少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 私は本屋を出た後、魔道書庫店へと向かい魔道書庫魔動機本体と本のカードを買った。

 

 それなりに金を使ってしまったが、足りなくなったらまた換金すればいい。

 

 『お母様ー?そろそろ集まらない?』

 

 これからどうしようかと思っていた所に、カミラから念話が来る。

 

 町の時刻表示を確認するとかなり時間が過ぎていた。

 

 『分かった、お前達の居る広場に向かう』

 

 『待ってるわね』

 

 私はすぐに二人の居場所を確認し、広場へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 「こっちこっち」

 

 広場へ向かうとカミラが椅子に座ったまま手を振ってくる。

 

 その横にはヒトハが浮かんでいる。

 

 周囲の者がカミラを見ているな、私も似たような状態だが。

 

 「ヒトハは装飾品を付ける事を選んだんだな」

 

 私はカミラの隣に座りヒトハを見る、その手首には装飾が付けられていた。

 

 『はい、これが一番異常で安全でした』

 

 どういう事だ?私はカミラを見る。

 

 『一番異常を感じる物を一つと、それとはまた違う異常を感じる物を選ばせたのよ。好きな物と嫌いな物を選ばせたかったのだけど……ヒトハはそれを安全な異常と危険な異常と判断したのよ』

 

 カミラは私に説明した。なるほど、好きな物と嫌いな物の事か。

 

 『そういう事か』

 

 『ええ』

 

 少しづつだがヒトハが変わっている事を感じる。

 

 「お母様、このアクセサリ保護して貰えないかしら?」

 

 「お前も出来るだろう?」

 

 「お母様の方が安心だから」

 

 保護なら大して変わらないと思うが、私はそう思いながらヒトハのアクセサリを保護してやった。

 

 「お前達はアクセサリを見に行っただけなのか?」

 

 「服も見に行ったわ、お母様のもあるわよ」

 

 「私のも買ったのか」

 

 「私達の服選びは楽でいいわ、サイズが変わらないものね」

 

 カミラはそう言って笑っている、確かにそうだが私はあまり服に興味が無い。

 

 「お母様は何してたの?」

 

 「私は本を買い集めていた。後は魔道書庫という物を教えて貰って、それも買って来た」

 

 「本関係だけじゃない……それで、魔道書庫って何?」

 

 私は魔道書庫についてカミラに教えた。

 

 「良いわねそれ。私も買おうかしら……」

 

 カミラは気になったようでそんな事を言った。

 

 「買いに行くか?本体があればカードは貸し借りが出来るらしいぞ」

 

 「買いに行くわ」

 

 カミラも魔道書庫魔動機を購入し、それから私達は食事を取るために客が多く入っている店に入ってみる事にした。

 

 

 

 

 

 

 「中々だな、この値段なら十分だろう」

 

 人気のありそうな混んでいる店に入ったおかげか、値段の割にいい味をしている。

 

 私は肉の盛り合わせセットとモー乳、カミラは生魚の切り身と黒茶を頼んだ。

 

 お互いに少し分け合って食べたが、どちらもそれなりの味だった。

 

 「まあ悪くは無いわね」

 

 「たまには外食も良いが、カミラやルーテシア、ミナの料理より美味かった事は無いな」

 

 「当然よ」

 

 私がそう言うとカミラは嬉しそうに笑う。

 

 彼女達の腕はもちろんだが、揃えている食材が人類の物とは違うのも美味しい理由の一つだろう。

 

 「お前が調理を習い始めた頃の料理は色々と面白かったぞ」

 

 「それは言わないで……分かってるわよ」

 

 カミラはルーテシアと共に料理をして腕を上げた。

 

 当然最初から上手かった訳では無く、初期の不思議な料理も私は食べている。

 

 あれはルーテシアに味見させなくて良かったと今でも思っている。

 

 「私だから何とも無かったが、ルーテシアが味見していたらどうなっていたか」

 

 「……うん、今ではお母様で良かったと私も思っているわ」

 

 「ふふ、私の判断に感謝しろよ?」

 

 私はカミラに微笑み、食事を続けた。

 

 その後三人で語り合いながら食事を済ませ、久しぶりの人類の都市を楽しんだ私達は満足して月へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 人類の都市を楽しんだ日からしばらくして、ヒトハが地下都市の情報を得て来た。

 

 地下都市は今は完全に犯罪組織の温床になりつつあり、地上からの違法な侵入経路も数えきれない程あるらしい。

 

 それでも地下都市が潰されないのは、各国と程度の差はあるが繋がっていて、国としても完全に無くなると困るからという理由のようだ。

 

 そうでなくてもあれだけの人間が住んでしまっている以上、国としても簡単には潰せないだろうな。

 

 地下都市の中には違法錬金薬である幸福薬を作っている組織もあるようだ、幹部達は地下都市では無く浮島にいる様だが。

 

 貧民層はかなりひどい生活をしていて、親を亡くした孤児達が多くいるようだ。

 

 そういった子供達は大抵地下都市の犯罪組織に良い様に使われたり、憂さ晴らしに使われて死んでいくらしい。

 

 ヒトハは最近私が頼んだ事以外の情報も多く集めるようになり始めた。

 

 私が頼んだ情報を手に入れた後は好きにして構わないと言った事が影響し始めているのかも知れない。

 

 最近は犯罪組織の情報や孤児、貧民層などの情報を持ってくるようになった。

 

 犯罪組織はともかく、何故孤児や貧民層の情報を持って来る様になったのだろうか。

 

 どんな理由にしても彼女が何かに興味を持つ事は悪い事では無い、このまま好きにさせておこうと思う。

 

 

 

 

 

 

 私は紙の本ではなく、魔道書庫で魔道書を読んでいた。言葉だけ聞くと魔法の指南書を読んでいるように聞こえるが関係は無い。

 

 紙の本に比べると魔道書は遥かに多くの種類がある、現在の人類が読書に魔道書庫を一番利用している事が良く分かるな。

 

 操作自体も単純で使いやすく、本体とカードさえあればどこに居ても好きな本を読めるというのは確かに便利だ。

 

 カミラはこの魔道書庫を買ってから以前よりも少しだけ多く本を読むようになった。

 

 今も月面で私の隣に座り、魔道本を読んでいる。

 

 カミラは宇宙空間でも生身で平気だった。

 

 ただ、宇宙は魔力がかなり少なく強力な魔法の発動が難しいため、ドレスからの供給に頼る事になりそうだ。

 

 取り敢えず彼女も宇宙で問題無く活動出来る事が分かったのは嬉しい事だ。

 

 ドレスの保護機能はあまり必要無くなったが、いざと言う時の保険にはなる。

 

 『お母様』

 

 私がそう思いながらイシリスを見上げていると、隣にいるカミラもイシリスを見上げながら言う。

 

 『何だ?』

 

 『イシリスってここから見ると綺麗ね』

 

 『そうだな』

 

 私は素直に答える。私達もこの光景を美しいと感じる感覚はある。

 

 『この宇宙には他にもこんな綺麗な、人類のような生物がいる惑星が沢山あるのよね?』

 

 『他にも知的生命体が居る世界はある。世界によっては在り方や法則が違う可能性もあると思うが、同じように美しい惑星はきっとあるだろう』

 

 同じ宇宙かどうかは分からないが。

 

 『お母様……星にも寿命ってあると思う?』

 

 私の方を向き彼女が疑問を口にする。惑星に寿命か、考えた事もなかったな。

 

 『寿命か、考えた事も無かった。例えばあのイシリスの場合、私は生物では無く石や金属のような物の塊としか思えない』

 

 私はイシリスを見たまま話す、彼女もずっとイシリスを見ている。

 

 『そうね、イシリスが今まで見てきた生物と同じだとはとても思えないわ』

 

 『私は石や金属に寿命があるとは思えない。時間によって劣化したり変質する事を死と呼ぶのなら、寿命があると言えるのかもしれない』

 

 『それは何か違う気がするわよね』

 

 『私がそう思い込んでいるだけで本当は有るのかもしれないし、やはり無いのかも知れない。もしかしたら有ったり無かったりするかもしれない』

 

 『何を言っても今は本当の事は分からないのね……』

 

 『そういう事だ。星の寿命と言う考えは面白かったが、私は確かめたいと思うほど興味が湧かないな』

 

 『何となく言っただけだから気にしないで、私もそこまで興味がある訳じゃないわ』

 

 カミラがどうしても知りたいのなら多少調べてもよかったが、その必要は無いか。

 

 『お母様、そろそろ食事にしましょうか。今日は久しぶりに血も頂くわ』

 

 『そうだな、戻ろう。血液も家畜の物で良いなら継続的に手に入るからな、好きな時に飲むといい』

 

 『この拠点で育てられた家畜の血は悪くないわよ?育ちが良いからかしら?』

 

 『それは関係あるかもな』

 

 そんな会話をして私達は拠点へと転移した。

 

 

 


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