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レイヴェル・フェニックスとの戦いも佳境に入り、
相手の「
互いに飛び道具を主体としているが、射程は相手が上回っており劣勢に立たされていた。
そんな中、相手の奥瀬弁護士からゲシュペンストのダメージを最小限に抑える提案として
八百長が持ちかけられたが……
――究極・ゲシュペンストキック!!
氷上巡査の必殺キックを迎撃するように奥瀬弁護士は対物ライフルを持ち出す。
あんな長物で近接攻撃の迎撃などかなり難しいと思うが……
キックが決まると同時に、対物ライフルの攻撃が炸裂したのか。
フィールド上は物凄い煙に包まれ、状況はわかりづらくなっている。
……フィールドの煙が晴れた時、そこにいたのは。
ゲシュペンストを失い、仰向けに倒れている氷上巡査だった。
――勝者、フェニックスチーム!
奥瀬弁護士の勝利を讃えるアナウンスと共に、氷上巡査はこちらに戻された。
しかし、その身体にはそれほどダメージが無い。
それを見越していたかのように、
「お前にしてはいい役者っぷりだったじゃないか。俺はてっきり煙幕焚けないってんで
相手の攻撃を煙幕代わりにして死んだふりするのかと思ったが」
「そんなことしたらゲシュペンストが壊れて本末転倒じゃないですか。
それに、いくら自分が不器用だからって煙幕焚くくらいはできますよ」
「ハッ、何言ってやがる。以前霧島に聞いたぜ?
交通課の応援に行った時に発煙筒を焚けずに右往左往してたって……」
凄くどうでもいい口論が始まりそうになったので
俺は二人を制しながら今の顛末を聞くことにした。
……やはり、奥瀬弁護士の口車に乗った形のようだ。
「……シーグヴァイラ・アガレスさんでしたっけ。
彼女には、ちょっと悪い事をしたかもしれませんね」
「知るか。悪魔相手に広報する義理も義務もねえ。
まともな指揮系統下にいない現状、ゲシュペンストを現場判断でどう使おうが、俺らの勝手だ。
そしてそういう状況下にいる以上、破損のリスクを避けられるなら避ける。当たり前だろうが」
さもゲシュペンストが壊れてないみたいな言い方をしているが、本当に大丈夫なんだろうか。
大丈夫だとして、あの状況でどうやって?
気になった俺は、氷上巡査に聞いてみることにした。
「ところで、どうやってあの状況を切り抜けたんですか?」
「ああ、キックすると見せかけてグラス・ヒールって
脚部オプションのショットガン撃ったんですよ。
その散弾で弾幕を張って、直撃を免れたってわけです。
で、その隙に煙幕を使って大破して戻したように装ったんですよ」
「だから、あの弁護士野郎のダメージはキックの衝撃じゃなくて散弾のダメージだろうよ。
ま、八百吹っ掛けてきた代償だと思えって事だ。警察の買収は犯罪だからな。
……奴も弁護士なら知ってるだろうに」
八百長に乗っておいてそれか。まあ警察ってのも割と悪どいっちゃ悪どいし
俺もなんか言える立場でもないけど。
あと安玖巡査、奥瀬弁護士も割と悪どい方の弁護士です。クロをシロにするタイプの。
「でも、これでこっちは一人減っちゃったし、相手も調子づいたりしないかにゃん?」
「……セージ先輩のサイコロに期待します」
黒歌さんの心配はご尤もだし、白音さんからはどうにもならない期待を寄せられる。
サイコロの出目の操作なんて霊魂時代でも出来ないっての。やろうと思えばできるかもだけど。
(なあアモン。瞬間霊体で飛び出してサイコロの出目を弄るってのは……)
『そんな器用な真似できるか。俺はお前と違って霊体での物理干渉は会得してないんだよ。
いくら悪魔にとって物理的な肉体がそこまで重要じゃないって言っても、得手不得手はある。
ちなみに、俺にてめえの身体を預けてお前がやる……ってのもやめとけ。
なんかの拍子でお前の霊魂がこの体から締め出されたら笑えんぞ。
今度は最初にお前が身体を取り戻した手法も使えないからな?』
やっぱダメか。俺が幽体離脱してやろうかとも思ったんだが
その瞬間今度はアモンに身体を乗っ取られて追い出される、なんて事故も起きかねない。
そうそうズルはするもんじゃない、って事か。
――――
「勝ち方はどうあれ、流れはこちらに向きつつありますわ。
この勢いで、悪魔の底意地を人間に思い知らせてやりますわよ!」
インターバルも終わり、次の試合。
黒歌さんの指摘通り、気合十分の相手チーム。
迎え撃つには相応の覚悟が必要だ。
それこそ、俺が出て背水の陣で挑む必要があるかもしれない位には。
……ちなみに、さっきのが八百長で勝ったって事は
どうやら少なくともレイヴェルさんにはバレてるっぽいな。
そんな俺の気持ちを汲んでか、こちらのサイコロの出目は9。相手も最大値だが。
「……ここで決着を付ける理由が出来ましたわ。私自ら出向きますわよ」
「おいお嬢! 逸って負けたらどうすんの!」
「八百長男は黙っていてはもらえまいか。
レイヴェル様は汚い勝利よりも高潔な戦いを望んでおられるのだ」
「……あのねカーラちゃん。カーラちゃんと違って、お嬢は負けたらお終いなの。
俺やカーラちゃんと違って、『絶対に負けの許されない立場』なの。
ま、お嬢の決めた事だから俺が如何こう言うのも烏滸がましいけど……
カーラちゃんのその押し付けがましい思想も、お嬢の前ではあんまり言わない方がいいよ。
正々堂々大いに結構。でもそれはカーラちゃんの理想であって、お嬢の理想じゃないから」
なんと奥瀬弁護士の制止を振り切り「
後ろで揉めているようだが、レイヴェルはそんな二人を宥めながら、ステージに上って来た。
ならば俺が出るべきか。そう思い、出ようとすると――
「……忘れちゃいないか。『9』相当は、もう一人いるんだという事を」
なんと。俺を無理矢理ひっこめた上でビナー・レスザンがフィールドに躍り出たのだ。
相手が正体不明という事もあるが、色々解せない行動も多い。
まさか、本当にスパイか何かじゃなかろうな?
そう疑ってかかっていると、相手から小声でそっと耳打ちをされる。
「お前の手札は、そう簡単に曝さない方がいい。
サーゼクスを消すにあたって、アモンの力とお前の手札で一気に畳みかける。
超越者とも言われる奴を消すには、それ位してもギリギリなくらいだ。
それを成すためにも、お前の手札を曝して対策する時間を与えるのは得策では無いな」
……あれ?
俺、こいつにアモンとサーゼクスとの因縁や俺がアモンとの契約の流れとは言え
サーゼクスを倒すつもりだって話、したっけ?
実際サーゼクスや四大魔王相手に必要以上に手札曝す真似は避けたいってのは間違いじゃないが。
とにかく、奴がフィールドに出た以上俺の側から行動を起こすことは難しい。
奴が勝ってくれることを祈るしかない。悪魔相手に祈るのもなんか変だが。
……奴が昔「神に祈る位なら悪魔に祈る」みたいなことを言っていたな。
ま、俺に言わせば神も悪魔もそんな都合のいい存在でも無いだろう。
人間が言い訳をするためにでっち上げた概念的な何か、俺はそう考えている。
それを面と向かって言う程不躾でも命知らずでも無いが。少なくとも神仏同盟に関しては。
……そう考えると、ここにいる連中は一体何なんだと言いたくもなるが。
「……私は彼に用があるのです。貴方のような正体不明の悪魔など、お呼びじゃありませんわ!」
「此方もこんな茶番はさっさと終わらせたい。
その一点において、あの人間とは利害が一致している。
如何に不死鳥とて、雛鳥ならば恐れるに足らん」
ビナー・レスザンが手を翳すと、赤い光と共に途轍もない重力波が発生する。
これは……ユーグリットが使った「
だが、その重力波はレイヴェルさんへの攻撃ではなく、フィールドに効果を及ぼしていた。
重力波によってステージ上は遮蔽物や地形効果の一切無いフィールドへと変貌し
レイヴェルさんがフィールドに出た際に生じた火柱も一つ残らず消えている。
「重力魔法の応用、『
時間が無いのだろう? 小細工という三文字を今ここで消し去った。
自分自身の力のみで、全力で来い」
「…………後悔しますわよ!」
……見えた。見えてしまった。
今、レイヴェルさんの瞳に「恐怖」の二文字が。
恐らく、彼女も再生能力と言う点ではライザーに勝るとも劣らないものがあるのだろう。
だが……それだけなんだろう。即ち、ビナー・レスザンに対する決定打が無い。
千日手になれば、必然的に魔力の総量が多い方が勝つ。戦いは数だ。兵糧だ。
MEMORISE!!
此方にとっては勝機、相手にとっては死刑宣告。
そんな状況の中での久々の記録。今の技術、使えないことはない、って事か。
肝心の効果は……
――強力な重力波を利用し、周囲の地形を一時的に空間湾曲させることで
その地形に存在する生命体・地形・建造物等へ被害を齎さない戦闘フィールドへと置き換える。
このフィールドには持続時間があるため、その時間を過ぎれば空間湾曲した地形は元に戻り
戦闘フィールド内部の存在は消失、時間制限付きデスマッチ用のフィールドを生成する。
この戦闘フィールドは生成者以上の力がない限り上書きは不可能である。
……こういう場所より、寧ろ市街地向けの能力だな。
もしかすると、何かしらジャミング的なものも同時に使えるのか……?
いや、それよりも。
これだけの強力な魔力を操作できるって事は。
……俺の懸念は、想定通りの結末を齎したのだった。
――――
――フェニックスチームの「王」、戦闘不能!
よってこの戦い、人間チームの勝利です!
俺が思った通り、結果はビナー・レスザンの圧勝だった。
確かに、レイヴェルさんの不死の特性や幾度となく立ち上がるガッツは凄まじいものがあった。
だが、ビナー・レスザンはそれを事も無げにあしらったのだ。
まるで、魔力の量そのものが違うと言わんばかりに。
そう。例えるならば魔王クラス……魔王クラス?
……先程の魔法と言い、それを展開させる際に放った赤い光と言い
もしかして、奴は……
「如何にライザー・フェニックスの後継とは言え、あのような雛鳥如きに後れを取る私ではない。
それに、こんなところで負けてはスポンサーに顔向けできんだろう?」
……恐らく、俺の勘は当たってるだろうな。
今だってこうして「見ているぞ」と言わんばかりの振る舞いをしている。
俺達のこのレーティングゲームでのスポンサー。それは……
「はぁっ……はぁっ……せ、セージさん! 大変です!
さっきも少し話しましたけど、サイラオーグさんが……」
ビナー・レスザンの正体を問い質そうとする寸前で、息を切らせてバオクゥが駆け込んでくる。
そう言えばさっきもサイラオーグさんがどうとか言っていたが。
息も絶え絶えの様子で、端末に記録されていたらしき動画を俺達に見せつけてきた。
――当局ではサイラオーグ・バアル氏に関して
身分詐称及び公文書偽造の容疑について、同様に取り調べを行うものとし…………
…………た、たった今入った情報です!
現在行われているレーティングゲーム会場の来賓室にて
ゼクラム・バアル大王の変死体が発見されました!!――
……事は、俺どころかスポンサーが想定していたよりも複雑だったようだ。
サイラオーグさんの身分詐称容疑もなんだが、ゼクラム・バアルと言う聞きなれない名前に対し
アモンを除けば唯一生粋の悪魔であるビナー・レスザンが
目を見開いてそのニュースを聞いていたのだ。
そして当然、その情報を持ち寄ったバオクゥを問い詰める。
「おい情報屋! 大王が……大王が死亡したとはどういうことだ!?」
「わ、私も詳しくは知りませんよ!? そっちはノーマークなんですから……あっ」
「『そっちは』? ならばサイラオーグの身分詐称については知っているのか!?
奴は、バアルの後継者では無いとでもいうのか!?
魔力が無いとはいえ、出生については間違いなくバアルの系譜なのだぞ!?」
「そ、それは…………」
こっちを見て言い淀むバオクゥ。確かに、あの時ビナー・レスザンはいなかったな。
じゃあサイラオーグさんの「あの件」については知らないのも無理はない。
……事が事だけに言うのも憚られたし、そもそも他のメンバーと違って
ビナー・レスザンと俺達との間には妙な「壁」がある。
どこぞみたいに馴れ合い所帯じゃないからそれ自体はいいのだが。
そしてこのサイラオーグさんの件については、俺は察してしまった。
あの時の戦いの一部始終が、何らかの形で漏洩したのだろう。考えうる限り最悪の事態だ。
……そりゃそうだ。悪魔が光力を用いた攻撃をまともに喰らって平然としている。
そんな前代未聞の事態を目の当たりにした俺達でさえ、未だに信じられないのだ。
これが外部に漏れ出でもしたら……
…………サイラオーグさんに対する目線は、どうなるか分かったもんじゃない。
【速報】大王死す【出オチ】
さらに近いタイミングでサイラオーグの疑惑についても触れられているので
犯人はサイラオーグではないか、と言う噂が出ています。
真犯人は……まあ、お気づきの方もいらっしゃるかとは思いますが。
ビナー・レスザン。
もう正体バラしてるよねこいつ。
原作を考えると何気に皮肉な設定。