いろいろあって遅れてました。またです。
冥界での活動をしやすくしようと、いくらか人間に好意的であろうグレモリー領へと来た俺達。
そこに俺達の案内として同行してきたユークリッド・ルキフグスだったが
邸内で現れた現当主、ジオティクス・グレモリーとのやり取りの中で
つい、彼は己の感情を爆発させてしまった。
「姉上に公の場であんな格好をさせておいて! 辱めてないとでも言うつもりか!?
それも当主であり弟である僕の前で!!
あれでルキフグスに要らぬ風評被害が立ったらどう責任を取るつもりだったのだ!!
さっき言ったがもう一度言ってやる! 我々が! いつ!? グレモリーの臣下に下ったのだ!!」
その物凄い剣幕は、彼が魔王に比肩するという話を確定づけるには確かなものだった。
その剣幕に周囲の者は気圧されるばかりであった。俺も勿論、結構ヤバい。
だがその重圧を押しのけるように、奥から銀髪のメイド服の女性が現れた。
「やめなさい、ユーグリット。この件に関しては旦那様は無関係よ」
「あ……姉上!?」
グレイフィア・ルキフグス。渦中の悪魔のお出ましであった。
「この格好は私が自分の意思で行っていること。
これについてサーゼクス様や旦那様を責めるのは筋違いよ」
その言葉を聞いた時、ユーグリットの顔から表情が無くなった――気がした。
「……それが。それが姉上の意思か!
僕の気持ちも知らないで! 折角見つかったルキフグスの家の者が、その家の名を騙り愚弄し!
家を捨てるどころかその家に砂をかけるような真似をして!
一体ルキフグスに、僕に何の恨みがあって! 家の名を貶めるような真似をするんだ!?」
「……言いたいことはそれだけかしら、ユーグリット。
私がいつ、ルキフグスの名を穢したというのかしら?
私はただ、ルキフグスの者としてルシファーに仕え――」
「そのルシファーに命令された事でも無いのなら、直ちにやめろって言ってるんだ!
これは僕だけの意思ではない! 僕は今、ルキフグスの名を背負ってこの場に来ているんだ!
ルキフグスは悪魔の経済を双肩に担う悪魔! それは姉上も知っているだろう!
その名を騙りルシファーどころかグレモリーよりも下であるかのように振舞うその姿勢!
『我々はルシファーにこそ仕えども、グレモリーの下にあることはあり得ない』!
姉上のその態度が、振る舞いが! ルキフグスとしての活動をやりづらくさせているんだ!」
グレイフィアさんの言葉を遮るように、ユーグリットが激昂する。
しかも、あれだけの怒号をあげているにも関わらず互いに表情の変化が乏しい。
どうやら余程、グレイフィアさんの所業が腹に据えかねていたようだ。
言われてみれば、「ルキフグス」としてのグレイフィアさんと言うよりかは
「グレモリー家の一員」としてのグレイフィアさんの方が印象に残っている。
俺自身グレイフィアさんとの接点は無いに等しいのだが。
「……語るに落ちたわね、ユーグリット。
家と言う旧時代的なしがらみが嫌で、私はルキフグスを出たのよ。
私がサーゼクス様を選んだのはルシファーだからではない。サーゼクス様だからよ。
あの当時、まだサーゼクス様はルシファーではなかったことくらい
あなたも知っているでしょう?」
「そうだね。そのことについては許せないけど今は置いておこう。
では何故姉上は、出奔した家の名前を、未だに騙っているんだい?
僕の所にも色々と話が来ているのだけれども
既に行動を把握していない姉上の事なんて、答えようがなかったよ」
……つまり、なまじルキフグスなんて名乗っているもんだから
その問い合わせは当たり前だけどルキフグスに行く。
だけど、ユーグリットを始め現ルキフグスはグレイフィアさんが何をしているかなんて
詳細を知っているはずがなく。
……聞いてて頭痛くなってきた。まさかああもクソ真面目そうなグレイフィアさんが
こんな後先考えない恋愛スイーツ()脳だったとは。
「それだけじゃないよ姉上。僕にとっても甥っ子にあたるミリキャス君に関してもだ。
僕も悪魔だけれども鬼畜ではないからね。貴重な純血悪魔である彼を
『存在を認めない』なんていうつもりは無いさ。
……だが。いくら家を出た後に産み落とした子供だとしても。
その子供が純血であり、かつルキフグスの名を未だに使っているにもかかわらず
僕達に生誕の報せの一切も無かったというのはどういうことだい?
お陰で出産祝いの諸々を贈ることが出来なかったじゃないか。
ルキフグスを名乗るのならば、自ら産み落とした子について
僕らルキフグスにも知らせるのが礼儀じゃないかい?」
「……ルキフグスの家に、祝ってもらおうなどとは思っていないわ」
……完全に外野から判断させてもらうと。
なんだか、グレイフィアさんは妙に意固地になっている気がする。
そしてこれは、俺にとっては見覚えのある光景だ。
そう考え、俺は兵藤を注視する。
――そう。これはいつぞや、グレイフィアさんが話を持って来た
ライザーとグレモリー先輩のレーティングゲームに至る前のやり取りに近い。
あの時も兵藤が向こう見ずに突っ込んだおかげで若干だが話がこじれた。
またああなっても困るし、それ以外にもこいつはやらかしがあった気がする。
今にして思えば、家のしがらみから抜けたがっていたグレモリー先輩と
グレイフィアさんは似た者同士だったから、あの話が出たとも考えられる。
最終決定を下したのは、他の誰かだろうけれど。
いくらなんでも、家の将来に関わることを給仕の、眷属の一存で決められるわけがない。
たとえグレイフィアさんが、「
そんな家の将来を左右するほどの権限が、与えられているものだろうか。
……魔王の眷属ならば、あり得るのだろうか。
「……だったら。何故グレモリーを名乗らないんだい。
ルキフグスを捨てたというのなら、嫁いだグレモリーを名乗るのが筋じゃないのか。
いくらサーゼクスがルシファーだと言っても、生まれはグレモリーなんだから
姉上がグレモリーを名乗ることに、何ら不思議は無いだろう。
僕達ルキフグスが仕えていたのはルシファーと言う『家』だ。『名前』じゃない。
……もっと言ってやろうか。お飾りのルシファーに仕えたなどとあっては
『ルキフグス』の恥だ。そしてルシファーと言う『家』が実質消滅した今
我々ルキフグスが成すべきはルシファーに仕えることじゃない。
悪魔の経済基盤を支えることだ。このルキフグスの権能と義務、忘れたなどとは言わせないよ」
「それで、あなたは納得するのかしら?
私が、あなたの姉でなくなる。あなたの手の届かないところに行ってしまう事に」
ユーグリットはやけに饒舌だが、その声は絞り出しているものであるという印象を受ける。
反対に、グレイフィアさんは淡々とユーグリットの言葉に答えている。
――しかし、それは今のユーグリットの感情を逆撫でするには十分すぎたようだ。
「――話をすり替えないでくれ!
初めから、僕のものになるつもりなんか無かったくせに!
他者に嫁いでおきながら、あたかも僕の手が届くなどと匂わせるような真似をして!
そして僕が踏ん切りをつけようとルキフグスの為すべきことに邁進している矢先にこれだ!
……姉上は一体どこまで、僕の気持ちを弄べば気が済むんだ!
姉上がどう思おうとも、僕は姉上の事を一時たりとも忘れた事なんてない!
それなのに……それなのにっ!!」
実姉を犯そうとしていた者と同一存在とは思えないほど、その感情は純粋なものに思えた。
いや、純粋だからこそ一線を超えた関係になろうとしていたのかもしれない。
……俺が、そうやろうとしたように。
ヒートアップする一方のユーグリットとグレイフィアさんの口論。
成程確かに、これはユーグリットにグレイフィアさんの事を語らせたら
日が暮れるというのは間違いじゃなさそうだ。冥界に暮れる日は昇ってないが。
しかし、こっちの用事はほぼ済んだとはいえいつまでこの口論に付き合っていればいいんだ?
流れで協力している形だが、最後までユーグリットに付き合う義理は無いんだがなあ。
……そりゃあ、心情的にはユーグリットは放ってはおけないが。
そう、どうしたもんかと思っていた矢先であった。
途轍もない、強大な魔力をアモンが感じ取ったのは。
『セージ。でかいのが来る。間違いなくこいつは……!!』
(お前がそう言うって事は……!)
アモンが強い反応を示す。ここはグレモリーの関係地。
そこから導き出される答えは一つしかない。
……マズい! ここでユーグリットとサーゼクスが鉢合わせたりした日には!!
『心配するなセージ。騒動がでかくなりすぎるようなら俺が表に出る。
今の俺がサーゼクスとガチでやり合えるかと言うと怪しいが、抑止力くらいにはな』
「グレイフィアの帰りが遅いから気になって来てみたが
これは一体どういうことだい? 随分と千客万来のようだけど」
「サーゼクス!!」
やはり。以前サーゼクスが目の前に現れた時は
アモンも今にも飛び掛からんとしていたが
今回はそれよりもヤバい、ユーグリットがいるからなのか
幾分か、アモンの方は落ち着いている。
……それだけに、ユーグリットの動向がかなりヤバいんだが。
「も、申し訳ありませんサーゼクス様。ユーグリットに捕まってしまいまして……」
「ユーグリット? ああ、ようやく会えたね我が義弟!
いつもグレイフィアが世話になっているよ、君には――」
「よくも抜け抜けと僕の前に姿を現せたな、偽りのルシファーめ!!」
――ヤバい!
これは敵うかどうかじゃない。ここでユーグリットを止めないと、とんでもないことになる。
俺とアモンは意見が一致したらしく、アモンに交代してなんとかユーグリットを止めようとする。
周囲の大半は気圧されてしまっているのか、身動き一つ出来ていない。
俺もよく、アモンに交代しているとはいえ飛び出せたもんだが。
「はっはっは、随分熱烈な歓迎じゃないか。お兄ちゃんは嬉しいよ」
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「坊主、落ち着け! サーゼクスも煽るな!」
必死にアモンの力でユーグリットを止めるが
魔王に比肩するという伝聞はハッタリなどではない。
それをまざまざと思い知らされるがごとく、制止が効かない。
だが。アモンに交代したことでこうして後ろから冷静に状況を見ることが出来るのだが
だからこそ、わかった事がある。
――サーゼクス。こいつ、煽りなんかじゃなく素で言っている!
(ダメだアモン、サーゼクスは素で言ってる!
ユーグリットがどんな気持ちをサーゼクスに向けていたか。
グレイフィアさんとの確執の一切合切。この全てが理解できてないような素振りだ!)
そう。グレモリーは確かに身内に対する情は篤い。
だがそれは逆に、自分の感情を相手の心を慮ることなくぶつけかねない事でもある。
そう言う意味では、ユーグリットの性質は極めてグレモリーに近いが……
まあ、本人には言わないでおこう。
このサーゼクスにしたって、ようやく会えた義弟との出会いに感激しての事だろう。
当のユーグリットからすれば、不倶戴天の敵が目の前に現れた上に
自分の気持ちを愚弄されたようなものなのだろうけど。
……あれ。これもなんか前に似たようなことが。
半ば暴走状態に陥っているユーグリットは次第に息を切らし、動きが緩慢になっていく。
この辺は人間と同じと言うか、あの我を見失った状態では
たとえサーゼクスとやり合う形になっていたとしても
ユーグリットに勝ち目は万に一つも無かっただろう。
とは言え、これは却って好都合と言えるが。
「おいおいアモン。僕は煽ってなどいないさ。義弟に会えた喜びを素直に出しただけさ。
その証拠に彼も感極まって涙を流しているだろう?」
……無論、怒りとか憎しみとかそう言う方向で感極まって溢れた涙であるのは間違いない。
これについてはグレモリー先輩もユーグリットに対して同情的な目を向けている。
そりゃあ、あのポンコツ具合はただ事では無かろうが……
……ん? じゃあ、グレイフィアさんはそのポンコツに引っかかったって事か?
ミリキャスに関しては、詳しい人となり――悪魔となりを知らないので言及は控えるにしても。
「……この面が喜んでるように見えるか? 昔からてめえは自分の愛情とやらを押し付けて
人の意見を全く聞かなかったよな。ジオティクスのおっさんの受け売りか?
そんなんでよく婚姻できた――いや、悪魔だからこそそんなんでも婚姻できた。
そう言った方が正しいか」
「僕は愛情の押し売りなどしていないさ。無論、父上もリーアたんもね。
結婚もしていない君に言われても、説得力に欠けるよ。アモン」
どうだか。俺はアモンの内側で思いっきり毒づいた。
グレモリー先輩には悪魔としての在り方を強要されかけたり、ジオティクスに至っては
娘に反抗的だからと言う理由で処分されかけたんだがね。
だがアモン。どうしてそう言う結論に至ったんだ?
愛情の押し売りって点じゃ、正直俺はサーゼクスの事を偉そうに言えん。
(そもそもデーモンに愛情なんて概念は原則として無い。何事にも例外はいるにしてもだ。
そこから愛を会得したのが近現代の悪魔だとか錯覚してる奴はいるかもしれんが
それにしたって、人間の猿真似に等しいし、その参照先の人間の愛情だって
そんなに崇高なもんじゃないだろ。なあセージ?)
……言いたいことはわかるが、耳の痛い事を言ってくれるなアモン。
だが確かに、人間の愛情も言うほど素晴らしい物とも言い切れない。
それを体現してしまっているのが自分自身であるが故に、何も反論できない。
『セージを弄るのはその辺にしておけ。それより、奴がここに来たのは
自分の嫁を迎えに来ただけじゃなさそうだぞ』
フリッケンの言葉に、アモンもサーゼクスに注視する。
ユーグリットの暴走で話の腰が折れただけで、確かにサーゼクスは
用事があってここに来たようだ。
「思わぬ来客に面食らってしまったが、今日僕が来たのは他でもない。
アモン……いや宮本成二。君達に、今度行われるレーティングゲームに出てもらいたい」
Cパートは書けているので近々上げます。
>ルシファーは実質存在しない
リゼヴィムがルシファーとしての役割果たすかと言うと疑問ですし
ヴァーリはあんなですし。サーゼクスは名ばかりですし。
名前だけの魔王に付き従うのを、よしとしなかったのがここのユーグリットです。
……他の所にも、そう言う悪魔はいるかもしれませんね。
>グレイフィア
スイーツ()認定されてしまってます。
なれそめをさも美談のように語っていますが
こうして「家のものが生き残っており、かつ家の活動を行っていた場合」を考えると
旧姓を名乗るのはリスク以外の何者でもないかと。
その名を讃えるため? その結果がメイドのコスプレでは……
似たようなことは、どこぞの魔王にも言えますが。
>ユーグリット
姉は好き、でもその姉が家の害にしかならない事ばっかりやっている。
愛と憎しみ、相反する感情が大きく渦巻いています。
もしユーグリットが双子座だったらいがみ合う双子のリアクターになれるかも。
この世界スフィア無いですけど。あってたまりますか。
>セージ
罪は自認したけど、「お姉ちゃん」に対する罪悪感が消えたわけではなく。
その辺現在のユーグリットとは最大の相違点。
やらかした姉と、やらかしをしてしまったお姉ちゃん。全然違う。
それ故にグレイフィアをスイーツ()認定したり、ユーグリットも一歩引いてみることが出来ていたり。
>サーゼクス
愛情のお仕着せ。敵対者に容赦ないと言えば聞こえはいいかもしれませんが
その片方で味方にべた甘。為政者としてはあまりいい姿勢ではないですし(もっと言えばそれこそ独裁の元……)
いくら未来でイッセーがその座につくと言っても
「じゃあなんでこんな奴魔王、それも代表格にしたんだ」になる。
ユーグリットを綺麗にするために汚くした、では
HSDD原作とやってることが変わりませんが、見方を変えればそんなもの。
偶々、原作では旧魔王派が汚く、サーゼクスが都合がいい位矢鱈綺麗だった。
それだけの話かもしれません。