ダンジョンに首はあるだろうか。 作:初陣の通りすがり
鎧甲冑を身に纏ったその者の姿は、正しく異様であった。
背丈は中肉中背。全身を黒い鎧甲冑で包み込み、素肌は欠片も晒すことは無い。左手には同色の盾を備え、その腰元には二振りの剣を帯びている。
ここ、迷宮都市として名高いオラリオでは、そのような姿の者達も珍しくはないが故に、常であれば一瞥して取るに足らぬものとまた前を向いて歩き出すだろう。
だが、彼の者は普通ではなかった。
「おい、なんだあの鎧甲冑⋯⋯」
「知らねえよ⋯⋯だけどよォ、ありゃあ相当強いぜ」
「どんくれえだ?」
「⋯⋯恐らくは⋯⋯第一級冒険者と何ら遜色ねえもんだろうよ」
鎧甲冑のその存在から漏れ出る雰囲気、気配は歴戦の猛者のそれ。能ある鷹は爪を隠すと言うが、あの鎧甲冑は、その実力を包み隠さず全て曝け出していた。
ある者は、その存在の力強さに怯え、ある者は英雄の帰還かと目を輝かせる。
悠然と歩を進めるその存在は、オラリオの街道をゆっくりと歩いていった。
▽
もう、随分と長いこと
宛などない旅だった。アレスの国や極東にも赴いた。首があるとは思っていなかったが、案の定面倒事に巻き込まれこそすれ、私の目的は達成出来ず。無意味だとは思わないが無駄ではあった。
愛馬のコシュタバワーは長いこと呼んでいないし、仲間達も遥か昔に墓の下。主神は行方知れず。だが、スキルによって生き長らえている私が生きているということは、今もまだ首を探して歩き続けているということは、主神に関しては死んではいないということなのだろう。
今更だが、私は冒険者だ。いや、冒険者
迷宮都市オラリオでダンジョンに潜っていたのは過去のこと。当時は最速レベル5到達者として持て囃されてもいたが、それも今となっては古き栄光。私よりも強い冒険者も当然居たし、今の若者達の方が質も良いだろう。私を覚えているのは、
懐かしい顔触れに会えるか。まあ、しばらくの間は滞在する予定だ。だから、すぐに会えなくとも構わん。積もる話もある。酒を片手に⋯⋯な。
だが、それよりも先にやるべきこともある。
私は、十五年の長い旅路を終えて、ここオラリオに帰還した。
これより再開するのは、迷宮冒険譚⋯⋯いいや、違う。
―――首無し騎士の単なる首探しである。
次回からは文章量は三倍くらいで頑張ります。