レーティングゲームに参加するためのメンバーを選ぶことになった俺。
今回は俺一人では戦えない。そこに黒歌さんと白音さんが名乗り出たのだが
彼女達だけでは、少々心許ない。
そんな折、部屋の扉をノックする音が響く。安全を確認して扉を開けると
そこには何と、白いメッシュの入った長髪を靡かせた男――
「やあやあ久しぶりだねぇ。はじめましてもちらほら見受けられるようだが」
「……何をしに来たんだ」
率直な感想である。そもそもこいつは俺が
フリードや私兵を使って俺を生け捕りにしようとしてきた奴だ。
こんなところで何をしようと言うんだ。まさか、こんな戦力差で俺を生け捕りはあるまいが。
「そう怖い眼をしないでくれたまえ宮本君。
今日は
彼にそのテストを行ってもらいたくてね。
聞けば、君達は今度のレーティングゲームに参加するそうじゃないか。
是非、光実君にもそれに参加してもらいたいんだ」
「セージさんじゃないですが、僕は人間ですよ?」
光実の言う通りだ。俺はアモンを入れている分人間と言い切っていいかどうかと言う問題があるが
光実はまごうこと無き人間だ。いくらアーマードライダーシステムを所持しているとは言っても
それを扱う光実は人間だ。
「勿論知っているさ。君が出場する許可はきちんと取った。
いや、思いのほか簡単に取れたと言った方がいいだろうね。理由は、わかると思うが」
俺だ。俺がレーティングゲームに出るという以上「人間がレーティングゲームに出る」事に
違和感など生じようはずがない。俺の他に人間が増えたところで、誰も気にも留めないだろう。
寧ろ、積極的に人間を参加させようとしているのではないかとさえ思える。
……転生悪魔に俺達人間を叩きのめさせることで、人間の限界を思い知らさせる。
その上で、悪魔転生希望者を募る……考え過ぎだとは思うが、あり得ない話でもないだろう。
「それにこれは
『悪魔に対抗するためのロックシード』を作るというね。
試作品ですまないが、君にそのデモンストレーションを頼みたいんだ。
私としても、これ以上悪魔に嘗められたくは無いからね」
「貴虎兄さんの……」
等と言っているが、この戦極凌馬。魔王とのつながりも噂されている人物だ。
魔王と繋がっている後ろで、こうして対悪魔用のロックシードを作る。
まあ、それが交渉や同盟と言うものなのかもしれないが。
「因みに、私がここに来ているのは偶然ではない。来賓として招かれているからね。
無論、私を招いた悪魔も私がこのロックシードを作った事は知っているだろう。
だがそれでも、君にこのロックシードの力を発揮してもらいたいんだ。
見せてやるのさ。人類の……私の力をね」
光実が渡されたのは二つのロックシードと何かのデバイス。
ロックシードは二つともブドウの色違いに見えるが、片方はブドウの房の色違い。
もう片方はロックシード本体の色が違う。
このカラーリングは前に見た事がある。エナジーロックシードって奴だ。
……ん? だが、エナジーロックシードに対応した
ゲネシスドライバーは受け取ってないようだが……?
「プロフェッサー。エナジーロックシードだけ受け取っても、ドライバーが無くては……」
「君も知っていると思うが、ゲネシスドライバーは量産が効かなくてね。
だが、それではエナジーロックシードを持て余してしまう。
そこで、戦極ドライバーを拡張するという形で
エナジーロックシードに対応するようにしたんだ。
悪魔特効のアームズを装備しているが、性能自体はブドウアームズとそう変わらない
『マスカットロックシード』。
悪魔や堕天使、アインスト等への特効こそ持たないが
基本性能を高めた『ブドウエナジーロックシード』。
是非、有効に使ってくれたまえ。
ああ、エナジーロックシードの使い方については、後でマニュアルを読んでおくように」
まじまじと受け取ったロックシードを眺める光実。
アーマードライダーシステムの欠点は、稼働させないとどうなるかがわからない点だ。
多分、光実自身もわかってないと思う。性能自体は、今戦極凌馬に解説してもらったが。
「……そう言えばプロフェッサー。バナナのロックシードは開発していませんよね?
僕は先日、バナナのロックシードを使うアーマードライダーと戦ったのですが」
「それはあり得ないな。ロックシードの製造法は誰にも伝えていない、私にしか作れないものだ。
私以外がロックシードを製造するなど、断じてあり得ないし、あってはならない話だ。
あるとするならば……いや、そうだとしても君が知る必要のない事だよ、光実君」
凌馬の断言に黙り込む光実。あのアーマードライダーは、出所からして違うという事か。
この言い分だと、クロスゲートで「バナナロックシードが開発された世界からやって来た」
と言う位にはあり得ると踏んでいるのかもしれないが……まあ、それは多分違っているだろうな。
ディエンドがクロスゲートから来たかどうかも、定かではないし。
……と言うか、あいつ何処から来たんだ?
「……わかりました。次の質問ですがプロフェッサー。
僕にこのロックシードを渡して、悪魔狩りをしろって事ですか?」
「……抑止力だよ。確かに人間は悪魔に比べて弱い。
だがだからと言って、悪魔の跋扈を許すのはユグドラシルの理念からも外れてしまう。
悪魔が人間界に存在する以上、それに対する抑止力を作る。自然な事だろう?
それに今までの戦闘データを見させてもらったが、その上で結論付けると
上位のアインストを相手取る際にはブドウアームズでは力不足だと思ってね。
だが、ゲネシスドライバーはさっき話した通り予備が無い。
そこで、急遽戦極ドライバーの拡張ユニットを作ることで間に合わせることにしたんだ。
今の人類の敵は、悪魔だけではないからね」
「警察の立場としては全面的に賛成はできねぇが、言いたいことはわかる。
よし、なら俺も出る。民間人だけ戦わせて警察がなにもしねぇってのは
俺達警察の沽券にかかわるからな」
戦極凌馬の持論を受けてか、
ところが、それに待ったがかかった。氷上巡査である。
「いえ、今回は自分が出ます。話を聞けば、この戦いは我々にとってはともかく
悪魔にとっては単なる娯楽。そんな娯楽のために、安玖巡査の身銭を切らせるわけには……」
「気持ちはありがてぇがな氷上。ゲシュペンストを動かせばログは残るぞ。
今俺達はあの蟹野郎の監視から外れてるからセージと行動を共に出来てるんだ。
現状がログに残って、そこから奴に知れ渡ったら事だぞ」
安玖巡査が戦えば、
そうなると、別にファイトマネーが貰えるわけでもない(多分)現状
タダ働きどころの話じゃない。
誰が好き好んで、お金を払ってまで見世物になりたいというのだ。
氷上巡査がそう思ったかはわからないが、ゲシュペンストを持ち出してまで
安玖巡査に戦わせまいとするからには、余程の事があるのだろうとは思う。
だが、俺も詳しい事は知らないがゲシュペンストを動かせばログが残る。
言うなればドライブレコーダーか。そりゃあ、国のものだからそう言う記録は緻密に取るよな。
そうなると、現状が筒抜けになってしまって俺達どころか
安玖巡査や氷上巡査の立場も悪くなってしまう。
……そんな不安がよぎる中、またしてもドアがノックされた。
「……心配には及びません。私が、ここで、ゲシュペンストのメンテを行います」
戦極凌馬の後ろから現れた影。それは、ある意味では場違いにも程がある存在。
「博士!? どうやってここに!?」
「蛇の道は何とやら、と言っておきますよ。来賓と言う訳でもありませんがね。
ちなみに、試合の観客席はバックネット裏を取ってありますのでご心配なく」
「……来賓みたいなもんじゃねぇかよ。
それより博士、どうやってこっちでゲシュペンストのメンテをするんだよ」
「その質問に答える前に……氷上巡査。ゲシュペンストのパーソナル転送システムを私に」
安玖巡査の質問に答える形で、薮田先生は氷上巡査からゲシュペンストの
パーソナル転送システムを預かる。
なるほど。これで呼びだしてメンテを行うって事か。
「ご存じとは思いますが、ゲシュペンストは呼びだしていない待機中に
工場スタッフがメンテや補給を行っています。
しかし、現在それにばかり頼っていては公安に情報が筒抜けになってしまいますからね。
そこで、私がメンテナンスを代わりに行うと言う訳です。
早速、メンテを行ってきますので少し席を外します。なに、すぐに済ませますよ。
……ああ、因みに弾薬やエネルギーについてもあてがありますので、ご心配なく」
一礼し、足早に部屋を出る薮田先生。
この状況を見て戦極凌馬も俺達の置かれている立場を理解したのか
元々知っていたのか定かでは無いが、まるで悪魔と戦う俺達を激励するようなことを言い出した。
「どういう経緯で君達が悪魔と事を構えるようになったのかはわからないが
これは人類からすればチャンスだと言えるね。
悪魔も、天使も、堕天使も人間を契約によってエネルギーを得るための餌か
自分達の手駒を作るための材料としか思っていない。
その理由はさっきも言った通り、人間が悪魔よりも弱いからだ。
だがその悪魔に、君達人間が勝てばどうだい? たとえロックシードやゲシュペンスト
果ては神器を使ったものだとしても、悪魔に勝ったという実績の方が大事だ。
では私もこの辺でお暇させていただこう。諸君の健闘を祈るよ」
言うだけ言って、戦極凌馬も部屋を後にする。
どうも、奴は悪魔と組んでいる癖にその悪魔を滅ぼしたがっている風にも思えてならない。
そうなると、なんで悪魔と組んでいるんだ? 弱みを握られている風でも無いし。
……やはり、何か企んでいるような気がしてならない。
「……確かに彼の通りだな。悪魔に勝ったという実績を作ることも、悪魔祓いの基礎だ。
悪魔を退け、人々に希望を与える。それがこの
……そう言う訳で私も出よう。異論は無いな?」
その戦極凌馬の口車にのせられるような形で、ゼノヴィアさんまで出ることになってしまった。
これで俺、黒歌さん、白音さん、光実、氷上巡査、ゼノヴィアさんと6人そろった。
数の上ならば、少なくともグレモリーチームとほぼ同等ではあるが。
「あ、私は今回は従軍記者って事で。
いえ、正直に申し上げますとこの間航空戦艦みたいな奴と戦った時のダメージが
まだ残ってまして……身体じゃなく、艤装の方に……」
不参加のバオクゥが言う航空戦艦みたいな奴。
俺はその場に居合わせなかったが、恐らくはディエンドが呼びだしたであろう傀儡か。
今更だが、皆よくあれに勝てたもんだと思う。負けたのもいた気がするが。
あの時の俺は、シャドウの相手で必死だったと思うので何とも言えないのだが。
「じゃあ、俺は氷上のセコンド兼代役だ。
ゲシュペンストは一応誰でも操縦できるからな。氷上が負傷したときとかのために
俺も代打として登録した方がよさそうだしな。ゲシュペンストなら、俺も身銭を切らずに済む。
それならいいだろう、文句は言わせねぇぞ氷上」
「……まあそう言う事でしたら」
バオクゥは不参加、安玖巡査が神器を使わない形で参加。
これで出場メンバーは揃った形か。見事なまでに悪魔が入っていない。
アモンがいる分、俺が一番悪魔なんじゃないかって位だ。
……
「神器を使うにしても、こっちじゃ日本円が碌な価値も無いってのはわかったが
だからって、俺にタダで寄越してくれるほど気前よくは無いだろ。
それに、出所のわからん金を受け取るってのは立場上マズいからな。
下っ端とは言え公務員が収賄したら、洒落にならんだろ」
「……安玖巡査、金に関しては真面目ですからね。
だからお金を浪費する神器が使えるのかもしれませんけど。わかりませんが」
言えば、ユーグリットの事だから工面はしてくれるかもしれないが
ここで出回っているお金なんてどういう経緯で来たお金かわからないからな。
たとえ悪魔社会で正しく回っていた金だとしても、大元が何をしたか。
そうでなくとも、
悪魔と日本社会的によくない組織が繋がっている可能性なんて、大いにある。
それを悪魔社会を通して受け取ったら、そう言うのって確か……ええっと……
『……マネーロンダリング、って奴か。警察の身分で実行に関わったらダメな奴だな』
そうそれ。ってか、よく知ってたなフリッケン。
まあとにかく、犯罪に絡む金を警察官が受け取ったら大問題だよな。
「リーさんが食いつきそうなネタは、出さないに越したことは無いですからね」
バオクゥの言う事は尤もだ。だがそうなると、俺はかなり危ういが……
ユーグリットと組んだこともだし、もしかすると鏡の泉で暴かれた件も何処からか……
「一応さっきボディチェックしたけど、セージに盗聴器の類はついてなかったにゃん」
さっきのって、そう言う意味があったのかよ。
向こうでバオクゥがバツの悪そうな顔をしているが、無いなら別にいい。
「念のため俺達も調べておくか。どこから情報が洩れるかわからないからな。
黒猫、お前は白猫とゼノヴィアとブン屋をやれ。俺が自分と氷上と光実をやる。
氷上、お前は光実や宮本と部屋の中を調べろ」
「命令すんな、って言いたいとこだけどわかったにゃん」
「うう……こういうのって盗聴バスターの弟子たる私の出番のはずなんですけどねぇ……」
「……確かに、プロフェッサーとかそう言うの仕掛けてもおかしくないですからね」
言えてる。まあ、分身使って盗聴してた俺が言えたことでは無いが。
それにしても、一体全体このタイミングでレーティングゲームを仕掛け
あまつさえ、俺達まで巻き込むとか一体何を考えているんだ?
……戦極凌馬に、薮田先生。外部からも来賓を呼んでいるという事は
この分だと、何処かまた他の所から来ている可能性もあり得るな。
外部からの来賓、レーティングゲーム、主催者。
これらが揃った時、俺は一つの可能性にぶち当たった。
――公開処刑。
イェッツト・トイフェル辺りの思惑に乗せられすぎな気もするが
可能性としては、無いわけではないだろう。裏切り者のアモンを擁し
悪魔社会に明確に反旗を翻す、現悪魔政府にとってみれば
俺は
そのテロリストを打ち破ることで政府の正当性を示し、味方を増やす魂胆かもしれない。
それが正しいかどうかはわからないが……
この戦い、黙ってやられるわけにはいかない事だけは事実だ。
と言う訳でゲシュペンストのメンテ問題解決と新型ロックシードによる戦力増強。
今回はもうちっとだけ続くんじゃ。
>新型ロックシード
一応正統派ならドラゴンフルーツエナジーとかあるんですが……
マツボックリやマロンにエナジーがあるなら、ブドウにエナジーがあったって
別に不思議じゃないだろうって事で。この戦極凌馬は作ったんです。
マスカットはブドウのカラバリイメージ。完全に対悪魔に特化した
拙作だからこその個性を持たせたアームズ。相手が悪魔じゃなかったら
只の色違い。
ブドウエナジーはゲネシスコアでの変身なので、言うなればジンバーブドウ。
ナックルのジンバーマロン、それの龍玄・ブドウアームズ版ってとこですかね。
……ただ、悪魔対策の新型ロックシード、性能向上型のロックシードと嘯いてますが
レジェンドなロックシードを差し置いて何言ってるんだか、ってのも事実。
>ゲシュペンスト
神器持ちの安玖巡査が運用する必要性が無い(金がかかるとはいえ神器使えばいい)ので
氷上巡査が使用していたって身も蓋も無い話はありますが
一応氷上巡査が一番うまくゲシュペンストを扱えます。
なにせこの世界におけるG3シリーズみたいなポジションですし。
>公開処刑疑惑
一応セージの有無関係なくレーティングゲームはやろうとしていたので、今回のセージの予想は完全なる杞憂。
ただ、セージが(半ば偶然とはいえ)やってきてしまったので
これ幸いとばかりにアモン諸共公開処刑を企てていると言えば、そうなるのかもしれませんが。
イェッツト・トイフェルはそれを逆手に取って公開処刑を台無しにし、現政府の支持率を下げようとしている魂胆。