少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 戦争は添えるだけ。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。





035

 

 こちらから攻める事を決定するべきかカミラ達が考えていた時、バウムルスト王国から降伏し属国になれと話が来た。

 

 断れば宣戦布告すると言う使者に対してカミラは嬉しそうにその話を断った。

 

 これでアーティア帝国は売られた喧嘩を買う事になる。

 

 それからの行動は早かった。元々戦争をする準備は出来ていたアーティア帝国は、すぐに各所に連絡をして準備を整え、相手からの正式な宣戦布告を待つ。

 

 程なくしてバウムルスト王国からアーティア帝国に宣戦布告が行われると、すぐにカミラは各地に配置していた兵を侵攻させ先制攻撃を行った。

 

 「状況はどうなっている?」

 

 会議場にカミラの声が響く。

 

 カミラと側近達は現在会議中だ、私はそれを黙って聞いている。

 

 「先制攻撃は成功しました、多数の主要な地点を確保する事に成功しています」

 

 「出来るだけ平野で戦うな、地形を生かせ」

 

 「はっ」

 

 「ヴァイル王国の動きは?」

 

 「現在は軍の編成をしているようです」

 

 「目を離すな、何かあればすぐに知らせろ」

 

 「かしこまりました」

 

 戦争に関して私は特に何もしないつもりだが、何かあれば助けてしまう気がする。

 

 いや、助けてしまうだろうな。

 

 ただ、私が動く前にカミラが力を出すだろう。

 

 私の出番はきっと無い、私は戦況の推移だけを聞く事にした。

 

 

 

 

 

 

 ある日の戦況報告によると、飛行部隊が油とファイアボールで地上を焼き払う作戦を行ったと聞いた。

 

 作戦は上手く行ったようで各地の戦線で効果を発揮しているらしい。

 

 耐える者もいた様だがマジックボックス内に保存されている油の絶え間ない投下と上空から降り注ぐファイアボール相手では長く持たなかったらしい。

 

 相手はこちらの飛行部隊と空戦部隊の存在を知らなかったのか、甘く見ていたのかは知らないが、全く対応できていなかったらしい。

 

 上空に向かって弓や魔法で攻撃する者もいたようだが、上空を高速で移動する彼らに弓が届く事は無く、魔法は簡単に避ける事が出来たらしい。

 

 彼らは全員、無傷で帰還した。

 

 最初の先制攻撃の後、しばらくの間アーティア帝国は攻め込む事はせず迎撃に努めていたが、ある程度被害を出すとバウムルスト王国もむやみに攻めてこなくなった。

 

 敵の中にも飛ぶ者が現れ始めたらしいが、長い訓練を積んだ帝国の空戦部隊と飛行部隊に勝てるはずもなく、簡単に落とされたらしいな。

 

 相手が対応してくる前に戦況を出来るだけ有利にするため、空戦部隊と飛行部隊は連日休息しては出撃を繰り返した。

 

 戻ってくるのは食事と風呂と睡眠のためだけ、それ以外は彼らは空にいる状況が続いた。

 

 こうなる事は事前に部隊員に説明済みで、部隊の皆は弱音を吐く事無く戦い続けた。

 

 食料備蓄施設や武器や魔道具の生産施設などを敵の国の内部にまで侵入し強襲した。

 

 地上の部隊も奮戦し、様々な手段を使い少数で多数を抑えこみ時間を稼ぎ、敵軍がなだれ込むのを防いだ。

 

 宣戦布告と同時に攻めにくく守りやすい地域を手に入れておいた事が大きかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 やがて地上の戦況は膠着する事になった。

 

 それでも空戦部隊と飛行部隊は敵の警戒の薄い所や無警戒な地域から侵入し空襲を仕掛けて敵軍の被害をじわじわと拡大させていった。

 

 想定以上の成果に喜ぶも、やがて敵は要所だけでなくこちらが兵を置いていない、本来なら進軍しないような場所からも進軍し始めた。

 

 どこから突破されるか分からない状況になった帝国は兵を各地に回すしかなかった。

 

 そして空戦部隊と飛行部隊は兵が減り、手が回らなくなっている戦線を転戦する事になる。

 

 空戦部隊と飛行部隊は長い連戦に疲労がたまり始めていた。

 

 地上も要所は落ちてはいないが他の場所は敵の進軍を妨害する事しか出来ず後退し始め、防衛線が崩れ帝国内に侵入を許し始めた。

 

 会議では打開案を模索していた、側近達は話し合いを続けている。

 

 「数の差が響いて来ましたね……」

 

 「農耕魔法の普及によって軍の人員は増えていますが総人口が増えた訳ではありませんからね」

 

 「相手は広範囲に戦線を広げても兵数に不足は無いが、我々には無理がある。無理をして兵を置いても僅かに足止めする事しか出来ず無駄死にになってしまう」

 

 それを眺めながらカミラはため息をついた。

 

 「新しく国を興す事を認めずに処分しておくべきだったわね」

 

 「その時は良いと思ったんだろう?」

 

 「お母様……私は建国の手助けまでしたのよ」

 

 どうなるかなど分からなかったのだから気にする事は無いと思うが。

 

 まあ私も過去の判断が原因で大事なものを危険に晒したとしたら、思う所はあるだろう。

 

 「自分が許せないのなら今やれる事をやる事で多少は気が晴れるかもな」

 

 しばらく考え込むカミラだったがやがて私に微笑みながら言う。

 

 「お母様、行ってきます」

 

 「そうか、気を付けて行って来い」

 

 私がそう言うとカミラは立ち上がり側近に指示を出す。

 

 「今回の苦戦は私の過去の判断と考えの至らなさに責任がある、ここからは私が出るわ」

 

 「陛下……あの二国の建国は当時の国民からの嘆願もあったのだと聞いております。陛下がそのような事を気になさる必要は……」

 

 「例え嘆願があってもそれを受け入れたのは私よ。認めないという選択も出来た、それをしなかったのは私だもの」

 

 「……ご武運を」

 

 部屋を出て行くカミラの後ろ姿を側近達は跪いて見送った。

 

 

 

 

 

 

 女帝カミラが出るという事は近衛兵も出ると言う事だ。

 

 筆頭であるラフィーはカミラにつき従い共に敵軍を蹂躙した。

 

 他の近衛兵隊長達はそれぞれの部下を従えて各地を抑えて回り、その間にカミラとラフィーが次々と敵軍を押し返していく。

 

 カミラ一人で問題無いと言った私の言葉は誇張ではなく、彼女が戦いに出てから戦線は押し戻され、逆にバウムルスト王国の領地に食い込み始めた。

 

 現在知っている中で、クログウェル、カミラ、私は人類からすれば理解の外の存在だろう。

 

 圧倒的な強さを持ち、数も罠も全てを力で押し潰す。

 

 恐らく現在の人類では敵対した時点で負けが確定していると言っても過言ではないはずだ。

 

 バウムルスト王国は運が悪かったな。

 

 そしてその全員がアーティア帝国に関わっている、やろうと思えば魔族だけでなく他大陸の統一も簡単だ。

 

 武力だけで統一した国がどれだけ持つかは知らないが。

 

 

 

 

 

 

 カミラが参戦した事でこちらが負ける事は無くなった。バウムルスト王国へは一度降伏しないかと打診したのだが断られたそうだ。

 

 その返答を聞いたカミラは容赦なく進軍していった。

 

 やがてバウムルスト王国からアーティア帝国に降伏する町や村が現れ始め、カミラはそれを受け入れて差別する事無く帝国民として扱った。

 

 その対応が知れ渡ると次々とバウムルスト王国の地域が寝返り始め、最終的には降伏を受け入れない王と一部の配下達が首都に立てこもる事になった。

 

 「何故ここまで降伏を拒むのだろうな」

 

 「それは私が聞いたわよ」

 

 今日は首都に攻め込む日だ。現在は朝だが雨が降り、周囲は薄暗い。

 

 私は最後くらいはこの目で見ておこうと首都を包囲している軍のテントに来ていた、そこでカミラと話をしている。

 

 「何と言っていた?」

 

 「誰かの下につく気は無いらしいわ」

 

 「私と同じような考えだった訳だ、奴には力が足りなかったが。敗北を受け入れて力を付けようとは思わなかったのだろうか?」

 

 「性格によっては受け入れられないでしょうね。死ぬ事になっても変えない所は凄い事かも知れないわ」

 

 「この国の王とは次会った時は戦おうと話をしていたのだが」

 

 「お母様が行く?」

 

 「いや、もしも会う事があったらの話で約束した訳じゃない。カミラに任せる」

 

 「じゃあ行ってきます、お母様」

 

 「油断はするなよ」

 

 いつもの様に挨拶を交わし、テントを出て行くカミラの後を追うように私も外に出る。

 

 雨に打たれながら首都を見渡せる場所に移動して眺めていると、空戦部隊と飛行部隊が首都の周囲を警戒しながら飛び回っているのが見える。

 

 やがてカミラが飛び立ち、城へと向かって行った。

 

 カミラが向かって暫くすると、閃光が薄暗い世界を照らし爆音が雨の音をかき消した。

 

 激しい戦闘の余波で城と首都が瓦礫に変わり、ある時突然静寂が戻り雨の音が戻って来た。

 

 こうしてアーティア帝国とバウムルスト王国の戦争は、バウムルスト王国の消滅で決着した。

 

 

 

 

 

 

 最後は王がカミラとの一騎打ちを望みカミラはそれを受けたという。

 

 王は私の事を話していたようだがカミラは「お母様の相手にお前では足りない」と答えたそうだ。

 

 バウムルスト王国は消滅し、領地はアーティア帝国の一部となった。

 

 急に増えた領地の対応に側近達は大忙しだ。

 

 結局最後まで動きが無かったヴァイル王国はある時突然属国になる事を望んだ。

 

 何か裏があると疑ったカミラが側近達に情報を集めさせた所、先の戦争でカミラの強さを知った王が決めた事だと判明した。

 

 ヴァイル王国民の中には自分達の王を腰抜けと言う者も多くおり、国も一時的に荒れたがやがて収まった。

 

 先の戦争のカミラの事を知っている者からは英断であったと言われているらしい。

 

 こうして思わぬ出来事もあり、魔人の国はアーティア帝国によって統一される事になった。

 

 それからは忙しい日々が続いた、とは言っても私が忙しい訳では無いのだが。

 

 私はいつもの様に式典に出席したりするだけで実際に忙しいのはカミラと側近達、その配下の者達だ。

 

 突然領地が大きく増えたのだから当然だ。準備はしていたと言っていたがそれでも大変なようで、元バウムルスト王国民の中から多くの有能な者を登用した。

 

 今の所元バウムルスト王国民もヴァイル王国民も帝国の支配に不満は持っていないようだ。

 

 支配後の対応が良かったのだと元バウムルスト王国の側近が話してくれた。

 

 アーティア帝国に敵意を持っていた者の大半はあの戦争で死んでおり、現在残っている者は中立や友好的な者達ばかりらしく、いきなり国が荒れる事は恐らく無いはずだと言っていた。

 

 これでアーティア帝国の成長を抑え込んでいた問題は消えた、これから帝国は成長し始める事だろう。

 

 

 


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