りかかり頭を押さえて言う。
「はあ……俺の手に負える問題じゃないぞ……」
話を聞いた彼は溜息を吐いた、疲れたような表情をしている。
「魔族の国は他にもあるのか?よければ教えて欲しい」
「……分かった」
そう言って彼は説明を始める。
「この大陸には現在三つの国がある、一つはリベザルク・ルテリッジ王が治めるここ、北のバウムルスト王国だ、首都はバウムと言う。もう一つはエルヴァン・サノワ王が治める南東のヴァイル王国、首都はリフラムだ。……最後の一つは女帝カミラ・アーティアが治める南西のアーティア帝国で首都はリリティアだ……」
そうか、私が名乗った時彼が一瞬固まったのはこのせいだったか。聞き覚えのある名前が聞こえたぞ。
「……どうした?」
私が黙り込んだのを見て声をかけてくるザニメア。
「ありがとう、よく分かったよ。それでもう私は帰っていいのか?」
そう言うと彼は考え、答える。
「申し訳ないが難しいと思う。どちらにしても上には報告しないといけない……他の大陸に我々以外の種族、放置など出来る訳がない。詰め所の部屋に住んでもらって対応を待って貰う事になると思う。……クレリアが悪いとは思わないが、放置はできない……すまないが……」
分かっていた事なので問題無い。
「分かった、大人しく待っている。もし危害を加えられそうになったら返り討ちにするが構わないな?」
「あー……魔人はみんな強いからな……俺がそんな事はさせないから安心してくれ」
真剣に言うザニメア、彼は悪い男ではなさそうだ。
「取り敢えず保護と言う形で住んでもらうから、姿を見られないようにしてくれよ?大陸や種族の事をむやみに広げるのはまずいと思うから」
詰め所の一室、私が住む事になる部屋でザニメアが言う。
「分かっている、大人しくしているよ」
「食事は持ってくるから部屋から出ないように、トイレはそこにあるから」
入り口とは別の扉の方を向いて彼は言う。
「方針が決まるまでどれくらいかかる?」
「すぐに報告書は出すけど……上次第だから俺には何とも言えないかな」
「そうか、ではのんびり待つか」
「君は子供なのに大人びているね」
「お前も若いのに小隊長とは中々だな」
そう言うと彼は苦笑して言う。
「俺はもう四十過ぎだよ……いい歳さ」
「大分若く見えるが」
「魔人は寿命は百年前後だけど見た目はほとんど変わらないんだ、それに年齢による衰えがほとんど無い……病気にはなるけどね」
「魔族はそう言った特徴があるのか、なかなか興味深いな」
「好戦的な者も多いから気を付けてくれよ?」
「問題無い。ああ、それと私は長命種でな?」
「長命種……?」
「寿命が長いんだ。私はこう見えて三百歳をこえている」
「……騙そうとしてないよな?」
彼は疑惑の目を向けて来る。
「信じないならそれでもいい。現実は変わらないからな」
「分かった……一応信じる。もう行くが何かあったら俺が来た時に言ってくれ」
本当に信じたかは分からないが、彼はそう言うと部屋を出て行く。
部屋には私だけになる、私はソファに座るとラキ乳を取り出して飲んだ。
後はどうなるか待つだけだな。
『クレリア?聞こえる?』
ラキ乳を飲みながら考えているとミナからの念話が来る。
『聞こえている、どうした?』
『私達の事忘れないように……というのは冗談だけど。そっちの大陸では何か見つかった?』
そう言えば魔族の事を教えて無いな。
『そうだな、今の所三つの国と魔族と言う種族を見つけたくらいだな』
『……は?……え?……新しい種族……?国がある?』
『そちらの国と変わらない程に発展しているぞ』
すぐに返事が返ってこないな、どうしたんだ?
『おい?どうした?何かあったか?』
『今あったわよ!新しい大陸に新しい種族の国!?私達と同じ程に発展している!?大事件なんだけど!』
大分慌てているようだ。そこまで驚く事か?
広い世界だしまだ会っていない何かがいてもおかしくはないだろうに。
『落ち着け』
『……もう!貴女は全く……』
『騒いでも何も変わらないぞ』
『はあ……どうしようかしら……』
『私だから来れたんだ。まだそちらの人類に広い海を越える方法は無いだろう?空を飛んだとしても速度を出すか長い時間飛べないとこちらの大陸まで来る事は出来ないからな』
『その……魔族だったかしら?……まだこちらに来る方法は持ってないのよね?』
『正体がばれないように町に紛れ込んで暮らしていただけだからはっきりとは分からないが、恐らくまだ無理だと思う』
『そう……ん?正体がばれないように?』
『見た目がだいぶ違ってな。姿を見られると魔人では無い事がばれてしまう』
『……魔族について分かっている事、出来れば全部教えてくれない?』
『いいぞ。ではまず……』
私は分かっている事、個体は魔人と呼ぶ事、見た目、寿命や年齢による衰えが無い事や病気にはなる事、好戦的な性格の者が多い事、その実力が他の種族に比べて高い事などを教えた。
『……いつか……いつか出会った時に戦争になると思う?』
私の話を聞いた後ミナが聞いてくる、好戦的と聞いて心配になったのか?
『そちらの大陸にいる種族達と魔族が出会うのは恐らくまだ先だが、お互いがどれだけ繁栄しているかにもよる。先に大陸に渡る方法を確立した方が優勢になる筈だ、お互いどう判断するかは実際に会ってみない事には分からないな』
『……きっとルーテシアの生きているうちに起こるわよね』
『どうだろうな』
『どうしようかしら。私はクレリアの事を知っているから信じるけど……こんな事言ってもきっと誰も信じないわ……』
『どうするかは任せる、私としてはそこまで気にしなくてもいいと思うが。備えるのはいいが、いつ実現するかも分からない事に必要以上に時間や労力を使うのは無駄だと思うぞ?』
『そうね……取り合えずケインと、特にルーテシアにはしっかり教えておかないと……また何か分かったら教えてくれる?』
『いいぞ、忘れていなければだが』
『……たまにこっちから連絡するわ』
彼女がそう言うと念話が切れた。
それから一か月後。私はザメニアから首都バウムに行って説明をして欲しいと頼み込まれ、了承した。