ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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Will44. 悪魔交渉 Aパート

ルキフグス領に飛ばされた俺達は、活動のために市場で物資獲得のための交渉をしていたが

その交渉におけるアモンの作戦が、思いもよらぬ相手をこの場に呼び寄せてしまったのだった。

 

――ユーグリット・ルキフグス。

 

散り散りになったルキフグスの悪魔を纏め、造幣局所在地と言う地の利を活かし

ルキフグス領を経済特区にまで発展させた、凄腕の悪魔。これは俺もすごいと思う。

確かルキフグスは経済に特化した知識を持つ悪魔だと何かで聞いたから

さもありなんと言うべきか。

 

話の流れで、俺達は受付窓口からユーグリットが使っているというバーに来ることになった。

しかも、VIP席だ。当たり前だが俺はこんなところに来たことが無いので

物珍しさから思わず見回してしまう。

 

「バーのVIPルームか。内密な話をする時の定番だな」

 

「内装も、人間のそうした店とあまり変わらないみたいですね」

 

……ただ単に、あまり外に漏らしたくない話も含まれているのかもしれないが。

下に見ている人間相手にまともな交渉を、領主自らが行うってのは

そりゃあ、示しもつくまいて。

 

安玖巡査や氷上巡査が言うように、アレな組織が密談をする場合の会場としての

立ち位置もあるのだろうから。そう言う意味でのVIP席だろう。

 

「アモンをも引き連れた人間。考えてみれば、そう言う意味でも興味があるな。

 サーゼクスのいいように使われたマヌケを、どうして拾う気になったのか。

 人間と悪魔の懸け橋、とやらをやりたいのであれば

 それこそサーゼクスに取り入ればいいものを。

 アモン、僕はその人間に興味が湧いた。そいつと代われるんだろう? 代われ」

 

「言われなくともそうするつもりさ。じゃセージ、後は頼んだぞ」

 

(お、おいアモン!?)

 

ユーグリットとアモンは勝手に話を進め、勝手に俺を表に出す。

そりゃ、何だかんだで身体の主導権はほぼ俺だし、冥界の事情にある程度詳しいって理由で

俺がチームリーダーみたいな扱いになってる。

成人である安玖巡査や氷上巡査は「土地勘が無い」って理由で辞退してしまったし

バオクゥも「自分がやったら敵を味方と誤認するとかとんでもないポカしそうな気がする」

というよくわからない理由から辞退された。

光実は「自分はサポート向き」として辞退。

ゼノヴィアさんも「巡査が辞退している以上、私が立候補するのもおかしいだろう」と

結局、消去法で俺がリーダーみたいな扱いになってしまった。

あれもこれも俺が独断で決めている訳ではないのだが。

 

とにかく、俺よりこういう場に詳しそうなアモンを代わりに据えていたのだが

そのアモンからいきなりバトンを渡された。急すぎるんだよ。

 

「……全く、アモンも勝手な。

 で、質問の答えだが。俺は別に悪魔と仲良しごっこがやりたいわけじゃないんだ。

 詳細は省くが、その時の俺とアモンの利害が一致した。

 後はなし崩しなところもあるが、目的を果たすまで俺はアモンと行動を共にしている。

 アモンが俺と行動を共にしている、とも言えるが」

 

実際、あの時俺はアモンがいなかったら身体が取り戻せなかった。

何せ悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の影響で兵藤のみならず俺の魂まで悪魔化したことで

人間のままであった俺の身体に戻れなかったのだから。

それをアモンが俺の身体に憑き、一時的にでも悪魔にしたことで

半ば強引に俺の身体を取り戻した。

その際、自分の身体を消失していたアモンに俺の身体を貸す、と言う条件で。

 

……兵藤にやっていたことを、今度はアモンが俺にやるという形になっただけの話だ。

まあ、あの時はああでもしないと自分が消えるかどうかの瀬戸際だった、ってのもあるんだが。

 

「まあ、それが普通だ。人間と悪魔の交流なんて、ビジネスライクなものでいい。

 人間と悪魔で情を交すなんて碌な結末にならない。

 過去幾度、『自分が関係改善の第一人者になる!』と宣った人間や悪魔が現れた事か。

 僕もその手の台詞は聞き飽きたし、ベリアル家にもそんな戯言を抜かした奴がいたっけか。

 

 だが結果はどうだ。このルキフグスも商売の都合上人間向けの商材を扱ってはいるが

 お前達の扱いは、身に染みてわかっていると思うがな。それが答えだ。

 ……そしてそれは、悪魔同士でも変わらない。変化を是としないゼクラムが牛耳っている以上

 サーゼクスの言葉は理想論に過ぎないし、姉上は己が理想に酔い

 結果として一つ……いや二つの家を混乱に陥れた。

 呪われているんだよ、グレモリーは。

 そしてその呪いは、自分達だけじゃなく悪魔……いや、関わる全ての者に降りかかる」

 

(……よっぽど拗らせてるな。サーゼクスに姉を寝取られたのがそこまで悔しいか。

 サーゼクス本人だけでなく、グレイフィアに向ける感情にまで、憎悪の色が見えているぞ)

 

とんでもない事を言っているアモンだが、俺もそれは同意見に思えた。

これは、振り向いてもらえない寂しさを紛らわすための……

だが、それを抜きにしてもグレモリーが呪われているってのは当たってる気がしてならない。

兵藤にせよ、俺にせよグレモリーと関わったばかりにこんなことになっている。

結果論と言えなくも無いが。

 

「そんな事よりも人間。本当にアモンは、サーゼクスを倒すと言っていたんだな?」

 

「ああ。俺としてはどっちでもよかったんだが、あの魔王のやり方で人間界に干渉されて

 事件事故を起こされるのは看過できないんでね。

 だったら、冥界で大人しくしてろってのが俺の率直な意見だ。

 人には人の、悪魔には悪魔の世界がある。それでいいと思うんだ」

 

「そいつについては警察の立場から言わせてもらっても同意見だ。

 何度悪魔の不始末をさせられたと思ってるんだ。

 俺達が知っているだけでこれだけあるって事は、全世界規模だったらどうなっている事か」

 

安玖巡査の方からも同意の声が出る。

安玖巡査の――超特捜課の事案とユーグリットはあまり関係ないと思うが

人間の世界からすれば、悪魔ってだけで同一カテゴリに見做される。

その手の事案は人間同士でも枚挙に暇がないのだから。

 

「ククク……当の人間には随分と嫌われたもんだなあサーゼクス。

 だがいいのか? 転生悪魔の中には、進んで悪魔になった元人間も

 かなりの数がいると聞くぞ?」

 

「さっきと同じだ。人の世で生きられないはぐれ者が、悪魔の世界に行くのは別にいい。

 逆に、悪魔の世界で生きられないはぐれ者が、人の世界に来るのもそれはそれでいい。

 

 ……悪魔の世界の理を、人の世に持ち込んだりしなければ、だが」

 

確か、レイヴェルさんの所に新しく入った転生悪魔がそのクチだった気がする。

人にはそれぞれ事情がある。そこにいちいち踏み入るのは、それこそ野暮だ。

それを口実に、他者を攻撃したりしない限りは。

 

「……その言い分だと、悪魔が自分ルールを人間に押し付けている風に聞こえるが?」

 

「違うのか? 俺達が始末している悪魔は、軒並みそんな連中だ」

 

「……と言うか、はぐれ悪魔なんだ。どういう理由ではぐれになったかまでは知らないが

 お前達の政策のしわ寄せが、俺達人間に降りかかっている。

 こんな状況じゃ、とてもサーゼクスの政策を諸手を挙げて歓迎なんて出来ないさ」

 

安玖巡査の体験談に補足する形で、俺も意見を述べる。

実際、俺は契約者相手に妥協する悪魔なんて聞いたことが無い。

……いや、兵藤が結果論で妥協したことはあった気がするが。

 

いずれにせよ、悪魔の駒なんてものが幅を利かせ、その不始末たるはぐれ悪魔が

人間界で悪さをしてる……となれば、人間はその対応をしなければならない。

そのための超特捜課だ。大公の討伐指令? 知らんなそんなものは。

 

「……なるほどな。アガレス家が討伐指令を出しているとしても

 はぐれ悪魔が発生する前に討伐指令を出すことは出来ないからな。

 いくら転生悪魔の立場が弱いとは言っても、そこは最低限保証されている。

 

 ……そうか、それが裏目に出た形か。フフフ……そうか。

 サーゼクス共々超越者だなんだとちやほやされていても、アジュカも存外大したことないな」

 

超越者。確か、悪魔の枠に収まらない存在をそう呼ぶって聞いたような気がするが

こういう「特別扱い」って、大抵碌な結果にならないんだよなあ。

と言うか、差別の大元って基本「特別扱い」とか「特権階級」が絡んでるし。

当人に理不尽を振りかざす気がなくとも、その権威に取り入ろうとする奴はいくらでも出てくる。

そいつが理不尽を振りかざせば、同じことだ。

 

「よし、アモンを抱えている人間に免じて我がルキフグス領内におけるお前達の活動については

 それをこのユーグリット・ルキフグスの名の下に保証しよう。

 具体的には、下級悪魔と扱いの上では同じにしてやろうというのだ。

 ああ、別に悪魔の駒を使えとか悪魔になれって言っている訳じゃない。

 これ以上半端者を増やされても、正直扱いに困るんでね」

 

「ケチだな。もっと何かないのかよ」

 

「サーゼクスの首か、姉上の身柄でも持ってきてくれたのならば話は別だが

 こっちにだって示しってものがある。いきなりどこの馬の骨とも知れぬ人間を特別扱いなど

 それこそ無理な相談だ。お前達は、僕の領地に要らぬ騒動を持ち込みたいのか?」

 

安玖巡査が食い下がるが、こればかりはユーグリットに分があると思う。

どう考えなくとも、俺達はここではイレギュラーもいいところだ。

そもそも、さっさと出ていくための支度をするための交渉でもあるはずだし。

 

「いや、扱いについては別にここのパスは要らないと言うか……

 暫く、冥界で動くのに不自由しない程度の水と食料、魔っ貨の確保が出来ればいいんだが。

 具体的には、今からグレモリー領に行きたい。そこからなら、人間界に帰る手段の当てもある」

 

「ああ、人間はそういうのが必要だったな。全く面倒な生き物だ。

 こんな脆弱な生物に、なんでサーゼクスは、グレモリーは肩入れするのかよくわからん」

 

お前らだって太陽の光だめじゃないか、とは言わないでおこう。

とにかく、俺としては普通に飲み食いできる水や食料があれば最悪何とかなる。

ここからグレモリー領までの距離や方角程度の情報ならば、検索すればいい。

 

「……いや、待て。お前達は、グレモリー領に行くと言ったな?」

 

「そうだが……足を用意してくれる、なんて話じゃなさそうだな。

 今までの話の流れで、そこまでしてくれるとは思えないが」

 

……なんだ? 話の流れが、急に変わったぞ?

俺達がグレモリー領を目指しているのなら、何だって言うんだ?

 

「……そうだ、それがいい。

 人間。僕もグレモリー領に向かう事にするよ。

 姉上の身柄が欲しいのならば、誰かが持ってくるのを待つのではなく

 僕の方から出向けばいいだけの話だ。

 言うだろう?『求めよ、さすれば与えられん』とね」

 

「……なるほど、そっちにもグレモリーに用事はあるわけか」

 

理由がある。こっちは冥界での活動を保証したい。

向こうにもグレモリー領に用事がある。

そうなれば、自分が出向くことで顔パスを利かせるってわけか?

 

……しかし、少し俺には引っかかりを覚える。

そこまで、グレイフィア・ルキフグスに執着する理由。

思い当たる節があるような、考えたくないような。

 

……もしかすると、こいつは……

 

「ああ、そうさ。僕は姉上に責任を取ってほしいんだ。

 勝手に出ていき、勝手に家を……僕を捨て、勝手に呪われた血をひり出す。

 姉上は自由を、正義を成したつもりかもしれない。

 

 ……だけど、それはルキフグスに……僕にとっては、屈辱だったんだ!

 姉上は僕の気持ちを知ってなお、サーゼクスなどにうつつを抜かし!

 あまつさえ、取り返しのつかないことをした!」

 

 

……やはり。俺にも、ユーグリットの言わんとすることはわかった。

こいつも、俺と同じなんだ。

決して手の届かないものに対して、想いを募らせ、叶わぬ想いだけが積もりあがる。

そして、やがては自壊する。

 

ついこの間、ああ言う事があった矢先にこれか。

そう言う事なら、こいつの提案を飲むことにするか。

 

 

「……わかった。そっちの条件を飲もう。

 こっちとしても、冥界に詳しい者がいた方が心強いし

 何より、個人的な話だが今の話……他人事に思えなくてな」

 

 

「…………何ぃ!? 人間風情が、僕のこの想いがわかる、だと!?

 貴様如き人間に何がわかると言うんだ!

 姉上に対する、僕のこの想い! それを知った風に言われるのは業腹だ!!」

 

……しまった。完全に地雷を踏んだ。

傍から見れば理不尽かもしれないが、なまじ理解できるだけにやってしまった。

まして、今回みたいに下に見ている相手に自分の気持ちが理解できる、なんて言われた日には。

こいつにとっては、そんな安っぽい気持ちじゃないって事だろう。

 

問題は、俺にそんなつもりは微塵も無かったことなんだが……言っても通じないだろうな、これ。

だが、次にユーグリットが宣った言葉に、俺は思わず耳を疑った。

 

「大体だ! 姉上は僕のものになるはずだったんだ!

 姉上の髪、姉上の瞳、姉上の唇、姉上の乳房、姉上の臀部、姉上の……」

 

「……なに? お、お前……まさか」

 

え? なに? そう言う意味なの?

いや、そりゃ俺だって姉さんにそう言う感情が無かったって言えば嘘だし

そもそも、そう言う感情があったからこそああいうことをしたわけだし。

 

……だが。仮にも、血の繋がった姉じゃないのか?

いや、そりゃ血の繋がった妹を眷属――と言うかハーレム――に加えた前例は確かにあるが。

そう言う意味で、悪魔と人間で倫理観は異なってるのは間違いないだろう。

まして、純血が減少傾向にある悪魔だ。純血悪魔が増やせる組み合わせならなんでもいい。

そういう考え方だって、ゲスいが出来なくもない。

 

 

「それとも、お前だって僕と同じように、姉に欲情し、手籠めにしようと企んでいたのか?

 だとしたら将来有望な人間だな! 僕がやり方を教えてやろうか?

 ルキフグスとしては専門外だが、この手の事は予行演習済みだ。

 

 いや、あるいはもう既に済ませたか? だったら感想を聞かせておくれよ。

 『お姉ちゃんの具合はどうだった』?」

 

 

 

――次の瞬間、俺はユーグリットの鼻っ柱に鉄拳をめり込ませていた。




コンセプトはタイトルどおり。
マッカくれ→魔石くれ→宝石くれ→あばよ!
こう言う事されればあくまをころしてもへいきになりますとも。

>バーのVIP席
こういう話をするときには料亭と並んで定番の場所。
当然、セージは来たことが無いですしゼノヴィアも言わずもがな。
ミッチは怪しいところですが、多分無いかと(貴虎ニーサンならともかく)。
巡査二人が言うように、人間の世界のそれとあまり変わらないようです。
つまり趣味が悪い。

>バオクゥがリーダー蹴った理由
ワレアオバ。
ネタ抜きにしても、この子はチームリーダーってガラじゃないですしね……


シャドウに罪を暴露された直後に、第三者が自分の罪と似たようなことを
自慢げに話している件について。
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