ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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Speculation Bパート

「いやあ、一時はどうなることかと思ったが、こうしてリーアたんも人気を取り戻したし

 我が家の家計も持ち直すことが出来た。これもすべてナイア君のおかげだよ!」

 

「いえいえ。僕の方こそリアス君にはお世話になっておりますので」

 

一方。こちらはグレモリーチームの控室。サーゼクスが用意した特等席から

娘の試合を観戦していたジオティクスとヴェネラナが

リアス達に労いの言葉をかけに来ていたのだ。

 

リアス第一の側近のように振舞っているのは姫島朱乃……ではなく

オカルト研究部顧問の布袋芙(ほていふ)ナイア。

戦車(ルーク)」2個と言う掟破りな駒の価値を抱え、今や実質的な「女王(クイーン)」とも呼べる立場である。

本来の「女王」である朱乃自身でさえ、ナイアがこの席に就くことに関しては賛成しており

これに関して諍いが起ってはいない。寧ろ、リアスの側近と言う堅苦しい立場を離れたことで

今まで以上に奔放な振る舞いが目立つようになっていたのだ……特に兵藤一誠に対して。

 

「……朱乃。仮にもお父様の前よ。イッセーで遊ぶのは程ほどにしなさい」

 

「そうだよ朱乃君。一応君は立場上『女王』なんだ。イッセー君で遊ぶのは後にしたまえよ」

 

イッセーで遊ぶ、それ自体を否定しないことに、リアスは一瞬眉を顰めるが

諦めたのか、すぐに元の表情に戻る。

当のイッセー自身は、その朱乃に対して自分から擦り寄っている風にも見えている。

これに対しては、ナイアも一言言おうかと思ったのだが「本人たちがいい気分だからいいか」と

教職者としては感心しかねる姿勢をとっている。これもまた、リアスの不機嫌の原因であった。

 

「一回戦のレイヴェル・フェニックスとの戦いも、以前のライザー君との戦いに教訓を得て

 見事に戦い抜いてくれた! さすがリーアたんだ!」

 

「次の試合はサイラオーグでしたね。

 リアス。わかっているとは思いますが、相手は若手五王(ルーキーズ・ファイブ)の筆頭格。

 今回勝てたからと言って、決してその勝利に慢心しないように」

 

べた褒めするジオティクスとは対照的に

次の試合に向けて気を引き締めるよう告げるヴェネラナ。

実際彼女の言う通り、サイラオーグ・バアルの下馬評は極めて高く

優勝最有力候補であるのだ。

 

ちなみに若手五王とは、今回の参加チームから人間チームを省いた

その他五チームを指す。筆頭がバアル、次いでフェニックス、シトリーとアガレスが同位。

グレモリーが、滑り込みに近い形で名を連ねている状態だ。

昨今、このパワーバランスにも変化が生じつつはあるのだが。

それでも、今回の試合でグレモリーがバアルを下せば

それは立派なジャイアントキリングになり得る。

少なくとも、非公式な賭場ではそういうオッズだ。

 

「……ええ。腹の虫の収まらなさをぶつけるにはちょうどいいわ。

 セージにも、私の本当の実力を思い知らせてやらないといけないし。

 サイラオーグに勝てれば、セージだって私の力を認めるはずよ」

 

「おお! その意気だリーアたん!」

 

八つ当たり同然にサイラオーグとの戦いに臨もうとするリアス。

それを闘志と受け取ったジオティクスはその姿勢を讃えるが

ヴェネラナは呆れた様子で娘の態度を眺めていた。

 

「……あなた、話を聞いていたの?

 私がバアル出身だから言う訳ではないけれど、そんな心構えで勝てるほど

 サイラオーグは甘い相手では無いのですよ?」

 

「まあまあ奥方様。リアス君に対しては、僕からもそれとなく言っておきますので。

 それより、今日はここにいる皆に差し入れがあるのでしょう?

 イッセー君以外の他の頑張っている眷属の皆も、きちんと労ってあげませんと」

 

ナイアに制されて、リアスの眷属達に手製の焼き菓子を振舞うヴェネラナ。

グレイフィアはサーゼクスと共にVIP対応で席を外しているため、紅茶は朱乃が淹れていた。

こうしてみる限りでは、悪魔社会としては割とありふれた光景であると言えよう。

 

「それにしても、ソーナも災難だったわね。いきなりサイラオーグと当たるだなんて」

 

「で、そのサイラオーグさんに俺達が勝つ!

 俺達の優勝は、揺るぎないものっスよ!」

 

「……いや、流石にそれは楽観が過ぎるよイッセー君。

 今さっきヴェネラナ様がおっしゃったばかりじゃないか。

 サイラオーグさんは簡単に勝てる相手じゃない、って。それにセー……」

 

窘める木場の言葉を遮るように、イッセーは怒号をあげる。

それは勝利に向けた意気込みと言うよりは、耳を塞ごうと声を上げている。

そんな虚勢ともいえる怒号であった。

 

「わかってるよ! だけど俺も最近調子が出てきてるんだ!

 今の俺なら、サイラオーグさんにだって負ける気がしねえんだ!

 当然、セージにだってな!」

 

その根拠のない自信はどこから来るのか。

そう思っているのは、木場に限った話でもなかった。

イッセー同様に岩戸山でシャドウ成二との戦いを間近で見ていたギャスパーやアーシアは

イッセーがセージを脅威と見做さない理由がわからなかったのだ。

冥界にいれば否応なしにその実力のほどが伝わってくるサイラオーグに関しても同様だ。

 

「そうだね。自信を持つのは結構だけど、慢心しては勝てるものも勝てない。

 ヴェネラナ様のお菓子を頂いたら、調整に入るよ」

 

天狗の如き振る舞いをするイッセーを、少なくとも形の上だけでも窘めるナイア。

本来ならばリアスがその役割を果たすべきなのだが、何故だか先んじてナイアが行っている。

そしてそれに対してイッセーもまた、何の疑問も抱かなくなりつつあったのだ。

 

かつてならば、リアスが形の上だけでも行ったであろう動作。

その大半を、いつの間にかナイアが肩代わりしてしまっていたのだ。

……リアス自身もまた、増長しやすい傾向にあるので

窘めるという動作に至らない事も少なくは無いのだが。

 

 

「…………」

 

「部長さん、お菓子お口に合わなかったんですか?

 それより、このお菓子おいしいです! ヴェネラナ様、今度作り方教えてくれますか?」

 

「勿論いいわよアーシアちゃん。今度時間が取れたら一緒に作りましょう。

 それからリアス。少しいいかしら? あなたに話があります」

 

差し入れであるヴェネラナの焼き菓子に一同が舌鼓を打つ最中

そのヴェネラナが菓子を食べるには似つかわしくない神妙な面持ちのリアスを呼びだす。

うまく言い訳をして母娘だけの場所に出た際、ヴェネラナはある一つの疑惑を口にするのだった。

 

 

――――

 

 

「お母様、話とは?」

 

「いいこと、リアス。今グレモリーには、何かよからぬものの意思が介入しています。

 それは当主でさえも気づかぬまま……いえ、最悪は当主でさえも取り込んでいるでしょう。

 それ位、ここ最近のグレモリーの動向に私は『違和感』を覚えたのです」

 

ヴェネラナが抱く「違和感」。

リアスも、最近は妙にグレモリー絡みで忙しくなりつつあるとは思っていたが

それが「よからぬものの意思」であるとは、思いもよらなかったのだ。

 

「よからぬもの……それは一体?」

 

「そこまではまだはっきりとは断言できません。ですが、一つ怪しいと思うもの。

 いえ、寧ろこれしか怪しいと思うものが無いとも言えますが……」

 

そうしてヴェネラナの口から紡がれた名前こそ。

 

兵藤一誠の身元引受人として名乗り出て。

リアス・グレモリーの破格の「戦車」として眷属に自ら志願し。

グレモリーの財政再建に陰ながら尽力していた。

 

 

――布袋芙ナイア。

 

 

「…………やはり」

 

ヴェネラナの挙げた名前に、リアスは合点が行った様子であった。

今までは朱乃もイッセーも矢鱈とナイアを庇い立てするために

彼女に不審な点が見受けられても「自分が考え過ぎではないのか」とも思っていたが

ここに来てヴェネラナと言う同意見を得たために

ある程度自分の判断が間違っていないことを再認識していた。

 

「今ここで話しているのだって、もしかしたら彼女の手のものに聞かれているかもしれない。

 前に貴女には話したと思いますが、私は何があっても貴女の味方です。

 母親とは、そういうものです。いつかきっと、貴女にもわかる時が来るでしょう」

 

「お母様。お母様は何故、ナイア先生に対してそう言う印象をお持ちに?」

 

いつになく神妙な面持ちで語るヴェネラナに、思わずリアスも問い質した。

何故、そう言う結論に至ったのか、を。

 

「…………『出来過ぎている』のです。

 

 偶然、私達の下に現れ、貴女の力になると言い出した。

 それから偶然、グレモリー家の家計が再建される切欠が産まれた。

 偶然、貴女や赤龍帝の再評価の機運が高まった。

 偶然…………

 

 これらの中には、貴女も偶然では片付けたくないものもあるかもしれない。

 けれど、その予兆が何一つとして無かった。

 私もグレモリーに嫁ぐ前、バアルから経済学を学んでいましたが

 それでも、今回のグレモリーの財政再建は説明のつかない点が多すぎる。

 まるで突然、降って湧いたかのように出来事が起きたのです。

 彼女が来る前は、何一つとして兆候が無かったというのに」

 

ここ最近起きているグレモリーの再評価の機運。

それを、ヴェネラナは誰かに仕組まれたものでは無いか。そう考えていたのだ。

 

「この事はお父様に相談は……」

 

「勿論しました。けれど、私の言葉は杞憂だと聞く耳すら持ってもらえなかった。

 確かに財政再建は急務でしたし、それが行えるのであれば

 ちょっとやそっとの不具合には目を瞑る。その姿勢は当主としては寧ろ正しい。

 言っては何だけど、魔王を輩出したとは言ってもグレモリー自体は弱小の家系。

 そこを持ち上げて落とす、その動機が分からない……と言うのもあって

 グレモリー家は布袋芙ナイアを正式に招き入れた。後は貴女も知っての通りです」

 

ヴェネラナはグレモリーを中心にナイアの不自然さを考えていたが

ここに来てリアスの方がある一つの点に気づくのだった。

 

 

「動機……あり得るわ! イッセーよ!」

 

「赤龍帝を? 成る程……確かに可能性としては一番あり得る話です。

 グレモリーを手中に収めたとしても、冥界にまでその発言力を伸ばすことはできない。

 それをやる位なら、グレモリーより寧ろバアルを狙った方が賢明。

 それなのにグレモリーを標的にする……バアルになくて、グレモリーにあるもの……

 

 ……確かに、辻褄は合います。

 その赤龍帝が未熟なのも、布袋芙ナイアにしてみれば好都合でしょうし」

 

ヴェネラナの抱く疑惑。そのピースは、リアスのふとした思い付きから嵌ろうとしていた。

しかし、疑惑が深まれど証拠は無い。それどころか、ナイアは既に財政再建と言う形で

グレモリーにとって大恩ある存在となっていたのだ。その方法はさておくにしても。

 

「何てこと……内側から私達を崩壊させるつもりなのね!

 こうしちゃいられないわ、今すぐ駒の排除を……」

 

「待ちなさい。正当な理由なく眷属を追放してはならない。これも以前話したはずですよ」

 

「だけどお母様、ナイアがイッセーを篭絡してるのは間違いなく……」

 

「証拠が無いわ。思い込みで罪を被せるのかしら?

 そうしてナイアをはぐれ悪魔にすれば、後は大公に押し付けることも出来なくは無いでしょう。

 だけどそうなった場合、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)に対する評価も、グレモリー家の評判も

 間違いなく、以前悪かった時より下がるでしょう」

 

そうなのだ。

ここでこうして挙げられたことも、全てはリアスとヴェネラナの想像の域を出ない。

明らかにナイアがイッセーを始め、朱乃にまでその魔手を伸ばしていたとしても

それを証明するものが、何一つとして無いのだ。証明できる善意の第三者がいないのだ。

 

「リアス。暫くは今まで通りに過ごしなさい」

 

「お母様!? けれど……」

 

「可愛い眷属を取られて不服に思う気持ちはわかります。

 ですが、ここで変に勘づいては今度は直接的な方法で貴女に害を成してくるかもしれません。

 これ程の不可解な出来事を立て続けに起こせる相手なのです。

 生半可な……少なくとも、駒王町を管理していた時と同じ心構えでは

 布袋芙ナイアを如何こうすることは出来ない。それは間違いありません」

 

ヴェネラナの有無を言わせぬ言葉に、リアスは沈黙で答えるしかなかった。

ある日突然グレモリー領に現れた女性、布袋芙ナイア。

彼女はグレモリー家にとって救世主であると同時に――

 

 

――獅子心中の虫でもあったのだ。

 

 

(ふふふ、聞いちゃった聞いちゃった。これは店長に知らせなきゃ。

 ダーリンのハーレム以前に、店長の周りを嗅ぎまわられたら

 普通にうざいからね。勿体ないけど、消しちゃうか。どうせ悪魔だし。

 ……とは言っても今ここで殺ると何かと面倒だし、頃合い見てからでいっか)

 

リアスとヴェネラナの会話に聞き耳を立てていた存在。

それは布袋芙ナイアの使い魔――本人は使徒と言い張っているが――に身を窶した

紫藤イリナ。彼女にとって、兵藤一誠と布袋芙ナイアこそが全てであり

悪魔の栄華など、どこ吹く風なのだ。

もっと言えば、未だに悪魔は駆除すべき存在と見做している。

ただ、一応悪魔であるイッセーを立てることと

主であるナイアの命令で悪魔に牙を剥いていないだけなのだ。

 

(店長の言う『虚憶(きょおく)』じゃあんたはおいしい思いしてるんだろうけど……

 悪魔がのうのうと甘い汁吸ってんじゃないわよ。ダーリンの隣は私の特等席なんだから。

 ダーリンのハーレムに誰が来ようがお構いなしだけど……

 

 ……あんたは例外よ。リアス・グレモリー。

 虚憶の中とは言え、後から出てきてダーリン掻っ攫いやがって。

 その腹いせ、こっちでさせてもらうわよ)

 

獅子心中の虫が産み落とした刃。

その刃を握る手に悪意は無い。

その背中は悪意によって押されるが、刃に悪意は込められていない。

それこそが獅子心中の虫――布袋芙ナイアのやり口なのだ。

 

見えざる悪意による刑の執行宣告。

それが下されたのは、ヴェネラナに限った話ではなかったのだ――




おや……?

当初の予定では一回戦でリアス対ソーナやるつもりでしたが
それやると活動報告でも述べた通りソーナがとんでもないことになるので
急遽レイヴェルが宛がわれました。
一応因縁のある相手との戦いなのにカットされちゃいました。

……とは言っても、妙なブーストのかかってる今のリアスチームに
レイヴェルチームが勝てる要素が無かったりするんですけどね。

>ジオティクス
ラクダと間違えて娘を人間界に捨てて来そうなポンコツ具合。
(そうなるとリアスがラクダ面になるわけですが)
とは言え心労祟ってたところに何か吹き込まれてあれよあれよ……だったので
そう言う意味では被害者。

>ヴェネラナ
こういう所で妙に目立つのってつまり……
イリナにロックオンされたり、アーシアとなんか約束したり。
ちょっと露骨だったかもしれません。何がとは言いませんが。
商才についてはバアルにいた頃に学んで身に着けたもの、としてあります。
そう言う意味ではユーグリット(ルキフグス)と仲良くなれたのかもしれないのに……


原作では大々的に取り上げられたサイラオーグ戦が次回戦らしいですが
この捻くれまくった拙作で原作通りに行くはずがなく。
そもそも、サイラオーグにはある疑惑が明らかになってますしね……
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