ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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Bパートです。
今回は貴虎ニーサンのプライベート。
なのでかなり拙作独自設定を交えてます。

設定の擦り合わせを考えるのは難しいけどたーのしー


Melon7. 閉ざす者の問いかけ Bパート

――07:26 P.M.

  呉島(くれしま)家・屋敷

 

「兄さん、北欧の神に会ったんだって?」

 

「ああ。大した話はしてないがな」

 

その日の仕事を終え、家で光実(みつざね)とその日に起きたことの情報交換を行う。

その最大の原因は、タワー上空のクロスゲートというのが何とも言えないが

光実と面と向かって話す機会は、最近でこそ出来てきたが

今まで確保できていたかどうかと言われると怪しい。

ただ、今こうして話しているのも内容が内容なだけに

仕事の延長線上になってしまわないかが心配だが。

 

「光実の方は学校はどうだったんだ?」

 

「……平和だよ。他所の――特に、駒王町の有様と比べたら同じ日本なのかって位には平和だよ。

 町には頻繁ではないにせよインベスやアインストが目撃されてるってのに」

 

光実の言う通り、沢芽(ざわめ)市は駒王町と比べれば平和だ。

いや、あの町が特別おかしいレベルであるのは国会でも指摘される規模ではあるが。

だが、だからって沢芽市の防衛を疎かにしていい理由にはならない。

何せ、もう2日後には会談を控えているのだ。警備は厳重にすべきだろう。

 

「そうだ。凌馬(りょうま)から話があったかもしれないが

 明後日の神仏同盟と北欧神話の会談に重なる形で駒王学園から企業見学の学生が来る。

 光実には凌馬と共に案内に回ってほしい」

 

「……わかったよ」

 

……む? 随分と不機嫌そうだな?

駒王学園の生徒の相手をするのが嫌なのか、凌馬と組むのが嫌なのか。

まぁ、凌馬は性格の癖が強すぎるのは私も認めるが……

 

「……不服か?」

 

「兄さんがやれって言うんならやるけど……

 正直言って、駒王学園の生徒ってあまりいい噂を聞かないんだ。

 こういう事は言いたくないけど……あんなクズの相手をするんなら

 新型ロックシードのテストに参加した方が、よほどためになるんじゃないかって気はするよ」

 

「……光実。今のは本当に失言だぞ。

 ノブレス・オブリージュ、お前も知らないわけではあるまい?」

 

高貴なるものには、高貴なる責務が伴う。それは決して、他者を見下す理由にはならないし

理由にしてはならない。私もそう思っていたが……プロジェクト・アークの件を顧みたり

ロキに指摘されたことを思い返せば、見下していたのは私だったのかもしれないな……

 

「……わかったよ。ただ、ロックシードとドライバーは持っていくよ。

 そのやって来る駒王学園の生徒が悪魔だったりしたら、生身じゃ太刀打ちできないしね。

 駒王学園にはいるらしいんだ、人間界に紛れ込んだ悪魔が」

 

光実の提案を受理する。光実が言うには、駒王学園という学校は悪魔の勢力下にある学校らしい。

そうなれば、学校内に悪魔が巣食っている可能性は高いだろう。

そして、その悪魔が人間に危害を加えるタイプの悪魔ならば……

アーマードライダーの力は必要だ。

 

そういえば、悪魔についてロキは何も言っていなかったな。

という事は、フューラー演説で語られた以上の情報は提供する気はないという事か

或いは、フューラー演説の内容は事実と相違ないという事だろう。

 

その事を考えれば、光実をこの件に回したのは失敗だったかもしれん。

だが、私が出向いてどうなるというのだ。ここは……光実に頼るとするか。

光実にも龍玄(りゅうげん)がある以上、下手な悪魔に後れをとることは無いと思うが……

一応、凌馬にもこの件は話しておくか。

 

「悪魔が出向いてくるとなると、話は変わって来るな。

 私の方からも凌馬には話しておくが、万が一にも会談に影響が出ては拙い。

 こちらでも最善は尽くすが、光実もくれぐれも気を付けてくれ」

 

……そうだ。何が来ようとも、我々のやることは変わらない。

世界を取り巻いている悪意から、人類を守ること。

それが力を持つ呉島の――私の為すべきことだ。

 

貴虎(たかとら)お坊ちゃま、アップルパイが焼きあがりました」

 

「……フッ、あの『不味い』アップルパイか。楽しみだな。

 それと藤果(とうか)。前にも言ったがお坊ちゃまはやめてくれ。私ももうそんな年じゃないし

 光実が見ているんだぞ。やめてくれないか」

 

私達に声をかけてくるのは呉島家に仕える使用人、朱月(あかつき)藤果。

私にとっては幼いころから共に過ごしてきた、家族のようなものだ。

私も光実も、それぞれ職務や勉学に務めているため

その間の家事全般を彼女に一任している形だ。

その腕は料理においてもそつなく奮われるが……何故だか、アップルパイだけはやたらと不味い。

私も仕事柄、シャルモンの洋菓子を食す事はあるが……

それと比較することが、何かの間違いだというレベルで酷いのだ。

 

……だが、私はこの「不味い」アップルパイが嫌いではない。

確かにシャルモンの洋菓子は「美味い」が、「美味い」以上の付加価値がない。

良くも悪くもプロの仕事だ。

 

対して、件のアップルパイは同じ洋菓子とは言えないレベルで「不味い」。

だが、それでもそのアップルパイを藤果と、光実と一緒に食す時間は……

私にとっては、かけがえのない時間だ。

だから、私はシャルモンでアップルパイだけは頼んだことがない。

藤果の「不味い」アップルパイ以上のものは、如何にシャルモンと言えど

用意できないだろうと思っているからだ。

 

「フフッ、僕は席を外した方がいいかい? アップルパイは部屋で食べるし。

 それに、兄さんだって逆におっさんって言う年でもないだろう?」

 

「生意気を言うな光実。態々部屋で食わずとも、ここで食べていけ」

 

……全く、光実め。要らんところが子供らしくないな。

いや、あいつも高校生だ。子供ではあるが、いうほど子供でもあるまい。

だからこそ私はあいつに仕事の手伝いを可能な限りさせているのだ。

 

それに、今この世界を取り巻いている情勢は、一言では言い表せない状態だ。

昼間、ロキ殿が言っていた事にも関連するのだろうが、だとしても我々人類がなすことは

人らしくありつつ、懸命に生きるまでだ。その導となるのが、呉島のやるべきこと……

 

……そう、親父はそう言っていたがな。

私は言うほど、人類は呉島が先導すべきだとは思っていない。

人が押し付けた考えなど、長続きするわけがない。

そんな脆いもので人がまとまるかと言われれば、否だ。

だからこそ、私は親父とは別のノブリス・オブリージュを実践したいのだが……

 

「難しい顔をされては、不味いアップルパイがさらに不味くなりますよ?」

 

「……む、あれ以上不味くなられては食えたものではなくなるな。

 そうだな、一息付けよう。お茶も頼めるか?」

 

私の問いかけに、藤果は二つ返事で了承したかと思えば

瞬く間に人数分のティーセットが出てきた。彼女の手際の良さは、昔からよく知っている。

そんな実力を持った彼女だからこそ、我々は期待に応えなければならない。

それは凌馬の知識にも言えることだ。

まぁ尤も、こちらに関しては向こうはどこ吹く風なのだろうが。

 

少なくとも私は、そうありたい。

光実もできればそうして欲しいが、光実にも光実の生き方がある。

実際に決めるのは光実自身だが、私がその手本になれればそれに越したことは無い。

そこまで考えたところで、私は頭を切り替えて不味いアップルパイを一同で食べることにした。

 

――――

 

夜。

私は当日に備え、警備員用の見取り図を更新したり

企業見学に参加する生徒の名簿を作ったりしていた。

この程度なら、片手間で出来る以上空き時間に速やかに済ませてしまいたい。

そう考え、作業をしていた。

 

駒王学園の生徒名簿を作ろうというところで……不意に視線を感じた。

振り返ると、藤果がお茶を用意して立っていたのだ。

 

「すみません、ノックしたのですが返事が無かったもので……」

 

「いや、私の不注意だ。お茶はありがたくいただこう」

 

お茶を飲みながら、名簿作成を仕上げる。本当にこの程度は片手間の仕事だ。

……なので、当日が円滑に進むように少し生徒の情報を見ることにする。

その情報を見た時、私は何かしらの違和感を覚えた。

 

――これは作られたデータ、あるいは改竄が加えられている、と。

何のために? 考えられるのは、身分を偽る必要がある時くらいか。

まぁ、それを暴いたところで高校生に何ができるというのだ。

だが……グレモリー、グレモリーか……どこかで聞いた気がするが……

 

 

……思い出した。トルキア共和国だ。中東某所にあるこの国は

国一つ単位でユグドラシルの研究施設である。

困窮していた国を経済支援の名目でユグドラシルが出資。

その代価としてユグドラシルの研究に全面協力させたという経緯がある。

 

その国で、72近い家があり、家同士で何やらやっているらしい。

私ではなく鎮宮(しずみや)家が陣頭指揮を執っているため、詳しくは知らないが……

確かその72近い家の中に、グレモリーというのがあったはずだ。

 

最初そこの出身かと思ったが、このリアス・グレモリーという少女は

どちらかと言えば欧米系の顔立ちだ。中東に位置するトルキアの人種とは微妙に噛み合わない。

まぁあの国はアジア系の人種が多いのだが、そうだとしても噛み合わない。

まぁ、海外からやってきている以上は出稼ぎか、良家の子女と言ったところか。

前者ならともかく、後者が出先の国でもめ事を起こすとは考えにくい。

国際問題になりかねないからだ。

そう考え、私はこの少女については最低限の情報を閲覧するに留める。

そうしてある程度読み進めたところで、後ろに立っている藤果の視線を感じた。

 

「……藤果。君は口が堅いから心配してないが、これは一応仕事の資料だ。

 盗み見は感心しかねるぞ」

 

「あ、申し訳ありません! ですが、この少女の名前に見覚えが……」

 

そう言って藤果が指さしたのは、姫島朱乃という黒髪の少女であった。

藤果は確か孤児院出身だったと思うが……その時の知り合いか?

だが、彼女の経歴も見ると姫島家という五大宗家の一つの跡取りだったが

ある時、姫島家は宗主である姫島朱璃が謎の怪死を遂げたことで実質の断絶状態になっている。

この朱乃を次期宗主に据えることなく、だ。

当時彼女が幼かったというのもあるのかもしれんが……

強引にでも、宗主を据えるべきだったのではないか? まぁ、私が関与すべきことではないか。

 

それより。何故藤果が姫島の跡取りの名前を? 私には、その方が気になった。

 

「藤果、何故彼女の名前に見覚えが?」

 

「いえ……初めてお話しますが、私のいた家、朱月家は姫島の分家だったのです。

 ですがある時、朱月家は姫島家によって滅ぼされてしまいました。

 その時に両親を失い、私は沢芽児童保育館に引き取られました。

 後の事は、お坊ちゃまもご存じのとおりです。

 ……最も、朱月が姫島に滅ぼされたという事実を知ったのは最近の事ですが」

 

分家が本家に滅ぼされる、か。跡取り問題でもあったのだろうか。

そうなれば、藤果にとって姫島は親の仇の一族というわけか。

何かしらの問題が起こるというわけではないだろうが……

全く、面倒な生徒がやってきてくれたものだな。

 

「藤果。態々言う事でもないと思うが……変な気は起こすな。

 お前に何かあれば、光実も、私も悲しむ。当日はいつも通り我が家の留守を頼むぞ」

 

「……はい」

 

茶器を藤果に返し、私は明日に備えて眠ることにした。

会談も、企業見学も一筋縄ではいかなさそうだ。そんな気がしてならない。




色々独自設定交えてます。

>朱月藤果
鎧武Vシネより。
拙作では存命ですが、沢芽児童保育館出身というところは変わってません。
また、拙作設定として実家が姫島の分家ということになってます。
名字とは言え「朱」の文字を冠している事と
朱乃絡みというか姫島家のエピソードの補強(出来たら)の予定です。

……あと、堕天の狗神の設定を拙作では碌に拾えないので。
(拙作時間軸では幾瀬鳶雄が過去に死んでますし)

>姫島家
いや、朱璃殺したりした件を被害者側の言い分だけを真に受けたら
こういうことしてもおかしくないと思うんです。
要は、朱月家(分家)が姫島家(本家)よりも強い力を持っていた。
だから、邪魔になった姫島家が朱月家を滅ぼした。
藤果はその悲劇を運よく(?)回避して現在に至る、と。
そういえば呉島と姫島も似てますしね(島しかあってない)。

>トルキア共和国
舞台斬月より。
設定はほぼ舞台斬月と同じですが
こちらでは作中72柱の名前がちょくちょく出ていたことを拾ってます。
それ故に、貴虎ニーサンが勘違いする羽目に。

>光実
今のところ黒化フラグは立ってません。兄弟仲も悪くないですし。
全く違う要因で黒化しそうな気配はありますが。

……ほら、シャドウとか顕現する下地はこれでもかって整ってますし?

パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)と戦極ドライバー(黒影)、使うならどっち?

  • パーソナル転送システム(ゲシュペンスト)
  • 戦極ドライバー(黒影)

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