計算し直してみるとそうでもなかった感。
そりゃあ、まだ敵組織どこも壊滅してませんしね。
英雄派は接収されましたし。
反社軍団が意外と影薄くなってしまった不具合。
やっとの思いで、シャドウを倒すことが出来た。
やった事はシャドウの真似事だが、水中から不意を打つとなると
ああいう方法しか思い浮かばなかった。戦法が増えたって意外な収穫もあったし。
それに、何とか皆無事でよかった。
白音さんを助けに来て、それ以上の被害を出しては意味がない。
そうなった時点で、俺達の作戦は事実上の失敗になってしまうのだから。
……作戦と言えば。
このシャドウ、一体誰の差し金だ?
消去法で考えるとするならば、フューラーの差し金か?
だが、それにしては辻褄が合わなさすぎる。
何せ、ここに来るまでフューラーの部隊とも一度も戦っていないのだ。
とは言えこんなある種戦略的行動を、一人で行ったとも考えにくい。
だが、いくら俺のシャドウでもアインストや三大勢力と組むとは思えない。
……こいつが「噂で生まれた、話をでっち上げるのに都合のいい存在」でもない限りは。
「セージさん、大丈夫ですか?」
シャドウの背後について考えていると、兵藤が地返しの玉で回復させたであろう
アーシアさんがギャスパーと
よかった。パッと見た限りでは後遺症とかは無さそうだ。
「俺は大丈夫だ。それより、白音さんを見てやってくれ」
「……私も怪我とかは無いですけど」
そりゃそうだ。見てわかるような怪我があったら事だ。
そうじゃない、目に見えない傷やらなんやらがあってもいけないからな。
それが後々尾を引いて……なんて、よくある話だ。
そうでなくとも、俺のマグネタイトを流し込んでいるんだ。どんな悪影響が出ているか……
俺の言葉通り、アーシアさんが「
とは言っても、本人の言う通り大きな怪我とかがあるわけでは無いので
それこそ、小さな傷を塞ぐ程度だったので治療はすぐに終わったのだが。
「――はい、これで大丈夫だと思いますよ」
「……ありがとうございます」
それこそ、あっという間の出来事だった。
俺も白音さんの回復に集中していたので、ギャスパーや光実の回復に
どれくらいかかったかはわからないが
恐らく、それよりも手っ取り早く済んだのではないだろうか。
俺の治療行為にしても素人の付け焼刃なので、こうしてアーシアさんに見てもらったが……
……寧ろ、管轄としては黒歌さんの分野かもしれないんだよな。
「なあ白音さん。帰ったら、一度黒歌さんに見てもらった方がいいと思うんだ。
前にチェックしてから結構経つし、今回の件で何か起きているかもしれない。
大事になる前に……」
「……気の流れでしたら、大丈夫です。これ以上、姉様に心配かけたくは無いですし」
む……。本人がこう言ってしまってはな。この手合いを無理に強制させると面倒ではある。
しかし、俺の治療行為のせいでその気に異質なものが混じってないか、それが不安なのも事実。
どうにかして黒歌さんの協力を仰ぎたいが……ここに呼ぶわけにもいかないし。
そもそも、まだ
……おい。どうやって帰るんだよ、これ。
黒歌さんに見てもらう以前の問題じゃないか。
そう頭を抱えた、その時だった。
「ああっ! み、皆さん……!!」
素っ頓狂な声を上げて、ギャスパーが指差した先。
――シャドウが、ふらつきながらも立ち上がろうとしていたのだった。
「お前、まだ……っ!?」
「ふ、ククク……まさか。
悪霊の力も霧散し、多勢に無勢。そして俺は本調子じゃない。
ここまで勝負の見えた状況で戦おうとするほど、俺は向こう見ずじゃない」
「当たり前だ! 何度立ち上がろうとも、俺がぶっ潰してやる!」
驚愕する俺を他所に、兵藤はかなりやる気だ。
言いたいことはわかるがな、俺としちゃもう戦いたくない部類の相手だぞ。
勝てたのだって、殆ど運みたいなもんだし。お前と呼吸が合った事含めてな。
それに、あの様子じゃ戦う意思が無いという言葉に嘘偽りはないだろう。
そう考え、俺は兵藤を制止する。そもそも、あいつは俺の
本来なら、俺が決着を付けなければならない事だったんだ。
「そうだ。『今回は』俺の負けを認めてやる。
だがよく覚えておくんだな。お前ある限り、俺もまた存在する。
俺とお前の戦いに、終わりなど存在しない。
たとえこの世界から要らぬ戦いを消そうとも、俺とお前の戦いは絶対に消せない。絶対にだ」
「この野郎! 言うに事欠いて、この期に及んで負け惜しみかよ!!」
兵藤は負け惜しみと言っているが、そうじゃない。
「俺だから」わかるんだ。生きていれば、どうしても隠したい出来事の一つや二つはあるし
これから出来ないなんて誰が言えようか。俺もそんな器用に生きられるとは思えない。
それに、今は何ともない出来事でも、将来触れたくもない出来事になる可能性だってあるんだし。
「負け惜しみ……か。影の言葉をそう切って捨てられるのはある意味、羨ましくもあるな。
どれだけ影から目を背けたところで、それが無くなるわけではないのだが……
ま、言ってもわからんだろうな。特にお前には」
けらけらと兵藤を嘲笑いながらシャドウは語る。こんこんと語る。
その最中、徐にシャドウが俺に小さな栞のようなものを投げ寄越してきた。
「ククク……今のお前が喉から手が出るほど欲しがっているものだ。
お前の推測通り、
存在そのものをこの目で見たわけでは無いが、居るという証拠は収めた。
その手掛かりを記したデータだ。同じ
ついでに、俺が記録した能力のカードも同梱させた。精々、うまく使って見せるんだな」
「なにっ!? それは……本当なのか!? 姉さんが……姉さんが……!!」
ここに来て思わぬ収穫。あの時
まさか、シャドウが先んじて潜入していたとは……
しかも、やっぱりここに姉さんがいる!? だとしたら……!!
「行くなら急ぐんだな。ユグドラシルは……
人間にとってよくない実験をしているようだ。
取り返しのつかないことになる前に、助けに行くことを推奨するぞ。
……出来るものならな」
「ユグドラシルが、そんな実験を……!?
それは本当に見たのか!? いい加減なことを言うようなら……」
ユグドラシルと言う言葉に反応して、光実がシャドウに食って掛かる勢いで詰め寄る。
しかし、シャドウは力なく手を振りしらを切っている。
お前も俺ならその場で姉さん助けてくれよ、とも思ったが
まあ、それこそ言っても無駄かもしれない。出来ない事情もあったのかもしれないし。
……碌なもんじゃなさそうだが。
「いい加減かどうかは、その目で見て確かめろ。
だが宮本成二、お前ならわかるはずだ。俺の言っていることが本当か嘘か。
そして見事助け出してみろ。お前の、大切なものをな」
……データと、新しい手札を貰っているんだが何一つとして祝福されている感じがしない。
寧ろ、完全に焚きつけられている感じだ。
そして、こいつの言う通りにしないといけないって現状が殊更に腹立たしい。
……研究所に行かないって選択肢が、無いじゃないか……!
「ククク……これで俺の為すべきことは終わった。
いいか、よく覚えておけ。影は常に傍にいる。いつも……『お前のとなり』にな。
ククク……クハハハハハハハッ!!」
嗤いながらシャドウは前のめりに斃れ、そのまま黒い靄と共に消失した。
戦いには勝ったが、何故だか心の底から喜べない。
厄介事を押し付けて、言いたい事言って消えていった。そうとしか思えない。
「最後の最後まで負け惜しみ言いやがって! 負けたのは事実だろうが!」
「……あいつも俺なら、俺がある限り消えることは無い。
『俺のとなり』……そうか、そう言う事か」
温かく見守るか、隙あらば仕掛けて来るかの違いしかないって事か。
しかもそれも全て、己の心次第と来た。
シャドウ……本当に、本当に敵として対峙するのなら厭らしい相手だ。
自分を相手に戦うというのが、こんなにも辛いものだとは。
今までのアインストやコカビエルとかとは、全く別のタイプだ。
「……さ。何はともあれ、これで目的は果たした。
早いところ抜け出して、ホテルに戻ろう……の前に」
咳払いをし、皆に横一列に並ぶように促す。
これだけは、はっきりさせておきたかったのだ。
「…………今回は本当にすまなかった!
俺のせいで、白音さんを危険にさらしたのみならず、お前達にも迷惑をかけた!
特に兵藤! 今まできつく当たっていたのは、全部あいつが言った通りのことだ!
自分のことを棚に上げて、偉そうに言ってすまなかった!」
シャドウの言っていたことは、本当なのだ。
そして何より、俺の不始末のせいで白音さんは誘拐されたし
そのためにこうして救助隊としてこんなところまで来る羽目になったのだ。
頭を下げずには、居られない。
「それは……僕なんて、前から皆さんに迷惑かけてますし」
「僕としても、後顧の憂いを断つためにも必要な事でしたし」
頭を下げているから顔はわからないが、ギャスパーと光実。
そう言えば、本当にギャスパーは表に出てくるようになったな。
何があったのか、機会があれば聞いてみるべきか。
「皆さん無事だったからいいじゃないですか。もしまだセージさんが気に病むようでしたら
私でよければ、お話聞きますよ。懺悔を聞き入れるのも私のお仕事ですし」
「……や。俺はやはりあの神は信じてないので、気持ちだけ貰っとくよ。ありがとう」
アーシアさん。そりゃ懺悔でもすりゃいくらか心も晴れるかもしれないが……
もう、強制的にさせられたようなもんだからなあ。これ以上はちょっと。
それに、信仰しているものが違うし、改宗する気もない。
「……さっきも言いましたけど、無事だったんです。私は気にしてません」
当の被害者にもそう言われちゃな。
赦される赦されないはともかくとして、こうしてけじめはつけておかなきゃとは思ってた。
それが故の行動でもあるのだけれどもね。シャドウが言ったことは本当でもあるし。
「セージ。いい話で終わらすんじゃねぇぞ。てめぇがやらかしたことは事実なんだよな?
だったらてめぇこそ……」
「……そうだな。姉さんがどう言おうが、非親告罪である以上
俺は今すぐにでも桜の代紋を返上しなきゃならないだろうな」
正直に言うと、今桜の代紋を返上するのが正しいかどうかはわかりかねる。
別件で桜の代紋返上した方がいいんじゃないかって状況(らしい)が、そうでなくとも……だ。
今ふいに兵藤に対して言い返そうとしたが、今回ばかりは論点のすり替えになりかねない。
そう思い、黙っていたのだが。
「……イッセーさんはせめて天野さんに謝ってください。
堕天使に与したとは言っても、彼女自身は一般人だったんですよ?
それを返り討ちとは言え一方的に殺したんですよ?」
「ちょっ……あれはわざとじゃないし、俺はあいつがレイナーレだと思ってたし
そもそもこの件は……」
「アーシアさん、今は……」
何だかんだで罪から逃れようとするその姿勢がアーシアさんの癇に障ったのか
感情のこもってない声で兵藤を詰るアーシアさん。俺の時とは対応が違いすぎる。
これで兵藤に文句言われたが、そんなの俺が知るか。
これ以上拗れても面倒なので、俺はなんとかアーシアさんを宥めてこの場を鎮めることにした。
「……代わりに言ってくれて、ありがとう」
一応、礼を交えた上で。
……って、白音さん。ちょっと目線が痛いんですけど。
ああもう、本当にめんどくさいなあもう! よくこんな針の筵みたいな状況が延々と続くであろう
ハーレムを希望するって感情が湧いてくるもんだよ本当に。
とにかくいいからこの場を出よう、そう強引にまとめた矢先に
出口の方角を見ると、ボロボロになったバオクゥが倒れこんできたのだった。
「ちょ、ちょっと……深入りしすぎちゃいました……」
「なっ……そのダメージはどうしたんだ!? アーシアさん、忙しいけれど頼む!」
「は、はい!」
すかさずアーシアさんの神器で治療を施していると、今度はグレモリー先輩に姫島先輩。
そしてゼノヴィアさんに祐斗がやって来た。
なんでだ? 暗に来るなって言ったはずなんだが……
大方、グレモリー先輩が強引に連れてきたのだろうか。
おいおい、今事件解決したからいいようなものの解決してなかったら面倒なことに…………
…………いや、俺の公開処刑の観客が増えるだけか。
全く、結果論としていいのか悪いのかわからんな。
「皆も……すまなかった。俺のせいで、迷惑や心配をかけてしまって」
「え? なんでセージが謝るのかしら?」
……あ。そこから話さなきゃいけないのか……
あれをもう一度一から話すのは凄く気が引けるが……
ここにいるって事は、鏡の泉についてもある程度認識しているだろうから
黙っていたところでアレか。それに、兵藤に漏れた以上そこから伝わりかねん。
だったら、自分の口で言った方がいいか。
――――
「自分自身の、心の影……それが実体化した存在、ねぇ」
「現にそいつが白音さんを誘拐し、俺と兵藤を呼び出した。俺を消すために。
そして、俺の罪を公開し、糾弾するために。
だから言うなればこれは俺の不始末、俺の責任だった。俺がもっと――」
「不始末にケリを付けたのなら、私から言うことは無いわ」
グレモリー先輩はあっさりと俺を許した。いや、俺に興味が無いと言うべきか?
形はどうあれ、白音さんやアーシアさんらを危険にさらしたんだが……
「アーシアやギャスパー、イッセーはともかく、小猫はもうあなたが面倒を見るべき相手よ。
そしてそれを無事に保護した。それでいいじゃない」
「……ありがとうございます」
「おいセージ! なんでリア……部長といい雰囲気になってるんだよ!?」
……うわあ。やっぱり絡んできたか。
やっぱりシャドウの言ってたこと、殆ど当たりじゃないか。
たったこれだけのやり取りで目くじら立てるとか、童貞じゃないのに童貞臭いぞ、お前。
「あらあら、男の嫉妬はみっともないですわよ、イッセー君?
でもそれだけリアスを情熱的に愛しているって証拠かしら、うふふ」
そして的確に煽ってくる姫島先輩。
そりゃ嫉妬は愛情の別表現ではあるけれどもさ。今それを持ち出さなくとも……
しかし、指摘されてドギマギする兵藤とは裏腹に
グレモリー先輩はどこだかうんざりしている風にも見えた。
……え? まさか、これって……
おい兵藤、本気でグレモリー先輩に告るなら
今の状況は本気で取り返しのつかない事態を招きかねないぞ!?
そんな俺の心配とは別ベクトルの心配事を、今度は祐斗が持ってきたのだった。
「……セージ君。実は僕らも君に……いや、君達に謝らなきゃいけないことがあるみたいだ」
「ん? どうしたんだ?」
「…………敵を、連れてきちゃったみたいなんだ」
そう言う祐斗の背後から、警官隊と共に黒いパワードスーツのようなものが姿を現した。
パワードスーツ……超特捜課の装備だろう。つまり、敵じゃない……はずなんだが。
――なんで、なんでこっちに銃口を向けているんだ!?
サブタイはペルソナ2罪EDより。
君のとなり。あの終わり方でこのフレーズは「離れ離れになっても~」と見ればイイハナシダナー、で終わるんですが
如何せん黒幕が黒幕。君のとなりにいるのは果たして……?
>シャドウ
ここでシャドウ成二「は」退場です。
ここでデータをセージに寄越したのは罪のシャドウ戦オマージュ。
シャドウを専用ペルソナで倒すと強化できるってアレ。
克己を体現した熱い展開……のはずなんですが
如何せん何気に性格が悪いセージのシャドウなので、不安要素しか残さないという。
パワーアップが不穏なフラグってのは、拙作においてはいつものことなんですが。
以前理化学研究所に忍び込んでいたのもシャドウ。
こうしておけばセージは絶対に助けに行く。それを促す最後のピースを埋めにかかりました。
状況が許せば、セージは一人でも乗り込みかねません、本当に。
そしてユグドラシルがよくない実験をしているという不安要素も追加。
そりゃ鎧武原作でもユグドラシルはアレだけれども……
正直、今回は鎧武原作と同等かそれ以上に酷いことになってるかもしれません。
それこそ「助け出してみろ。出来るものならな」です。
つまり、ここで唯一嘘を吐いた可能性も……
>リアス
実は少し丸くなってます。物理的な意味じゃなく。
そして、イッセーとの関係に不協和音が見え隠れし始めて……
原作でもご都合主義気味だってのに、拙作においては何をかいわんや。
ただ、別に改心したとかそう言う訳では無いので……
>朱乃
そんな2人をフォローしてる(?)んでしょうけれど。
彼女は彼女で背景がああなのでもう泥沼からの誘いにしか見えず。