少女(仮)の生活   作:YUKIもと

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 宇宙空間を飛び回り魔法を撃ち合う私とカミラ、イシリスからは大分離れた宇宙で私達は戦闘訓練をしている。

 

 地上にいた時と違い広大な空間がある宇宙では、カミラは周囲を気にする事無く力を出して戦う事が出来る。

 

 現在私とカミラの距離はかなり空いていて目視は難しいが、お互いを知覚しながら戦闘をしている。

 

 『周囲を気にしないくていいのは楽しいわね!お母様!』

 

 カミラから普段ではあまり聞かない声色の念話が届く。

 

 暴れる事が出来て楽しそうだな。普段は大人しく理性的な彼女だが、幼い頃は戦闘が一番好きだった。

 

 今も戦闘が好きなのは変わっていないようだ。

 

 彼女が私を絶対的な強者だと思っている事も楽しそうな理由の一つだろう。

 

 自分が全力で攻撃しても問題無いから気が楽なんだろうな。

 

 『ふふ……行くわよお母様!』

 

 攻撃の宣言までしている、それは本来無駄な事だと教えただろう。

 

 カミラは今、生身のままドレスからの魔力供給を受けて戦っている。

 

 彼女はその魔力で魔力球を大量に作り出した、中々の数だ。

 

 今の力を抑えていないカミラだと地上で使った場合、一つで惑星を三分の一程度はえぐり取れる威力にはなるか?

 

 私は前面に範囲攻撃を行う。こちらに向かっていたカミラの魔力球は巻き込まれ次々と爆発を起こし、宇宙空間に数多の輝きを生んだ。

 

 もしイシリスに当たれば危険な威力だが、宇宙ではこの程度の爆発は小さい物だろう。

 

 『誘爆を起こすようではまだまだだ。外部からの干渉に影響されないように、好きな時に好きな魔力球を起爆出来るようにした方が良いかも知れないな。さて、今日はここまでだ』

 

 『うん』

 

 少し幼い頃の口調になっているカミラと共に月の拠点に帰った。

 

 

 

 

 

 

 「力を抑えずに使うのはやっぱり気持ちいいわね」

 

 拠点に帰り、湯舟に浸かりながらカミラが呟く。

 

 「宇宙での全力戦闘に慣れすぎて地上で力加減を間違えるなよ?」

 

 「その辺りは大丈夫よ。ただ……たまには全力で戦わないとなまりそうじゃない?」

 

 「確かにそうかも知れないな、私は全力を出した事は無いが」

 

 「宇宙なら問題無いでしょ?やってみたら?」

 

 確かにそのはずだ、だが嫌な予感がする。

 

 「何故かやめた方が良い気がしている。ただの勘だが、取り返しのつかない事になるかも知れない」

 

 「……お母様なら何があってもおかしくないわよね」

 

 カミラは今までの私の事を知っているため慎重になったのか、考えをすぐに変えた。

 

 「例えば、ただ攻撃をするにしても、加減を間違えれば敵味方問わず広範囲の全てを消滅させてしまうかもしれない。そしてその力を集中させた場合、何が起きるか予想出来無い」

 

 例えば宇宙に穴が開いてしまったり、どことも知れぬ場所とつながってしまったり。

 

 最悪この宇宙が消える事になる可能性もあるかも知れない。

 

 ただ何となく不可能では無いような、自身の限界が無い様な気がしている。

 

 「私は全力は出さず、相手に合わせる位が良いと思っている」

 

 「……うん、お母様がそう感じているならその方が良いと思うわ」

 

 「私が全力を出した時、どうなるかは分からない。だからと言って絶対に戦力を出さない訳では無い。私は負ける位なら何が起きようと全力を出す」

 

 「まあ……お母様が本気を出す様な相手がいたら、私はきっと殺されているだろうし……後はお母様に任せるわよ」

 

 「手が届く範囲は出来るだけ死なせない様にするつもりだ」

 

 私は隣にいるカミラの頭を撫でる。

 

 「ん……私も諦めたりはしないから」

 

 その後、夕食をどうするか話し合いながら風呂を楽しんだ。 

 

 

 

 

 

 

 ある日、私は地下都市へ行く事を告げ、一緒に来るか聞いた。

 

 「……地下都市へ行くの?」

 

 『どこであろうとお供いたします、主様』

 

 ヒトハは私の誘いを断らなかったが、カミラはあまり乗り気では無いように見える。

 

 そういえば換金に行った初めての訪問の時点で嫌そうにしていたような気がする。

 

 「換金に行っただけでしっかり回っていなかったからな、理由はその程度だ」

 

 「私はやめておくわ。あそこはあまり好きじゃないし……ごめんなさいお母様」

 

 カミラは眉を下げて謝った。

 

 「謝る必要は無い、ただ誘っただけだ。本当に連れて行く必要があったら有無を言わさず連れて行く」

 

 「ふふ……そうね。お母様だから心配はいらないとは思うけど……気を付けてね」

 

 カミラは表情を微笑みに変える。

 

 私がどんなに強いか知っていても、カミラとヒトハを始め、かつて共に過ごした親しい者達はいつもこうして心配し、声をかけて来る。

 

 そして私はそれを悪くないと感じている。

 

 「気を付ける。ありがとう」

 

 私はカミラに言葉を返し、ヒトハと共に地下都市の換金店付近へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 無人の路地裏に転移した私は換金店に移動し、店に居る男に換金を頼む。

 

 以前ここで一人男を奴隷化したが、そこそこの立場の男だったらしく私の事をここの上客として部下に伝えている。

 

 実際かなりの量の換金をしているので嘘では無いと思う。

 

 そういえば名前を聞いていないな。

 

 私は用意された部屋のソファに座りヒトハに念話する。

 

 『ヒトハ、私がここで奴隷化した男の名前は何と言うんだ?』

 

 『キャリア・ファンブルです主様。この辺りの換金店の元締めでもあります』

 

 『微妙な地位だな』

 

 やがて私が奴隷化したキャリア・ファンブルが部屋へとやって来た。

 

 態度は変えるなと言ってあるため初対面の時と対応はほぼ変わらない、上客と言う設定だから多少扱いが良いくらいだ。

 

 特に問題が起こる事も無く換金は終わった。

 

 彼のおかげで気にする事無く大量に換金出来る、店としても損は無いから問題は無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 「キャリアの所に上客か……」

 

 地下都市の中でも深部に当たる場所、そこに秘密裏に作られている部屋の一室で男が呟く。

 

 「そんな客はたまにいるだろう?なんで今更そんな事気にしてんだ?」

 

 同じ部屋にいるもう一人の男が声をかける。

 

 「その客が換金した総額だ、見てみろ」

 

 声をかけられた男は資料らしき紙をもう一人に渡す、それを読んだ男は驚きの声を上げる。

 

 「何だこりゃ!?短期間で何だよこの額は……」

 

 「分かるだろう?今まで短期間にこれだけの額を換金した者はいない」

 

 「何もんだ?」

 

 「分からない。相手は最初は大人と子供の女二人と護衛らしきゴレム一体で来たらしいが……情報が無い」

 

 「物は本物か?」

 

 「それは俺も確認した。どの宝石も本物で最上級品だ……間違い無い」

 

 「なら良いんじゃねぇか?誰であっても物が本物で、何も仕込まれて無いなら問題無いだろ?」

 

 「そうではあるが……多少は気にしておこう」

 

 

 

 

 

 

 地上に比べると全体的に薄暗い町並みの中を歩く。

 

 地下と言う事もあり地上程高い建物は無い、その代わり地下に深い建物はあるかもしれない。

 

 ヒトハによるとこの大通りは外部からの客向けで比較的安全だと言う。

 

 ただし、裏へと一歩踏み込めば治安は極端に悪くなり、軽い気持ちで入り込んで行方不明になる者がそれなりに居るらしい。

 

 思ったよりも表通りには外部から人が来ているんだな。

 

 そう考えながら表通りから外れようとした時、声をかけられた。

 

 「おいお前、そっちは駄目だ」

 

 私が振り返るとボロボロの汚れた服を着た茶髪の少年がいた、見た目は私より少し上に見える。

 

 『この辺りをねぐらにしている孤児だと思われます』

 

 なるほど、危険だと教えてくれたのか。

 

 「こっちは駄目なのか?」

 

 「外の人間が気軽に裏へ入ると出て来られない、表通りだけにするか帰った方が良い」

 

 私の問いに答える少年、この辺りに住んでいるならここの事聞いてみるか。

 

 「この辺りに詳しいなら色々教えてくれると嬉しいが、どうだ?」

 

 「タダじゃ無理だ。情報料を出すなら案内する」

 

 「しっかりしているな」

 

 『こうしなければ生きていけないのだと思われます』

 

 親切でそんな事をしている余裕は無いという事か。

 

 「どうするんだ?俺も暇じゃないんだ、必要ないならもう行くからな」

 

 「分かった、これで案内を頼む」

 

 「っ!?」

 

 私は彼に小金貨を一枚差し出す、すると彼は息を呑み私を見る。

 

 「お前本気か?」

 

 「何がだ?」

 

 「これ……小金貨だぞ?」

 

 「この程度大した額ではない」

 

 「もう返さないからな……ついて来な」

 

 彼は小金貨を受け取ると懐に入れて歩いていく。

 

 その後、彼に大通りの店の情報や危険な場所、やってはいけない事などを聞きながら大通りを歩き回った。

 

 大半はヒトハから聞いていた事だが、細かな情報は初耳だった。

 

 彼に頼んだのは正解だったな。

 

 「……あんた、名前は?」

 

 それなりに時間をかけ案内されている途中に彼が言う。

 

 「私はクレリア・アーティアと言う」

 

 そう言うと彼は足を止め振り返り、少し驚いたような表情で言う。

 

 「あんた……アーティア合衆国の偉い奴の娘か?」

 

 アーティア姓だからか?

 

 「無関係だよ。ただ同じなだけだ」

 

 「そうか……」

 

 「お前の名は?」

 

 「……ケイ・ビックス」

 

 「そうか。案内を頼むぞ、ケイ」

 

 「……おう」

 

 

 

 

 

 

 「これで大体の大通りの案内は終わりだ。普段はここまでしないけど貰った額が額だからな……」

 

 時間をかけて大通りを案内された後に彼は言った、いつも通りでもよかったが彼なりの感謝の印なのだろう。

 

 予想以上に彼はしっかりと案内をしてくれたし、私におかしな感情を向ける事も無かった。

 

 「ありがとう。私はこれからゆっくり大通りを見て回る事にするよ」

 

 「ああ、じゃあな」

 

 こうして私はケイと別れ、彼のお勧めの店から見て行く事にした。

 

 

 

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