ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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ペースが落ちてますが、なんか色々ありますねえ……

今回は前回の裏で何が起きていたか。


Backstage

――冥界、某所

  イェッツト・トイフェル基地

 

ここには、レーティングゲームに向けて警備体制を整えている

イェッツト・トイフェルの軍勢がいる――のだが。

 

今は、明らかにイェッツト・トイフェルの軍勢ではないものもいた。

ダークグレーの軍服に、シュタールメットを装備したその兵団は――

 

 

――禍の団(カオス・ブリゲート)英雄派改め、ラスト・バタリオン。

 

 

その兵団を護衛に付ける形で、その首魁であるフューラー・アドルフもそこにいた。

彼らの目的はただ一つ。イェッツト・トイフェルの司令である

ギレーズマ・サタナキアに招聘されたからであった。

 

「……しかし、一体どういう風の吹きまわしかね? 貴公らは、我ら悪魔を殲滅せんと

 人間界で軍事活動を行っているのではなかったのか?」

 

「それは人間界での話だよ。それに、我々もアインストと戦うにあたり戦力を失いすぎた。

 そこで、アインストとの戦いにあたって其方に助力を請いに来たのだよ」

 

フューラーから語られる、イェッツト・トイフェルとのコンタクトの理由。

そもそも人間界で悪魔が活動しづらくなったのは、他ならぬフューラーの仕業である。

それなのに、当のフューラーはこうして悪魔に救援を求めに来たのだ。

悪魔であるギレーズマからすれば、随分と勝手な言い草である。そう思うのも無理はない。

 

「確かに、我々にとってもアインストは強大な敵だ。

 だが、その強大な敵と対峙するにあたって貴公らは有効な戦力足り得るのか?

 我らの力だけをあてにするというのならば、随分と勝手な話だな」

 

「ただで兵力を借り受けようなどと思ってはおらんよ。

 そうだな……表向き、其方が始末できない存在を我らが代わりに始末する。

 つまり、其方の目的のための手札として、我らの軍を使う事を許可しようではないか」

 

そして、フューラーから軍事協力の対価として提示されたもの。それは――

イェッツト・トイフェルにとって都合の悪いものの暗殺請負。

それも、彼らが直接手にかけるのは対外的に角が立つものを。

 

「……司令。奴らを使えば……」

 

「……ふむ。あの厄介な後ろ盾を排除するには、うってつけと言えるだろうな。

 聞けば、奴らは聖槍を入手している。その矛先が一先ず我らに向かないだけでも

 十分な理由にはなるが……」

 

ハマリアからの報告で、ギレーズマもフューラーが本物の聖槍を入手したことは知っていた。

その矛先は、悪魔の命運を決定づけかねないものだ。

矛先を逸らすという意味でも、フューラーとの軍事協力は有意義と言えるだろう。

たとえそれが、仮初のものであったとしても。

そして、その聖槍を持つものと協力関係にあることが出来るというのは

聖槍の矛先を、ある程度は思うがままに向けられるという事でもある。

 

(サーゼクスはともかく、その後ろ盾たる大王派ならば聖槍で討つことも不可能ではあるまい。

 後ろ盾さえ排してしまえば、放逐することも容易かろう。

 かつて自分達が、旧魔王派やデーモン族を排したように)

 

しかし、ギレーズマにはまだ引っかかることがあった。

何故、ラスト・バタリオンは戦力を失ってなおアインスト討伐に躍起になるのか。

確かに、人間界においてもアインストは脅威ではあるのだが。

それだけでは、悪魔の軍隊であるイェッツト・トイフェルを頼る理由にはなるまい。

そう、考えていたのだ。

 

「……何故、我々に声をかけたのだ?

 貴公ら人間界ならば、他神話が力添えをすることも吝かでは無いだろう?

 北欧、エジプト、ギリシャ……特に貴公らが本格展開している日本ならば

 神仏同盟と言う有力な神話体系があったと思うのだがな」

 

「攻勢に出るための軍事行動は、神仏同盟や自衛隊は足並みが悪いのでな。

 言わば我々は、アインストの拠点を知りながら攻め入ることが出来ない状況にいるのだよ」

 

フューラーの出た言葉。それは、ギレーズマにとっても驚きの言葉であった。

 

――アインストの本拠地を知り、攻略しようと思えばできる状態にいる。

 

「司令殿の言う神話体系には既に粗方話は通してある。

 そこで、そのための協力を仰ぎたく正規軍たる其方に話を持って来たのだ」

 

「……こいつは驚いた。まさか、あのアインストの拠点を突き止める勢力がいたとは。

 しかも、それが神話体系ではなく人間の軍隊と来たか。

 なるほど、我々に話を持ち込むだけのことはある……が。

 

 そうなると、別の疑問が浮き上がるのだよ。

 一体だれが、貴公の兵力を損耗させるほどの痛手を負わせたのだね」

 

ギレーズマのその質問に、フューラーは包み隠さずに淡々と答える。

 

「アインストとの戦いで失ったのもあれば、現地での抵抗にあい失った戦力もある。

 だが、主力たる聖槍騎士団の一部は主にアモンによって討ち取られたのだ」

 

「ならば、アモンに協力を仰げばいいのではないか?」

 

「そうもいかん。奴らにとって我々はアインストと同列、倒すべき敵として認識されている。

 我々も外敵を排すべく動いているというのに……嘆かわしい事だ」

 

そうなるに至ったのは当然、ラスト・バタリオンの自業自得的な側面もあるのだが

それこそ今回の話には全く関係がない。

あくまでも、アインスト攻略のためにイェッツト・トイフェルに話を持って来た形だ。

 

「その外敵と言うのは……我々悪魔も含んでいるのかね?」

 

「正直に言えばそうなるな。

 だが、他は知らんが私は別に人間界に対する侵略行為さえ行わなければ

 悪魔や堕天使、天使を如何こうするつもりは無い。

 かつて演説で語ったのは、人間の生活を脅かす悪魔や堕天使、天使についてだ」

 

かつて、何処からか手に入れた映像とその時暴れまわっていたコカビエルの映像をもとに

フューラーは演説を行い、三大勢力の存在と

神――聖書の神であるが――の不在を白日の下に晒した。

それは後にフューラー演説と呼ばれ

三大勢力が人間界で活動する上での大きな制約となったのだ。

 

だが、別にフューラー自身は三大勢力を根絶やしにしようと言う意思は無かった。

強硬派が生まれているのは、あくまでも三大勢力がそれまでに行っていた行いの結果である。

少なくともフューラーは、そういう考えである。

 

「フ……でなければ、我々に交渉を持ちかけるなどと言う恥知らずな真似は出来んか。

 ではもう一つの質問だ。どうやって、アインストの本拠地を知り得た?」

 

「別に隠す事でも無いからお聞かせしよう。

 ……デヴァ・システム。かつて我ら人間界において、混乱を引き起こした装置。

 それとアインストが拠点としているクロスゲートの波長が重なったのだ。

 これを利用し、アインストの拠点を叩く。そしてゆくゆくは……」

 

「クロスゲートをも手中に収める、という事か?」

 

「いいや? あれは情けない話かもしれんが、私の手にも余るものだよ。

 だが放置しておけば、第二第三のアインストとも呼べる災いを齎すことは目に見えている。

 監視や、可能ならば封印。理想は破壊だな」

 

破壊。その言葉を耳にして、ギレーズマは僅かに眉を顰める。

クロスゲートは悪魔の力でも満足な調査が出来なかったものだ。

それを人間風情が波長を合わせられるほどの成果を上げ

それどころか破壊をも視野に入れた研究を進めているという事に。

 

(ここに奴がいる以上、認めねばならんか。人間のその危険性とも言うべき可能性を。

 だが、最後に立つのは我ら悪魔だ。

 人間風情が、我ら悪魔より優秀な顔をするというのはやはり腹立たしいわ。

 

 ……そして同時に、やはり悪魔の駒(イーヴィル・ピース)は廃止すべきものだな。

 あんなもので制御下に置けるほど、人間とは容易いものでは無かろう。

 そして、そうして制御下に置いた人間など……もはや人間ではあるまい。悪魔でも無いがな。

 この冥界に……悪魔の世界に、人間の居場所など不要だ)

 

「……納得いただけたかな? 司令殿。

 では、我らの申し出を受けるか否か、返答を願おうか」

 

ギレーズマにとっては腹立たしい現実を聞かされながらも

その逡巡の末、ギレーズマが出した答えは……既に決まっていた。

 

 

「……いいだろう。貴公の申し入れを受け入れよう」

 

「寛大な配慮に感謝するぞ、現代の悪魔の名を冠する軍隊よ」

 

ギレーズマとフューラーは手を取り交わし、フューラーが羊皮紙に自らの名を記し血判を捺す。

ここに、ギレーズマ・サタナキアとフューラー・アドルフの契約は果たされたのだ。

 

 

――コンゴトモ、ヨロシク

 

 

その言葉が交わされたかどうかまでは、定かではない……

 

 

――――

 

 

その光景を、天井裏から見ているものがいた。

バオクゥが送り込んだ、偵察機の乗組員であった。

双眼鏡で一部始終を見ていたそれは、大慌てで偵察機に戻り

派遣した主の下に戻ろうとする。しかしそれは、既にギレーズマらには筒抜けであった。

 

「……司令。しばし、ネズミ狩りに……」

 

「フ、その必要は無い。遅かれ早かれ、ここで起きた事は公表される。

 その段取りを早めるだけでいい。今回の話、あのジャーナリストにも掴ませているのだろう?

 奴を使えばいい。こういったスキャンダルは、大々的に

 かつ盛り上げるだけ盛り上げてやればいい。

 カバーストーリーさえしっかりしていれば、本質など真逆でも構わんよ。

 

 我々と人間の軍が組むというのは、少なくともサーゼクスからすれば

 共存の足掛かりとして諸手を挙げて喜ぶだろうよ。

 それがたとえ、人間界への悪魔の進出を阻む相手であったとしてもな」

 

ネズミ狩りをせんとするハマリアを制し、ギレーズマは不敵に笑う。

今回の会談は、既にイェッツト・トイフェルお抱えのジャーナリスト

リー・バーチの知るところであり

後は結果を彼に伝え、メディアに流すだけで話は終わるのだ。

 

「司令殿は随分と豪胆な作戦を立てるものだ」

 

「これ位の思い切りが無ければ、軍の指揮など出来んよ」

 

実のところ、ギレーズマにはサーゼクスと違い人間との共存を掲げる意志など無い。

目の前にいる軍隊は、下手な他神話勢よりも強力な力――聖槍――を持ち

それがたまたま人間であった。それだけのことに過ぎない。

そもそも、ギレーズマとサーゼクスは政治・組織運営方針に関しては全くの真逆なのだ。

 

種の保存のために手を取り合う――方法はさておき――を良しとするサーゼクスと

まず己が力を高め確立することを良しとするギレーズマ。

どちらが正しいとは一概に言えたものでは無いが、ギレーズマもそれを果たすための

土台作りに余念がない。

 

……その方法こそ、些か乱暴なものではあるが。

 

「まあ、いずれにせよこれで大手を振って貴公らの軍隊も悪魔領を歩けるようになるだろうよ。

 冥界の空気が肌に合わない、などと言った気候面は我々の管轄外故、与り知らんがな」

 

「ご配慮に感謝するぞ、司令殿」

 

ラスト・バタリオンの輸送車両が各地で目撃されたのは、このすぐ後の事であった。

そして、この後もギレーズマとフューラーの対談は行われていた。

ラスト・バタリオンが討つ――討ってもいい悪魔をイェッツト・トイフェルがピックアップし。

作戦行動中の混乱に乗じて殺害を試みるという、典型的な暗殺の手段。

下手人としてラスト・バタリオンを利用するのは

イェッツト・トイフェルが不要な反感を買わないためでもある。

ラスト・バタリオンは人間の軍隊である。悪魔を守る義理などは無い。

軍事同盟こそ結びはしたが、それは悪魔を守るためではなく

アインストに対する攻勢のための同盟なのだ。

 

 

「……では、来賓として来る大王派を狙えばいいのだな?」

 

「そうだ。奴らさえ討てば悪魔が人間界に来ることは今よりは少なくなるだろう。

 私の見立てでは、だがな。

 そうなれば、貴公らも結果的に目的が果たせるだろう?」

 

その同盟の代価として生贄に捧げられたものこそ。

 

――サーゼクス・ルシファーを魔王に推し、現在の冥界の在り様を確立させたともいえる

ゼクラム・バアルら大王派であった。

 

 

「……老いたな、ゼクラムも。時すでに遅いのだよ」

 

 

――――

 

 

悪魔領首都リリス

サーゼクス・ルシファー執務室

 

 

執務の片手間に、サーゼクスはクローゼットや衣装ケースをひっくり返し

何かを探し求めていた。

 

「おかしい……一体どこに行ったんだ……?」

 

「何かお探しですか、サーゼクス様」

 

その様子にグレイフィアが声をかけ、しばらく後にサーゼクスからの返答が返ってくる。

 

「ああ。サタンレッドの手袋かどこかに行ってしまってね。

 今度のレーティングゲームの決勝戦のエキシビジョンマッチ。参加するのに必要なんだけど……」

 

サタンレッド。四大魔王が余興で作り上げた戦隊ヒーロー、魔王戦隊サタンレンジャーのリーダー。

自主制作ながらも完成度は「自主制作としては」それなりにあると言える。

そのコスチュームを、サーゼクスは探していたのだ。

 

「……まさか、サーゼクス様自らが陣頭に?」

 

「ああ。若手の実力を自分自身で測りたいというのもあるし

 それに、万が一相手がアモンだったならば……

 それはそれで、盛り上がるだろうからね」

 

しかしサーゼクスは、アモンからはこの上なく恨まれている。

共に戦っていた同志としてアモンからは見られていたのだが

その同志を、サーゼクスは政治方針でのこととはいえ追放、封印したのだ。

その意向は「平和な世に力に依る文化を是とするデーモン族はそぐわない」とのことだが

アモンは旧い悪魔、デーモン族であったため例外とはならなかった。

これをアモンは裏切りと見做したのだが、今の悪魔の通説では裏切り者はアモンである。

歴史は、勝者が作るものなのだ。

 

「……なら、衣装抜きでやればいいでしょう」

 

「そうはいかないよ! エキシビジョンマッチなんてある意味では決勝戦より盛り上がる場面!

 そこで出てくるのが、ヒーローたるサタンレンジャーの役目じゃないのかい!?」

 

嘆息しながらも、グレイフィアはサーゼクスの衣装探しを手伝う羽目になったのだが

終ぞ、出てくることは無かった。

 

 

……そして、これによってグレイフィアはサーゼクスに対する相談の切欠を失ってしまったのだ。

 

 

(ユーグリット。今になって私の前に現れて……

 抗戦を訴えたあの時とは打って変わって、今は冥界の経済を一手に担っている。

 私は良かれと思ってサーゼクス様と結婚したけれど……

 

 …………本当に、私の決断は正しかったの?

 大王派が跋扈し、イェッツト・トイフェルと言う軍隊まで発言権を得つつある今。

 私達は、新時代の魔王などではなく……ただの、ただのお飾りでしかなかったの?

 

 そして、お飾りとしての役目すら果たせなくなったら……)




大王派。
眼の上のタンコブか、後ろ盾か。
そのどちらかで、今回の計画はまるっきり逆の流れになりかねません。
後ろ盾かと思って潰した奴が目の上のタンコブだったばかりに
これ幸いとばかりに四大魔王が調子づくかどうか。

総統閣下が来た時点でどっちに転んでもろくなことになりませんがね。
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