問題児たちが異世界から来るそうですよ?√G 作:heartz
いや、ほんと、あの、すみませんでした・・・。
二話です。三話は来月中には出します(小声)
1
「今一度名乗り直し、問おうかの。私は”白き夜の魔王”―――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への”挑戦”か?――――それとも対等な”決闘”か?」
魔王・白夜叉。少女の笑みとは思えぬ凄味に、再度息を呑む三人。
”星霊”とは、惑星級以上の星に存在する精霊を指す。妖精や鬼・悪魔などの概念の最上級種であり、同時にギフトを”与える側”の存在でもある。
十六夜は背中に心地いい冷や汗を感じ取りながら、白夜叉を睨んで笑う。
「水平に廻る太陽と.........そうか、白夜と夜叉。あの水平に廻る太陽やこの土地は、オマエを表現してるってことか」
(それに.........)
十六夜はギルガメッシュを除き見る。
(あの景色の中、一人当然の様に顔色を変えなかった。この位当然ってか?おもしれぇじゃねえか!)
しばしの静寂の後――諦めたように笑う十六夜が、ゆっくりと挙手し、
「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」
「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるという事かの?」
「ああ。これだけのゲーム盤を用意出来るんだからな。アンタには資格がある。―――いいぜ。今回は黙って試されてやるよ、魔王様」
苦笑と共に吐き捨てるような物言いをした十六夜を、堪え切れず高らかと笑い飛ばしたのは、白夜叉ではなく、
「く、くくく.........ふふはははははは!あはははははは!」
傍観に徹していたギルガメッシュだった。
「『試されてやる』とは、随分可愛らしい意地の張り方をする。貴様、十六夜と言ったか。良い、実に良い。どれ、貴様はこの我自ら試練をくれてやろう。光栄に思え」
「へえ、英雄王様から直々に試練を貰えるなんてな。勿論楽しませてくれるんだろう?」
「安心しろ。楽しむ暇も失くしてやる」
黒ウサギの冷汗は止まらない。ギルガメッシュは英雄王と言われている他に、暴君としても有名である。
決闘では無いにしろ、『あの』ギルガメッシュである。挑戦の内容がまともであるはずが無い。
白夜叉はギルガメッシュを一瞥すると他の二人にも問いかける。
「して、他の童達も同じか?」
「.........ええ。私も、試されてあげてもいいわ」
「右に同じ」
苦虫を噛み潰したような表情で返事をする二人。
満足そうに声を上げる白夜叉はギルガメッシュに問いかける。
「こう言っておるが、どうするのじゃ?」
「我が裁定するのは十六夜一人で良い。そこの娘二人では実力不足だ。死ぬぞ」
実力不足と言われた耀と飛鳥はむっとするが、最後の一言で素面に戻る。ギルガメッシュの実力を見た事はないが、その言葉は嫌に信憑性があった。
一連の流れをヒヤヒヤしながら見ていた黒ウサギは一旦胸をなでおろす。
ギルガメッシュの言葉通りの意味であれば、最悪の結果にはならないだろう。
「も、もう!お互いにもう少し相手を選んでください!”階層支配者”に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う”階層支配者”なんて、冗談にしても寒すぎます!それに白夜叉様が魔王だったのは、もう何千年も前の話じゃないですか!!」
「何?じゃあ元・魔王様ってことか?」
「はてさて、どうじゃったかな?」
ゲラゲラと悪戯っぽく笑う白夜叉。ガクリと肩を落とす黒ウサギと三人。
その時、彼方にある山脈から甲高い叫び声が聞こえた。獣とも、野鳥とも思えるその叫び声に逸早く反応したのは、春日部耀だった。
「何、今の鳴き声。初めて聞いた」
「ふむ.........あやつか。おんしら二人を試すには打って付けかもしれんの」
湖畔を挟んだ向こう岸にある山脈に、チョイチョイと手招きをする白夜叉。すると体長5mはあろうかという巨大な獣が翼を広げて空を滑空し、風の如く二人の元に現れた。
鷲の翼と獅子の下半身を持つ獣を見て、春日部耀は驚愕と歓喜の籠った声を挙げた。
「グリフォン.........嘘、本物!?」
「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。”力””知恵””勇気”の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」
白夜叉が手招きする。グリフォンは彼女の元に降り立ち、深く頭を下げて礼を示した。
その様子を見たギルガメッシュが小馬鹿にするように口元を緩める。
「孝明の娘の初ゲームにグリフォンか。貴様にしては良い選択だな、白夜叉」
「私にしては、とはどういう事じゃギルガメッシュ。私は何時もナイスな選択をしている」
「ハッ、遂に脳まで腐ったか。生き過ぎるのも考え物だな」
「カカッ、不死を求めた愚王が何を言っておる。貴様は蛇に呑まれて死ぬが運命よ」
二人の目線に殺気が籠る。本人にとってそれが微々たる物であるとしても、黒ウサギ達にとっては呼吸が乱れる程の物であり、引いていた冷や汗が黒ウサギの背中を伝う。
「ちょちょちょ、白夜叉様!ギルガメッシュ様!喧嘩はお二人の時にして下さい!巻き込まれる私達は堪ったものではありません!」
言った。言ってしまった。王を名する二人に言ってしまった。
少し経ってから何で言ってしまったんだと後悔が回る。
「む、それもそうだな」
「ちっ、この決着は次の太陽の主権戦争だ」
この2人の王は意外と話の分かる王らしい。
2
「さて、肝心の試練だがの。おんしら二人とこのグリフォンで”力””知恵””勇気”の何れかを比べ合い、背に跨って湖畔を舞う事が出来ればクリア、という事にしようか」
白夜叉が双女神ぼ紋が入ったカードを取り出す。すると虚空から”主催者権限”にのみ許された輝く羊皮紙が現れる。白夜叉は白い指を奔らせて羊皮紙に記述する。
『ギフトゲーム名 ”鷲獅子の手綱”
・プレイヤー一覧 久遠飛鳥
春日部耀
・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う
・クリア方法 ”力””知恵””勇気”の何れかでグリフォンに認められる。
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
”サウザンドアイズ”印』
「私がやる」
読み終わるや否やビシ!と指先まで綺麗に挙手をしたのは耀だった。彼女の瞳はグリフォンを羨望の眼差しで見つめている。比較的に大人しい彼女にしては珍しく熱い視線だ。
「ふむ。自信があるようだが、コレは結構な難物だぞ?失敗すれば大怪我では済まんが」
「大丈夫、問題ない」
耀の瞳な真っ直ぐにグリフォンに向いている。キラキラと光るその瞳は、探し続けていた宝物を見つけた子供のように輝いていた。隣で呆れたように苦笑いを漏らす十六夜と飛鳥。
「OK、先手は譲ってやる。失敗するなよ」
「気を付けてね、春日部さん」
「うん。頑張る」
その後、耀の踏ん張りと、父親に貰った木彫りの彫刻で、耀は怪我も無くこのギフトゲームをクリアした。
その木彫りには系統樹の刻印がされており、友となった動物の能力が扱えると云う、強力なギフト。伝説のプレイヤー、春日部孝明が作成したギフト。それが強力で無いはずもなし。ギルガメッシュは十六夜と飛鳥に笑顔で駆け寄る耀を見て満足げに頷くのだった。
「次は俺の番だな」
耀とグリフォンのギフトゲームが無事に終わり、十六夜はギルガメッシュに向き直る。
その佇まいは堂々としたものであり、今から王の挑戦を受ける者に相応しい態度だった。
「その意気が実力に見合っている事を願うぞ十六夜」
そしてギルガメッシュは獰猛な笑みを浮かべる。
「貴様には王たる我の試練を受けることを許す。喜べ、貴様は我の目に止まったのだ。その意味を良く考えろ」
そう言うとギルガメッシュは光り輝く羊皮紙、”契約書類”を取り出した。
『ギフトゲーム名 ”バビロンの宝物庫”
・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜
・クリア条件 ギルガメッシュからの攻撃に10秒耐える
・クリア方法 ギルガメッシュに認められる
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
”バビロニア”印』
その”契約書類”を掴んだ瞬間、十六夜の視界は光に呑まれた。
「ここは...」
十六夜が目を開くと、そこには絢爛豪華な剣や盾等の武具。まるで絵本で見るような財宝の山が並んでいた。
「ここは我の蔵の中だ。今此処には我と十六夜しかいない」
声がした方に顔を向ける。そこには煌びやかな玉座に座るギルガメッシュの姿があった。
(てことは、ここにある宝の山は全部ギルガメッシュ王が集めた財宝ってことか)
全ての宝物を集めたと伝承されるギルガメッシュは、その蔵に《財宝》と呼称される物の原典が自動的に納められる。その数はギルガメッシュ自身も把握し切れないほどであり、自動的にその宝物はランク付けされ、保管される。
これがギルガメッシュの持つギフトの1つ”
「さて、我が攻撃を始めてからがこの遊戯の始まりだ。準備は良いか、十六夜」
そう言うとギルガメッシュの後ろに黄金の波紋が広がる。その数は数十にもおよび、目視では数え切れない程だ。
波紋の中からは、剣・斧・槍・矢等々、様々な武具が姿を現す。その神々しさに十六夜は驚愕する。
(こいつは...まさか全ての武具が聖剣や魔剣なんて言うんじゃないだろうな.........)
聖剣や魔剣を直接見たことない十六夜でも、その武器一つ一つが蛇神を殺せるほどの力を持っている事が分かる。
その姿に、十六夜の顔に冷や汗が滲む。
「我の期待を裏切ってくれるなよ、小僧」
そう言ってギルガメッシュは波紋から武器を射出した。
3
(10秒ってこんなに長かったか!?)
ゲームが始まってから約五秒。その間十六夜は飛んでくる武具にズタズタにされていた。勿論防ぐ、回避等の防御はしている。だがそれ以上に量が多い。
十以上の何処から飛んでくるか分からない武器が一斉に襲ってくる。さらに、それらは一つ一つが神をも殺せるかもしれない武具。
殴っても壊れない以上にこちらの拳に傷が付く。最初の三秒でそれに気付き、受け流す行動に出たが、四方八方から飛んでくる武器に技術が追いつかない。
思考だけが加速する。
「そら、さらに追加だ。さあ、避けろ避けろ!」
ギルガメッシュはそんな十六夜を見ながら嗤う。黄金の椅子からは動かず、頬杖をつきながら更に波紋を追加していく。
流石、愉悦部部長は格が違う。
(クソッ!このままだと負けちまう!どうにかしねえと.........)
思考しながらもなんとか猛攻を凌ぐ十六夜。
だがその最中、死角からの攻撃が放たれる。気付いた時には遅く、どうやっても防げる速度では無い。
思考だけが加速し、視界がスローモションになってゆく。
覚悟を決めた十六夜が”何か”を握りしめた。その瞬間、辺りに爆発音と爆風が吹き荒れる。
(これは......なるほど、自ら恩恵を受けながら、恩恵を砕く強力なギフトか...。我の”
爆風を受けながらも、十六夜のギフトをその千里眼で見ようとするギルガメッシュ。だが、その正体は千里眼をもってしても謎だった。
爆風が晴れた中、見えたのは傷だらけで立っている十六夜だった。その顔は獰猛な笑みを浮かべていた。
「10秒経ったぜ、英雄王」
「ククク....。アハハハハハハハハハハハハハハハ!」
十六夜の台詞に対して大声をあげて笑うギルガメッシュ。その姿に十六夜は目を細める。
ようやく笑いが治まったのか、見開いた目でギルガメッシュが十六夜を捉える。その口元はにやけていた。
「良い、認めよう。貴様は我が試練を乗り切った。褒美だ、くれてやる」
そう言うとギルガメッシュは十六夜に向かって手を伸ばす。すると十六夜の体は青白い光に包まれる。
光が収まると、十六夜は自身の内側に力がある事を自覚する。だが、その力を引き出せない。
「その力は何れ貴様を助ける事だろう。今の実力に胡坐をかくな、貴様はまだ強くなる。次に矛を交えるのは貴様が真の英雄になってからだ」
ギルガメッシュがそう言った瞬間、十六夜の視界が光に包まれる。
目を開ければ白夜叉の部屋が目に入った。
「十六夜さん!」
黒ウサギの悲鳴に似た声を聞いて、十六夜は気絶した。
※この二次創作夢小説にはオリジナルギフトが多数存在しております。
最初の設定ではギルガメッシュは二桁(全権領域)だったんですけど、箱庭で云う権能が分からなくて結局三桁(全能領域)になったんですよね・・・。
あ、あとギルガメッシュのコミュニティの名前良いのあったら教えてください。あれは仮の名前です。良さげで、オサレな名前が思いつきませんでした。