レ級亜種の島開拓にっき   作:そうなんす

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改築・遠征・遭遇

 朝、俺は妖精の声なき声に叩き起こされた。

 

『おはよう!おはよう!』

『とっとと起きろー!』

『いつまでも寝てんじゃねーぞ!』

 

 腹の上にとすとすと飛び跳ねられて、俺はたまらず上半身を起き上がらせてそいつらを見た…って、そいつら?

 

 違和感を感じてじっと見てみると、妖精さんが3匹に増えていた。

 

「…お前ら、どこから来たノ?」

『さあ?』

『知らんな』

『それよりはよ来い』

 

 疑問は疑問のまま。そこまで気にならないしどうでもいいか。俺はとりあえずベットから出ようとして…ぐいっと腰を引っ張られてあえなく失敗した。

 

 俺は腰に繋がっている相棒…ベッドにしがみつき毛布に包まる尻尾に対し、抗議の目を向けた。

 

「…尻尾」

『…』

「尻尾!」

『…!』

 

 後5分!って感じで首をぶんぶんと振る尻尾。

 

 くっ、何が後5分だこのおバカさんめ!っていうかなんで尻尾の癖に朝に弱いんだお前は。良いから来いって!さっきから妖精さん達が肩に乗ってきて髪を引っ張ってきてんだよ!

 

『はよ!はよ!』

「痛い痛い、引っ張んなって!分かった、分かったから…尻尾!起きろってば尻尾!」

『ぐー…』

 

 そんな感じで朝は賑やかに始まったのだった。

 

 

 やっとの事で布団から尻尾を引きはがした後、俺は妖精さん達に連れられてシャワールームまで来ていた。

 

 妖精さんに言われるままにシャワーの蛇口をひねってみたところ、冷たい水がシャワーから出てきた。

 

「おお…水が…出てる!」

 

 これ、もしかして妖精さんが?

 

『すごいだろ』

『妖精さんはかしこいので』

『ほめろ』

 

 妖精さん達がどや顔を披露する。しかし今の俺はそれが眩しく見えてならない。それだけこのシャワー復活は俺にとってデカかったのだ。

 

 何せここは島。昼間は暑いし少し浜辺の方に行くとべたつく潮風に包まれる。かといって森の中にいても泥跳ねや草木が鬱蒼としていてうっとうしい。そんな中で、シャワーのあるなしは正直精神衛生上では死活問題だった。

 

 詳しく聞いてみると、水は湧き水から取っているらしい。熱湯にするには燃料が必要で、やはり遠征が必要とされるらしいが、いやー、風呂の為なら何度だって遠征できるわ。

 

「凄い、凄すぎるぞお前らこのこの!」

 

 俺は妖精さん達を手で掬って頬ずりした。ふにふにの妖精さんのほっぺやふわふわの髪の毛を堪能する。妖精さん達も『きゃー♪』とまんざらではなさそうだ。

 

『ぐいぐい』

「ああハイハイ、尻尾も可愛イよ」

 

 尻尾の感触にも癒されつつ、俺はリビングへと戻った。とりあえず船に残っていた乾パンで朝ご飯を済ませつつ、今日のスケジュールを立てることにする。

 

「って言っても、やっぱ遠征だよなー」

 

 昨日までは自分の燃料の確保だけが目的だったが、妖精さん達のこの船の改造なんかにも資材は必要だ。ぶっちゃけ重要度はさらに上がっていた。

 

 何をするにも鋼材は必要だし、燃料も俺の食事やこの船の活用に必要だ。弾薬とボーキもなんだかんだ必要になる時が来そうだし…まあうん、頑張るとするかね。

 

 そうそう、この船、電気も自前で作れるらしい。燃料を入れる事で発電機を動かすことができるのだ。妖精さんが片手間で治してくれたため、この船には今電気が灯っている。妖精さんしゅごいぃ…。

 

『おい、こっちこいよ』

『こいよ』

 

 食べ終わった時、また妖精さんの呼び出しが来た。ほいほいついていき、はしごを下に降りて船底へ行くと。

 

「うわ、なんだこりゃ…」

 

 俺は目を真ん丸にした。何故って、倉庫だった船底が割としっかりと掃除されていて、要らないものは綺麗に解体されて木材やらネジやらに分けられ、区別されていたからだ。さらにはなんか…こう、変な機械もあった。造船所にあるような奴だ。ちなみに俺は正式名所は知らない。

 

 さらに、船底の真横に扉が付けられていた。開けると、そのまま外に出れるらしい。

 

 それと妖精さんがさらに増えていた。全部数えてみると6人だ。君たち増えすぎじゃない?

 

「倉庫っていうより、工廠だなもう…」

 

 俺がそう呟くと、それで正解!と言わんばかりに妖精さん達が親指を立てた。尻尾はうんうんとうなずいて満足そうに見ている。

 

 まさか、一夜のうちにここまで改装されているとは誰が思うだろうか。何というか、ただただ妖精さん達凄い…。

 

「あいてっ、こら、分かってる、お前も凄いから…」

 

 尻尾が『私が指示したんだからねっ』的な感じで頭をぐいぐい擦り付けてきたので、撫でてなだめてやって、俺は一つうなずいた。

 

「俺も頑張らねえとな…」

 

 ここまでしてもらって自分が何もしないなんて、考えるだけで落ち着かない。

 

 っていうか、多分俺、ここまでで何もしてないんだよなぁ。島と船は艦載機が見つけたし、船を移動させたのも俺だけじゃなくて尻尾がいたからこそできた事だし、妖精さんは船を改築してくれたし。

 

 やだ…俺の功績、少なすぎ…?

 

 このままじゃいけない。妖精さん達と尻尾に『お前要らないじゃん』とか言われた日には…うっ、心が悲鳴を…。

 

「よし、頑張るぞ」

 

 ぞいのポーズを取って気合を入れた俺は、妖精さん達にいってきますをして浜辺へと歩き出したのだった。

 

 

 

 

 浜辺にも色々と使えそうなものは落ちていた。昨日と違い、尻尾が資材も食べれると知っているので今日は遠慮なく食べてもらう。

 

 そうそう、驚いたのだが、艦これの資源は『燃料』『弾薬』『鋼材』『ボーキ』の四種類のみしかなかったが、尻尾が食べれる資源はさらに多い。

 

 『木材』『石材』『ゴム』『プラ』『繊維』といった、細かい分類の資源が回収可能なのだ。さらにはこれらを妖精さん達に渡せば、対応したものを作ってくれるのだという。尻尾と妖精さん万能だな本当。

 

 という訳で、目に見えるゴミ全部食べてもらい、あらかた浜辺の掃除を終えた。最後はまばゆいばかりにゴミがなくなった浜辺がその姿を現した。真っ白で太陽の光が反射されて目が痛いくらいだ。

 

「一石二鳥だな」

『!』

 

 尻尾と共に環境保全に努めた達成感に浸りつつ、次は海に目を向けた。

 

 俺は実際に見た訳じゃないが、尻尾が言うに、資源が海の上を漂っているらしい。どんな原理かは詳しくは分からないが、何でも艦娘や深海棲艦が海面に浮いているのと同じ原理で浮いているらしい。

 

「つまり艦娘の成り損ないが資源として海に浮いているってこと…とか言っテみたり」

『…』

「…あの、冗談だからね?」

 

 だから何とか言ってください、本当は怖い艦これとか誰も求めてないんで本当…。

 

 ノーコメントを貫く尻尾にちょっと怖くなりつつ、俺は浜辺から海へ向かった。足が海面に着水し、そのまま俺の体重を支える。改めてみると違和感バリバリの光景だが、まあ出来てしまうのだから仕方ない。

 

「天気は晴朗なれども波高し…ま、大丈夫か。レ級亜種、出撃すル」

『!』

 

 俺と尻尾は、そのまま島を旅だったのだった。

 

 

 

 

 海の上をぷかぷかと浮かぶドラム缶や木箱を始めてみた時、俺は事前に聞いてはいたもののそのあからさまな姿に思わず目をこすってしまった。

 

「本当に浮いてんだな…」

 

 木箱を持ってみるが、重たい。こんなものが海の上に浮くはずがないのだが…。

 

「まあ、細かい事は良いか。とりあえず尻尾、回収よろしくな」

『!』

「だからやめて!」

 

 任せろバリバリ―、と天丼しやがった尻尾に優しい俺は乗ってやる。

 

「ぐえっ」

 

 尻尾に引っ張られた。

 

 それからはたまに浮かんでいる資材や資源を回収しまくった。ほとんどは燃料や鋼材といった艦これに縁のある資材ばかりだったが、低確率で他の資材も手に入った。

 

 特に、高速修復材と開発資材などはあることは稀だった。確かにここまで探し回ってこれだけ少ないと、ゲームで序盤のうちに枯渇してしまうのも仕方ないと思ったほどだ。

 

 っていうか、これどん位で辞めるのがいいんだろうか?ゲームだと時間指定だったが、そこらへんどうなんだろう。

 

 という訳で、そろそろ夕方になってきたので帰る事になった。

 

 この日一日で得られた材の数はというと。

 

『燃料:700』『弾薬:560』『鋼材:620』『ボーキ:340』『高速修復材:3』『開発資材:2』『高速開発材1』

 

 というものだった。多いのか少ないのか分からん…。まあ、これだけあれば俺と船の分を鑑みても4日は生きていけるだろうというのが尻尾の計算だった。なので上々といったところだろう。

 

 海を行くのも清々しいし、見つけた時はうれしいし、尻尾と話しながらたまに艦載機飛ばしたりするだけでいいから割と楽な仕事だ。少なくとも人間として過ごしていた時よりかはのんびりとした時間を過ごせた。

 

 うん、レ級生も中々いいものなのかもしれない。俺はほんわかと心地の良い気分で島へと帰島するのだった。

 

『うおー、開発資材じゃー!』

『まっていたんだよおまえをよぉ!』

 

 ちなみに、開発資材を持って帰ったと知った時の妖精さん達のテンションの上がり様はすさまじいものだったことをここに記しておく。明日の朝にどうなっているのか、ワクワクするが同時に少し怖いと思った。

 

「ご飯は…燃料と缶詰でいいかな」

 

 そういって燃料を口につけたのだが、味は何故かコンポタだった。謎だがコンポタ好きだし尻尾も喜んでいるからまあ別にいいかと考える事を辞めた。多分、身体が人間だったらこんな事有り得ないんだろうな。燃料の味がおかしいのではなく、今の俺の味覚がおかしいのだろう。

 

 っていうか、今さらっと缶詰食べてるが、缶詰は保存食だし、食べるのはちょっと勿体ないよな…。

 

 仕方ない。明日は少し時間を作って魚を釣ってみることにする。妖精さん達に頼むと、ちょちょいと甲高い音が鳴る謎の機械を作ってくれた。

 

『これを島のなんぽうにあるあさせのいわ場でつかってみな、おもしろいことがおきるぜ』

 

 とのこと。釣りでも網でもなくまさかのガチンコ漁だったらしい。まあ、確かに気を失うだけで捕らなかった魚はまた自然に帰るからある意味自然に優しいとは思うが。

 

 次の日、早朝に言われた通り浅瀬の岩場で試してみたら、確かにその効果は絶大だった。っていうか十数匹の魚が犠牲になった。オーバーキルだろこれ。妖精さんには後で弱体化してもらうように言うつもりだ。

 

 ちなみに、船の外に出た時湧き水のあった池にブルーシートが掛けられていて、『まだみるな』と拙い文字で看板が立てられていた。完成するまでは見ちゃだめらしい。子どもか。

 

 

 

 

 初めての遠征から数日が経った。あれから俺は散歩を兼ねて遠征したり、新しく作ってもらった釣り竿で魚を釣ったりして日がな一日のんびりと過ごしていた。…とは言っても、実はそれ以外にやることが何もないというのが本音だ。

 

 そうそう、湧き水のあった池は立派な貯水場へと改装されていた。浄水もできるらしく、雨水も溜めれるようだ。こうしてダムのように貯め込む事で早々水に困ることはなくなった。シャワーも浴び放題だし水も飲み放題という訳だ。

 

 船はどんどんと改築に改築を重ねていて、妖精さん達も張り切っている。俺はそんな妖精さん達を生暖かく見守るのみだ。妖精さん達がわちゃわちゃ動き回るのを見てるのって癒されるんだよな。

 

「ふぁー…今日はそろそろ帰るかー」

『…~』

 

 尻尾と一緒にあくびをして、俺は遠征を切り上げることにした。この辺りの海図は既に尻尾の手によって造り終わっているらしく、探索もそろそろマンネリになってきた所だった。まあ、数日もあればこの辺りの海域も全部見れるよな。艦載機もあるしなおさらだ。

 

 そろそろもっと遠くに行ってみるかな?とふと思ったが、しかし現状行く意味がない。行かなきゃ生活が立ち行かないという訳でもないし。逆に艦娘や深海棲艦に鉢合わせる可能性が増えるだけだ。

 

 戦いなんて俺には絶対できないからな。はっはっは。

 

 島の方角へと身体を向け、発進する。

 

『…!』

 

 と、この瞬間だった。尻尾がぐいっと顔を上げて、水平線に目を向けたのだ。

 

「どうした?」

 

 俺の呑気な質問に答えず、尻尾は口をがぱっと開けて艦載機を飛ばし、向こうへと送った。その行動を訝し気に眺めていた俺だったが、その直後、俺の目に衝撃的な光景が飛び込んできた。

 

「…マジかよ…」

 

 

 思わずつぶやく。

 

 深海棲艦の艦隊が、俺の目と鼻の先に存在していた。

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