この作品の注意事項
・作者の自己満足
・素人の作品
・主人公最強
・ご都合主義
・辻褄が合わないかもしれない設定
・注意事項が増える可能性
等が含まれます。
以上をご理解したうえでお読みください。
読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。
私が帝母としてリリティアに住んでから数年は時が過ぎただろうか。
その間カミラに頼まれた時は帝母として様々な催しに出席した。
闘技場と競技場は好きなのでよく行っていた、帝母としてでは無く個人的にも行って楽しんだ。
カミラも女帝としての執務などを日々こなしながら時間を作っては習得した転移でウルグラーデに行っている。
クログウェルは今もウルグラーデとリリティアで取引を続けている。
普段は北の山脈でのんびり過ごしているようだ。
今は国民も落ち着き、必要以上に騒がれる事は無くなったが、頻繁に町に出て来る帝国民想いの帝母だと言われている。
私が楽しんでいるだけでそのような意図は全く無いのだが、わざわざ否定しなくていいとカミラに言われたので好きなようにさせている。
そんな日々を送っていたある日、カミラの部屋でくつろいでいると側近の一人が部屋にやって来た。
「陛下、お耳に入れたい事がございます」
「話せ」
カミラの許可を得た側近は話を始めた。
「先程情報が入りました。それによるとバウムルスト王国が大規模な国力と軍備の増強を行っているようです」
「予想される理由は?」
カミラの目つきが変わる。
「我々、もしくはヴァイル王国への侵攻が目的だと思われます」
「なぜ急にそんな事を……」
そう言って考え込むカミラ。そんなカミラのそばに待機していたラフィーが言う。
「魔族の統一を考えているのではないでしょうか?」
カミラと側近はラフィーに目を向け、側近が言う。
「筆頭殿、なぜそう思うのです?」
「バウムルスト王国は他の大陸に我々以外の種族がいる事を知っています」
そう言うとカミラは目を細め、側近は顎に手をやり考えるような仕草をする。
あの国には私が色々話してしまったからな。
「あくまで予想ですが……まず魔族を統一しその後技術や国力を高め、いずれ別大陸へ侵攻するつもりなのでは無いかと」
ラフィーは自分の予想を口にする。確かに技術や国力を高めるなら統一した方がいい気はする。
「魔族が他の大陸に渡るのはまだ難しいけれど……新たな技術を開発するためにまずは統一……と言う事かしら」
「恐らくは……ただ我々が手に入れていない情報がある可能性は否定出来ません」
カミラと側近が話し合う。私はまだまだ不可能だと思っているが、ある日突然一気に事が進む時もある、隷属魔法の時のように。
そこで私は思いついた事を言ってみる。
「バウムルストの王が私の事に気が付いた可能性は?あの王は負けたままで大人しくしているようには見えなかった。単に私がアーティア帝国にいると知って手を出そうとしているという事は無いか?」
私がそう言うと側近が話し出した。
「あるいは、両方なのではないでしょうか?」
「両方ね……」
側近の言葉にカミラが反応する、更に側近は続けた。
「はい……他の大陸に備えるための魔族の統一と、その過程の帝母様との再戦。その両方を同時に行うつもりなのでは?どちらを行うにしても国力は必要ですので……」
なるほど、統一の過程でアーティア帝国とも戦う事になるだろう。カミラが他国の支配を受け入れるとは思えないからな、これは戦争になるかもな。
「他の大陸に行く方法は後回しにして、魔族を統一するついでにお母様と再戦しようとしていると?」
「どちらがついでなのかは分かりませんが恐らく……」
カミラの問いに答える側近。先に統一して国をあげて大陸間の移動方法を開発する、悪くは無さそうだ。
「どちらにしてもただ見ている訳には行かない……皆を集めろ、これからの方針を決めなくてはならない」
カミラのその一言でアーティア帝国の今後を決める会議が開かれる事になった。
その後の会議によって帝国の方針は決定した。
国力を上げ始めているバウムルスト王国に対して帝国が現状を維持するという選択肢は無く、アーティア帝国も国力の増強と軍の拡大を行う事が決定された。
「農地の拡大と人員を確保しなければなりません」
今は方針は決定し具体的な内容を話し合っている、そこで出た話は食料問題だった。
向こうの大陸でもあった問題だ。
「帝国の食料生産能力は悪くはありませんが、もっと効率を良くしなければこれ以上の軍の拡大は難しいと思われます」
軍に所属する者は戦う事が使命、軍人はあらゆる生産に貢献出来ない。
軍を拡大するという事は消費だけが増えるという事だ。
土地を新たに開発して農地を増やせばいいと言った私に側近の一人はこう語った。
「アーティア帝国は背後を海に阻まれており内陸側は他の二国に封鎖されております。現状で新たな土地を増やすには他国から土地を奪うしかありません」
すると別の者が言う。
「他の二国が国を作る際に現在の場所に作ったのはこうなるように仕組んでいたのでしょうな」
「つまりこの国は海と他の二国に閉じ込められているんだな?」
私は確認するために問う。
「はい、アーティア帝国はこの大陸の南西の端に位置しています。東側には大陸が広がっていますが他の二国が存在しているため開発出来ません……この事は以前から問題視されておりました」
彼らはこの事をずっと気にしていたようだがいい案が無かったのか声に力が無い。
「侵攻して奪えばいいだろう」
「元は同じ国の者ですから出来るだけ争いたくはありません。それに我々は侵略者にはなりたくは無いのです……明確に敵対する理由があるならともかく、ただ土地が欲しいという理由で何もしていない他国に攻め込むのは……」
私が言うと、顔をしかめながら答える側近達。
何とも甘い考えだがそう考えられる者達でなければカミラも引き入れようとは思わなかったかもしれない。
「ではどうする?私達が立ち止まっている間に他の二国は領土を増やし強大になるだろう。そしていつかこの国を滅ぼすかもしれないぞ?」
その考え方を悪いとは言わないがそれではどうにもならない事もある。どんな内容であれ心を決めて方針を決める事が出来たら私も手を貸そう。
そう思いながら言った私の言葉に黙ってしまう側近達、するとカミラが頬杖をついたまま言う。
「そうなっても私一人でどうにかなりそうだけど、それでは駄目よね。あなた達がそう考えられる者達である事は嬉しいけれど、この国が危機に陥る位なら私は他国を侵略するわよ」
「陛下……」
側近達は嬉しそうだがそれでも何か思う所はありそうだ、カミラは頬杖を止めて彼らに語る。
「むやみに力に訴える事はしないけれど、国が危機に陥る可能性が高いわ……貴方達は国が、仲間が、家族が危機を迎えてもそんな甘い事を言い続けるの?私は守りたい物を守る、躊躇する事は無いわ。納得出来ないのなら力を貸してくれなくてもいい……ただ邪魔をするなら容赦はしない」
カミラのその言葉を聞いた側近達はしばらく俯いていたがその中の一人が言う。
「私は陛下に忠誠を誓いました。何もかも賛成はできませんが今の陛下は間違っていない……そう思います」
「綺麗ごとだけでは国を守れませんからな……もしもの時は我々が泥をかぶりましょう」
次々に声が上がり必要であれば侵略を行う事が決定した。
「カミラと側近の皆の決意は見せて貰った、私も手を貸そう」
途中から参加せずに見ていた私の言葉に全員が私を見る。
「お母様、力を貸してくれるの?」
「お前達が方針を決める事が出来たなら、その内容に関わらず手を貸そうと思っていた。それに今の私はこの国の帝母だからな」
「お母様はこの状況を打開出来る何かを知っているのね?」
みんなの視線を感じながら私は答える。
「知っている」
こうして皆に私が開発した農耕魔法を教え、その効果とすでに向こうの大陸で大きな成果を出している事を話した。
「凄い……これなら一気に食料に余裕が出来ます……」
「効率が良すぎて恐ろしいほどですね……」
次々に称賛の声を上げる側近達、そんな中カミラは指示をだす。
「この魔法で食料の問題は無くなるけれど農家が職を失う可能性があるわ、事前の説明を国中にして段階を踏み、それなりの時間をかけて国中に普及させなさい。新たな仕事の斡旋や保証を十分に行い、農耕魔法の普及に影を落とす事が無いように注意して。後、この魔法の詳細を他国に奪われる事が無いように目を光らせて」
「お任せください」
側近達はそう答えるとこれからの詳細を話し合い始めた。そんな中、私はカミラに声をかける。
「カミラ、私はこれで戻る。軍の拡大に関する会議には呼んでくれ」
「お母様、何か案があるの?」
「軍の拡大についての会議が始まったら提案するつもりだ」
「分かったわ、その事について話すのは少し後になるわね。まずはお母様の農耕魔法を普及させないといけないから」
「いつでもいい」
そう言って私は話し合いの続く会議場を後にした。
それから一か月程経ったが、特に大きな出来事も無く過ぎ去った。
農耕魔法の普及も上手く行っているようだ。
ある日、カミラから軍の拡大の話し合いをすると言われて出席した。
今日は側近だけでは無く近衛兵達もいる。
「さて、これから軍の拡大に関する話し合いをする訳だが……お母様から話があるらしい」
カミラがそう言うと出席している皆は私の話を聞く体勢となった。
「お母様、どうぞ」
「ありがとうカミラ」
私は礼を言うと一度間隔をあけ、話し始める。
「私の話に時間を割いてくれてありがとう。長々と無駄な事を話すのは意味が無いから本題に入る」
そう言って私は新しい部隊の提案を始めた。
「軍の拡大をするタイミングで新たな兵を作りたい」
「新たな兵とは?」
当然の疑問を口にする側近、説明をしよう。
「私が作りたいのは飛行兵だ」
「飛行兵……」
誰かは分からない呟きが聞こえた。
「飛行魔法に熟達した高い機動性を持つ兵だ。空を飛ぶ脅威や上空から地上への対地攻撃を行う」
「空から……攻撃……」
「私は考えていた。今はどの国も空に対する考えが薄い、闘技場や競技場で飛行魔法を使える者も全くと言っていいほど使っていない」
「確かにそうね」
カミラが納得したように言う。
「お前達の中には空を飛ぶ魔物を相手にした事がある者もいるだろう。ならば分かるはずだ、空を飛び回り遠距離魔法を撃たれるだけで飛べない者はかなり劣勢になる」
「確かに……」
カミラはそんな事が無いためいまいちわからない表情をしていたが他の者達は思う所があるようで声を洩らす。
「思い浮かべろ、空を飛び回り伝令として、斥候として、戦場で上空から一方的に敵を攻撃する兵。それが数を揃え、軍として動いたとしたら?」
「いいかもしれないわね」
カミラは微笑みながら言う。採用するかはカミラ次第だ、私は話を続ける。
「もちろん自由に空を飛び回り高速戦闘を行う難易度は高い。ある程度ならこなせるだろうが納得いくだけの戦闘を行える者は全兵士から才のある者を募っても数は多くないだろう。だから更に飛行兵を分ける」
「どう分けるの?」
私はカミラの疑問に答える。
「まず帝国飛行部隊を作り飛行魔法を一定以上扱える者を飛行兵として迎える。そして次は帝国空戦部隊を作り、飛行部隊員の中から更に厳選し高い実力を持った者を戦闘に特化させ空戦兵として迎える」
「実際にやってみないとどうなるかは分からないわね、これは」
カミラが頬杖をついて呟く。
「皆の実力次第でこの部隊が出来るかが決まる、それにカミラが駄目だと言えば無理には薦めない」
「お母様は最終的にどの程度の熟練度を考えているの?」
「カミラとここにいる近衛兵達は見たと思うが、私が侵入者としてカミラとラフィーと戦っただろう?あの程度だな」
「それは難しいんじゃないかしらね……」
カミラは険しい顔をしている。
「実際にカミラとラフィーは私とやり合えていたが」
「それは私達だからよ、他に可能なのは近衛兵の皆くらいじゃないかしら」
「飛行魔法を訓練に取り入れて、才能のある者を見つける事が出来たならどうだ?そうして選ばれた者により高度な訓練を受けて貰い、厳選していく訳だ。ここにラフィーを入れて十一人存在して居るのなら他にも出来る者が居る可能性はあるだろう?」
「……確かにそうね……無理だと最初から諦めるには惜しい内容だし……やってみましょうか」
こうして空を舞台に活躍する新たな兵科が作られ始めた。
無事に作られ帝国を強くするのか、それとも実現する事無く消えるのか。
私も提案したのだから手伝う気はある、やるだけやってみよう。
あの会議から半年程が経った。
この半年の間に帝国は食料生産の安定と軍の拡大の準備を並行して行っていた。
既に軍の準備は整えた様だが、農耕魔法の普及はまだ全て終わっていないらしい。
新たな兵科のための準備も終わり、正式な隊の発足は目前まで迫っている。
あれから飛行兵の告知は帝国中に行われた。帝国兵の基本訓練に飛行訓練を導入し、すべての帝国兵から飛行部隊への移動希望者を募集した。
その中で基準を満たした者は全員飛行部隊に内定した。
国民の飛行部隊のイメージは優秀な者が所属する特別な部隊だ。
実際に色々と基準が厳しいので間違ってはいない。
空戦部隊に入れる者が現れるのはいつになるだろう。
どの程度合格者が出れば正式に隊として形に出来るだろうか?後で聞いておくか。
もしも僅かな人数しか集まらなかった場合は特殊部隊に変更だな。
飛行部隊の発足において私が協力したのは訓練の内容を決めるための助言と、教導隊の育成だ。
帝国には飛行をしっかりと教えられる者がいなかった。とは言え今から教導出来る者を育成するとなると時間がかかる。
最悪私が一人で教えてようかと考えていたが、近衛兵達を一時的に教導隊にしても良いとカミラに言われ、頼む事にした。
無理にやらせている心配と近衛兵としての職務の問題を尋ねたが全く問題無く、近衛兵達はかなり乗り気だった。
そして私は近衛兵から五人を借り、教導隊員として他者に教える為の訓練を受て貰い、帝国飛行教導隊が作られた。
みんな伊達に近衛兵だった訳ではなく、かなりいい教導隊員になったと思う。
それからまた時は流れ、現在広い訓練場を会場にして帝国飛行部隊の発足式が行われている。
先程から女帝であるカミラの演説が行われ、選ばれた飛行部隊隊員二十五人と教導隊員である五人、合わせて三十人が最前列に、周囲には沢山の兵士達が並び緊張した面持ちで話を聞いている。
正直、全帝国兵から募ってもこれだけなのかという気持ちがある。基準が高すぎたのか、満たしていても飛行部隊に入る気が無い者が多くいたのかは分からない。
「新たに発足したこの部隊は世界で初めての試み。そして貴方達がその先駆けとなる!アーティア帝国初代皇帝カミラ・アーティアの名において……今ここに帝国飛行部隊の発足を宣言する!」
カミラが大きく響き渡る声で宣言すると、飛行部隊と教導部隊の三十人は一斉に返事をし、その後に大歓声が起こった。
こうしてアーティア帝国で……いや、世界で初めての空を中心とした部隊が誕生した。