もっと修正したい箇所はあるけどこれ以上は手を加えれません……バランスがさらに崩れる。
あ、今Twitterでちょっとしたアンケートをしているので興味を持った方は参加していただけるとありがたいです。
子供の頃、私はテレビの中のヒーローに憧れていました。
地を駆け空を飛び、悪と戦い、人々を守るヒーローに。私は憧れていました。
だけど──私はヒーローになれなかったんですよね──
「……あの、酔っぱらってます?」
「そうかもしれませんね。何を言ってるんでしょう私」
たった一杯でここまで酔うとは……久しぶりで酒に対する耐性が落ちているな、私。
シミュレーターのテストが続くある日のこと。
テスト終了後に時間が空いたので、以前約束していた高町さんに私の話をすることにした。
ただ、その話をする場所は私の行きつけのバーなのはおかしい気がする。
「別に私は気にしていませんよ?」
そう言ってくれる高町さん。
「せっかくなのでどこかでご飯食べましょう」と誘ってくれたのにこういうところしか案内できなくて申し訳ない。
「管理局に入ったころから上司にこういうお店には連れてこられてますし」
「その、失礼ですが高町さん管理局に入った時何歳でしたっけ? さっきもまだ未成年と聞いて驚きましたが」
「えーっと、はやてちゃんとの事件が終わってからだから……10歳?」
若 す ぎ る 。
店員も止めろ。いや、まだ未成年の高町さんを連れ込んでいる私の言えたことではないが。
「私がいたころからその悪しき風習変わってないんですか……
そろそろ改善しないとヤバいのでは? いや、でもミッドチルダの飲酒関連の法律は日本とは違うし……」
「あはは……あれ? 今『私がいたころ』って言いました? もしかして元局員だったんですか?」
「はい。地上本部の陸士隊にいました。
階級は一番下の三等士で、市街地の警護を主任務とする第265部隊に所属していましたね……おや、言ってませんでした?」
「初耳です。もっと早く言ってくれればよかったのに」
……うーん、意外と私は自分のことを話すのが苦手なようだ。てっきりもう言っているものかと思っていた。
「でもどうして辞めたんですか? 結構仕事の手際もいいですし、普通に今でも働けると思うんですが」
「嬉しいお言葉ありがとうございます。ですが、もういいかな、なんて思ってるんですよね。
やめた理由も健康上の理由ですし。ちょっと色々と無茶やりすぎまして体を壊しましたから」
「み、耳が痛い……私も昔無茶やって体を壊したことがあるし……」
「ああ……67年のあの事故ですか。まあ、私は魔力切れで倒れただけですから高町さんよりかは多少はマシですよ」
トレーニングで徹夜を繰り返していたからろくに魔力が回復せず。
そのまま仕事に出ることを繰り返してたらその内バタン、っといきました。
「オーバーワークですよそれ……大丈夫だったんですか?」
「大丈夫じゃないです。私のリンカーコアは元々サイズが小さかったのにオーバーワークでかなり疲弊。
何とか治りましたは後遺症で一定以上の魔力を放出すると痛むようになりました」
「それでシミュレーターのテスト中もあまり魔法使ってなかったんですね……」
「ええ。そんな状態では前線職は到底無理と医者に診断されて。
前線職にこだわりがあった私はもう完全に自棄になり、そのまま管理局をやめちゃったんですよね」
あの頃は若かった。勢いに任せて辞表を出すとか今じゃ絶対にやらない。
「どうしてそんなになるまでオーバーワークしたんですか?」
「……言っても怒りません?」
「え? 怒りませんけど……何か後ろめたい理由があるんですか?」
「なくはないといいますか、後ろめたいと言いますか……その、高町さんに憧れてたからですね。オーバーワークしてた理由は」
「私に憧れたのが、オーバーワークのきっかけ?」
「はい。私は子供のころからテレビの中のヒーローに憧れていまして……あ、さっき酔った時にも言いましたね。
それで管理局に入ろうと思ったのもヒーローになりたかったからだったんです」
「なんとなくわかる気がします。私が管理局に入った理由そんな感じだったんですよ」
そうだったのか。そう言ってくれるとありがたい。
「ですが、私はリンカーコアが平均よりも下のレベルだったんですよね。
そこを技術でカバーして前線で働いていたんですが、なかなか成果が上がりませんでした。
そんな時、同じ管理外世界出身で活躍していた高町さんを管理局の広報誌で見たんです。
それで、こう思ったんですよ」
──同じ世界出身の子供が『ヒーロー』みたいに戦えるんだ。
だったら、私にだって出来ないはずがない──
「そう思い込んだ私は、ひたすらトレーニングに打ち込んで強くなろうとしました。
しかし、疲労で磨いた技術がろくに振るえず。成果はどんどん落ちていき、トレーニングをさらに増やす。
そして、また疲労がたまり──と、言った感じで悪循環に陥り。
最終的にはボロボロになったリンカーコアと管理局を辞めたという結果が残りました」
高町さんは言葉に悩んでいるのだろうか。暗い表情で私を見ていた。
「別に気にしなくていいですよ、高町さん。私が身の程知らずだっただけです。
どうせいつか同じことをして同じようにやめていました。そのきっかけがたまたま高町さんだっただけです」
「でも……後悔していないんですか?」
「後悔していない……と言えばウソになりますね。後悔してますよ、ええ。
今の仕事が嫌いなわけじゃないですが、管理局では『ヒーローになりたい』という夢を追いかけられましたから……
もっとも、そんな子供っぽい夢をいつまでも追いかけた結果がこれなんですけどね」
居た堪れない気持ちになり、グラスの酒に手を伸ばす。その手を高町さんがそっと抑えてきた。
少しだけ驚いて高町さんを見ると、優しく微笑んでいた。
「別にそれでもいいんじゃないでしょうか。
私も子供のころにやりたいことが見つかって、それをひたすらに追いかけてきたから、ここにいます。
あなたがここにいるのも、夢を追いかけてきた結果です。だけど……私は今ここにあなたがいてくれて感謝しています」
そう言い切って私が飲もうとしたグラスを奪うと、一息に飲み干して高町さんが私に向き直る。
「あのシミュレーターは本当に出来がいいです。あれがあれば管理局の訓練体制は大きく変わると思います。
今よりももっと強い局員を育てられると思います。それも、安全な環境で、たくさんの局員を。
私はこのテスト中にそれを実感しました。そんなシミュレーターを作ってくれたのはあなただってこと、知ってるんですよ?」
「は? いやいやいや、ご冗談を。私はほとんど何もしていませんよ」
「……シミュレーション場のスタッフが言っていました。『あの人のアドバイスがなかったらここまで強度を維持しつつ広いスペースを確保することができなかった』」
「敵プログラムの製作担当者が言っていました。『モーションプログラムは前線経験者であるあなたがいなければこんなに高品質にならなかった』」
「フィールドプログラムの担当者が言っていました。『デバックの陣頭指揮を取ってくれたのには頭が上がらないよ』」
「シミュレーションプロジェクターの開発者が言っていました。『あの人の指示に合わせて調整した結果エネルギー効率もいい具合に仕上がった』」
「他にもいろんな人が言っていましたよ。『あなたがいてくれたからこんなにいい仕上がりになった』って。
『あなたがここにいてくれてよかった』って、みんな言ってます。私もそう思っています。
確かにここじゃ『ヒーローになりたい』という夢は叶えられないかもしれません。なら──―」
行き場を失っていた私の手を、高町さんは優しく包み込み、言葉を紡ぐ。
「私の夢を、一緒に叶えてくれませんか?」
「高町さんの……夢?」
「はい。今、管理局でちょっと気になっている子がいるんです。
今度新しい部隊を作る話があってそこに勧誘しようと思っています。
その任務の過程でその子達を育ててみたいんです。あなたみたいにいうなら……」
「ヒーローを育ててみたいんです」
そして、時は流れ──
「こうして、私は高町さんに勧誘されたのです」
私は今、管理局の隊舎でシミュレーターの調整をしていた。
高町さんからの依頼で、新しくつくられる部隊に新型のシミュレーターが必要となり私もそれに立ち会うことになったのだ。
「へぇー……ロマンチックですね」
その調整がてら、新人の技師に私と高町さんの話をしていたが、なかなかに面白かったようだ。
「まあね。あの後に『ヒーローになれなくても、ヒーローを育てればいい』って、高町さんが言ってくれて。
今まで惰性でやってた仕事に急に色がついた気がしたなぁ」
「え”っ。惰性でやっててこれの前期型を完成させたんですか」
この人も結構化け物なのでは……、と新人の技師が驚く。そこまで驚かなくても……
驚く技師に若干あきれながらも調整を完了させると、そのタイミングでシミュレーター室のドアが開く。
「こんにちは。久しぶりですね」
部屋に入ってきたのは高町さんだった。そして、彼女に続いて4人の少年少女が入ってきた。
なるほど、彼女たちが……
「ええ、お久しぶりです高町さん。
元気そうで何よりです……おっと、君たちには自己紹介がまだだったね」
若干困惑気味の4人の前に立ち、その姿を見つめる。
そして私は、いずれ誰かのヒーローになり、私と、高町さんが追いかける夢の先に立つであろう4人を。
「民間企業からの派遣で機動六課に派遣されました──
しっかりと、目に焼き付けた。