「何も知らずに……」
画一された辞世の句を残し、
リアスらを追っていた
これでリーダーも含めれば残りは4体となったわけである。
元来聖槍騎士団が属するフューラーの部隊――ラスト・バタリオンは
今やアインストにその標的を変え戦闘行為を行っていたはずである。
しかし、それがこうして突如として薮田に標的を変え襲い掛かってきていたのだ。
(……はぐれ部隊と言うには、あまりにもお粗末ですね。
私が狙われる理由には心当たりがありますが、それだとしても些か理由づけとしては弱い。
私自身が彼らが標的としている三大勢力とは対立する姿勢を示していたはずではありますが……
……一番可能性の高い理由としては、私の足止めでしょうね。
だとしたら、彼女らも不憫ですね。私には、聖槍は効かないというのに。
複製なら、尚の事です)
足止め目的の捨て駒にされた聖槍騎士団に対し、僅かながらの憐憫を向けながら
薮田は急ぎアラヤ神社へと向かっていた。
その裏の岩戸山。そこに、リアスらが向かっていたのだ。
そんなリアスらを追う形で薮田は行動していたのだが
その途中に聖槍騎士団の襲撃を受けた形なのだ。
――――
――アラヤ神社、境内。
そこにあったはずのクロスゲートはその姿を消しており
境内には一人のパンツスーツの女教師が佇んでいるだけであった。
「おや、薮田先生。こんなところで何をしているんですか?」
「布袋芙先生ですか。私は生徒を追っていたのですがね。
その途中でトラブルに巻き込まれてしまいまして。
解決はしたのですが、生徒は見失ってしまいましてね。
布袋芙先生こそ、こんなところで何をしているのです?」
本来ならば、JOKERやアインストが徘徊しており
それらと戦闘行為を行う形で
現状で一般市民の外出は危険極まりない。
それなのに、この二人の教師はこうして外に出ているのだ。
薮田に至っては、その精鋭を返り討ちにしてさえいる。
彼の正体を考えれば無理からぬことではあるが。
「僕は顧問教師としてリアス君らを迎えに来たのさ。
とは言え……皆は先に帰ってしまったようだけどね。入れ違いさ」
ナイアの言葉に、薮田は引っかかりを覚える。
リアスらが向かったのはアラヤ神社ではない。岩戸山だ。
それなのに、どうしてここでリアスらの顛末を知り得ているというのだろうか。
そして何より……
――何故転生悪魔であるナイアが、アラヤ神社の境内で何食わぬ顔で平然としていられるのか。
「布袋芙先生。お身体の方は大丈夫なのです?
ここは曲がりなりにも神社。魔を祓う気は充満していると思うのですが。
あなたはグレモリー君の『
それなのに、何故ここで平然としていられるのです?
……ああ、『フリーパスを持っている』などと言うつまらない言い訳は止してくださいよ。
私は神仏同盟にも顔が利きますから、そう言う手合いの嘘はすぐにバレますよ」
実際、神仏同盟から悪魔に対するフリーパスが発行されたという記録は「無い」。
さる
少なくとも、この世界においてそう言った記録は無い。
「フフッ、心配しなくともそんなものは持っていないし、発行してもらえそうも無いしね。
僕が何故ここにいるのかと言う質問についてだけど、それは……秘密だ」
「情報源の秘匿は情報収集の上において必須ではありますが
過ぎたる秘密主義は不信を招きますよ」
薮田の指摘に対しても、「君には言われたくない」と返しながら
ナイアは飄々とした態度を崩そうともしない。
互いに柔和な表情を崩してはいないものの、目を凝らすと火花が散っている。
そのような向かい合いを、薮田とナイアは繰り広げていた。
「布袋芙先生。やはりあなたには色々と不可解な点がありますね。
先程の話の他にももう一つ。『何故グレモリー君があなたを眷属にできたのか』。
言っては何ですが、今の彼女の実力で、あなたを眷属にできるとは到底、思えない。
たとえ『戦車』の駒を2個使用したのだとしても」
「それこそ秘密と言うものだよ、薮田先生。現に僕はこうしてリアス君の眷属になっている。
事実はきちんと受け止めないと、教職者としてよろしくないよ?」
ナイアの言う通り、現にナイアはリアスの「戦車」なのである。
「戦車」を2個使ったことで、実質は「
駒価値10と言う破格の存在になっている訳ではあるが。
それさえも、顧問教師としての立場に利用している節はあるようだ。
そして経緯はどうあれ、ナイアはリアスの眷属であると言う結果は確かに存在している。
これには薮田も「……確かにそうですね」と認めざるを得ないわけではあるのだが。
(しかし……やはり不可解な点が多すぎますね。
布袋芙先生の正体は今もって不明ですが、この事実から神ではないのは間違いないでしょう。
ですが、彼女の不可解な点は神ないし神性を持つものでなければ
説明がつかない部分が多すぎます。
……あるいは最悪のケースとしては。
「神性を持つものが意図的に神性を隠すことで
チェックをすり抜けて取り入ろうとわざと契約を交わす」。
尤も、そうするメリットが今一つ思い浮かびませんが……
それこそ、目的なんてない愉快犯のようなケースを除いては。
ですが……今までのは全て、私の憶測にすぎません。
「
「
「……物思いに耽っているところ恐縮だけど、薮田先生を『裏』にも精通していると見込んで
僕から話しておかなければならないことがあるんだ」
憶測を巡らせている薮田であったが、その意識はナイアの言葉で呼び戻される。
彼女の言では、ここにあったはずのクロスゲートは突如として消失。
自分が来た時には既にこの状態であったという事である。
「あれが危険なものであるという事は、僕にもわかっているさ。
そして僕には、消えたここのクロスゲートが転移した先に目星がついている。
……ここの裏山の洞窟の奥深く。鏡の泉の上さ」
「……何を根拠に?」
「根拠も何も、アレを操っているのは僕だからさ。
今しがたリアス君らが公安に付けられているのが見えてね。
アレを使って、冥界にでも避難させようと思ってね」
いけしゃあしゃあと、クロスゲートを操っているのは自分だと公言するナイア。
しかし、薮田にはその言葉に信憑性を感じられなかったのだ。
それもそうだ。今まで何をどうやっても正体不明の建造物であったクロスゲートが
ぽっと出の女教師の匙加減一つで操作できるはずがない。
真偽……と言うまでもなく、薮田には偽としてしか聞こえなかったのだ。
「……嘘ならもっとマシな嘘をついたらどうです?」
「フフフ、流石に先生は騙せないか。だが僕がクロスゲートを操るってのは嘘だけど
リアス君らが公安に付けられていたのは、嘘じゃない。
追い詰められたリアス君らは、まず間違いなく冥界に飛ぶだろうね。
そしてクロスゲート近くで何らかの手段での転移を用いれば、その手法は酷く不安定になる。
先生ならば、よくご存じのはずだよ」
実際、薮田には心当たりがあった。
コカビエルがギリシャに対して行った「しでかし」の謝罪のために
シェムハザを伴って渡希した際、その後帰国する際に転移を試みたが
クロスゲートの影響か、時間がずれてしまっていたのだ。
そのほかにも、セージがさる理由から直接クロスゲートで
若干だがセージの希望通り駒王町に転移できたのだが、時間にずれが生じていたのだ。
時間と空間に作用する存在であるため、こうした影響は起こるものであるのだ。
「……そうそう、同じ顧問教師として忠告しておくけどさ。
ソーナ君だっけ? 彼女らも、いい加減冥界に返した方がいいよ。
魔王様直々の帰還命令もあるし、こっちでは公安が目を光らせ始めた。
その魔王様からも、冥界でレーティングゲームに興じていればいい。
……そう言いたげな様子ではあったね。あれは、近々大会でもあるのかな?」
(確かに、公安がああも幅を利かせ始めた以上
支取君達もこれ以上こちらで活動するのは無理でしょう。
口実はありますし、冥界に返すべきですね。
……とはいえ。冥界が遊戯に興じられるほど治安がいいとも思えないのですが)
ナイアの提案に対し、薮田は首肯する形で返答とした。
このプランはプランで問題がありそうなものだが
人間界でこれ以上必要以上に悪魔をのさばらせておくのは環境的にもよくはない。
実際、ソーナら(厳密には匙が、であるが)とて一般人と諍いを起こしたことはあるのだ。
「そうだ。ついでにもう一つ質問だけれどもさ。
……先生は、どこまで人間に肩入れするつもりなんだい?」
「…………どういう意味です?」
「しらを切っても無駄さ。僕には、先生の正体がなんとなくだけど察しがついている。
先生の立場で、人間に必要以上に肩入れをするのはよくないと思うのだけどねぇ?」
思いもよらぬ質問に、薮田も一瞬顔を顰める。
すぐさまポーカーフェイスを取り戻し、平静に対応するが
ナイアの言葉はでまかせか、確信あってのものかは不明だが
薮田の背景を知らなければ、でてこない言葉ではあった。
(……まさかとは思いますが、聖槍騎士団を差し向けたのは彼女かもしれませんね。
それこそ、証拠がありませんが……
私が聖槍騎士団を退けたことで、確信を得たのかもしれませんね。
なるほど……二重に手を打っていたと言う訳ですか)
「先生。僕から一つ忠告さ。『人は神にはなれないが、神もまた、人にはなれない』。
……僕からの話はこんなところかな。僕はこれから、リアス君らを迎えに……いや、違うな。
リアス君らと合流しに冥界へと向かう事にするよ。
だから後のことは先生に任せたよ。じゃ、改めて後はよろしく頼んだよ」
そう言うや否や、ナイアは黒い靄と共に姿を消してしまう。
しかし、それは薮田の知る冥界への転移魔法陣とは全く違った。
最後の最後に、ナイアはさらに謎を残していく形になったのだ。
「『神もまた、人にはなれない』……ええ、存じておりますよ。
だからこそ、私は人を蔑ろにしている彼らに一度痛い目を――
人間を見縊るとどうなるかを思い知ってもらうために、人間に協力しているのですから。
……そう言う意味では、私は『人』でも、『神』でもないのかもしれませんね」
虚空に向かって薮田がふと呟いた次の瞬間。
――空間が、揺れ動いた。
(……動きましたか。となるとこれ以上長居をすれば
岩戸山から出てきた公安と鉢合わせする可能性がありますね。
私も彼らに捕まるわけにはいきませんし……ここに長居は無用ですね。
…………クロスゲート。異なる世界、異なる時間を繋げる門。
間違いなく、これが一連の事件をより悪質にしている存在でしょうね。
そしてこれは間違いなく……「何者かの手によって悪用されている」。
それが何者かはまだ確信を得られませんが……
これ以上の悪用は、取り返しのつかない事態を招きそうですね。
いつまでも、後手に回るわけにはいきませんが……今はまだ、雌伏の時と言うべきでしょうか)
クロスゲートの作動の影響下。転移は危険を伴うため出来ない。
薮田は来た道を引き返し、ホテル・プレアデスへと戻ることとなった。
駒王学園生徒会及びオカルト研究部所属生徒・顧問教師と
その他一部の生徒は、珠閒瑠市から駒王町へと戻るバスの中にはおらず
往路にその姿を見せた生徒を乗せたバスを追走するサイドカーの影も
見当たらなかったのだった……
疑惑。
ナイアは薮田先生の事を知っていますし、薮田先生はナイアに対し疑惑の目を向けています。
>聖槍騎士団
戦闘すらカットされて2体退場。
いやだって戦った相手の正体的に、さあ……
聖槍は効かない、主砲も自称・神器で無力化される。
こういうチートキャラは主人公達とは違う場所で戦わせるから輝くものだと思っていたり。
その主人公がチートだった場合、中々ややこしいことになりますが。
そして仕向けたのが「彼女」だった場合、わかっててそうしたのだから完全な捨て駒。
>戦車2個
計算すると女王の9より上になるんですけど、良いんですかねこれ。
複数使用は兵士の特権だったかどうかは、ちょっと失念してしまいましたが。
尤も、バグの温床とも言える悪魔の駒絡みなので割とガバガバと言うか何と言うか。
とは言え貴重なキャスリングの使い手を1人減らすほどの価値があるかどうかってのは……うん。
どうでもいいけど「ゴースト」第4章でリアスがキャスリングで移動を試みて
人質にされた件、どこぞの大魔王様に言わせば「チェックメイト後のキャスリングは反則だ」そうなので
ペナルティで人質にされたんでしょうね。今取って付けました。
「女王」を上回っているって点が地味に朱乃とナイアの力関係を物語っていたり
何故リアス・グレモリーが布袋芙ナイアを眷属にできたのクァ!! だったり
やっぱこの混沌正体隠す気ねえな。
>人間を見縊るとどうなるか
そのつもりで肩入れしていたらオーバーテクノロジーを次々開発し始めた件について。