少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 しつこく前書きを書いていたのですが、面倒になったのでこれからはやめます。

 ご了承ください。





049-03

 ヒトハを改良して腕と手を取りつけた後は得られる情報が多少増えた。

 

 現在は私とカミラ、頻繁に私の元へ戻って来るようになったヒトハと共に放送を見ていた。

 

 《空島の建設が完了し運用されてから十年。その数はますます増えており、島一つを個人で所有するケースも……》

 

 「これ……もっと人口が増えて空も埋まったらどうするのかしら?」

 

 『地下を階層に分ける事になるのではないでしょうか?』

 

 カミラとヒトハが話し合っている。

 

 《地下都市計画も順調で、年々その規模を広げています。価格が低く設定されているため地上に住居を持てない貧困層からの支持が特に高く……》

 

 「住み分けが起きているな」

 

 「貧困層は地下に押し込められ金持ちは空島を独占ね……」

 

 『衛生的な問題は無いのでしょうか?』

 

 私とカミラが話していると、ヒトハが疑問を口にした。

 

 確かにその辺りは問題無いのだろうか?

 

 「地下に人が住み始めて十年よね?人類的にはそれなりの時間だし……その辺りはある対策されているんじゃないかしら?」

 

 「致命的な問題があれば今まで続いていないか。だが、これ以上人類が増えて食料は問題無いのだろうか」 

 

 「確か、人が世界を全て踏破して住処に変えた頃と比べて……今の人口は五倍位にはなっていたはずよね?」

 

 カミラはヒトハに確認する。

 

 『はい、その程度に増えております』

 

 人類同士の大きな戦争は起きず、危険な野生の魔物は殆ど駆逐された。

 

 魔道具や錬金薬、魔法によって生活は安定し、怪我や病気で死ぬ事も少なくなり人類は数が減りにくくなった。

 

 そして見る見るうちに人類の数は増え始め、住処を欲した人類は空と地下へその手を伸ばした。

 

 「放送の言っている事を信じるのなら、空島はあまり住居の問題に貢献して居ないようだな」

 

 「個人で島一つと言っていたものね」

 

 『無駄が多すぎますね』

 

 私達は時々こうやって得た人類の動きに対して色々と話し合ったり先の予想をしたりしている。

 

 

 

 

 

 

 今私は家とは別に用意した研究室で実験をしている。

 

 研究自体はどこでも出来るが、私は静かで一人になれる所が好みだ。

 

 現在行っているのはヒトハの体の開発だ。

 

 いつか彼女が体を望むような事があった時、与える事が出来る様に完成はさせておきたい。

 

 もしヒトハが望まなければ、ゴレムに使用出来るので無駄にはならない。

 

 カミラとヒトハにはゴレムの新しい体の研究と伝えてある、カミラはこれがヒトハの体の準備であると気が付いていたと思うが、特に何も言わなかった。

 

 目指すのは人類に似せた外見。

 

 違うか。人類が生まれるより先に私がいた、人類に関してだけならば順番的には彼らは私に似ている事になる。

 

 つまり目指すのは私に似た姿という事だな。

 

 取り敢えず外見は私やカミラに近くし、成長出来る強力な体を目標にしようと思う。

 

 まずは素体を完成させ、外見は後から変更出来るようにする方が良いだろうか。

 

 そんな事を考えながら研究を進めていると、カミラから念話で食事をするのかを聞かれた。

 

 熱中すると私が気が付いた時には人類が居なくなっていそうなので、少しずつ進めて行こうと決めた。

 

 私はカミラに今すぐ帰ると伝える。

 

 

 

 

 

 

 「ただいま」

 

 研究室から戻り、ソファに座る。

 

 「お帰りなさいお母様……てっきりこもると思っていたけど、何かあったの?」

 

 カミラがキッチンから出て来て聞いてくる。

 

 「時間がかかりそうだから少しずつ進める事にした。熱中していて気が付いたら人類が消えていたりしたら困る」

 

 「大丈夫よ?私が時々声をかけてあげる、それにヒトハからの報告もあるわよ?」

 

 確かにヒトハからの報告があるな。カミラにも時々声をかけて貰えば問題は無いかも知れない。

 

 「ではしばらく研究に集中させて貰おうか。何かあったり、私と過ごしたい時は声をかけてくれ」

 

 「そうするわ、……あっ、そろそろ料理がいい感じだわ」

 

 カミラは微笑んで答えた後、慌ててキッチンへと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 それから私は研究室にこもり研究を続けた。

 

 時々ヒトハからの報告を受けたり、カミラに食事をしようと誘われ食事をしたり、中々良い生活を送っていた。

 

 今は久しぶりに放送を見ている。大体私が見るのは情報放送だ、様々などうでも良い情報が流れる中、土地開発の情報が流れる。

 

 《各国は浮島の増加に伴い、島の製作と運営方法に関しての新しい法を作る事を決定しました。島同士の衝突や、上空にある島による影など、様々な問題が起こっており……》

 

 「浮島って移動出来たのね」

 

 『速度はあまりありませんが移動自体は可能です。そして今までは所有者や管理者の一存で自由に動かせていました』

 

 「事故が起こるのは当然だな」

 

 《続きまして、地下都市の情報です。地下都市の規模は現在も広がり、居住者も増え続けており、大成功を収めています……》

 

 「地下都市の情報は表に出ていないのか」

 

 私が言うとヒトハが反応する。

 

 『その様ですね』

 

 「国も分かっているんでしょ?」

 

 カミラがヒトハに問いかける。

 

 『はい、国だけではなく国民も間違いなく気が付いています。ですが止めたり改善する気は無いようですね』

 

 「国にとっても色々都合が良いのかしらね……自主的に地下に集まってくれるし」

 

 ヒトハとカミラが話し合っているのを聞きながらヒトハの得た情報の事を考える。

 

 放送では何の問題も無いように伝えているが、現在の地下都市は安く住めるために貧困層の住人が多く集まっている。

 

 それだけなら良かったのだが、あの場所は身を隠しやすく閉鎖的で、違法に空間を作りやすい場所になっている。

 

 そのせいか犯罪者やゴロツキ等が集まり始め犯罪組織などが出来ていて、治安が怪しくなっている。

 

 「私は研究に戻る」

 

 「行ってらっしゃい」

 

 『いってらっしゃいませ』

 

 地下都市に住む多くの人間が巻き込まれそうだな、そう思いながら研究へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 ある時、ふとイシリスにある風呂として使っていた火山の事を思い出し、研究を止め様子を見に来た。

 

 人類が住んでいるのか。

 

 少なかった陸地は広がって大きな島に変わり、人類の住処となっていた。

 

 火山も活動を止めている、もう入れないか。

 

 火山活動は止まっているようだ、火口も冷えて固まっている。それなりに気に入っていたのだが、他の事に気を取られてしばらく入って居なかった。

 

 刺激を与えれば活動を再開するかもしれないがやめておこう。

 

 私は転移で月に移動し、研究に戻った。

 

 

 


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