ちょっと面倒くさがりの提督と艦娘たち   作:Koki6425

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空母の反乱2(解決)

「提督、本日秘書官の翔鶴です」

今日、私は秘書官で提督の手伝いをすることになっている。何人かを試しに秘書官にしてみたらしいのだけど未だに緊張させたり、仕事はしていても明らかな敵意を見せている場合があるそうだ。金剛型の4人に関しては以前の出来事が理由で打ち解けてくれるようになったらしいのだがそれ以外で敵意を見せずに話をしてくれるのは駆逐艦の一部と赤城先輩だけだという。

そして昨日の午後提督に呼び出され、明日。つまり今日の秘書官をしてくれと頼まれた。今はそのために提督室の前に立っている。基本返事があるまで入らないようにしてくれと言われている。それに加えて緊急の場合は呼び鈴を何度か叩いてくれとも言われていた。それを試してはみたのだが反応がなかった。

仕方が無いので多少強引ではあるけれど扉を叩いて開けてみようと思い手を掛ける。すると鍵は閉まっていなかった。前の提督がつけた鍵はそのまま使わず新しく鍵を付け替えたのだという。だがその鍵が開いていると言うことは提督はすでに起きていると言うことだ。

「提督、入りますよ」

私は手を掛け扉を開ける。すると中に存在した異様な光景に私は口を押えてしまった。何も見たくなくなるような光景であった。

壁に打ち付けられている提督に両手を縛られて身動き一つ取れない状態で倒れている榛名さん。昨日の秘書官は彼女であったのを覚えているが何故こうなってしまっているのか全く見当がつかない。この状態の彼らを放っておく訳にもいかず、すぐに救出することにした。榛名さんの手の布のようなものを外すとそのまま榛名さんは崩れるように倒れた。そして次に提督の手のひらを貫く少し太めの2本の釘を引き抜く。榛名さんと同じように倒れていく提督を私はすぐに支える。

胸に耳を当てるとまだ心拍があった。それに息もまだある。だがとても細い。急がないと間に合わなくなるのはよくわかっていた。

何度か習った応急処置手当のおかげでなんとか一命を取り留めることが出来た。途中で部屋に入ってきた金剛さんの協力もあって提督は無事病院へと移送された。以前の毒物混入事件の時も金剛さんの力もあって解決したようなものだった。

そして再びこの事件について鎮守府内の会議が開かれる。私は第一発見者として話を聞かれた。だが私は何も知らないので知らないとしか言えなかった。これ以上憲兵の人に来られるとこの鎮守府の評判もそうだが提督に迷惑がかかってしまう。そう言うこともあってか長門さん達の案で憲兵への報告はしないことになったのだけれど…。

犯人はすでにわかっていたようなものだった。釘が刺さる前に何かが刺さっていたのがわかった。そして刺せる、というか貫けるものと言ったら矢くらいしか思いつかない。それに昨日の会話で明らか不自然な発言をしていた人がいた。それは…

「話していただけますね?蒼龍さん」

今目の前には拘束された蒼龍さんがいる。何故拘束されているのかというと瑞鶴の進言でその可能性が高かったのと榛名さんの発言によってそれが確証付いたとのことであった。

蒼龍さんは最初はなにも話さなかったのだが赤城さんが問い詰めていくと少しずつ話していった。彼女曰く、「恨みを晴らすため」だったらしい。確かにもっともな動機であった。蒼龍さんは以前の提督に散々辱められていた。私もその被害者でこの鎮守府に在籍している艦娘の3割かそれ以上はその被害を受けている。気持ちはわからないでもなかった。私も以前何度も提督を殺そうと考えた。だが今の提督に罪はないのにその憂さ晴らしをするのは非人道的というものだ。昔のこととして受け入れることは出来なくてもその怒りを抑えることは出来た。蒼龍さんは何度も待遇改善を願って提督に進言していた。そのたびに被害に遭っていたと考えれば相当な回数であることは容易に想像できた。

榛名さんはこの話を聞いたら蒼龍さんを殴るどころか殺そうとしてしまうだろう。今いなかったことがとても幸いであると言うべきだろうか。…などと安心している場合ではなかった。榛名さんではなく金剛さんがその怒りを抑えられていなかった。蒼龍さんに殴りかかろうとするのを比叡さんと霧島さんが抑えている。それに追加で長門さんが割って鎮めるようとしていた。

「あんな生き物の風上にも置けないような奴を殺したって何の問題も無いでしょう?」

この発言が金剛さんの怒りに火に油を注ぐような結果になってしまった。彼女は抑えていた比叡さん達を突き飛ばし、さらには目の前にいたはずの長門さんを背負い投げ、蒼龍さんに向かって歩み寄っていく。金剛さんの手は強く握りしめたせいで真っ赤になっていた。彼女も殺すほどまではしないにしても散々痛めつけようとしていた。

金剛さんの手が振りかぶられて蒼龍さんに向かっていく。みんなが手を伸ばしてもギリギリ届かない距離にいて誰も助けることが出来ない。蒼龍さんはついに目をつぶった。私達も殴られる瞬間を見たくないあまり目をつぶってしまった。

だけど殴られた音がしなかった。恐る恐る目を開けてみるとそこには…。

「何をするデース…榛名」

榛名さんが金剛さんの手をつかんでいた。蒼龍さんまで後数cmの距離で止めていたのである。

「抑えてくださいお姉様。確かにお気持ちはわかります。ですが彼女を裁く権限は私達にはありません。それに艦娘を艦娘が傷つけては国家反逆罪と見なされる可能性があります」

「離しなさい榛名!それを言うならこいつだって同じデス!」

「うるさいぞ…お前ら…ここはそう言うことをするための場所じゃないぞ」

その声に私を含む全員がその声の方向を見た。なんとそこには提督がいるではないか。両手に包帯を巻いて、足にはギプスのようなものをつけている。服は血のシミがついた軍服だった。

皆がどうしてここにといわんばかりに提督に歩み寄る。金剛さんに至っては抱きつく始末だ。蒼龍さんはというと確かに殺したはずなのにと言う感じの驚きの表情だった。

提督は金剛さんを榛名に預けると蒼龍さんの方へと向かっていった。そして彼女の前に立つと軍帽を投げ捨てて彼女の前で―土下座した。その光景に誰もが驚いた。蒼龍さんでさえ開いた口が塞がっていない。

「すまなかった。だが後1度だけでいい。俺にチャンスをくれ!」

「」

「もちろんいやなら断ってくれて構わない。許してくれとも言わない。前の提督にどんな仕打ちを受けたかは俺には想像できなししたくもないが…それでも後1度だけでいいんだ!」

蒼龍さんは目尻に涙を浮かべていた。やっと自分が何をしていたのか理解したのだろう。金剛さんは呆れたようにため息をついていた。提督の指示で長門さんは蒼龍さんの拘束を外すと提督は「ありがとう」と一言言って蒼龍さんに再び頭を下げていた。

蒼龍さんも同じように、いや提督以上に頭を下げていた。金剛さんもこの状態で殴るのは非常識だと思ったのかただその状況を見てうつむいていた。

ついには泣き始めた蒼龍を提督はまるで小さい子をあやすかのように、だがそれでも抱き枕を抱きしめるように強く、そして優しく抱きしめていた。私を除く艦娘はこの情景を見て何を思ったのだろうか。蒼龍さんの気持ちの整理がついてこの鎮守府も少しずつではあるけれど復興へと向かっているように見えた。

あの提督が着任してから今回で二回目となる殺人未遂事件。一応上には報告したが赤城さんのパイプつながりと提督の懇願書により蒼龍さんの処分は提督に一任されることとなった。前の提督のこともあり大目に見てくれていたのかも知れない。

だけど提督は蒼龍さんに何か罰を与えるようなことはしなかった。それに対して金剛さんが不満そうな顔をしていたのは新しい。

「第二艦隊、ただいま帰投しました」

「お帰り、守備がよくてよかったよ」

日常会話による報告でみんなも少しずつ和むようになっていった。でも日に日に提督は金剛さんに執着されていっているような気がした。

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