ちょっと面倒くさがりの提督と艦娘たち   作:Koki6425

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翔鶴の暴走

先日、夕立達の首輪を外したことで少なくとも夕立からは気に入られた。気に入られたというか警戒されたりすることはなくなっていたのである。それだけでも大きな進歩と言えるのではないだろうか。他の駆逐艦の子達の中でもまだ一部から怖がられているもののほぼ駆逐艦全員からは軽蔑されることはなくなった。

そんな夕立も俺にとっては少し面倒くさい艦娘に当たる。何故かというとそれは夕立の性格にある。別に口癖がどうとか髪型がどうとかその他諸々は自由なのだが、何より面倒くさいのは…

「提督さーん!」

そう、これだ。毎度のことではあるのでもうなれたが首輪を外してからと言うもの夕立の戦績がめまぐるしくよくなっている。そのおかげでなんどかMVPを取るようになってそのたびに「褒めて褒めて」と抱きついてくるのである。俺としては微笑ましい限りだがそれを端から見たらただのロリコンだ。夕立は見た目としては歳は16くらいなのかも知れないが精神は他の駆逐艦の子達と比べてそう大差はない。未だに艦娘を異性として意識したことはない訳ではないので少し恥ずかしいと思ってしまう自分がいる

「夕立…びっくりするから飛びつくのは止めてくれ」

「えーでも夕立MVPとったっぽい!」

「最近の夕立はすごいな」

そう言いながら俺は頭をなでる。夕立はまるで首の辺りをなでられた犬のように顔を緩めていた。それを俺の視界の奥の方から見ていた金剛がムスッとした表情をしていたので少しなでて止める。金剛を放っておくとなにしでかすかわかったものではない。まあそれはまだ彼女らのことをわかりきっていない証拠でもあるのであるが。

しばらく報告を聞き艦娘達は部屋を出て行った。その報告書が来るまで俺は別の仕事をする。だが何故はかどらないのかがわからない。いつものように面倒くさがりな性格が出ているだけなら無理矢理にでも動かすことは出来ないでもないのだが今回は何というか別の理由があるように思えてきた。それもただの思い過ごしであれば良いのだが…。

何というかだるい。その言葉が俺の体を支配している。

「すまない、翔鶴。少し休ませてくれ。なんだか体がだるい」

「わかりました。1時間ほどしたら声を掛けます」

「助かる」

そう言って俺は自室の布団に横になった。風邪を引いたというわけではない。俺が風邪を引いたときに出る特有の咳やくしゃみがでないし、何よりからだが熱くならない。風邪を引いていたならもう少し熱が出るはずなのだ。最近働きづめだったし、殺され掛けたりもしたので気疲れでもしたんだと思い、しばらく休むことにした。

小一時間ほど休むと少し体が軽くなった気がした。翔鶴は声を掛けるとか言っていたがどうやら忘れているようだ。でも短時間でも休めたので執務を再開しようと思い私室の扉を開けて執務室に入ると翔鶴はまだ仕事をしていた。時計を見るともう昼休憩の時間になっていた。何故休憩しないのか聞いたら「私はまだ空腹ではありませんので」というではないか。まあ確かに俺も似たようなものだ腹が減っていれば飯を食うがそうでないなら何かしらの暇つぶしをするものだ。翔鶴ばかりに執務をさせておく訳にはいかないので俺も手伝う。…というかもとは俺の仕事だ。秘書官はつけるかどうかは提督の自由だが俺にとってはとんでもない戦力の一つだ。

翔鶴は俺が初めて会ったときから気になっていた艦娘の一人だった。気になっていたというのは別に女性としてではなく、艦娘としてであった。周りの艦娘の空気とはほぼ正反対と言っても良いのではないかとも思える彼女は俺の意識をそれに引き寄せた。そう、他とは違う空気をもつ艦娘は俺の意識を向かせる対象だったのである。はじめてあったばかりならほぼすべての艦がそれにあたるが今現時点で気になっているのは彼女だ。

「翔鶴、一つ良いか?」

「はい、何でしょうか」

「別に言いたくないなら言わなくても良いんだけどさ…どうして俺が部屋に行ったとき他みたいに追い出そうとしなかったんだ?」

翔鶴は少し顔をしかめるとどこかそっぽを向きながら考えて口を開いた。

「私は以前の提督のおかげ…というのもおかしいですがそれが理由で周りの人々の発言が嘘かホントか見抜けるようになりました。あなたはなにも言わなくても『この人なら大丈夫』というのがわかったんです」

人の心を見抜くような能力を手に入れた翔鶴…これはよい産物とみるべきか悪い産物とみるべきか…それは俺次第なのかも知れない。もしも良い産物と捉えるなら前の提督を支持していることと同じだ。だが悪い産物と捉えてしまうと俺は彼女をどう言うように捉えるのかわからなくなってしまう。

面倒くさがりなはずの俺がここまで物事を真剣に考えるなんてあり得ないと自分で理解していた。だけどどうしても気になったのである。時間の無駄、そんなことをする暇があったら執務をしろ、なんてここの前の提督なら言っていたのではないだろうか。俺は言うつもりはない。

「そうか…嬉しい限りだよ」

「それにギブアンドテイクなんて言いますしね。もしそれをあなたがよいこととして捉えるなら私は後でテイクされても良いと言うことでもありますから」

どこの商売屋だよとつっこんでやりたい。他と違うというのはまさにこのことであったのだろう。

「ははは、冗談だろう。まあでも俺は受け入れてもらえただけでも大きなGiveだ。何かTake出来るものがあるならしようか」

「ありがとうございます…では早速…」

翔鶴は何やら近づいてくる。何をしようというのだろうか。まあ誰かに聞かれているかも知れないという不安もあるから耳打ちで言いたいのかも知れないと思い、俺は耳を傾けると翔鶴は俺が予想もしないであろう事に手を出したのである。

翔鶴は俺の椅子を自分の方へと向ける。もちろん俺も座っているので翔鶴の方へと体が向く。「目をつぶってください」というので目をつぶる。そしてしばらくすると何やら唇にとても柔らかい感触のものが当たったのを感じた。それがなんなのかは理解するのにそんなに時間はかからなかった。端的に言えば口づけをされたのである。それを理解した瞬間に俺の顔は朱色に染まる。

「な、何を…」

「少しお相手願います」

すると翔鶴は俺の膝の上に俺の方を向いて座った。俺の足を挟むように股を開いて手を俺の首の後ろへと伸ばそうとする。さすがにこれはまずいと思い剥がそうとしたが予想以上に力が強く引き剥がせなかった。なんかどこかの小説で読んだような展開…などとうつつを抜かしている場合ではない。この後の展開は容易に想像できる。

「ま、待て翔鶴!気をしっかり…」

「私はいつでも気を保っています」

そう言いながら顔を近づけてくる翔鶴。まさにヤンデレとでも言うべきものである。だが翔鶴があってすぐに俺のことを好きになってくれるはずはない前の提督の影響が強いのだろう。翔鶴は加賀の次に空母の中で多く被害を受けている艦でもある。強姦されているのであれば官能小説ではよくある展開…欲求不満とでも言えば良いだろう。艦の心を持つといえども肉体をもてば欲求が出てくる。軍艦という「もの」から艦娘という「生き物」に変わったのだ。生物がもつ三大欲求「食欲・性欲・睡眠欲」はもちろんもっている。特に艦娘は生き残ろうとする意志が強いからこれらの欲求は普通の人間より強いと言われている。

「あっ…」

途端に翔鶴が倒れる。背後に現れたのは瑞鶴だった。

「どうしてここに」

「こんなことだろうと思ったわ。みんな、とりあえず翔鶴姉を連れて行くわよ」

そう言うと飛龍と蒼龍が執務室の扉を開けて入ってくると翔鶴を担いで部屋を出て行った。途端に色々な出来事が起きて混乱している。瑞鶴はそれをわかっているかのように俺に言ってきた。

「翔鶴姉はね、前の提督に散々犯されたせいで単純に言えば頭がおかしくなったの。ああやって体が自分の制御を離れて行動することがあるらしいから気をつけてね」

「あ、ああ。助かったよ。ありがとう」

部屋を出る瑞鶴を見届けた後俺は乱れた服を整えて再び椅子に座り直す。翔鶴の物と思われる唾液が床に落ちていたのが気になった俺はちり紙で拭き取る。そして翔鶴が正気を取り戻すまで執務をするのである。もちろん一人で執務をするのは面倒くさかった…というのは建前であの後だったので少し寂しかった。誰か空いている奴はいないかと思ってスケジュール表を見ると金剛達が空いていたので金剛達を呼び出してお茶をするがてら執務を手伝ってもらうことにした。「わかりました。テイトクのために頑張るデース!」と意気込んでいる金剛がなんだか微笑ましかった。

そこで一つの疑問が生じる。戦艦で「被害」にあったのが金剛であるというのなら他の三人はどんな感じだったのだろうか。そして金剛はどう思っていたのだろうかと。なにも今気にする必要はないのだがもしその「被害」を度々受けていたのなら金剛にだって翔鶴みたいな現象があるのではないかと。

「さっきの翔鶴は大変だった…」

そう口を滑らせたことがこの後の俺の不幸を呼び寄せると言っても良いであろう。

それを聞いた金剛がピクッと反応したのである。別に気にすることでもなかったのだがよく考えてみれば艦娘達はこの翔鶴の異常を知っているはずだ。ということであればもちろん俺が何をされたのかもわかるはず…。

「テイトク…ついに浮気デスカ?」

「いや、そもそもそんな関係じゃないからそう言われる理由もないはずなんだが…」

「提督…姉様のためです…受け入れてください」

「少しは助けようよ…」

そんな俺の願いもむなしく金剛に翔鶴に何をされたのか聞いてきた。俺はキスされて襲われ掛けたとこまではなす。すると金剛達の表情が一変。俺と真逆の方向を向いて何やらひそひそと話している。すごい話している内容について気にはなったが別にそこまでして聞きたいわけではないし聞くとしても面倒だから別に聞かなくてもいいや。

だがその面倒くさいという思いが伝わったのか金剛達は何やら話が終わったらしく俺の方へ向き直ると口を開いた。

「よければお相手してm…」

「断る」

その一言で金剛型全員轟沈。その後はほぼ話すこともなく執務に没頭した。霧島と榛名は普通に手伝ってくれているのだが金剛と比叡がまるで沈んだ艦のように意気消沈していた。縁起でもないことを言ってしまったので少し後悔したがもう遅い。発した言葉は取り消すことは出来ないのだ。

だが何故か金剛だけすぐに復活して「ならば力尽くデース!」といいながら俺に飛びついてきた。もちろん俺はよける。そして金剛は後ろの提督机に激突した。きゅ~とまるでゲームのように倒れていく金剛はちょっとかわいらしかった。

そんなこんなで執務を終えて俺はある人物だけを部屋に残した。それは比叡だ。金剛、榛名、霧島は何かと縁が出来ているから良いのだが比叡と面と向かって話をした覚えがない。別にする必要もないのだがわざわざ戻った後に呼ぶのは俺も比叡としても面倒くさいだろうと思い残して話をしようと思ったのである。

俺は話の初めに一番気になることを聞いた。それはこれからの艦隊運用に関わってくるそこそこ重要な話だ。

「比叡、俺のことは嫌いか?」

金剛型で聞いていないのは比叡だけだったので同じように質問した。すると比叡は少し悩んだような顔をしていたがすぐに向き直っていった。「別に嫌いではありませんよ」と。まずこれだけで嬉しいと感じたがそれに続けて「ですが…好きかどうかと言われたらそうとは思いませんね」とも言われた。まあ別に好きになってもらう必要はない。一緒に仕事をする上で仲が悪いのでは話にならない。そうなってしまっては俺の面倒くさがりな性格が仕事中ににじみ出てしまう。それは艦娘達の士気を下げて俺に仕事が回ってくるようになると言うことでもある。それだけは避けたいのだ。

「わかった。もう戻って良いよ」

「わかりました。失礼します」

比叡を部屋から出すとそれと入れ替わりのように金剛が入ってきた。金剛は何やら紙のような物をもっている。その封筒はなにやら券のような物が入っているようだった。金剛はそれを俺の机の上に置いて「今週末Movieを見に行くデース!」といってきた。今やっている映画はほとんど恋愛物かホラー物だったのを覚えている。金剛にとってはどちらに転んでも良い結果しか残らない。正直外に出るのが面倒くさい上にその後にためた仕事をやらないといけない二重の面倒くささがある。だが誘われたのもせっかくの機会だし最近は金剛達も働きづめだったしお誘いに乗るとしよう。

「ヤリマシタ」

「加賀かお前は」

すごいウキウキしている金剛。

「それって俺と金剛二人だけか?」

「ハイ!二人だけデース!」

「…ちょっと待て…?まさかとは思うがその最後に俺を襲おうなんて魂胆じゃないよな?」

金剛は「違いマス!」といっているけど顔が引きつっている上に冷や汗のような物をかいているのがバレバレだ。行くときは少し気をつけないといけないとため息をつくのであった。

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