やはり時間が経ってくるとダメージ来るなあ。
何の話かって? 活動報告参照という事で。
Will42. 夢現にて
――また、お会いしましたな。
気が付くと、俺は一面青色の部屋――ベルベットルームにいた。
扉を開けた記憶は無い。という事は恐らく……か。
「どうやら、見事己の影との戦いに一先ずの勝利を収められたご様子。
このイゴール、心より祝福させていただきますぞ」
相変わらずのギョロ目長鼻の老人はその風体にある意味似つかわしくない懇切丁寧な態度で
俺に接してくれる。いや、これが上から目線の不遜な態度でも困るのだけれども。
「ですが影とは言え、対峙された者もまた、あなた様ご自身。
あなた様がご健在の限り、影はいつまたあなた様に牙を剥くとも限りません。
影に向き合い受け容れた、影に勝利を収めた。
これらは全て、今後も続くあなた様ご自身と、あなた様の影との戦いの序曲に過ぎません。
その事だけは、お忘れなきよう……」
シャドウ自身も言っていた。
「俺とお前の戦いは、俺自身がいる限り永劫に続くのだ」……と。
恐らくも何も、それが「生きていく」という事なのだろう。
そして影とは、俺の中にある俗にいう「悪い部分」に限らない。
今表に出ている俺の心。その間内に引っ込んでいる俺の心。
それこそが、シャドウなんだろう。
俺と言う存在は、たった一面だけで物語れるものじゃない。
シャドウの存在も含めて、俺――宮本成二と言う存在なのだろう。
「さて……此度あなた様をお呼び立ていたしましたのは。
いよいよクロスゲートなる門と、そこから現れる者達の活動が
本格化する兆しが見え始めていることを、お伝えするためにございます」
なんだって!? いよいよ……アインストの首魁が表に出てくるってのか!?
まさか、フューラーがアインストとの戦いに注力しだしたのはそれが原因なのか!?
「それについては……間違いない。
僕が見たクロスゲートとは少し違うが、本格的に動き出す兆しのようなものが
ここからでも見えた。おかげで、描こうと思っていた絵のイメージが飛んでしまったよ」
クロスゲートを見たと言っている悪魔絵師のお墨付きまで貰ってしまった。
欲しくないお墨付きだが、これで信憑性が増してしまったって事か。
「……シャドウは戦いの終わった後、俺に新たな力をくれた。
これを以てアインストの脅威に立ち向かう事は出来ますか?」
「……シャドウの力……ふむ……
確かに私がこと神器においてお力添えできることは殆どありませんが
かつて、周防達哉様は大衆の声を基に歪められた己の影と対峙し、勝利を収めた際に
お持ちのペルソナが真価を発揮した例もございます。
細かな点に差異はございますでしょうが
凡そその時と同じと思っていただいて、間違いはないかと」
周防巡査も、そう言う事があったのか。
ペルソナも神器も、己の心一つ。
力を心にするのではなく、心を力にしろということか。
「そして、これからのあなた様の運命。それは……『逆位置の悪魔』が見えますな。
それに重なる形で『正位置の刑死者』が見えます。
あなた様の道はまだ険しいものであるという事は、お忘れなきよう」
逆位置の悪魔。悪魔ってカード自体がそもそもあまりいい意味じゃなかったはずだ。
それの逆位置となると……好転する何かがある、って事か?
だがそれを補うかのように正位置の刑死者とは。
まあ、苦難なんてここ最近は本当に沢山あるから今更一つ二つ増えたところで、だが。
「そしてこれは、フィレモン様からの言伝でありますが……
『遠くない未来。あなた様は自分の人生を、世界をも変え得る選択を迫られることになる』。
その証拠に……先ほどのカード、未来を指し示す位置に『死神』が配置されております」
……苦難の道に、責任重大な選択か。
本当に、俺の人生バグっちゃいないかね。
若いうちの苦労はうんたら、とは言うらしいがこれはどうよ。
「あなた様がどのような選択をするか。私共はそれについて言及することはございません。
選択をしないというのも、一つの選択肢ではございます。
ですが、一つだけ注意させていただきますと……
……『選んだ選択には、責任を持つこと』だけは、努々お忘れなきよう」
……無責任でいるな、というわけか。
選んだからには、その選んだ事柄と結末に対して責任を持て、と。
当たり前のことだが、果たしてどれだけの奴がそれを実行できているのやら。
「さて……イゴール老人の話が一段落付いたところで
唐突で悪いんだけど、僕にフリータロットを見せてもらえるかな?
飛んでしまった絵のインスピレーションを、少しでも回復させたい」
悪魔絵師に催促された形ではあるが、俺はフリータロットを悪魔絵師に見せることにした。
俺の目には、あまり変化が無いように思えるんだが……
「なるほど。目に見えない形でも、少しずつではあるけれど力を増しているみたいだね。
とは言え絆の力とは元々目には見えないものだ。
目に見えないものだからこそ、僕の描く絵のインスピレーションになる」
そう言うや、特に注意深く見ていたのは3(女帝)、8(力)、9(隠者)、10(運命)
そして11(正義)、14(節制)。
以前とはまた違うカードだが……ふむ。
それにしても、俺自身はこのフリータロットについて殆ど理解していなかったりする。
何かの力の触媒、って程度にしか理解できてない。それでいいのか。
ふと、カードを眺めている間に13(死神)のカードがはらりと床に落ちた。
慌てて拾い上げようとした瞬間、俺の頭の中に姉さんの声が聞こえた気がした。
フリータロットに込められた力は、絆の力の体現。それは女帝や皇帝のカードで
逆説的な意味も含めて証明されている。
…………まさか、俺の持っている死神のカードの力の根源って…………
「あっと。急ですまないが、今回はもう時間が来てしまったようだ。
ありがとう、まだ君のカードに絵を描くほどでは無いが、方向性は出来上がりつつあるよ。
君の心のキャンパスに描かれる絵も、そう遠くないうちに完成するかもしれないね。
とは言え、知っての通りここでは時間は意味を成さないが」
「え? あ、ちょっと……」
俺が死神のカードの事について聞こうと思った瞬間
意識がベルベットルームの外に飛ばされそうな感覚を覚える。
その寸前で、イゴールからの声だけが届いてきた。
「あなた様が新たに得た力。それは力を組み合わせ、魂を封入することで真価を発揮します。
封入する魂の協力が得られるならば、それは無限の可能性を実現する力にございます。
悪魔絵師が描くであろう札も、完成すればその形代となることでしょう。
……では、さらなる絆を、心の力を紡ぐその時までさらばですな……」
イゴールの声が遠のくと共に、俺の意識も遠のいていくのだった――
――――
「――ジ、セージ、起きなさい」
遠くから俺を呼ぶ声がする。誰だ。もう少し俺は眠っていたいんだが……
……んん? ってか、ここはどこだ? そして俺を呼ぶお前は……
掛け布団を剥ぎながら体を起こすと、目の前にはグレモリー先輩がいた。何でまた。
周囲を見渡すと、ここは駒王学園の旧校舎・オカルト研究部の部室だった。
……はて。ここはとっくの昔に焼け落ちて再建されなかったはずだが?
一体、いつの間に……?
「やっと起きたわね。いつまでたっても起きないから心配したわよ」
「……んん? すまないが、事情を説明してはいただけないか?
自分の正体や、今自分の目の前にいるのが何者かという事はわかるんだが
何故俺がここにいるのか、今何が起きているのかという事に関しては
全く理解が追いついていない」
はて。前も似たようなことがあったが、その時よりは俺の頭は冴えている。
前後不覚に陥っているという事はない。
「見ての通り、ここは駒王学園のオカ研部室よ。
あれから紆余曲折あって、再建までこぎつけられたのよ。
悪魔が……グレモリーが本気を出せば、これ位は容易い事よ」
自慢話を省いて話を纏めると、壊滅状態に陥った駒王町の復興のために
グレモリー家が中心となって、悪魔がその力を傾けているのだというらしい。
……仮にその話が本当だとして、何処にそんな力があったんだ、悪魔。
俺の記憶ではグレモリー家は傾いているし、悪魔だって人間界に支援を送れるほど
安定している状態じゃなかったような気がするんだが……
この辺は、バオクゥからも詳しくは聞いてないしな。情報の行き違いがあるのかもしれん。
情報源がグレモリー先輩ってのは、些か不安ではあるが。
「そこでセージ。あなたにも復興を手伝ってほしいのよ」
「……他を当たってくれ。何度も言うようだが、俺はあんたの……」
「それは承知しているわ。私ももうあなたを眷属にすることは諦めたわ。
それに、今のあなたを私が眷属にできるかどうかと言うと
『
私だって、無限に『
……なんだ? 俺はてっきり、街の復興と言う尤もらしい理由をつけて
俺の協力を仰ぎ、その流れで俺を眷属に引き戻す腹積もりなのだと思ったが……
……だが何だ? 何か、何かわからないが……猛烈に嫌な予感がしてならない。
「それに、あなたを眷属にしなくとも、あなたの協力を仰ぐどころか
あなたを私のものにすることだって不可能じゃないわ。
眷属と言う形以外で、あなたを私のものにすればいいだけの話だもの」
とんでもない事を宣うグレモリー先輩の言葉に頭を抱えつつも
俺はこの部屋に兵藤がいないかどうかだけ見まわす。
今の言葉に反応が無いという事で察しはついていたが、この部屋に兵藤はいないようだ。
……奴め、今どこに?
「それも他を当たってくれ。
あんたが何を言おうが、俺はあんたの所有物になるつもりなんか……」
「ええ。あなたはそう言うと思っていたわ。だから……
……イッセー。『彼女』を連れてきて」
兵藤は外に待機していたのか。にしても「彼女」?
あの兵藤と女の人を同時に待機させるって結構……だと思うんだが
そこはいいのか? ……いいんだろうな。兵藤の夢を知ってて手元に置いてるようなもんだし。
自分もその標的だって事、本当に理解してるのかね……俺には関係ないが。
……だが「彼女」って誰だ? 白音さんを引き戻したのか? それとも黒歌さん?
いずれにせよ、あれだけ言っておいて白音さんをまた眷属に引き戻すというのは
あまりにも格好がつかないし、黒歌さんは本人が承諾するとは思えない。
そう考えていた俺の目に飛び込んできたのは、思いもよらない人物だった。
俺が選択肢から外す程度には、彼女にはこの件に関わってほしくない人物。
そんな彼女を、兵藤の奴はいやらしい手つきで腰に手をまわしながら
部屋の中に案内してくる。
「……紹介するわ。私の新しい『
…………俺の目の前が、一瞬で真っ黒になった。
兵藤にセクハラされてることもそうなんだが、姉さんが、よりにもよって姉さんが
こんな奴の提案を飲んだという事に、俺は目の前の現実が受け容れられなかった。
「ど、どう言う事だこれは!?」
「どうもこうも無いわ。イッセーから聞いて、そこで決めたのよ。
『あなたを私のものにするならば、あなたの心を繋いでいるものを私のものにすればいい』。
正直、神器の一つも持っていないし朱乃のように特殊な力があるわけでもない
ただの一般人相手に『騎士』の駒を使うのは躊躇いがあったけれど
これであなたが私のものになるのならば、大儲けと言っていいわ」
「感謝しろよセージ! 俺から部長に頼み込んだんだ。
ああいうことするくらいには、お前この人の事好きなんだろ?
だから、お前が部長のものになればお前はこの人と一緒にいられる。
部長は戦力の増強が出来る。俺はハーレム王への道がさらに拓ける。
だれも損をしない、みんな丸く収まるいい方法じゃないか!」
……なんだこれは。今俺の目の前で何が起きているんだ。
姉さんは悪魔にさせられて、グレモリーの先輩の所有物どころか
この分だと兵藤の奴が何かしでかしてくれてる様子もある。
そして俺は実質姉さんを人質に取られたようなものだ。
姉さんに悪魔の駒があるという事は、もう姉さんはグレモリー先輩の所有物にされたわけで……
……って! 問題はこれだけじゃない!
姉さんには、旦那さんや子供もいるんだぞ!?
「おいちょっと待ってくれ! 岩戸山で言った記憶は無いが……
姉さんには旦那さんが……子供がいるんだぞ!?
そっちにちゃんと説明はしたのか!? いやそもそもそれ以前に……!!」
「説明はちゃんとしたわよ。『いつも通り』にね。
さ、『私の騎士』として、彼に挨拶なさい。彼もまた、私のものなのだから」
「……はい。私はリアス・グレモリー様の『騎士』、牧村明日香です。
話は聞いているわ、これからリアス様にご奉仕する者同士よろしくね、『セージ君』」
……この瞬間、俺は全てを察した。そして、理解し……絶望した。
…………俺のせいだ。俺が、姉さんの事を過去の憧れとしてしまっておかなかったからだ。
俺が、いつまでも姉さんに縋りついていたからそこを付け入られたんだ。
俺が……姉さんから…………何もかも、奪ってしまったんだ!!
俺は姉さんへの挨拶を返すことも無く、人目も憚らず
ただ、ただ慟哭を上げることしか出来なかった。
何か違和感を覚えたあなた。
赤土の芸風がわかってきたところだと思います。
イッセーが「自分から頼み込んだ」と言っているけれど
その他の態度を鑑みるにやはり誰ぞの入れ知恵である可能性が高く。
さて、アンケートの方ですがかなり長い間続く形になってしまいましたが
もう2~3話ほど投稿しましたら終了とさせていただきます。
引き続き、だらだらとした形ではありますがよろしくお願いします。