レ級亜種の島開拓にっき   作:そうなんす

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探索・拠点・妖精さん

 島には、十数分でたどり着けた。割と早かったのは先に出た偵察機がしっかりとナビゲートしてくれていたからだ。

 

 島は、上下に二つ浜辺があり、他はうっそうとした森で覆われた小さな島だ。本当に小さくて、金持ちが別荘を建てでもしたらすぐに土地がなくなってしまいそうなほどだ。嵐が来たら沈みそうですらある。

 

 ところで尻尾も艦載機も俺の意志と関係なく動いているのだが、これでいいのだろうか?いやまあ、お手本がいないから直しようもないんだけど。それに一人じゃないって分かると少し安心できるっていうか。本人には絶対言わないけど(ツンデレ)。

 

「おじゃましまーす…」

 

 恐る恐る海辺から砂浜へと上陸する。砂浜は人の足跡は一つも付いていない。人が住んでいそうな痕跡もなく、俺は安心して大地に立った。

 

「…狭いなー」

 

 島は本当に狭かった。多分、周囲をぐるっと歩いても20分はかからないと思う。それだけの狭さだ。

 

『がう』

「だめ」

 

 ヤシの木に登るデカい蟹を指して涎を垂らす尻尾をたしなめつつ、俺は探索を開始した。目指すは反対方向にある砂浜の、打ち捨てられた船だ。

 

 砂浜に沿って歩いてみる。何やら色々なものが波に打ち捨てられていた。サンダル、空き缶、流木に中身の入った瓶。ロープに異臭を放つ海藻の腐った姿に、ソレにたかるハエ。ぶっちゃけ現代人にはキツイ。

 

 って、さっきからなんかもしゃもしゃと異音がするんだが…。

 

「…って、尻尾ちゃん?何してるのかな?」

『もぐもぐ…?』

「いや、こて、じゃなイよこて、じゃ!何食べてるんだ!ぺっしなさいぺっ!」

 

 後ろを見て俺は目を見開いた。何と尻尾がサンダルや空き缶といった俺が見て回ったゴミをかみ砕いて飲み込んでいたのだ。君本当に何してるの?何してるの?

 

 こて、と首をかしげて顎を動かす尻尾にずびしと手刀を叩きつけるも…ちっ、ダメか。こいつ固い。ノーダメージだし、逆に俺の手が痛い。

 

「ああもう、病気になったらどうすんダ…っていうか、俺とお前繋がってるんだから、本当変なの食べるの勘弁しろよ…」

『ふるふる』

 

 尻尾が首を振って、俺の頭にイメージを送ってきた。こいつ、直接脳内に…!?

 

 送ってきたのは尻尾の機能だ。何と尻尾は艦載機収納、単純な倉庫、資源の収容、ゴミを分解して資源にする、などといった機能があるらしい。なんだこいつ万能かよ。

 

 倉庫に関しては、俺が背負っている小さな背嚢が使われており、見た目よりもずっと多く入るらしい。入れるときは尻尾に食わせればいいそうだ。出すのは俺でも構わないらしいが。

 

 まあ、大丈夫そうなら大丈夫でいい…のか?まあ、俺の身体の一部って考えたら抵抗あるけど…あんまり感覚ないし、放っておこう、うん。

 

 ふむ、こっちの浜辺はあらかた見て回ったかな?それじゃ早速森の中に入るか。

 

「何かいたら尻尾、守ってくれよ」

『!』

「やめて!」

 

 任せろーバリバリ―、って感じで応えてきたのでツッコミを入れて、俺は森の中に足を踏み入れた。

 

 森はうっそうとしてはいたが、足の踏み場がないレベルじゃない。それに尻尾が頭を伸ばして茂みを掻き分けたり食ってくれたりしてくれているので、楽できている。

 

「ありがと」

『くー』

 

 なんだその鳴き声。俺の尻尾の愛嬌が留まるところを知らないんだが。

 

 と、森の中は…うん、まあ、森だ。それ以外の何者でもない。うっそうとした森だ。

 

 だが、渡り鳥が運んできてくれたのか、様々な植物が生えている。みかんっぽい実が成っていたり、ヘビイチゴやとげとげした実なんかも成っていた。

 

 むしゃむしゃ食べた尻尾がこれは食べても大丈夫とイメージを送ってきたので、俺はヘビイチゴっぽいをの一つつまんで食べてみた。甘酸っぱい。

 

「…って、アレなんだ?」

 

 俺はふと森の中央当たりが広場になっていることに気が付いて、そちらに向かった。

 

 すると、そこにはぽっかりと木が生えていないスペースがあって、倒木がいくつか倒れていた。さらに、端の方には池もあった。

 

「こんなところに池?」

 

 なんか汚そう、と思いながら近づくと、意外と透明度がある。よく見てみると水底の砂が何かに巻き上げられているのが見えた。これ、もしかして湧き水?

 

「こんな小さな島に湧き水って出るもんなんだ…どウだ?」

『…グッ!』

 

 b、だって。俺は手を洗って顔を洗って、そして手のひらに水をためて飲んでみた。うん、冷たくておいしい。まさか、こんな森の中で綺麗な水を手に入れることができるなんてな。

 

「拠点はこの島で良さそうだ」

 

 俺はすっかりこの島を気に入っていた。何よりもこの湧水を発見できたのが大きい。もうここ以外の島じゃダメなくらいだ。

 

「さて、それじゃそろそろ行くか」

 

 まだ探索していない場所は多い。俺はある程度喉を潤わせて、また歩き出した。

 

 少しすると、すぐに浜辺に出た。最初に上陸した浜辺とは反対方向の浜辺だ。

 

 そしてすぐに捨てられた船を見つけることができる…捨てられたっていうか、難破船かこれ。人の気配はなさそうだが…。

 

 俺はゆっくりと浜辺を見渡しながら船に近づく。やはり誰もいない。船は…結構デカいしごつい。大きさで言えば大型のクルーザーってところか。

 

 これ、中に誰かいないよな?

 

 艦載機を飛ばしてみて上から見てみるが、人の気配はやはりない。ほっとしたような、残念なような、だ。

 

 さて、上までは結構距離がありそうだが…しかし、今の俺は戦艦レ級の身体。身体能力は人間の頃とは比較にならないほど上がっているはず。こんな段差、一っ飛びだ、多分。

 

「とうっ」

 

 ジャンプしてみたら、普通に届きました。レ級の身体、しゅごい。

 

 武装も軽いし、多分輸送船なのかな?艦これの世界で機銃一つだけってのは不用心すぎるだろうしな…いや、逆に艦これの世界だから、なのか?確か深海棲艦って現代兵器通用しないんだよな?

 

 まあなんにせよやはり人はいなさそうだ。それに何もない。ただ、雨の溜まり具合や汚れ具合から言って、割と時間が経っている可能性がある。

 

 船室に入るが、もぬけの殻。そこからはしごで下に降りれたので降りてみる。

 

 中はトイレとシャワー室に簡易キッチン、それに…。

 

「…ここは、部屋か?」

 

 恐らく住居スペース。ベッドと机、ソファ。

 

 そして、丸い窓が見える位置に机があり、その椅子には…。

 

「…うえっ」

 

 顔をしかめた。それは…それは、死体だった。

 

 …初めて見た死体だが、ぶっちゃけいうと衝撃は割と薄い。ただ、死体そのものよりも、この船に死体があった、という事の方が少し不気味に感じられて、俺は思わず尻尾に抱き着いてソイツに寄った。

 

 白骨化しているし、肉も残っていない。ずいぶんと前に死んだのだろう。

 

 机の上には本が数冊、そして航海日誌とラジオがあった。とりあえず航海日誌を手に取って読む。日本語だ。

 

『この世界にあのくそったれが現れて海を我が物顔で歩くようになってからもう3年の月日が経った。未だに奴らの猛威は鳴りを潜める事は無く、俺の妻のような被害者を毎日のように増やしまくっている。国は何をやっているんだ!?どうして海軍の奴らは動かない?あいつらが暴れる事で一番に被害を食うのは、俺たちのような海辺に住む人間なんだぞ…』

 

『日本を出て、ヨーロッパに行くことにした。日本は島国で危険だし、海も空も奴らに掌握されたんじゃあ未来はない。だからまだ奴らの動きが活発じゃない今のうちにこんなしみったれた島から出てって、大陸の中心辺りに住むのが一番得策なんだ。幸い血縁がドイツにいる。彼を頼みにするつもりだ…出発は明日、船長は俺、船員は俺一人だ。知り合いは誰もが止めてくれたが、日本にいても結果は同じ事だ。俺はこの航海に人生をかけるつもりだ』

 

『出発当日。俺は笠井親子に見送られて旅立った。坊主は今年で8歳だというのに、大泣きした。まさか俺にあそこまで懐いていたとは気づかなかった…少し照れ臭かったが、頭を撫でてやった。俺は子供が嫌いな筈だったんだが…我ながら単純すぎる。笠井の野郎は俺に別れを告げてきたが、俺としては今生の別れにするつもりはない。この調子だと後数時間で中国に着くだろう。俺は~~~~、—————なんだ、これは…何が起きている!?』

 

数ページ間が空く。

 

『だめだ、嵐に遭った…完全に遭難した。もう日本には戻れないかもしれない。ここはどこだ?レーダーが全く効かないし、無線も応答なしだ。畜生、食料も心もとなくなってきたし、深海棲艦の奴らも船を嗅ぎまわっていやがる…俺はこんなところで死ぬのか…?』

 

『咳が止まらない…霧を吸い込んでから、肺が焼けるように痛む。これもあいつらの攻撃の一つなのかもしれない…』

 

『肺がかゆい…飯がうまい…』

 

『かゆ…うま…』

 

 ここでいったん終わり、しばらく白紙が続いて最後のページ。

 

『妻に会いたい…』

 

 それが最後だった。後は白紙だ。

 

「…やっぱここ、艦これの世界だったのか…それにしても」

 

 俺は気の毒に思った。この人の境遇は少しは見えてくる。悲しいが…しかし、もう死んでしまった後だ。この人も転生してまた新たな人生を手にしていると信じよう…まあ、俺の場合は転生かどうか分からないんだが。

 

「尻尾、この人を運ぶから、手伝ってくれるか?」

『!』

 

 ラジャ!と尻尾は器用に人骨をその背に乗せてくれた。俺はゆっくりと崩れないようにその人を運び出すのだった。

 

 外に簡易的な墓を作り、供養すると俺はまた船の探索に戻った。

 

 そうそう、あの人にはもう報告したが、この船は俺が拠点として使う事にしたのだ。

 

 何せこの船が手に入れば、屋根のある生活が手に入るかもしれない。それにうまくいけばトイレやシャワーもそうだ。これを放置しておくなんてできない。それに、勝手な想像だが、ここで船が朽ちていくよりも、活用してあげた方があの人への供養になるんじゃないかと思ったのだ。

 

 さて、はしごを降りてさらに下、船底に降りた。

 

 船底は倉庫になっているようで、様々なものが置いてある。しかし中でも俺の目を引いたのは。

 

「…これ、もしかして燃料か?」

 

 緑色のドラム缶5個。触ってみると中身は並々と入っている。尻尾がクンクンと鼻を鳴らすと、これはまさしく燃料ですね!といった感じの反応が返ってきた。

 

 良かった。一応心配はしてたんだ。深海棲艦になってから、燃料とかの補給必要なんだろうな、と。だがひとまず安心だ。

 

 尻尾はぐあっと口を開けてドラム缶を上から次々と飲み込んだ。ドラム缶結構デカいのに、当たり前のように一飲みできる尻尾さん凄い。

 

 そういう訳で燃料が俺の倉庫へと仕舞われた。

 

『燃料:550』

 

 と頭の中に表記される。お前、そんな機能まで…尻尾の有用性が留まるところを知らな過ぎて、もはや俺必要か?と疑うレベルである。

 

 ま、まあいい。後は…缶詰と乾パンか?缶詰は後4,5個でなくなりそうだが、乾パンがかなりの数あった。それとジャムとかの付け合わせも。ただ、ジャムはちょっと怪しい。どれだけ時間が経ってんのか分からないからなぁ…。

 

 他にも飲み水やらなにやらあったが、家具類も多い。タンスにベッド、衣服類。後はコーヒーの粉?俺、コーヒーはミルクと砂糖大量にないと飲めないからあんまり嬉しくない。後は…塩などの調味料。塩や砂糖はともかく他のは腐ってるな。

 

 

 

 

 さて、あらかた見て回って分かったんだが、この船状態が良すぎる。運が良い事に殆どの設備が劣化しているってくらいで、問題は見当たらない。まあ船としての機能はぶっちゃけいらんが、家としては活用できそうだ。

 

 しかし問題が一つ。いつまでもこんな浜辺に置いておいたら、いつ流されるか分かった物じゃない。できればあの湧き水の有った広場まで持っていきたいんだが…いけるかな?

 

『…ウーン』

 

 難しいけどできなくもないって?

 

 尻尾に尋ねてみたら、そんな返答が来た。

 

 燃料を使えば行けなくもない、と。燃料を使って俺の身体能力を底上げして、素手で持っていけば恐らく、と。

 

 まあ…やってみるか?

 

 俺は外に出て、海に突き出した船の尻に海面に浮かびながら手を添えた。

 

「それじゃあ、行くぞ…!」

『!』

 

 キュイィィン、と何かが回転するような音が鳴り、俺の目から光が漏れ始める。同時に俺の身体の奥底から力がぐんぐんと湧いて出てくる。

 

 ズオ…、と船の底が地面と離れていく。そのまま腰に力を入れてさらに上へと引っ張り上げる。

 

「うっ…お…!」

 

 何とか船を持ち上げることには成功。後は持っていくだけなんだが…めっちゃきついんだがこれ!

 

 腕が!俺の幼女特有の細い腕が感覚がなくなるまで酷使されてしまう!

 

 尻尾も手伝ってくれているが、結局船を持つ始点は俺の足腰なので意味はない。ただ腕の負担が軽減されるので助かってはいる。

 

 砂浜に足を付けると、ずぶずぶと沈んでいってしまう。ですよねー。ヤバい、早く固い地面に行かないと。唸れ俺のぷにぷにあんよ!幼女の力を今ここに見せるのだ!

 

『ぐおおおお!』

 

 尻尾さんのテンションも絶好調である。

 

 それにしても燃料の減りが早い。さっき『550』だったのが今はもう『500』くらいに減っている。まあ、それだけエネルギー使ってるんだな。俺も限界超えた力使ってるってのは自覚している。

 

 俺はやっとの思いで砂浜を超えた。後は森の中を進むだけだ。

 

 しばらく歩いて、俺はやっとあの広場に到着。船を下ろして一息ついた。

 

「はー…きっつ…」

 

 腕の感覚がないっていうか、物凄くだるい。持ち上げられないレベルだ。汗もかいちまった。

 

 でもこれで拠点の完成だ。水源の湧き水に家の船。二つがそろって最強に見える。

 

「これでシャワーとかも使えたら良かったんだけどなー」

 

 さっき船に入った時、水道やシャワーは使えないことは確認済みだ。

 

 まあ、それは流石に高望みし過ぎか。

 

『くいっ』

「ん?」

 

 尻尾が口を開いて、何かを吐き出した。艦載機とは違い、地面に落ちる…っていうか、しゅたっと着地する。何だこれは?

 

 人の拳ほどの大きさの…人形?フィギュアでいうねんどろいど的な見た目をしていて、セーラー服を着て髪が黒くて目が赤い。

 

 そいつは俺に向かって敬礼をしてきた。

 

「えっと…?」

 

 もしかしてこいつ、深海棲艦側の妖精さんか?確かに、艦これに登場した妖精さんを悪落ちさせたような恰好をしている。

 

『おれにまかせとけー』

 

 念話!?こいつ直接頭の中に!

 

 それにしても本物なんだ。こんな小さいのにどうして動けてるんだ?俺は笑顔になってしゃがみこんだ。

 

「手に乗るかな?おっ」

 

 手を差し出すと乗ってくれた。か、可愛い…。

 

『きゅるる』

「お、なンだお前?」

 

 尻尾が頭をこすりつけてくる。何だこいつ、いきなり。もしかして嫉妬してるのか?愛い奴よのう。

 

 妖精さんはばっと飛び降りると、船の中にあっという間に入っていってしまった。何をするんだ、と尻尾に聞くと、どうやら船を住みやすいように改造してくれるらしい。

 

 ただ、改造の為には資源が必要だったりするので、明日からはそれ探しがメインになりそうだ。あと、海を探索すると燃料や鋼材、弾薬、なんかも手に入るらしいから、遠征もした方が良いと教えてくれた。

 

「海か…」

 

 出ないのが一番なんだがなー。艦娘とか、姫級とかと出くわしたくないし…。っていうか、何故海の上に燃料やら鋼材やらが浮いてるんだ。これが分からない。

 

「…空が暗くなってきたな」

 

 ふと空を仰ぐと、青空が茜色に代わっていた。これで東と西が分かったな。東の方はすでに夜だ。

 

「ふぁー…」

 

 今日は色々とあって疲れたな。もう寝るか。

 

 俺は船の中に入っていったのだった。

 

 PS.尻尾さんの所為で仰向けで寝れないのが分かって気になります…。

 

 

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