少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。





030

 

 バウムルスト王国を抜け出した私は南西に飛ぶ。

 

 しかしどのあたりまで行けばアーティア帝国の領土なのかが分からない。

 

 ある程度の距離を移動し、いくつかの町が過ぎた。

 

 流石にそろそろアーティア帝国だろうか?次に大きな町を見かけたら立ち寄って話を聞いてみよう。

 

 そう考えながら飛んでいると進行方向のやや左側に町が見えて来た。

 

 それなりに大きそうな町だ、これで現在どの国に居るかが分かるな。

 

 町から少し遠い場所に下りて徒歩で町へと向かう。

 

 しばらく進んでいると、訓練場のような場所で一人、戦闘訓練のような事をしている魔人を見つけた。

 

 見た目から歳は……そうだ、見た目はほとんど変わらないんだったな。

 

 一応見た感じでは十代前半だろうか?

 

 しばらく見ていたが、素質はありそうなのだが訓練方法が悪すぎる。

 

 あれでは体を壊してしまうだろう、普通の生活にも問題が出てしまう可能性が高い。

 

 ただ非効率だけなら気にしないがあれは駄目だ、私は彼女の方へ歩き出した。

 

 「おい、そこの少女」

 

 「は?はい?」

 

 息を切らして振り向く彼女。

 

 濃い紫の短髪で、160㎝ほどの身長の大人しそうな見た目の少女だ。

 

 だがその瞳は強い力を放っているように感じる、これは予想以上にいいかも知れない。

 

 「その訓練はやめろ。体を壊す可能性がある上に効果が少ない」

 

 「そんなはずはありません!確かに強くなっています」

 

 「少しは効果があるからそうだろうな。だが無駄が多い上に危険だ」

 

 「私の両親が教えてくれた訓練方法です!間違っている訳がないですよ!貴女はまだお子様ですから分からないのですよ!」

 

 親が教えた?こんな訓練をか?

 

 「ではこうしよう。一週間だけ私の訓練を受けてくれないか?それでだめならしっかりと謝罪するし何なら金も払おう」

 

 ただでさえ能力の高い魔人。更に彼女ならばしっかりと訓練すれば一週間で効果ははっきりと出るはずだ。

 

 「ええ!?お金はいらないですよ!」

 

 「どうしても嫌なら無理にとは言わない。だが素質がありそうなお前が訓練のせいで駄目になるのは出来れば防ぎたい」

 

 「……そこまで言うのなら、一週間だけですよ?」

 

 彼女は悩んだ末にそう言った。

 

 「お前の名前は?」

 

 「私はシシー・エッフェルです!貴女は?」

 

 「私はクレリア……」

 

 アーティアはやめた方がいいかもな。

 

 「どうしました?」

 

 「いや、私はクレリアだ。よろしくな」

 

 「よろしくね?クレリアちゃん!」

 

 彼女は眩しい笑顔を見せながら言った。

 

 

 

 

 

 

 話を聞くと彼女はアーティア帝国の領土である近くの町、イロネクに住んでいるらしい。

 

 そしてその町で猟兵ギルドに所属しながら、時間がある時はここで訓練しているという。

 

 猟兵ギルドについて聞くと、向こうで言う冒険者ギルドのような物だった。

 

 私はイロネクに宿を取り、毎日決まった時間に一週間だけ訓練をする事になった。

 

 

 

 

 

 

 「よし、いったん休憩だ」

 

 「ぶはー!」

 

 彼女は声を上げてその場に倒れる。今は基礎訓練と体幹訓練を両立した訓練をしている。

 

 「いきなり止まるな。立って体をほぐせ」

 

 「分かりました!」

 

 彼女は体をほぐし始める、私はそれを見ながらシシーに話しかけた。

 

 「フードを被った怪しい私の言う事を聞いてよく頑張るな」

 

 そう言うと彼女は体をほぐしながら真剣な顔で言う。

 

 「そういえば怪しいですね……」

 

 「今更何を言っている」

 

 「いえ、訓練方法を駄目だと言われた事に気を取られて気にしていませんでした」

 

 「そうか、しかしお前はよく素直に話を聞いて頑張っている。適当にやって駄目だったと言う事も出来るだろうに」

 

 「貴女が教えると言って私はそれを受けたの。一週間だけだけど私は生徒、貴女は先生……それにしっかりやりもしないで貴女の方法が悪いだなんて言えないから」

 

 本当に効果が無いと私に分からせるにはやれるだけやっていなければ駄目だと考えているのか?真面目な子だな。

 

 「やってよかったと思わせよう。よし、次だ」

 

 「はい!」

 

 二日目。前日と同じくいつもの基礎を私の回復魔法を使いながらみっちりと行う。彼女は常に限界の僅かに上を要求され、苦しいはずだが一度も弱音を吐かなかった。

 

 三日目に彼女は夢を語ってくれた。アーティア帝国の帝国近衛兵になり、いつかは帝国近衛兵筆頭になりたいのだと言った。

 

 女帝であるカミラ・アーティアは自国民に尊敬され愛されている、自分はその方に仕えたいと興奮気味に語った。

 

 「両親はその夢をどう思っているんだ?」

 

 休憩中に話を聞いてみた。

 

 「最初は反対していたんですけど途中から何も言わなくなりました。訓練を教えてくれたのでもう平気ですよ!」

 

 そう言って彼女は笑った。

 

 四日目、彼女は何故か元気が無かった。

 

 「シシー、どうした。いつもの元気が無いぞ?」

 

 私は休憩中に声をかけた、やる事はやっているのだが顔が暗く声に元気が無い、明らかにおかしいと分かる。

 

 「……体が軽いんです。猟兵ギルドの討伐依頼も……今までが嘘のように相手が弱く感じるの」

 

 彼女はそう言って俯く、効果を感じているからこそ暗いのか。

 

 私の訓練で大きな効果があるという事は彼女の両親が効果の無い訓練方法を教えていたという事になるからな。

 

 まだ四日だが、私が魔法を使い訓練すれば短い時間でも効果は出る。

 

 特に彼女は伸びが良い、私の見立ては間違っていなかった。

 

 「まだ三日ある。それから答えは聞く、さあ次の訓練だ」

 

 「うん……」

 

 五日目、彼女は少し元気を取り戻していた。いつもの様に訓練を繰り返してしっかりと効果を感じているようだ。

 

 もう彼女は分かっているだろう。何らかの理由で彼女の両親は効果が無い訓練方法を教えたのだと。

 

 彼女の話しぶりからすると両親とは特に不仲な訳では無いはずだ。

 

 むしろ深く想われている印象を受けた。

 

 六日目、彼女は四日目よりも沈んでいた。聞いてみると両親に訓練の事を聞き喧嘩になったようだ。

 

 「もう猟兵ギルドも帝国近衛兵になるのもやめて他の事をして欲しいって……でも、もうはっきりと分かる……凄く実力が上がってる……今までやって来た事は、あの訓練方法は嘘だったって……分かってしまった」

 

 「明日訓練が終わったら私もお前の家に行く。お前の両親と話がしてみたい」

 

 「え……?」

 

 「さて次だ!早くしろ!」

 

 「あ……うん」

 

 呆けた顔のままそれでも訓練を始めるシシー。私の気まぐれではあるがついでに何とかしてみよう。

 

 

 

 

 

 

 七日目の訓練が終わり、私は彼女の家に案内され両親に紹介された。

 

 彼女の両親は私を見て微妙な表情をしていた。

 

 シシーを退席させて話し合ったが、両親は危険な猟兵ギルドでの仕事も帝国近衛兵もやって欲しくは無いらしく、当初は反対していたという。

 

 そして彼女が本当に猟兵ギルドに入ってしまったため、危険な依頼を受けるランクに上がる前に嘘の訓練方法を教えて才能が無いと思わせ、諦めさせようとしたらしい。

 

 しかしいつまでも諦めず嘘の訓練を続ける娘を見てどうしようかと悩んでいた。そこに現れた私が教え始め、実力が目に見えて上がったのでなりふり構わずやめさせようとして喧嘩になったという事らしい。

 

 私はあの嘘の訓練をずっと続けていたら体を壊し、取り返しがつかない事になっていたかもしれない事を理解させた。

 

 そしてあの子は恐らく夢をあきらめる事は無いと言う事、親である二人が子の努力を無駄にしている事、今までの彼女の訓練の様子などを話して聞かせた。

 

 最終的にシシーは両親が今までずっと心から心配をしていた事を知り、両親は彼女の夢への決して諦める事の無い心を知った。

 

 そして両親は嘘をついた事と、そのせいで体を壊す可能性があった事を話して謝り、娘の夢の応援をする事を約束した。

 

 そして彼女も心配をかけていた事を謝り、そこまで思ってくれている事を感謝した。

 

 「これからはしっかり訓練を考えろ。分からなければ猟兵ギルドの者にでも聞け」 

 

 私がいなくても彼女がギルドの誰かに訓練の事を聞けば、どうにかなっていた気がする。

 

 私は話が付いたのを確認して席を立つ。

 

 今日で約束した最後の日だ、このまま私は首都リリティアへ向かおう。

 

 「クレリアちゃん、もっと私に教えて下さい!」

 

 「悪いが私は向かう所がある。他に何をやるのも自由だが、私が教えた基礎は怠るなよ」

 

 「そうですか……貴女に教わった事は忘れずに続けます。いつかまた会いましょうね?」

 

 寂しそうなシシーに私は忘れていた事を聞いた。

 

 「また会えたらいいな。最後に……首都リリティアの場所を教えてくれ」

 

 私は首都リリティアの場所を教えて貰い、シシーと両親に見送られてイロネクの町を後にした。

 

 

 


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