少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。





031

 

 イロネクを後にした私は首都リリティアに向かう。

 

 場所は分かったのですぐに着くだろう。少し寄り道をしたが女帝カミラが私の娘なのか確認しておきたい。

 

 見えた、遠目から見てもかなり広い都市だ。

 

 城もはっきりと見えるな、私はいつもの様に遠くに降りてから徒歩で都市に向かう。

 

 問題無く都市へと入る事が出来た私は、周囲を観察しながら進む。

 

 魔人達が広い大通りを行き交い、売り子の声が飛び交っている。

 

 視線を上げると、遠くに女帝が住む城が見える。

 

 いくつか見た他の魔人の町よりかなり活気があるように感じるな。

 

 まずは宿を取ろうと場所を聞き、そこに向かう途中も街や魔人達の様子を見た。

 

 途中に寄った町といい、アーティア帝国の魔人は明るいというか、あまり生活に不満を持っていないように感じる。

 

 ウルグラーデも似たような感じではあったが、あちらはあの都市だけだった。

 

 アーティア帝国は帝国全体がこうなのだろうか?

 

 女帝が私の娘だとしたらこの分野ではもう私を超えているな。

 

 私ではここまでの事は出来ないだろう。いや、私は可能でもここまでやらないかも知れない。

 

 宿についた私は、料金を払う時にバウムルスト硬貨を確認された。それぞれの国の硬貨のデザインが違うようだ。

 

 以前泊まったイロネクの町では確認されなかった事を話すと、発行した国が違っても使う事は出来るようで、わざわざ確認しない所もあるそうだ。

 

 私はアーティア帝国の硬貨を見せて貰ったが、そこに描かれている姿はどう見てもカミラにしか見えなかった。

 

 女帝が私の娘である可能性は高そうだ。

 

 宿で城への行き方を聞いた私は魔車で城へ向かった。

 

 城は遠くから見ても存在感を放っていたが、入り口まで来るとやはり大きい。

 

 城門にいる兵士に女帝に会う事は出来るか聞くと、不可能では無いがただ会いたいと言う理由では難しいようだ。

 

 相応の理由か功績が必要だと言う。

 

 この国では自由に女帝に意見を出す事が出来るが、彼女まで意見を届かせるには審査を通過する必要があるらしい。

 

 彼女まで意見が届き、有用であると判断されれば褒賞が与えられたり、場合によっては側近などに誘われる事もあるらしい。

 

 なるほどな、優秀な者は出来るだけ取り入れるのか。

 

 危険な人物だったらどうするのかと聞くと、人間性も大きな判断基準であると説明された。

 

 どんなに優秀でも危険な思想を持っていたり、他者を見下したりといった事をする者、またはその傾向がある者は要職には就けない……という事を大々的に布告していると言う。

 

 更に場合によっては国外追放、処刑なども容赦なく執行される。

 

 国民達には優しいが害を与えるなら容赦はしないのがこの帝国の女帝であると熱く語ってくれた。

 

 少なくとも国民からの人気は高そうだ。

 

 それを聞くと私はその場を去ったが、城に近づいた時に感じた気配で分かった。

 

 間違いなく私の娘だ。

 

 いつの間にか女帝になっているとは。はっきりと分かったからには名前を伝えるか念話で呼べば入れるだろうが……ふと考えが浮かぶ。

 

 私だと知らない状態の娘と戦って実力を見てみたい。

 

 あの子とはよく訓練したが、相手が私だと魔物の時のような苛烈さが足りなかったからな。

 

 今の彼女の力を確認しておこう、外敵に対する対応も見てみたい。

 

 そうと決まれば準備だ。

 

 まずはバレないように気配と声を変えよう。

 

 後は彼女に見せていない女神重装を着て行けば正体不明な襲撃者の完成だ。

 

 出来るだけ周囲に被害が出ないようにだけ気を付けよう。

 

 

 

 

 

 

 その日の深夜、私は城に忍び込みカミラの寝室に向かう。

 

 寝室に入ると広い部屋に質素だが質の良い家具が並んでいた。

 

 私は昔の彼女が気が付くかどうかの気配を出してベッドに近づく、すると私の手足と頭が動かなくなる。

 

 「……すぐには殺さん、色々と吐いてもらおうか……ラフィー!賊だ!」

 

 カミラが起き上がり言う。

 

 これぐらいは気が付かなくては話にならない、あの頃から成長していない事になってしまう。

 

 「よく気が付いたな」

 

 「その程度の気配隠蔽で誤魔化せると思うな。楽には殺さんぞ……」

 

 そう言って私を睨む彼女の姿は最後に会った日のままだ。

 

 「……陛下」

 

 音もなく部屋に一人の女性魔人が入ってくる。その魔人女性はカミラを守るのではなく私を逃がさないような位置取りをした。

 

 「ラフィー、逃がすなよ」

 

 ラフィーと呼ばれた魔人は灰色の瞳をした女性だった。

 

 背は高く、側頭部から後頭部側にねじれた白い角が一対生えており、灰色の髪をポニーテールにして茶色い肌をしている。

 

 「はい、他の者も既に配置についております」

 

 「ここで戦うと城が壊れるぞ?」

 

 「お前を捕らえる事が優先だ、城など直せばいい」

 

 カミラはそう言うが、私に壊す気は無い。町の外に行くか。

 

 「ここで戦うのなら町にも被害が出るかもな。町がどうなっても良いと?」

 

 「すでに町には帝国兵が展開されている、帝国の民と兵を甘く見るなよ」

 

 私の言葉にラフィーが答える、残念だが減点だ。

 

 私は拘束を破り窓を突き破って町の外へ飛ぶ。

 

 長々と話をする前に私を完全に無力化するべきだったな。

 

 「捕らえたければついて来い!」

 

 そう言うとカミラとラフィーが追いかけて来る、中々の速度だ。

 

 

 

 

 

 

 町から離れ、草原に降り立つとカミラが仕掛けて来る。

 

 「いきなりだな」

 

 「戦いから離れて腑抜けていたようね……無力化してからゆっくりと話は聞くわ」

 

 爪で切りかかってくるカミラを女神のロングソードで受ける。

 

 無力化が目的だからか本気ではなさそうだが、あの頃よりずっといい動きだ。

 

 私はショートソードを出しカミラとは別の方向へと向ける、そこにはラフィーが音もなく斬りかかっていた。

 

 「二人がかりか、卑怯では無いか?」

 

 「敵には何をしてもいい……とまでは言わないが、余計な情けをかける気は無い」

 

 ラフィーはそう言うと力を込めて来る、そして二人は連携をし始めた。

 

 草原で激しく攻防を繰り広げる私達。

 

 二人ともいい速度だ、並の者では見えないだろう。

 

 周囲の草原は余波で急速に荒れていく。

 

 殺さずに情報を得ようとしているし全力では無いか、どうにかならないだろうか。

 

 私は少しだけ力を上げる。

 

 「……っ!?ラフィー!殺してしまっても良い!油断するな!」

 

 私に何かを感じたのかカミラが言う、問題無く力を計れているな。

 

 さて、これで娘の本気の戦いが見られるだろうか?

 

 カミラの速度が一気に上がる。力も先程とは比べ物にならない程強くなり、距離が空けば魔法を撃ち込んでくる。

 

 周囲は滅茶苦茶になり見る影もないが。

 

 そんな戦いの中、気配が複数こちらに向かっているのを感じる。

 

 カミラの周りに光球がいくつも生まれる。

 

 その一つ一つが自由に動き私を狙ってくる、随分出来るようになったな。

 

 ラフィーは私の足止めを目的にしたような戦い方に変わったように感じる。

 

 光球を飛び回ってかわしながらラフィーを相手にする。

 

 やがて感じていた気配が到着する。十人の魔族が現れ、遠巻きに私達の戦闘を見始めた。

 

 「我々も行くか?」

 

 「いや、あのお二人の邪魔になるだけだ……我々はいざと言う時にいつでも援護に入れるようにしておこう」

 

 「陛下と筆頭殿を相手にあれだけ戦えるとは……何者だ?」

 

 そんな会話が聞こえる、お前達も一緒に戦おうじゃないか。

 

 私は彼らに魔法攻撃をする、しかし皆それぞれに対応して無傷だ。

 

 「……!?あの野郎!更に俺達にまで!?」

 

 「陛下が負けると思えないが……危険すぎる」

 

 私はそんな事を言っている彼らにカミラとラフィーを引き連れ急降下し、斬りかかって行った。

 

 「っ!?」

 

 「こいつっ!?」

 

 「この賊やりやがる!」

 

 乱戦となったが彼らもいい動きだ、恐らく帝国の中では実力者だろう。

 

 この人数でもお互いの邪魔をしないように自然と動いているように感じる。

 

 「離れろ!」

 

 カミラがそう叫ぶとラフィーを含めた全員が離脱した。

 

 そしてその直後分厚い氷が私を覆い、氷に包まれた私はそのまま地面に落下した。

 

 「陛下……」

 

 凍り付いた私を見ながらラフィーが声をかけている。

 

 「あのままでは被害が大きくなりそうだったからな……凍らせた。生きてはいるだろうから色々と吐かせるぞ」

 

 「はっ」

 

 そう言ったカミラにラフィーと十人の魔人は跪いて返事をした。

 

 この氷は凄いな。

 

 氷の強度をここまで上げるのはかなり難しい。これならクログウェルも脱出は難しいかもしれない。

 

 成長を感じる事が出来たしそろそろ私だと教えるか。

 

 砕いたらまたすぐに襲い掛かって来そうだから念話で教えよう。

 

 『カミラ、聞こえるか?』

 

 すると目の前のカミラがピクリと反応する。

 

 「陛下?どうかいたしましたか?」

 

 「少し待て」

 

 「はっ」

 

 そう言うと歩いて少し離れていく。

 

 『お母様?お久しぶりですね』

 

 『今平気か?』

 

 『お母様よりも優先する事は無いわ』

 

 『今から久しぶりに会わないか?』

 

 『今からですか?もう少ししたら私から連絡しようと思っていたのだけれど……』

 

 『そうだったのか。ではもう少し待とうか?』

 

 『会いたいです……』

 

 『じゃあ会おうか』

 

 『はい。あ……でも今私はお母様といた大陸にはいなくて……後……』

 

 『ああ、知っている……魔人の国の女帝になっているのだろう?』

 

 そう言うと少し間が空く。

 

 『何故お母様がそれを……こちらに来ているのですか?』

 

 『ああ、お前の近くにいるんだ』

 

 『そうならそうとすぐに言ってくれれば迎えに行ったのに……』

 

 『いや、最初はお前では無く同姓同名の別人かと思っていたんだ。首都リリティアのお前の城に行った時に気配で確信してな』

 

 『リリティアに居るのですか!?こんな賊に時間を取っている場合じゃないわ、すぐに迎えに行きますので今何処にいるのか教えてちょうだいお母様』

 

 『今か?お前のそばで氷漬けになっている』

 

 『へ……?』

 

 滅多に聞けないカミラの呆けた声だ。

 

 『今お前の近くで氷漬けになっている黒と赤の全身鎧を着た小柄な賊が私だ』

 

 『……お母様も冗談を言うようになったのですね?』

 

 『本当だ』

 

 そう答えると目の前のカミラが氷漬けの私に近づいて来る。

 

 私は内側の氷を砕きながら右手を彼女に向けて振った。

 

 彼女は慌てたように周りの者に言う。

 

 「状況が変わった。これからこの者を開放する、攻撃はするなよ!」

 

 「陛下!?」

 

 「大丈夫だ、敵ではなかった」

 

 「……かしこまりました」

 

 周りの者は戸惑っているようだが、カミラが敵ではないと言った事で納得したようだ。

 

 『どうぞお母様、出てきてください』

 

 『分かった』

 

 そう答えて私は氷を砕いて出て行く、周囲の魔人達は驚いている。

 

 「陛下の魔法から……!?」

 

 「……嘘だろ!?」

 

 そんな声がする中、私は装備を解除していつものワンピース姿になる。

 

 「魔人ではない!?……少女?」

 

 ラフィーが呟く、そしてカミラが私に微笑んで言う。

 

 「ようこそアーティア帝国へ……お母様」

 

 「……えっ!?」

 

 「……お、お母様ぁ!?」

 

 ラフィーと他の魔人の驚きの声が、荒れた草原に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 それから取り敢えず城へ帰りカミラとラフィー、そして国の側近達で話す事になった。

 

 戦闘に来ていた他の近衛兵の十人は会議場の警備に回っている。

 

 円卓に並んで座る私とカミラ。私の反対側にはラフィーが座り、それ以外には残りの側近達が座っている。

 

 「みんな、お母様の事で苦労を掛けた……悪かったわね。ではお母様、どうぞ」

 

 私はカミラに促され話し始めた。

 

 「私はクレリア・アーティアと言う、カミラの母だ。娘と共に居てくれるお前達に感謝する」

 

 「もったいないお言葉です」

 

 ラフィーが真っ先に答え、残りの者達も似たような返事をした。

 

 みんな忠誠は本物のようだ、娘の配下が彼らでよかった。

 

 「そして、皆に謝罪する。騒がせてすまなかった」

 

 「お母様、なぜあのような事を?」

 

 謝罪した私にカミラが疑問をぶつける。

 

 「お前の成長を見たくてな」

 

 「クレリア様、普通に戦おうと陛下におっしゃればよかったのでは?」

 

 ラフィーが声を上げる、私はラフィーの方を見て答える。

 

 「それでは私の知りたい事が分からない可能性があった」

 

 「知りたい事……ですか?」

 

 別の者が声を上げた、私はカミラを見て言う。

 

 「この子の本気とまではいかなくても、敵に対する戦い方を見たかったんだ」

 

 「本気で戦うように言えばよろしいのでは……?」

 

 また別の者が言う。

 

 「皆がどう思っているか分からないが、カミラは自分に悪意を持っていない相手には基本的に優しい。相手が私だと分かっているとどうしても手加減をする、昔からそうだった」

 

 「……お母様」

 

 微妙な表情のカミラ、本当の事だろう。

 

 「確かに……」

 

 ラフィーが呟くと私とカミラを除いた全員が思う所があるらしく頷いている。

 

 「だから気配を変え姿を隠し、侵入者として近づいた。カミラが手心を加えないようにするために」

 

 「お考えは理解いたしました、至らぬ我々をお許しください」

 

 全員が首を垂れる、そこまでしなくてもいいのだが。

 

 「実際最後の魔法は良かったぞ、強敵にも十分通用する物だった」

 

 「お母様は簡単に出て来たのに?」

 

 カミラはそう言うが、間違いなく強力だった。

 

 「それは私だったからだ、竜族にも通用する物だったぞ」

 

 「竜族?」

 

 カミラが聞き返してくる。

 

 「私が出会ったかなり強力な種族だ。名付けたのは私だが」

 

 私は姿の特徴を説明し、魔法や言葉を理解する知能を持つ事、カミラに迫る力を持つ事を話した。

 

 「陛下……それは南の孤島にいる魔物の事では?」

 

 側近の一人が声を上げる。別の個体がいるのか?

 

 「確かに特徴は多く一致しますね……島の周囲から大きく動かないから監視にとどめているが……」

 

 別の側近がそう言って考え込む。

 

 「確か国境の付近に大きな黒い魔物が飛んでいたと報告があったはずだな?その特徴と似ていないか?」

 

 更に声が上がる。

 

 やがて彼らの間で話し合いが始まった、黒い特徴の似た魔物……クログウェルか?

 

 「クレリア様の話では陛下に迫る実力を持っているとの事だが、討伐するべきか否か」

 

 「下手に手を出して犠牲を出す事は出来ないが、放置も出来ないですね……」

 

 「取り敢えず南の竜は刺激しなければ今の所は大丈夫でしょう。これまでも大陸の方に来たと言う報告は無いですし」

 

 「問題は目撃された黒い魔物の方だ……今まで長い間そんな魔物は目撃されていなかった。どこかからやって来たと考えるべきだが、被害が出る前に本格的に討伐に取り掛かるか国境付近の守りを固くして様子を見るべきか……」

 

 「ちょっといいか?その目撃された黒い魔物だが、もしかすると私の友人……いや、友竜かも知れない」

 

 私がそう言うとみんなが私を見る。

 

 「魔物と友好を結んでいるのですか?」

 

 側近から声が上がる、私は側近達と話し始めた。

 

 「さっき説明しただろう、言葉を理解する知性を持っていると。知性があり話せるのならば、例えば……私達を餌としか認識していない。などといった状態でない限り友好を結べる可能性はあるだろう?」

 

 「なるほど……であるならばそのご友……竜に確認して頂けますか?」

 

 「分かった。今確認するから少し私抜きで話してくれ」

 

 「今……でございますか?」

 

 私は頷いて念話を使う。

 

 『クログウェル、今大丈夫か?』

 

 『どうした?』

 

 『お前こっちの大陸に来てから南西の方まで来たか?』

 

 『行ったな』

 

 『お前以外に黒くてお前ほどの大きさの他の生物はいなかったか?』

 

 『むう?そんな者はいなかったな、いたら気が付いている』

 

 『じゃあお前だな』

 

 『なんだ?何かあったのか?』

 

 私は自分の娘の国を見つけた事、そこでクログウェルが目撃されて脅威と判断され、討伐しようと言う話が出ている事を説明した。

 

 『娘だと?性別は無いのでは……そもそも子をなせるのか?』

 

 『私が拾って育てたんだ、義理の母と言う奴だな』

 

 『なるほど、しかし我を討伐しようとするとは身の程を知らぬ奴らだ』

 

 『言っておくが私の娘は魔人ではないし、恐らくお前と同じかそれ以上に強いと思うぞ?』

 

 『ほう……それは興味深い。貴様以外に我と戦える者がいるのか』

 

 『仲良くなれば調味料や珍しい食材が買えるかもしれないぞ?』

 

 『……仲介をしてくれないか?』

 

 すっかり料理の魅力に取りつかれているな。

 

 どうやらクログウェルはアーティア帝国と友好を結ぶ事を決めたようだ。

 

 『分かった、その内迎えに行く。魔人を襲うなよ?受け入れられなくなるぞ』

 

 『うむ、待っているぞ』

 

 そして念話を切りみんなに目を向けた、みんなは色々と話し合っているが私の動きを感じ取りこちらを見る。

 

 「私の友人で間違いないと思う。その魔物は黒竜クログウェルと言って、向こうの大陸で出会った竜族の女性だ」

 

 そう言うと驚きの表情をする側近の面々。

 

 「ではお母様、敵では無いのですね?」

 

 「ああ、友好を結んで竜の素材と引き換えに調味料や珍しい食材が欲しいらしい。それと、魔人を襲わないように言ってあるから安心してくれ」

 

 「では、会議が終わり次第準備を始めます。まずは帝母であるクレリア様の事を国民に布告し、その後専用のクログウェル殿の着陸場所の選定と通達もしなくてはいけません……忙しくなりますな」

 

 帝母?女帝の母と言う事か?

 

 側近達はやる気に満ちている、良い人材を集めたものだ。

 

 「お母様はこの後はどうするつもりなの?」

 

 「この国にしばらくいるつもりだ、出かける事はあると思うが」

 

 「城に部屋を用意させるわ」

 

 「町の宿でも構わないぞ?」

 

 「駄目よ。お母様に対してそんな扱いは出来ないわ、お願いだから城に住んで」

 

 カミラが頼み込んでくる。特にこだわりは無いから娘の言う事を聞いておこう。

 

 「自由に外出していいのなら城に住む事にする」

 

 「……いいわ。お母様の部屋の用意をしろ、相応の場所をな」

 

 「かしこまりました、陛下」

 

 カミラは側近の一人に命じて私に向き直る。

 

 「お母様、私達は今日の所はここまでにしましょう」

 

 「分かった」

 

 「我々は部屋に戻る。お前達に後は任せるが、何かあれば報告しろ」

 

 「かしこまりました、カミラ様」

 

 私達はカミラの部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 カミラの部屋で二人だけになる。

 

 ソファに座っている私の隣にくっ付いて座るカミラ。

 

 「凄いなカミラ。女帝になるとは」

 

 「うん……」

 

 「色々教えてくれ」

 

 カミラは色々と話してくれた。

 

 カミラは私と別れた後、まだ国が一つだけだったこの地に訪れた。

 

 魔人では無いハンデを背負いながらも有り余るその力と私に教えられた知識で皆をまとめて女帝となった。

 

 言葉で言えばたったこれだけだ、だがそこに至るまでの苦労は私では想像出来ない。

 

 魔道具や錬金術、鍛冶、そして魔法は私から学んだ事を女帝になる過程でカミラが広めたそうだ。

 

 通貨も当時の物は分かりにくかったため、カミラが知っていた人類の通貨制度に統一させた。

 

 そして他の二国は突然現れた魔人では無いカミラが国を継ぐ事に反対だった者達が離反して興した国だと言う。

 

 カミラは当時それを当然だろうと認め、援助まで行い三国となったと教えてくれた。

 

 「お前は私の自慢の娘だ。私には無い物を身に着けた、もう私に守られるだけの娘では無いのだな」

 

 そう言ってカミラを胸に抱く。

 

 彼女は私に抱きついて静かに泣いていた。泣き虫なのは変わらなかったと思いながら私は彼女を優しく撫で続けた。

 

 たまには娘に甘えられるのも良いものだ。

 

 

 

 

 

 

 あれからカミラはそのまま寝てしまい、ベッドへと連れて行ったのだが、彼女が私を離さなかったので一緒に寝た。

 

 目が覚めた時のカミラは色々思い出したのか恥ずかしそうな顔だった。

 

 泣いてしまったのは私に認められた事が嬉しかったかららしい。この地での事は大変ではあったが楽しかったとカミラは微笑んで言った。

 

 城の皆の頑張りで私の部屋は素早く用意された。カミラの部屋に近く、趣味の良い豪華な部屋だった。

 

 その数日後。カミラの母である帝母クレリア・アーティアとして国内に私の存在が布告された。

 

 その一か月後にカミラから受け入れる準備が出来たと言われ、クログウェルを首都リリティアに連れて来た。

 

 多少の混乱はあったがカミラが治め。帝母である私の友として国民に認知させた。

 

 竜の素材の質の高さを知ったカミラは相応の値段で買い取る事を約束し、クログウェルは無事に調味料や珍しい食材を手に入れた。

 

 クログウェルは自分が直接来ても問題の無い国として大いに気に入ったようだった。

 

 彼女はカミラと戦いたかったらしいが、今はそんな気は無いと断られたようだ。

 

 ただ、カミラはいつか戦うと言ったらしく、クログウェルはその日を待つ事にしたと言っていた。

 

 こうしてクログウェルはアーティア帝国と友好を結び、私は帝母と言う立場を得てアーティア帝国首都リリティアでの生活を始めた。

 

 

 


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