少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 短いです。

 この作品の注意事項

・作者の自己満足

・素人の作品

・主人公最強

・ご都合主義

・辻褄が合わないかもしれない設定

・注意事項が増える可能性

 等が含まれます。

 以上をご理解したうえでお読みください。

 読者の皆さんの暇潰しの一助になれば幸いです。




008

 

 森人の里を後にして大地人の住処へと飛行する、広い森を抜けて程なく荒野と山岳地帯が見えてきた、あの山岳地帯のふもとに住処の一つがあるらしい。

 

 立ち上る煙が見える、恐らくそこが住処だろう。

 

 次は襲われたくは無いな。

 

 今度こそ戦闘にならないように、かなり離れた見えない場所に下りて徒歩で向かう、これならさすがにいきなり攻撃は受け無いと思う。

 

 そこそこの距離を歩き住処が見えてくると立ち上る煙と甲高い金属音が聞こえる、本には住処しか載っていなかったが、音からすると金属加工の技術を持っているのかな?

 

 ぜひ見てみたいがまずは住む許可を取らないとな。

 

 住処の入り口には明らかに金属製の武器と防具を付けた、やや背の低めながっしりとした男女が立っていた。

 

 近寄っていくと、男の方が気が付き声をかけてくる。

 

 「嬢ちゃんこんなところに一人でどうした?何かあったのか?」

 

 やや警戒しながらも気遣いの言葉をかけて来る。

 

 「始めまして、私はクレリア・アーティアと言う旅人だ、各地を回って様々な種族に会いに行っている」

 

 そう話していると、女も近寄ってきているのが見えた。

 

 「その歳でか?魔物も出るってのに子供一人で各地を回ってるのか……怪しいな」

 

 最後は小声だが聞こえているぞ……いきなり怪しまれてしまった、確かに怪しいかも知れないが本当なんだ。

 

 「私は戦う術を持っている、子供だからと思って言っているのなら、私はこんななりだが成人しているぞ」

 

 成人どころか一万歳オーバーなのだが、嘘は言ってないよな?

 

 「そうなのか?……いや、すまなかったそれで……」

 

 「ロドロフ、とりあえず入れてやったらどう?」

 

 こちらにやってきた門番の女が会話に割り込んできた。

 

 「ミシャ、しかし素性がはっきりしない者を入れる訳にもいかないだろう?」

 

 難色を示すロドロフと呼ばれた男、ミシャと呼ばれた女はさらに言葉を続ける。

 

 「見た限り武器も持ってないし、危険は……武器もなくここまで来たのかい?!」

 

 何も持っていない私に驚く彼女……確かにおかしいな、どうするか。

 

 「あー、ミシャと言ったかな、私は、魔法と言う技術の使い手でな武器は必要ないし、荷物も見えない所にしまってあるのだ」

 

 これで納得してくれると良いが。

 

 「そんな物聞いた事も無いよ、証明は出来るかい?」

 

 「そうだな、私が危険な人物で無い事は森人が証明してくれると思う、連絡が取れるのなら取ってみると良い、後は魔法の証明だが……」

 

 ここはいつものウォーターボールだな。私は手の平を上にして差し出し、水の球を作る。

 

 「うおっ!?」

 

 「なんだいこれは……」

 

 驚き飛びのき武器に手をかける二人……しっかり説明してから使うべきだったな、長く生きても迂闊なところは直らないな……。

 

 「驚かせてしまったがこれが魔法だ、使い方を間違えなければ便利だぞ」

 

 「これが魔法かい?凄いもんだねぇ」

 

 私が動かずにいるとミシャが近寄ってくる、ロドロフも剣から手を放す。

 

 「焦ったぜ、やるなら先に言ってくれ」

 

 「証明しろと言われたからやったが、確かに先に言うべきだったな、悪かった」

 

 素直に謝る、私にはとっくに当たり前のことだが魔法を知らない二人には警戒するべき物だ、もう少し慎重になるべきだった。

 

 「ここに住んで交流したい、住処が駄目なら近くに滞在してここに通うという形でもいいのだが……」

 

 「すげぇなこりゃ……おっと悪い、交流か……俺達が勝手に返事は出来ないな、お頭に会ってくれ」

 

 水球を見ていたロドロフが我に返る、どうやら通してくれるようだ。

 

 「後、住処でさっきみたいにいきなり何かするのはやめてくれ、色々不味いと思う」

 

 「……分かっている」

 

 釘を刺されてしまった、気を付けるとも、直せるかは分からないが。

 

 

 

 

 

 

 今私はお頭と呼ばれている男の家に居る、石造りのしっかりした家だ。この家に来る途中に武防具を作る工房があった、そういった物は作った事が無い、正確な知識が無く出来なかった、実に興味を惹かれる。

 

 「交流か」

 

 「そうだ。知りたい事があれば教える、その代わり武防具の作り方を教えて欲しい」

 

 腕を組み考え込むお頭、やがて口を開く。

 

 「一つ質問したい。その魔法は鍛冶に使えるか?」

 

 どうだろうか?そこまでの使い手になれるなら可能だろうが……。

 

 「そうだな……まず水の魔法は鍛冶はもちろん日常の生活にも使える。安全な飲み水をその場で出せるのはかなり便利だと思う」

 

 お頭に目を向けると彼は深くうなずく、私は更に話を続けた。

 

 「後は、火の魔法だが……これは私なら間違いなく可能だが大地人がそこまで至れるかは分からない。個人の才能や努力はもちろん種族的に資質が無い場合もある。少なくとも日常生活に使え炉に火を入れる事が簡単になるのは間違いないが……」

 

 「例えそうであっても魔法とやらはかなり便利だな」

 

 どうやら興味を持ってくれたようだ、私はもう以前のように自分から魔法を大勢に教える事に忌避感を感じていない。

 

 ケインの魔法を広めるという考えを聞いた後、これから一気に魔法が世界に広がる事を確信した。

 

 私一人が苦労して秘匿した所でもう意味は無いだろう、ンミナ達の村にもいずれそれは届くはずだ、問題は無いと思うが……それに特に見返りが無かったり親しくない者に教えるのは今も面倒だと思っている。

 

 「よし決めたぜ嬢ちゃん。その話受けるぜ」

 

 考えていたお頭が決断したようだ、良かったこれで武防具の作り方を学べるぞ。

 

 「私は成人していると言ったはずだが」

 

 先程から皆が嬢ちゃんとしか呼ばないので訂正する。

 

 「その見た目だしな。それに成人してたって俺からすれば娘みたいなもんよ」

 

 「まあ蔑称で無いなら構わんか……」

 

 私は早々に諦めた。特に嫌と言う訳でもない、ただ娘と言う年齢ではない。

 

 こうして私は大地人の住処に住む事を許され、魔法の授業と装備作りに精を出す事になる。

 

 

 

 

 

 

 大地人の住処に住んで五年、装備作りに入れ込んでしまった私は彼らに風魔法と魔道具の知識を伝え、新たな魔道具や魔法武具を作るようになり、それぞれ誰が作ったのか分かりやすいように固有の印を作品に付ける様になった。

 

 「嬢ちゃん剣の魔道回路の組み込み終わったぜ」

 

 「魔法出力の調整も終わったわよ」

 

 魔法製品の魅力に取りつかれ、すっかり私の弟子のようになってしまったロドロフとミシャ、しかし呼び名は相変わらずだ。

 

 「分かった。まずミシャの魔道具を見る、ロドロフ達は組み込んだ回路のテストをしておいてくれ」

 

 すぐさま指示を出す、彼らの物作りへの情熱は予想以上だった。

 

 ある日個人的に魔道具技術を使った装備を見られた後はあっという間だった、教えを請われ断るも大地人のほとんどが……お頭さえも頭を下げ頼み込んで来たのだ。

 

 私はいつか最高だと思える武具を私に譲るという条件で教える事にした。

 

 「分かったぜ。よしお前ら準備しろ!十分注意しろよ!」

 

 「おう!」

 

 仲間達の返事が重なり移動していく。

 

 私は静かになった作業場でミシャの調整した魔道具を確認した。

 

 「うん……良く出来ているな。これなら使用中に暴発も無いだろう」

 

 「良かった……随分手間取ったよ全く」

 

 大地人の魔法資質は高くはなかった。それでいて魔法製品を極めようとしている。資質の低さを訓練と器用さで埋めている、素晴らしい。

 

 私は細部を確認しながら、彼女に話しかける。

 

 「ミシャ、子は作らんのか?」

 

 「ぶっほ!?」

 

 部屋の飲食スペースで飲み物を飲んでいたミシャが噴出した、後で拭いておくように。

 

 「いきなり何言ってるんだい!?」

 

 「後継者はいらないのか?」

 

 折角の技術だ継ぐ者が欲しくは無いのだろうか?

 

 「そりゃあ、そろそろ欲しいとは思うけど……私もロドロフも忙しいし」

 

 「しかし、欲しいのなら作った方が良いのではないか?いざと言う時後継が居れば安心だろう」

 

 「鍛冶の為って訳じゃないけどね」

 

 後を継がせる為に作る訳では無いという事か?

 

 「分かっている。子供は可愛いものだからな……生まれた子が違う道を行くならそれも良いではないか」

 

 「そうね……近いうちに話してみようかしら」

 

 気になったのでおせっかいをしたが、後は二人の問題だな。

 

 私は代々受け継いで欲しいものだ……私がいつまでも通えるようにな。

 

 

 

 

 

 

 それから更に五年後、様々な製作法を試し、僅かな量と種類だが魔法金属を大地人の力で生み出せるようになった、勿論それらの技術や製法は書物に記してあるようだ。

 

 私もそれなりに装備品を作り見本として彼らに譲った、そんなある日。

 

 「そうだ。獣人達にも会うつもりだった」

 

 残していた獣人の事を思い出した……装備の開発はこの辺りにして獣人を探すか。

 

 「どうしたんだいお嬢?」

 

 全く関係ない事だがお嬢ちゃんからお嬢に呼び方が変わった……特に言う事は無いな。

 

 「ミシャか。いやそろそろ新たな種族……獣人に会いに行こうか迷っていてな」

 

 ミシャは何とも言えない表情をする。

 

 「行っちまうのかい?ロドロフも寂しがるよ」

 

 「済まないな。しかしもう決めた事だ」

 

 ミシャは困った顔をしながら答える、悪いがずっとここに居る気もない。

 

 

 

 

 

 「行っちまうのか……まだ最高と呼べる物は出来ていないのに」

 

 その日の夜ロドロフ夫妻に此処を去る事を告げた、ロドロフは約束の装備が出来ていないと言うが、それに関しては考えている事がある。

 

 「その事だが、また私はここにやって来るその時に渡してくれれば構わない」

 

 「また来た時か……それでもいいなら構わないがもっと色々一緒にやりたかったぜ」

 

 「もし私がいつまで経っても来なかったら子供か誰かに預けておいてくれ」

 

 子供と聞いてロドロフが恥ずかしそうな顔をする、そのうち子供が出来るかもな。

 

 「今まで過ごしていたんだ。何となく気が付いているかもしれないが……」

 

 「お嬢が何者かって事かしら?」

 

 ミシャが答える、十年以上経っても私は変わらないからな、今までもそれが理由で皆察していた。

 

 「その通りだ、私は特殊な種族なようで寿命が異常に長い。今の時点で一万年以上生きている」

 

 「なっ!?」

 

 「嘘でしょう?」

 

 声を上げるロドロフと思わず確認するミシャ、まあ普通そうなるか。

 

 その驚き様を見ると今まで共に居た者はあっさり受け入れ過ぎだったように感じる。

 

 「本当だ。私の力は長い研鑽の結果だ、遥か昔私も森を火の魔法で燃やしかけたり、風の魔法で地面に頭から突っ込んだりしていたんだぞ?」

 

 そう言って僅かに微笑む、二人はそんな私を見て少し落ち着いたのか再び話を聞く姿勢に戻ってくれた。

 

 「だから私が受け取れない事はまず無いだろう」

 

 「あまり時間が経つと本人か分からなくなるんじゃないのかい?」

 

 ミシャが疑問を口にする、確かにそんな気は無いがあまりにも受け取りに来るのが遅かった場合、引き継いだ人物が私を渡す相手だと判断できないだろう、そう思っているとロドロフが口を開く。

 

 「それなら何か証明する物を作ろう、それを私たちが持っておいてお嬢が来たらそれを使ってもらえばいい」

 

 「アンタ具体的にはどうするのさ」

 

 ミシャが突っ込む、本人を確かめる物か……使えそうな物は……。

 

 「そうだな……それなら魔力パターンならいけるか?」

 

 「魔力パターン?」

 

 疑問の声を上げるミシャ、これは今まで特に気にしていなかったからな。

 

 「魔法が魔力を体内に取り込み発動するが魔力を使う時一人一人パターンが違う、それを記録して本人の物と比べて確認するわけだ」

 

 私にもパターンがあるのは知っている、ただ私は周囲の魔力や魔素を取り込まずに使える上にパターンを変えられるので、効果がないな。

 

 「凄いなそれは……ならお嬢が旅立つ前の最後の作品だ気合入れて作るぜ!」

 

 「いいねぇ、もちろん手伝うよ!」

 

 盛り上がる二人不正が出来ないようにしっかり作るとしようか。

 

 こうして魔力パターンを使った認証システムを作り、私のパターンを記録した。

 

 これで問題無さそうだ、破壊されても予備を作っておけばいいだけだしな。

 

 

 

 

 

 

 そしてそれからしばらく経ち旅立つ日がやってきた、大地人達が鍛冶の手を休めて見送りに来てくれた。

 

 「今まで楽しかった、これからも素晴らしい物を作り続けてくれ」

 

 頷く大地人達、私はロドロフとミシャを見る。

 

 「お嬢の事を話せないのは辛いな」

 

 残念そうに言うロドロフ、二人には私の種族としての特殊性から私の事は他言無用にと頼んでおいた、そして魔法について分からなくなったら何処かの町に居るケイン・イヌスと言う森人に私の名を出し相談するように伝えた。

 

 里の者には詳しく話さなかったが、私が名を広めて余計な事に気を使いたくないと言うと了承してくれた。

 

 ……まあもしも本気で嫌になれば隠れ住むか、まとわりついてくる者達を全て消してしまえばいいのだが。

 

 「どんな物が出来るか楽しみにしている」

 

 「おう任せとけ!」

 

 「ええ、驚かせてやるわ」

 

 私の言葉に答えを返す二人、これなら安心だな。

 

 そう思い空に上がり大地人達に手を振ると獣人を探しに出発した。

 

 

 


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