ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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Bパートです。
今後、長くなった場合はこのように週二回に分けて投稿していこうと思います。
長くならなかったら……今まで通りで。

一応、パート分けの有無はサブタイに載せてはありますが。


Sword6. 遅れてきた「コモン」 Bパート

ある日、オカ研の顧問になるといって部室を訪ねてきた女性、布袋芙(ほていふ)ナイア。

彼女は顧問になるばかりか、部長であるリアス・グレモリーの

眷属になることも辞さない覚悟でやって来たのだ。

そんな彼女の実力を確かめるべく、人間界ではなく冥界にある部長の家にやって来たのだ。

家にいたギャスパー君やイッセー君が布袋芙先生の存在に驚いて、表まで出てきたみたいだけど。

 

「そういえばイッセー君。君は彼女――布袋芙先生の事を知っているのかい?」

 

「知ってるも何も、俺がここに居られるのはあの人のおかげなんだ。

 けどナイアさん神器(セイクリッド・ギア)も持ってたのか。初めて知ったぜ」

 

なるほど。布袋芙先生がイッセー君をここに住めるように手回ししたのか。

となると、部長のお父さんにも顔が利く程度には冥界の事情に詳しいのだろうか?

 

……まぁ、娘には甘いって専らの評判のジオティクス氏が部長を引き合いに出されて

首を縦に振った、って可能性も十分ありえそうだけど。

 

「イッセー。あなたも彼女の実力は知らないの?」

 

「俺もナイアさんが神器持ちだってのは今初めて聞いたっす」

 

部長の質問に、イッセー君も戸惑った様子で返している。

僕らよりも布袋芙先生と接している期間が長いと思われるイッセー君でも知らなかった。

という事はつまり、全く未知数の力を秘めているわけか。

セージ君なら、調べられるのかもしれないけれど……

冥界には本人が来たがらないだろうし

今は沢芽(ざわめ)市に警察の手伝いで向かっているから来れないはずだ。

 

「……ああ。一誠君に見せるのも初めてだったね。

 じゃあ、君のためにも気合を入れてお見せしないといけないね。

 行くよ……これが僕の神器――『群像の追憶(マス・レガシー)』!」

 

一瞬、布袋芙先生の周囲の景色が歪む。ノイズが走っているような錯覚さえ覚える。

だけど、そのノイズは収まるどころか酷くなっていき、僕以外の皆にも認識できるほどだった。

そのノイズはやがて人型を成していくが……

 

「闇」と形容できるほどの真っ黒な風体に、全身から触手を生やし、その触手には

蛸の吸盤の如く、無数の仮面が並んでいる。

僕はそれを見た時、恥ずかしい話だが「この世ならざる者(名状しがたきもの)」を目の当たりにした感覚に陥った。

……悪魔稼業もそれなりにしており、怪異にはそれなりに慣れている僕が、だ。

そんな僕をもってしても、「アレ」は異質だった。

 

その感想は、その場にいた全員が抱いていたものと同じであろうと推測出来た。

何故なら、皆布袋芙先生の「影」を目の当たりにして、怯えにも似た表情を浮かべていたからだ。

 

部長は驚いて、その蒼い眼が見開いている。

一応悪魔の中ではそれなりの実力を持っている部長をしてここまで驚かせる辺り

布袋芙先生の力は本物なんだろう。

 

副部長は笑みを浮かべている……風に見えるが、その笑顔は張り付いており

よく見ると、頬が引きつっているのがわかる。

 

アーシアさんも、しっかりと布袋芙先生を見据えてはいるけれど

震えているのか、いつの間にか呼び出していたラッセー君を抱えており

その抱える手には、力が込められているように見えた。

 

ギャスパー君に至っては、いつの間にか用意していた段ボールに引っ込んでしまった。

 

……だけど変だ。この場にいるみんな悪魔だというのに、なんで「影」や「闇」を恐れるんだ?

そうした性質に強いのが、悪魔のはずだ。

かく言う僕も、この沸きあがる恐怖心とも、不快感とも言える感情がうまく説明できない。

心の奥底から、わけもわからず湧き上がって来る。そう感じてならないんだ。

 

……まぁ、一人例外もいる。イッセー君だ。

彼の目はギラついているが、目線の先にあるものが……だ。

その根性は立派なものだと思うけど、危機感という意味ではどうなのさ。

 

「……おや。これからだというのに、もう怯えていては話にならないよ?

 仕方ないな。ではこうして……」

 

布袋芙先生の背後の影に、再びノイズが走る。

ノイズに影が掻き消えたかと思うと、影は姿を変えていた。

 

再び姿を現した影は、灰黒い学ランに、赤と黒の仮面を被った怪人とも呼べる人型。

その周囲には、トランプの札と切り花が浮いている。

僕の知っている悪魔に、あんなものはいない。

……そもそも、あれは悪魔なんかじゃない。

悪魔だとしたら、布袋芙先生が部長の眷属になる必要が無いのだから。

 

影が姿を変えた途端、影から発せられていた得体の知れなさ、底知れぬ闇と言った

悍ましさは成りを潜めた。パワーセーブしたって事かな。

……つまり、制御しなかった場合とんでもないことになるって事か。

 

イッセー君の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)と言い、ギャスパー君の停止世界の魔眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)と言い

本気を出したらとんでもないって神器が僕の周り、というかオカ研には多すぎる気がする。

布袋芙先生のは、そこからさらに押し進めて制御を可能にしているってところか。

……神器の制御、確かに命題かもしれない。ギャスパー君にしても、イッセー君にしても。

勿論、禁手(バランスブレイカー)に至った僕のもそうなんだけど。

 

「その影、姿を変えられるのね?」

 

「そうさ。けれどこれは僕の神器の力の一片に過ぎない。

 だけど、君達に協力するうえではこれでも十分すぎる位だと思うよ。

 勿論、お望みとあらばこれ以上のものを披露するけどね」

 

布袋芙先生の言葉に、イッセー君が生唾をのむ。

何を考えてるのか察しはついたけど……そういうとこだよ?

 

一方、部長も納得したのか強く頷いていたけど、僕は正直言って……怖かった。

あんな恐ろしいものが、本当に神が作ったっていう神器なのか。

よく、表現しきれないものに対して「名状しがたいもの」という表現を使うけれど

今僕が目の当たりにした布袋芙先生の後ろにあった「影」はまさしくそれに思えた。

出来ることなら、僕もギャスパー君みたく逃げ出したいくらいだった。

 

そんな布袋芙先生の力を揮う先は、グレモリー領に現れたアインスト。

最近、冥界におけるアインスト出現の頻度は増加傾向にある。

その都度、冥界に入り浸っているイッセー君やギャスパー君が迎撃に出ているから

結果として、グレモリー領は安全地帯になっている。

 

……ただ、イッセー君が暴れすぎるものだから戦闘による被害が大きく

冥界でも安全な方とは言え、グレモリー領に入ってくる悪魔の数は多くない。

つまり、グレモリー家の税収は減りはしないが、増えてもいない。財政難のままだ。

 

最近、イッセー君が力を増したと聞いたけれども、今日は見られそうにないな。

代わりに、布袋芙先生の神器の力をこの目で目の当たりにすることになった。

 

 

……だから、僕は「恐ろしい」という感情が芽生えたんだ。

 

 

――――

 

 

布袋芙先生の神器が生み出した影は

瞬く間にグレモリー領に侵入してきたアインストを撃退した。

それを使役した布袋芙先生自身も、息一つ切らしていない。本当に何者なんだ、この人。

イッセー君の話だと、時間城(じかんじょう)とかいうアンティークショップの主人らしいけど……

そんな人が、駒王学園の教師になったのか?

 

「イッセー君、布袋芙先生、駒王学園の教師になるって言ってるけど

 お店の方は大丈夫なのかい? 時間城とかいう古道具屋さんをやってたんだろ?」

 

「ああ、ナイアさんは店主って言っても雇われ店主みたいなものらしいんだ。

 で、本当の店主が戻って来たから、時間が空いたナイアさんに

 オカ研の顧問になってもらうように頼んだんだ。

 ……ほら、俺学校退学になっちまっただろ? せめて情報が欲しくてさ。

 冥界じゃ部長の家に住まわせてもらってるけど、最近色々やることがあってさ……」

 

そう言うイッセー君の態度は、妙に余所余所しい。

部長の家に居候させてもらっていることに、負い目を感じているのだろうか。

ギャスパー君だって住んでるわけだし、今更な気もするけど。

 

……あと。女の人をいやらしい目で見るのは相変わらずだけど

そこについて、ギラついた中にも落ち着きを感じるようになったのは気のせいだろうか。

……慣れた? って事はつまり……いや、まさかね……

いくらイッセー君が布袋芙先生とやけに親しげ――それも部長以上に――だからって

穿った見方をし過ぎだろう。

そういう事を隠そうともしない黒歌さんを同じ家に住まわせているセージ君も大概だけど。

本人は隠してるつもりなんだろうけど、ちょっと注意深く見ればわかるよ、セージ君……

 

もしそうだとしたら、僕だけが水をあけられた感じがして少し悔しい。

特にイッセー君に負けたのは少し、いや意外とショックかも。

ま、セージ君はともかくイッセー君は僕の憶測にすぎないけどね。

 

あれこれ考えていると、部長と布袋芙先生の話が終わったみたいだ。

この場にいた全員、部長の下に集められる。

 

「みんな、これでオカ研の存続に当たっての問題はある程度クリアできそうよ。

 従って活動は今まで通り行うわ」

 

「……リアス君。ちょっと待ってくれ。僕も顧問として参加する以上

 君の好き勝手を一から十まで黙認することはできない。

 ただ、可能な限り便宜は図らせてもらうけどね」

 

布袋芙先生がどう関与してくるのか、僕には全く読めなかった。

そもそも、彼女がオカ研に来た経緯すらわからない。

あれほどの神器を持っている人がノーマークなんて、堕天使も相当ザルだ。

 

……まさかと思うけど、薮田先生みたいなことは無いよね?

 

「そうだ、二、三年生は四日後に社会見学……と言うか企業見学があるんじゃなかったかい?」

 

「そうよ。私は進学希望だから興味はないのだけど」

 

「私も進学希望ですわ」

 

部長も副部長も、進学希望だ。

夢も希望もないことを言うようだけど、面接で落とされそうな気がしてならない。

それを言ったら就職もおんなじだけど。

部長クラスの悪魔になると、功績よりも悪名の方が知れ渡ってしまっている。

今まで通りに、人間界で活動することは無理だろう。

 

……思い切って、駒王町以外の場所に行けばあるいは何とかなるかもしれないけれど。

 

「だけど、見聞を広めることは大事さ。勉学だと思って、参加するといいよ。

 ……と言うか、もう参加申請は出してしまったよ? オカ研の皆の分については」

 

布袋芙先生のこの行動に、部長は案の定怒り出す。

いや、僕も勝手にやられたことに思うところが無いわけでもないんだけどさ。

そういえば、告知のプリントにはいくつか候補があったっけ。

 

南条(なんじょう)コンツェルン、桐条(きりじょう)グループ、鴻上(こうがみ)ファウンデーションと言った大企業グループ。

そして……セージ君が向かった沢芽市にもあるというユグドラシル・コーポレーション。

他にもジュネスみたいな大型ショッピングモールを展開している会社や

幻夢(げんむ)コーポレーションみたいな大手ゲームサードパーティーもあったはずだ。

 

……まぁ、悪魔の息がかかった学校とは言え学校に違いはないからこうした企画も通るんだろう。

 

「……はぁ。先生、今度から一応私達にも確認取ってから行動してくれると嬉しいわ」

 

「それはすまなかったね。ただ、『思い立ったが吉日』とか『兵は拙速を尊ぶ』とか言うしね。

 君だって、思い当たる節はあるだろう?」

 

意地悪そうな顔をして、形だけ謝っているけど悪びれる様子もなく

布袋芙先生は言ってのけていた。

……確かに布袋芙先生の言う通り、部長もこっちの意見を聞かずに行動することも少なくない。

だけど、その行動の癖を何で布袋芙先生は知ってるんだ?

まるで、僕たちの事を全部見透かしているような……まさか、ね。

 

「……まぁいいわ。で、私達はどの企業の見学に参加すればいいの?」

 

進学希望の部長と副部長はご愁傷様と言うべきかもしれないけど

僕もそろそろ進路を真剣に考えた方がいいのかもしれない。僕の進路は……どうなんだろう。

などと悩んでいる僕をよそに、布袋芙先生は僕らが行くべき企業の名前を挙げる。

その名前を聞いて、僕は唯々驚くことしかできなかった。なにせ――

 

「沢芽市のユグドラシル・コーポレーションさ。

 日程と前後する形で、現地では神仏同盟と北欧神話の会談も行われる。

 君達には、そっちの方が本題なのかもしれないね」

 

まさか、こんな形でセージ君と合流することになろうとは。

それよりなにより、神仏同盟と北欧神話の二大組織の会談の場に

三大勢力の一つ、悪魔の首魁の妹が現れる。

 

 

……これは、何か起こしてくれって言ってるようなものだね……




……誰こいつ。

いや、原作における木場のムーブを考えたら本当に誰こいつ。
ヒロインはもとより、味方がみんな太鼓持ちってかなりヤバいと思うんです。
道を間違えずに進める保証なんて、どこにもないんですから。

迷い、足掻き、それでも進む。
人間に、いや全ての命に許された行いでありましょう。

>群像の追憶
実は神器持ってました! なナイアの神器。
現れた影は「ペルソナ2」よりニャルラトホテプ(最終形態)とJOKER。
いきなり最終形態お披露目するとか加減してません。ちょっとした悪戯心だろうけど。

具体的な描写はされてませんが、能力的にはP3以降のワイルド能力に近いものがあります。
なので、事前の記録を必要としない記録再生大図鑑という使い方もできなくないです。

……どうでもいいけどまた異聞録と罪罰ハブられる(スマブラ感)。
外部コラボの展開上3以降のが都合いいのはわかるけど、たまにはさぁ……
いや、ギンコの中の人問題とかアヤセ今出してもネタ的にきついとかわかるけどさ。


話は飛びますが、原作の熱血要素をみて思うのがこの一言。

「熱血とは、盲信にあらず!」

……かれこれ20年位前(HSDD連載開始から換算しても10年位前)に
既に言われてるんですよね。
そしてこの言葉が出た作品には、日本的な要素(いろいろな意味で、本当に)を冠した名前が
少なくない。何の因果やら。

……そしてこの作品、ギャグでカバーされているけど本質がドシリアスで
続編の映画はシリアス極振り。なんかどっかで見たような関連性……

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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