憧れの高町さん。   作:あおい安室

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なのはさんの誕生日である3月15日に投稿予定だったんですが、手直ししてたら遅れた……


高町教導官と、私。

 人は、誰かに憧れるものだと思っている。

 アニメの中のヒーロー、歴史上の偉人、テレビの中の芸能人など。色々な人に憧れている。

 今日は私の憧れの人の話をしよう。ちょっと長くなるかもしれないが、聞いてほしい。

 

 

「どうでしょうか、高町教導官」

 

『もう少し……後7%程AMFの濃度を上げられませんか? 実戦だとこれ以上のAMFが発生していることも考えられます。その場合のテストも行っておくべきかと』

 

「了解しました。テスト形式はどのタイプにします?」

 

『A-8パターンを市街地でお願いします。できればもう少し遠距離型の敵が多くしてほしいんですが、可能ですか?』

 

「やってみましょう。5分時間をください」

 

『ありがとうございます。じゃあ、その5分の間に軽く反省会するよ』

 

 画面の中の高町教導官が部下―あるいは教え子と呼ぶべきか―と集まって話し合いを始めた。

 それを後目に、私は手元のコンソールをいじくって次のシミュレーションの準備を整える。

 パチパチとキーボード音がしばらく響き、高町教導官の反省会が終わる頃にこちらの準備も終わる。

 

「お待たせしました。準備完了です、いつでもどうぞ」

 

『わかりました。皆、さっきの問題点を踏まえて対処に当たること。テスト気分はちゃんと抜いておくように。では、お願いします』

 

「了解です。シミュレーションパターンA-8、スタート!」

 

 タン、と音を立ててシミュレーションをスタートさせる。

 画面の中の景色が市街地に変わり、高町教導官達は空を飛び始めた。

 

 

 私は、管理局と提携している会社の社員の一人だ。

 名前は……この物語には必要ないな。正直名前を出すのが恥ずかしくてね。すまないが黙秘させてもらおう。

 さて、私が働いている会社の話をするとしよう。うちの会社はシミュレーターを開発している。

 それもただのシミュレーターではない。SF映画なんかであるような立体映像を表示させ、さらに触れることができるような代物だ。

 このシミュレーターは管理局の訓練用設備として納入予定だが、まだ未完成だ。

 基本的な部分は完成しているのだが、実際に使用した場合のデータが不足しているのだ。

 その為管理局に要請し、テスト用の人員を派遣してもらうことにした。

 そして、やってきたのが。

 

「高町なのは、か……」

 

 武装隊の戦技教導官で、エースオブエースとも呼ばれる凄腕の魔導士である。

 彼女と彼女の部下が数名派遣され、シミュレーターのテストをしてくれている。

 さまざまなテストを行うと同時に、シミュレーション内容に関して提案もしてくれている。

 おかげで色々なデータが集まるからこちらとしては助かる。だが……

 

「あの人、テストやってるのか教導やってるのかどっちなんだか。部下の人結構大変そうだな」

 

 さっきからシミュレーターの調整室から画面越しに彼女たちのテストを眺めているが、技術屋の自分から見てもかなりのハイレベルであることがわかる。

 あっという間に出現させた敵を倒していき、残りは大型の一体のみとなった。

 

『すみません、少しいいですか?』

 

「は、はい、なんでしょう?」

 

 すると、突然高町教導官から連絡が入った。

 

『あれを倒した後、皆の背後に敵を出して奇襲攻撃させることってできますか? 不慮の事態の対応もやってみたいのですが』

 

「りょ、了解しました。ただちに準備します」

 

『すみません、無理なお願いをして』

 

 いや、別にいいんですが……この人、本当にスパルタだな。

 なお、奇襲攻撃には残念ながら対応できた人は少なく、高町教導官は「訓練だからって油断しちゃダメだよー」といっていた。

 高町教導官、そもそもこれは訓練じゃなくてテストです。

 

 

「大型エネミーの大量配置はできなくはないですが、現状の設備だとこれくらいが限度ですね。フィールドの容量等をもう少し調整すれば後数体はできそうですが」

 

「なるほど。これだけの数を相手にする事態はよほどのことがなければないので、実際に配備する型はもう少しスペックを落としてもいいかもしれません」

 

「ですが、新たな敵の出現する可能性は十分にあります。バージョンアップも考えるとスペックには余裕を持たせた方がいいんですよね」

 

 テストが終わった後、調整室で私はシミュレーターのデータを表示させながら高町教導官と話をしていた。

 シミュレーターの不具合や気になるところをピックアップしてもらいつつ、シミュレーションのパターンについて話し合っていた。

 

「確かにそうですね。後は現場でもシステムをいじることになると思うので、インターフェースが使いやすいと助かります」

 

「システム開発部に意見を通しておきましょう。いや、今呼んだ方がいいかな。ちょっと失礼します」

 

 そう断って私はシステム開発部に連絡し、事情を伝えて空いてる社員を回すように伝えた。

 だが、帰ってきた答えは考えていたものとは少し違っていた。

 

「すみません、事情を話したところ向こうでもちょうどインターフェースを改良中とのことで。開発部の方に来てくれると助かるとのことでした」

 

「わかりました。それじゃ、歩きながらちょっとお話でもしましょうか。個人的にあなたに聞きたいこともあったんですよね」

 

 立ち上がり、共にシステム開発部に向かおうとすると、高町教導官はそう言った。

 

「個人的に聞きたいことですか?」

 

「はい。今朝会ったときから気になってたんですが、もしかしてあなたって、日本人ですか?」

 

「ええ、そうですが」

 

 高町さんの質問を肯定すると、彼女は顔をほころばせた。

 

「やっぱりそうなんですね。名前と顔つきからもしかして日本人なのかな、って思ってたんですよ」

 

「ああ、日本人の名前はミッドチルダだとなかなか聞きませんからね。変わった名前扱いされますし」

 

 そうですよね。私も昔はそう言われててちょっと大変で──

 彼女は日本人であることがきっかけで困ったこと等を話し出した。

 その姿は先ほどまでの厳しい教導官とは別物で、どこにでもいるような普通の女性だった。

 

「……正直意外ですね」

 

「え、意外?」

 

「はい。高町教導官は先ほどのテストの時のように厳しく真面目な方かと思っていたので」

 

「あはは、やっぱりそう見えますか? 昔から私は仕事の時は全力で取り組むようにしてるんです。だから、あんな感じで厳しくなっちゃうんですよ」

 

「わかります。私の周りにもそういう方はいますから」

 

「とはいえ、そのせいで周りにも迷惑をかけたこともあるんですけどね」

 

 彼女は照れ臭そうに頬をかく。その姿はやはり、普通の女性で私の考えていた姿とは違っていた。

 私の憧れていた、高町なのはとは違う。普通の女性としての、高町なのはだった。

 

「あの、高町教導官。今度時間があるときに私も少しお話させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「いいですよ。その代わり、一つ条件です」

 

 ──私のことは、高町さん、って呼んでください。

 

 ──いつまでも教導官と呼ばれてたら他人行儀みたいですしね。

 

 微笑みながらそう言葉を紡いだ彼女は、やっぱり憧れていた高町なのはとは違っていた。

 だけど、その方が私は彼女を身近に感じていた。

 

「わかりました、高町さん」

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