「この際だ。お前もこの中を流れる悪霊に加えてやろうか」
斃れたセージを踏みつけながら、頭上を周回している
シャドウ成二は最後の攻撃を繰り出そうとしていた。
「ま……まだ……だ……!!」
「ふむ。この期に及んでまだ諦めないか。
だが、それはある意味好都合。聞いたはずだ。希望こそが、邪神を蘇らせる最後の鍵であると。
お前が辿る道は二つ。悪霊の集合体の一部になるか、邪神の供物になるか。
なんなら、両立させてやってもいいんだぞ」
言葉とは裏腹に選択の余地を与えることなく、シャドウ成二は悪霊達の機動部隊に号令をかけ
真っ直ぐセージを狙わせたのだった。
セージに向けて手を翳すシャドウ成二の攻撃を阻むように、雷が落ちる。
アーシアが
その後ろでは、ギャスパーが必死にイクサを食い止めている。
「させません……! あなたもセージさんなら、そんなことをすれば
あなたもまた悪霊の一部になってしまうんですよ!」
「だとしたら何だ? こいつを消せるのならばそれでいいだろう。
一つ勘違いしているようだが、俺は別にこいつに取って代われなくったっていいんだ。
宮本成二。お前の存在そのものが赦せないんだ。
お前を消す過程で俺が消えようが、それは些末なことに過ぎない。
だがお前の存在を消さない限りは俺もおちおち消えてられねえんだよ」
シャドウ成二。それは、宮本成二の罪の意識が具現化した存在であると言える。
周囲を傷つけた自分に対する罪の意識、その断罪者としてシャドウはあった。
その断罪のための手段として、宮本成二が所有していたはずのディーン・レヴ。
そこには既に多量の死霊が封じ込められていた。
それを解放すればどうなるか。その答えが、シャドウ成二の持つディス・レヴであると言えた。
だが、このディス・レヴは言うなれば紛い物であると言える。
元来ディス・レヴには無限ともいえる死霊の意思――デストルドーが込められており
それを力として駆動するものである。
セージ一人に使うには、明らかにオーバーキルであるのだ。
しかし、先ほどの攻撃の威力は確かに高いものではあったが
負の無限力の源にもなり得るディス・レヴの力を使って放った攻撃にしては
些か弱いものであった。
「……前から言おうと思っていたことがあるんです。
セージ先輩、もっと自分を大事にしてください。心配してる私達がバカみたいじゃないですか。
攫われた私が言っても、説得力無いですけど」
思わぬところから攻撃を受ける形になったセージ。
白音の指摘は尤もとも言えるものであるが、セージの耳には少し、届かない。
「……
それを捻じ曲げるつもりも毛頭ない」
「だったら、ここで俺に殺されろ!!」
ディス・レヴの負念を爆発させ、次の攻撃を繰り出そうと
さらに戦闘機の残骸を飛ばしてこようとするが
アーシアがけしかけた蒼雷龍の電撃で、その大半は撃墜されていった。
「自分で自分を殺す……それは、主が最もお認めにならない罪です!
そんな罪を、セージさんに犯させるわけにはいきません!」
「知った風な口を利くか! そもそも俺は十字教の神など信仰してはいない!
不快な騒音を撒き散らす源……先にお前から潰してもいいんだぞ!」
セージを狙っていた悪霊達の機動部隊はその標的をアーシアに変え
真っ直ぐに戦闘機の残骸が突っ込んでいく。
その光景を目の当たりにしたイッセーが割って入ろうとするも
イッセーはその動きをクローズマグマによって釘づけにされている。
アーシアの加勢に入ることは出来ずにいた。
「くっ、避けろアーシア!」
「君に他人の心配なんかしている暇は無いと思うけどね。
まずは、君の相手を倒したまえ。自分の事も満足にこなせない奴に、他人は救えないよ」
ディエンドの指摘通り、イッセーはクローズマグマに対して苦戦していた。
二人がかりでイクサと戦っていたアーシアが辛うじて、こうして救援に来られた形なのだ。
今まで、アーシアは直接前線に出てきたことは少ない。
そもそも、戦闘スタイルが前線に出るべきではないのだが
そうも言っていられない状況も少なくない。
悪霊達の機動部隊が、アーシアに狙いを変更する。
それを蒼雷龍が電撃で迎撃するが、雷の弾幕を掻い潜った数機がアーシアの頭上で爆発を起こす。
「アーシア! セージ、てめえ!!」
〈ボルケニックナックル! アチャー!〉
イッセーがセージに向けて怒号を放った瞬間、クローズマグマの鉄拳が
最大の得物であるマグマナックルを装着しての必殺技を無防備で受けたために
如何に赤龍帝の鎧と言えど、その防御性能はクローズマグマの必殺技に耐えられなかったのだ。
「ぐああああああっ!?」
『ぐっ……言わんこっちゃない! 貴様、奴のいう通り、目の前の敵に集中しろ!』
赤龍帝の鎧の損傷は、そのままドライグへのダメージにもつながった。
消滅は原則イッセーが死なない限りはあり得ないが、それでもこのまま攻撃を受け続ければ
イッセーの命にも係わる事態だ。アーシアによる回復が期待できない以上
それを回避するためには、自分の力でどうにかするしかない。
虚憶の中も含め、捨て身の戦いを辞さないイッセーではあったが
その捨て身を行った瞬間、クローズマグマの高い攻撃力が直に刺さる羽目になる。
ノーガードの殴り合いになどなった日には、傀儡であり中身が存在しない関係上
痛覚で止まることの無いクローズマグマの方が圧倒的優位である。
「いや、ドライグ。こいつらはあの水色が召喚したんだ。
あいつを倒せば、もしかしたら……!」
『よせ! 向こうもそれは把握している! 下手に突っ込めば……』
BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!!
さらに倍加をかけ、クローズマグマから奥にいるディエンドに目標を切り替え
クローズマグマを倍加した突進力で突破しつつ、イッセーはディエンドに狙いを定める。
「喰らえ、ドラゴンショッ――」
ATTACKRIDE EFFECT-REFLECT!!
ディエンドの目の前に現れたバリアが、ドラゴンショットを正面から跳ね返す。
その突然の事に、イッセーは防御が間に合わず、自分で放った攻撃の直撃を受ける形になった。
赤龍帝の鎧はその姿を維持できなくなり、黒焦げになりながら淡く光る地面に突っ伏すイッセー。
その様を見下ろすのはイッセーを下したディエンドであった。
シアン色の銃――ネオディエンドライバーを回転させながら、自分でも驚いた様子ではあるが。
「……へぇ。まさか、このカードに互換性があるなんてね。
ドライバーのアップデートの賜物か、それとも……
ま、いずれにせよ君の負けだ。
別に君を如何こうするつもりは無いし、僕としてもお宝を台無しにされた憂さは晴らせたから
これ以上追い打ちはかけないよ。回復してやる義理も無いけど」
そう言って、クローズマグマに突っ伏したイッセーを洞窟の隅まで運ばせて
ディエンド自身はクローズマグマを戻し、使ったカードをシャドウ成二に投げ寄越した。
そう、今しがたディエンドが使ったカードは
「ぐ……なんで……てめえが……セージの……」
「うまく行ってよかったよ。ダメだったら、僕も少し危なかったかもしれないけれど。
なんでこのカードが使えるのかは、僕だって知らないさ。聞かれても困る」
素っ気なく、満身創痍のイッセーの問いに答えるディエンド。
実際、ディエンド自身も本当に記録再生大図鑑の能力が行使できるとは思っていなかったのだ。
これが失敗すれば、バリアを展開するなり姿を消すなりして逃げるつもりではあったし
そのための手札も準備はしていた。
(……まさか、大ショッカーが
それにそうなると、彼と大ショッカーに接点が生まれないと辻褄が合わない。
ならこの世界の神が、ディケイドライバーか何かを参考にでもしたかな?)
大ショッカー。ディケイドライバーやディエンドライバーを生み出したとされる
あらゆる世界の悪の秘密結社が集結した、偉大なる大組織。
この世界に魔手は伸びておらず、かつてディケイドやディエンドらによって
壊滅させられた経緯もあった。しかし、残党がどこかにいてもおかしくはない。それ位の組織だ。
この世界に大ショッカーの痕跡は無く、仮に記録再生大図鑑を大ショッカーが作ったとするならば
セージは大ショッカーと何らかの関連性を持っていなければならなくなるため
大ショッカーが記録再生大図鑑を作ったとは、考えにくい。
そもそも記録再生大図鑑は神器にカテゴライズされる。
そうなれば、聖書の神が作ったのが道理である。
しかし、聖書の神とて異界の遺物ともいえるディケイドライバーや
ディエンドライバーを知っていたかと言われると、中々に怪しいところである。
ともあれ、ディエンドが勝利を収めたのは完全に博打の賜物である。
虚憶の中ならば、イッセーが勝っていたはずであろう博打。
しかし、この世界において勝利の女神は、一向にイッセーの方を振り向かない。
まるで、虚憶の中ではイッセーだけを勝利の女神が見るよう固定されたかのような状況だったが
この世界においては、その限りでは無い。
セージ達とシャドウ・ディエンドの混成軍の戦いは
アーシアに気を取られ、勝負を焦ったイッセーの無謀な突撃が原因で
シャドウ・ディエンド混成軍に一つの白星がつく形となった。
しかし、この戦いはセージとシャドウ成二の戦いにおいては何ら意味をなさない。
セージは自らの罪を清算し、未来に進むために。
シャドウ成二はその罪を断罪し、セージを償いと称し抹殺するために。
本来ならば、他者の入り込む隙など無い戦い。
シャドウとの戦いに、終わりなど存在しない。
それでも、今は決着をつけなければならない。
宮本成二が、宮本成二であるために。
それを支える絆こそが、彼を蝕む毒であると共に――
――状況を打開する、大きな一手となるのだ。
作劇上仕方ないとはいえまた負けてるよこいつ。
>シャドウ成二のディス・レヴ
実はディス・レヴと言うよりは霊帝に近い存在になってますね、これ。
シャドウがこれを使っているという事は、セージはリチュオルコンバーター的な存在に進化するのがワンチャン。
でもイミテイションの方かもしれない。
>白音のツッコミとそれに対するセージの返答
原作主人公への当てつけも含んでます。
事あるたびに身を削っていてもすぐさまそれが無かったことになる原作主人公。
これを自己犠牲と言っていい物かどうかはわかりかねますが
そもそも自己犠牲に関しては
「自己犠牲は尊い行いかもしれませんが、必ずしも正しい行いとは限りませんぞ」
と言う坊さんのお言葉もありますでなあ。
因みに今回のセージは抱え込み過ぎて自爆したただの自業自得。
……いや、こんなん誰に相談しろって話ではあるのだけども。
>記録再生大図鑑とネオディエンドライバーの互換性
当然ディケイドライバーとディエンドライバーには互換性ありますし
(放送当時のDX版玩具はしらない)
この理屈だとディケイドライバーと同程度の性能を記録再生大図鑑は持っているって話になりますが
そもそも記録再生大図鑑自体がライドブッカーモチーフに設定した代物なので……
因みに、フリータロットの読み込み能力は流石にディケイドライバーにもディエンドライバーにもありません。
そう考えると記録再生大図鑑ってこれ……
>イッセー
目の付け所はよかったんです。よかったんですが……
実はこれ、原作でこいつが散々やっている「ご都合主義」が
そのまんま返ってきてる状態なんですよね。
乗り越えるべき試練を乗り越えずに結果だけ求めようったって、そうはいかない。
原作イッセーならば、もしかするとクローズマグマに勝てたかもしれませんが
その勝ち方だって言っちゃなんですが怪しいもんですし
拙作でもせっかくドライグがセージ由来の能力で支援してたのにこの体たらく。