少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 月へと戻り、私はヒトハを点検したのだが、問題が見つかる事は無かった。

 

 なぜ宝石店での情報の間違いが起きたのか、原因を色々と考えた末に私が出した答えは「ヒトハが私達に近づいているから」だった。

 

 「……私達に近づいた影響で間違えるようになった訳?」

 

 リビングに居たカミラにその事を話す、ヒトハは研究室で待機させている。

 

 「色々と考えたんだが、それ位しか理由が見つからなかった。魂、心、精神。言い方は色々とあるが、それが変化し始めている証拠だと思う」

 

 「お母様はこれで良いと考えているのよね?」

 

 「勿論だ。以前話したかもしれないが、成長し変化するように作ったのは私だ。彼女は外部からの刺激を受けて変化していく、どう変わるかは私にも分からない。私の元を離れるかもしれないし、立場による拘束を破り敵になるかもしれない」

 

 「ヒトハが敵になるのは出来れば避けたいけれど……なったらどうするの?」

 

 「私の邪魔にならなければ放置する。もし私や周囲に手を出して来たら相応の報いを受けて貰うし、命を狙うのであれば死んで貰う」

 

 私が最優先、次が私の周囲だ。

 

 私の元から去るだけなら構わないが、手を出して来るのなら話は別だ。

 

 「そう……もしも私だったらどうする?」

 

 カミラがそうなるとは思えないが。 

 

 「何も変わらないな」

 

 「……そう。お母様らしいわ」

 

 少し寂しそうに言うカミラ。

 

 「ただし、その対応は本人の意思であった時の話だが」

 

 カミラは私を見て何かに気が付いたような表情をした。

 

 「例えば操られていたり、騙されていたりした場合は多少は考える」

 

 「そうね……強制されていたりした場合、本人ではなく強制した者に責任がありそうね」

 

 「この手の物は色々面倒だ。私であれば相手が自分の意思で行っているかどうか、誰かに操られたり騙されたりしているのかが判別出来るが、大抵の場合真実が分からないまま終わる」

 

 「そうでしょうね……」

 

 「話がそれて来たな。取り敢えずこれからはヒトハが間違える事もあると思っていてくれ」

 

 「そうするわ」

 

 

 

 

 

 

 ヒトハには今回の事は気にせず、今まで通り指示外では好きに行動するように言った。

 

 それから、また今度町へ行こうと二人に提案した。二人共行きたいと答えたのでまた行く事を約束した。

 

 その後、ヒトハが地下都市ならば証明カードを提示しなくても換金出来る店がある事を調べてくれた。

 

 次は最初に地下都市へ向かい、換金してから地上の都市へ行こう。

 

 

 

 

 

 

 それから数日時間を空け、私達は地下都市へとやって来た。

 

 「薄暗いし、空気は悪いし……何だか怪しい気配が多すぎるわ……」

 

 カミラが多少嫌悪感を込めた声で言う、気持ちは分かる。

 

 どことなく不穏な気配がする都市だ、戦争時のような雰囲気と言えば近いだろうか。

 

 「これのどこが上手く行っているのかしら……お母様、換金して早く移動しましょう」

 

 「そうだな。ヒトハ、案内を頼む」

 

 『はい、こちらです』

 

 

 

 

 

 

 ヒトハに案内されて着いたのは、路地の一角にある雑貨屋だった。

 

 普通の雑貨屋にしか見えないが、証明カードを必要としないという事はそれなりの理由があるのだろう。

 

 『証明カードを使わずに換金できる店の中で、ここが一番問題が少ないと思います。換金ではなく「商品交換をしたい」と言って下さい』

 

 「偽装しているのかしら」

 

 カミラが店を見て言う。

 

 私達は店に入りカウンターに座っている中年の男に近づく、この男は私達が店の前に来た時から私達を警戒していた。

 

 周囲からも複数の視線を感じる、余計な事をしたら何かされるかもな。

 

 「商品交換をお願い」

 

 カミラが小声で男に声をかける。すると男は軽く反応を示し、私達について来るように言って裏へと入って行く。

 

 裏にあった地下への階段を降りて行くと、扉が複数ある普通の応接室があった。

 

 案内した男は私達にしばらく待つように告げ、すぐに出て行った。

 

 言葉通りしばらく待っていると、複数ある扉の一つからそこそこ若い男と中年の男がやって来た。

 

 「見かけない奴だな、初めてか?」

 

 若い男は私達の前に座ると突然そう言った。

 

 「ええ、証明カードを使わずに換金出来ると聞いてね」

 

 カミラが対応する、私では見た目でなめられそうだからな。

 

 「そうか、俺はお前達の事を詳しく聞かない。お前達も聞くな……さて、物を出せ」

 

 そう言われ、カミラは換金するための宝石を五つ出す。

 

 「宝石か……この場で鑑定する、いいな?」

 

 「良いわ」

 

 男の言葉にカミラが返すと中年の男が宝石を鑑定し始めた。

 

 やがて鑑定していた男が若い男に耳打ちする。それだと私達には聞こえてしまうぞ?本物である事と正規の買取値を言っていたな。

 

 「よし、確認は取れた……値はこれだ」

 

 かなり安い値をつけられている、十分の一程だ。

 

 「いくら何でも安すぎないかしら?」

 

 「ここじゃこれが適正だ」

 

 カミラと男が話しているうちにヒトハに聞く。

 

 『ヒトハ、どう思う?』

 

 『通常ですと三倍は出していました、甘く見られているのだと思います』

 

 『そうか、では力で教えてやろう。カミラ、制圧して適正な値にしてくれ』

 

 『分かったわ』

 

 そう言うとカミラは魔法を使う。

 

 「どういうつもりだ……?」

 

 若い男を拘束し鑑定士男を気絶させると若い男が言った。

 

 「なめられてるようだから、分からせてあげようかと思ってね」

 

 「馬鹿な事をしたな。魔法や魔力に反応する部屋の中で使うとは、今頃周りには俺の仲間が集まってるぜ?」

 

 男の言う通り部屋の外に人が集まって来ていたが、カミラに既に制圧され全員気絶している。

 

 「なら来るのを待ちましょうか」

 

 

 

 

 

 

 男は黙ったまま表情を変えない。

 

 しばらく待ったが部屋には誰も来ない、カミラが周囲の者を気絶させてしまったから当然だ。

 

 「来ないわねぇ……?」

 

 「……何をしやがった……?」

 

 男がカミラに問いかける。こう言った事をしているせいで度胸があるのか、慌てる様子はない。

 

 「全員気絶させただけ、周囲の仲間は生きているから安心しなさい」

 

 「はあ?ここからそんな事出来る訳ねぇだろうが……」

 

 彼のその言葉を聞いて人類は本当に弱くなったのだと感じた。

 

 「実際来ないじゃない。で?さっきの三倍出してくれたら大人しく帰るけど……どうする?」

 

 そうカミラが言うと男は黙って考えた後、払うと言った。

 

 

 

 

 

 

 「これで良いな?」

 

 拘束を解かれた若い男はマジックボックスから金を取り出して私達に渡した、こいつは魔法使いだったのか。

 

 「確かに受け取ったわ。私達は帰るから仲間達をみてあげなさい」

 

 私達が立ち上がり入って来た扉に集まった時、攻撃が障壁に遮られた。

 

 不意打ちか、悪くない。

 

 恐らくカミラが殺してしまうだろうから障壁を張る。

 

 カミラは背を向けたままだが男の周囲が炎に包まれた。

 

 「くっ……!?」

 

 男の声が炎にかき消され男が装備していた個人障壁発生装置、防珠だったか?

 

 その障壁は無いも同然に消し飛び、私の障壁に阻まれる。

 

 そして炎が消えた後にはへたり込んで居る無事な男の姿があった。

 

 「お母様?」

 

 あの威力を防げるのは私かヒトハだけだ、カミラは私を見て声を上げる。

 

 「防いですまなかった、本来ならば間違いなく殺す所だが、殺すより奴隷にしておこうと思ってな」

 

 そう言うとカミラは納得したような表情になる。

 

 「情報源ね?」

 

 「情報と換金のためだな。一か所使える場所を用意しておくのも良いだろう?」

 

 私は男に近づいていく。男は法具を向けるが引き金を引けないようだ、私が止めているからな。

 

 私は男がこちらに向けている法具に目を向けて、ある事に気が付く。

 

 「ヒトハ、こいつの持っている法具、軍用じゃないか?この刻印に見覚えがあるぞ」

 

 『そうですね、個人携帯兵器としては多少古い型ですが間違いありません』 

 

 正式に払い下げられたものか、もしくは横流し品か?

 

 まあいい、取り敢えず奴隷にしてしまおう。

 

 

 

 

 

 

 どうしてこうなった……俺はそればかり考えている。

 

 彼女達はもう帰ったが、最初はとんでもない美人が俺の支配しているエリアに入ったと言う報告だった。

 

 そして俺の換金所の一つに来た事で気になっていた俺は……会いに行っちまった。

 

 確かに二人共とんでもない美人だった。

 

 特に黒髪の子供の方は別格の美しさだった……余計な欲を出した俺は安く買い叩けば困った彼女達が俺にすがると思い、通常よりもかなり安い値を提示した。

 

 ……それが失敗だった。

 

 金髪の女の方が鑑定士を気絶させ俺を拘束した、馬鹿な事をしやがったと思ったが……。

 

 金髪は周囲の配下を気絶させたと言った。何を馬鹿なと思ったが、誰一人部屋に来なかった。

 

 俺は三倍払えと言う彼女の言葉を受け入れ金を払い、出て行く所を撃ったのだが……彼女達には全く通じなかった。

 

 軍の横流し品で、多少古いが威力は間違いないはずだった。すると突然、俺は炎に包まれた。

 

 何が起きたのか分からなかったが、静かな部屋に響く彼女達の会話が聞こえる……どうやら金髪の女より黒髪の子供の方が立場が上のようだった。

 

 ……そして俺は奴隷にされた。

 

 黒髪の子供から、ヒトハという腕と手が生えた、頭に直接話しかけてくる球に情報を提供するように命令され、他にも色々と縛られ要求される事になった。

 

 俺も魔法使いの端くれだ、この隷属魔法は駄目だ……解除など出来る訳がない。

 

 大きく息を吸い、一度止めると長く息を吐き立ち上がる。

 

 「心を決めろキャリア・ファンブル。組織とあいつらとの間で上手く立ち回るしかない。取り敢えず、全員気絶しているなら俺があいつらと話をつけた事にするか……」

 

 俺は心を決めてこれからの事を考えながら部下を起こしに行った。

 

 

 

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