ちょっと面倒くさがりの提督と艦娘たち   作:Koki6425

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暴走

散々飲んだせいで二日酔い。頭が痛くて執務に集中できないので赤城と霧島に執務を任せて俺は寝ることにしたのであるが今現在寝れない状況にある。その理由は今俺の布団に入っている物体が原因だ。

布団にいるのは金剛と榛名。昨日の夜飲んだせいでこの二人も二日酔いをしたらしい。それに加えて俺に対してあれだけの醜態をさらしたことが恥ずかしかったのだろう。でもそれなら俺の寝室にいないで自分たちの部屋に戻れば良いと思うのだが…何故そうしない。金剛に関してはなんとなくだが理由がわからないでもない。榛名の方がわからない。

二人を起こすわけにはいかないので布団がない時用にもってきたもう一つの布団を床に敷いて寝ることにした。でもほとんどベッドに占領されている上に机とかもあるので布団を一つ敷けば本当に何もできなくなる。でも今は眠気の方が強いので仕方なく狭いスペースに布団を敷いて横になった。

だがここで再び問題発生。寝付けないのだ。いつも使っている布団ではないので何故か寝付けない。休むことができないと感じた俺は仕方なく私室から出てきた。入ってから出るまでものの数分しか経っていないため2人にはすごい心配された。何枚か書類を受け取り執務をする。だがしかしやはり集中力は続かず度々うつらうつらすることがあった。そのたびに2人にたたき起こされている。別にたたき起こす理由はないのだがそれをとやかく言う理由も俺にはない。

しばらく執務をやり出来る限り終わらせた。まだ少し残っているが午前中はこのくらいで良いだろう。執務を辞めて二人にも午後のことを話し執務室を出てもらった。少々話さないといけない内容が艦娘にもなるべく秘密にしたいものなのだ。

「こちら鎮守府の提督です」

『少々お待ちください』

受付嬢の応答の後しばらく待つ。そして電話の相手が出た。相手は元帥だ。

「わざわざお時間を割いてくださりありがとうございます」

『気にするな。それで…おそらくだがそこ鎮守府の事情についてだろう?』

「はい、もしよろしければ以前のこの鎮守府の戦績や状態。前の提督の素性とかを見せてほしいのです」

『…素性に関してはプライバシーがある。調べてわかった状態だけ送る』

そう、元帥に問いたかったのはこの鎮守府の状況だ。それらがなければ俺がこの鎮守府でやっていくことは出来ないと思っている。そして口頭で軽く説明を受けた。10分ほど話をして、そろそろ電話を切ろうかと思っていたとき元帥が今度は話題を持ち出してきた。

『ところで君は奥さんとかはいるのか?』

俺は独身だ。それにまだ二十歳にもなっていないのに結婚するわけ無いだろう。それくらい元帥が知っていてもおかしくないはずだ。

『君にはまだ早いかも知れないが「ケッコンカッコカリ」というのを知っているか?』

ケッコンカッコカリ。元帥曰く、艦娘との絆を深めて練度を高めろという。その名の通り結婚(仮)。その艦娘と提督が民間に戻ったとき婚姻しているものとして扱うものであるらしい。戦略や安全のためにケッコンカッコカリをする人たちもいるそうだが俺はそれを聞いて少し嫌になった。もしかしてという状況でも重婚はしたくない。不倫という扱いを受けたくないのだ。まずそんなことをするつもりもない。

『まあ決まったら教えてくれ』

そう言って電話は切れた。いくつか他にも聞きたいことはあったのだが、まあメインの話が聞けただけでも儲けものだ。受話器を置くと、俺はすぐに昼食を食べに行った。

軽く食事を済ませた俺は執務室へ戻り執務を再開する。本当なら今日の秘書官は霧島だけだったのだ。霧島には金剛達とお茶会でもして休憩してこいと言ってあるので暫くは来ない。あの二人布団直さずに出て行きやがったよ。

執務をしている間俺は考え事をしていた。それはここの艦娘達のことについて。俺が来る前の提督のことについて色々聞きたいところだけれどそれは昔のトラウマを掘り返すようなものなのでなかなか聞き出せない。赤城や榛名がそうであったのだから他の奴だってそうなるはずだ。話してくれそうな奴と言ったらおおらかな奴。龍驤とかなら教えてくれそうなものではあるがどんな奴でも心に闇を抱えている。傷口に塩を塗って開くようなことはしたくない。

「なんや、えらく重苦しい雰囲気やな」

「!?」

扉の前にいるのは龍驤だ。いきなり現れたのでびっくりして立ち上がる。

「そんな驚かなくてもええやないか」

用件は何かと思ったら暇だから執務でも手伝おうかと思ったそうだ。正直なところ他の提督の話を聞いているからわかるがあまり龍驤が執務をしている光景を知らない。だから別にする理由はないのである。まあ確かに量が量なので手伝ってもらおうかと思ったけどやはりそこで俺の心が勝ち、手伝わなくて良いと言った。それに今は見せられない書類に手をつけていた。

龍驤は「そうやな。それじゃあまた来るわ」といって執務室を出て行った。本当に何しに来たんだ。まあ龍驤を返してから再び執務に向き直る。だが神様は集中させてくれない。また誰か入ってきた。正直疲れた。今度は誰だと目を向けると榛名が立っていた。

しかしその目は俺の知る榛名の目ではない。あの時感じた得体の知れない恐怖がまた襲ってきた。なんか危険を感じた俺は執務を取りやめる。本当にどうしたのか聞いてみたかったけど恐怖に打ち倒され俺は開いた口が塞がらない状態だった。その間にも近づいてくる榛名から俺は少しずつ離れようして後ろに下がる。

手を前に出し止まるように指示するが榛名は無視して近づいてくる。

「は、榛名…」

「ハヤク…ハヤクコロサナイト…」

本当に危険を感じた俺は走ってその場を去った。

「アアアアアアアアアア!」

とんでもない絶叫とともに俺を追ってくる榛名。確実にころされる未来を悟った俺は同じように走って逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はとある艦娘の部屋へと逃げ込んだ。そこは赤城が普段生活している部屋だ。いきなり入ったので散々言われたが事情を説明。金剛達にも協力してもらうため赤城に金剛達を呼びに行ってもらった。俺がそのまま金剛型の部屋に行ったらどうなるかわからないからだ。酔っ払っていたことに関してこうなっているのでは無いと思う。

「どういうことですか…」

「それは見てもらった方が速いと俺は思う。しばらく待ってくれ…もう少しで榛名が来る」

その時扉を叩く音。扉から入ってきたのは赤城…ではなかった。なんと艤装をつけた榛名だった。こんな狭い部屋に入ってこれるはずはなかったのだがなんと榛名、部屋の扉を模擬弾で撃って破壊した。破壊して艤装が通れるくらいになって榛名は中へと入ってくる。ここにいるのは危険だと判断した俺はその場を去った。

そしてなるべく艦娘達が少ないところまで来た。そこは倉庫だ。ものは多いが相手の暴発で自滅に追い込める場所だ。人間では艦娘と深海棲艦に勝つことは出来ない。同じ力を持つもの同士で戦わせるか自滅させるという方法でしか人間達に勝ち目はなかったのだから。

榛名が工廠に入った時俺は扉を閉めた。鍵を掛けて外から誰もは行ってこれないようにした。確かに人間では艦娘と深海棲艦に勝つことは不可能。だが逆に言ってしまえば艦娘と深海棲艦は互いを殺し合うことが出来てしまうという意味でもある。目の前の榛名が本当に榛名なのかは今はどうでも良い。この状態になった理由もなんとなく想像できる。別に俺がころされようが文句は言えないだろう。助けられる身かも知れなかったのに助けなかったのは事実だし、その前の提督は俺と同じ人間だ。俺の目的のためにも今俺は一人で榛名と話をしなければならない。

「榛名!落ち着くんだ!」

叫ぶがやはり反応がない…というより無視している。今の榛名の行動理念はおそらく「人間をころす」こと。深海棲艦が艦娘を沈めるのを目的としているのと同じだ。破壊衝動などに支配された生物ははっきり言って生き物ではない。俺がどこに隠れているのかわからないので榛名はでたらめに模擬弾を撃ってくる。たとえ模擬弾でも人間に当たれば簡単に吹き飛ばせるほどの威力を持つ。当然だ。艦娘相手に考えられたものだから。

だが俺はここで大きな過ちを犯した。倉庫に連れてきたのは自爆させるため。しかしよく考えてみれば榛名はその押さえ込んでいた負の感情を抑え込めなくなっているだけで中身は本当は榛名だと言うこと。いくら榛名でもこれだけの物資が積まれているところでその崩壊に巻き込まれれば無事では済まないと言うことだ。それに鍵を掛けているから簡単には抜け出せない。彼女の相手をしていれば鍵を外す時間はない。

頭を悩ませ他の解決法を探すが全く浮かばず万事休す。その通りついに倉庫の崩壊が始まった。天井が落ちてきたりものが落ちてきたりと俺も危ない。

ふと天井に目をやると照明が落ちてきた。しかもそれは榛名の頭上。俺が今隠れている場所の天井も支えがなくなりまとめて落ちてくる。さっきより強い死を確信して俺は飛び出した。榛名の格好の標的ではあるがそれよりは彼女のことが心配だった。上に摘まれていた資材もまとめて降ってきた。

「榛名!」

俺は咄嗟に榛名に手を伸ばす。つかんで引き寄せるとすぐにかばった。艤装付きなのでダメージは少ないだろうがそれでも守らない男はいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっぶねえ…」

俺たちのところに落ちてきた柱がちょうど人の字のように支えになって天井を止めていた。だがそれもそろそろ崩れそうだった。逃げようかと思ったけど周りががれきで埋もれているため身動きが取れない。それに加えて俺の足にものが落ちてきて軽く打ってしまった。歩けるには歩けるが走って逃げる余裕はない。

「んん…」

榛名が起きたようだ。死ぬことも覚悟の上での行動。

「て、提督!?これは一体…」

「まさか覚えていないのか?」

それではさっきの榛名は一体何なのだろう。とりあえず元に戻ったのならよかった。とにかく万事休すなのは変わらない。榛名の艤装で辺りを吹き飛ばすことは出来るがそれだと俺も吹き飛ぶ羽目になる。仕方ないからこのまま誰か来るのを待つしか無い。

それまでの間榛名に何があったのか聞いてみることにした。だけどやはり彼女は何も覚えていないらしい。まあこれ以上聞くのも酷かと思って聞かないことにした。

どこからか声が聞こえてくる。金剛の声だ。俺たちはとりあえず叫んで位置を知らせる。そして金剛達のおかげで俺たち2人は無事脱出することが出来たのである。それから榛名を提督室(執務室)に呼び、何人かで話をする。

混乱に加え何があったのか覚えていないのはとても不可解な現象だったが、まず無事だったことを祝った。そして榛名の話は続く。

榛名曰く、たまに意識がふっと消えることがあるらしい。そして意識を取り戻すと周りにあるのはただ崩壊した景色のみ。さっきもそうだったらしい。最初は夢でも見ていたと思っていたらしいが現実だと言うことを今知った。でもこれが続くとなれば取り返しのつかないことになってしまう。しばらく榛名には混乱していることもあるだろうから休むよう命令して自室に戻した。

とりあえず深い内情を知っていそうな艦娘。赤城や霧島、加賀といった何人かに残ってもらい話を続けることにした。彼女らに知っている限りの情報を教えてもらいその現状を知ることが出来た。だが解決策はあまり思いつかず時間だけが過ぎていった。赤城も訓練をしたいだろうから帰すことも考えたけど内容が内容だし、赤城本人が「私も当事者なので」といって引き下がらなかった。

会議をしている間本当にこれでいいのかと迷う俺であった。


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