ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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少し短めです。


Trapped Bパート

ゼクラム・バアルの急死。

そのニュースにレーティングゲームの観戦にやって来た各国の主要神話体系の神々をはじめとした

来賓が困惑し浮足立つ中。

 

 

――その一方で。

 

 

「くっ……俺は無実だ! 俺に大王を殺す動機がない!」

 

「どの口が言っているんですかねぇ。

 貴方と大王が口論しているという証言を私は耳にしているんですがねぇ。

 そもそも、貴方と大王は折り合いが悪かったではありませんか」

 

サイラオーグの身柄確保のために出動したイェッツト・トイフェルの

ウォルベン・バフォメットから逃げる形でサイラオーグは奔走する。

 

「それは……」

 

「大方『お前は悪魔ではない、悪魔では無いものがバアルを名乗るなど言語道断』

 ……などと言われたのではありませんか?」

 

「…………っ!!」

 

ウォルベンの言葉は図星であった。

光力に対する異常なまでの耐性から、ゼクラムはサイラオーグを悪魔では無いと判断。

検査結果が出る前に決めつけこそしたものの、それでも「バアルを名乗る資格なし」と

断言したことはサイラオーグにとって誇りを傷つけたことに他ならなかったのだ。

 

「もっと言えば、母君諸共バアルの面汚しとして処刑する……とも

 以前マスコミのインタビューで答えていたではありませんか。

 『勝利を、武勇を母に捧ぐ』……と」

 

「!!!!!」

 

サイラオーグと言うバアル家にとっての鬼子を産み落としたことは

嫁いできたサイラオーグの母に対する風当たりを強くするには十分すぎる出来事であった。

それでも自分を育ててくれた母に対し、サイラオーグは大いに敬愛の念を抱いていたのだ。

彼に少なくない功名心があるのは、母の地位向上のためでもあるのだ。

 

だがその足掛かりも、今こうして奪われようとしていた。

 

「……ま、まだ……まだ俺が悪魔では無いと決まったわけでは……!」

 

「では貴方のあの光力に対する耐性や、悪魔には扱えない神器(セイクリッド・ギア)を軽々と操る。

 それはどう説明されるのですかな?

 そもそも、大王を殺した凶器は『普通の悪魔には扱えない』代物でしてね。

 容疑者として一番疑わしいのは貴方なのですよ」

 

何故それを!? と言わんばかりの表情を浮かべるサイラオーグ。

しかし、デモンストレーション的側面が強いとはいえスパーリングを公開し

しかも撮影自由と言う環境にしていた以上、何処から情報が洩れるかはわからない。

これに関しては、スパーリングを持ち掛けたセージが迂闊であったと言わざるを得ない。

 

「恨むのなら、この事が露見する切欠を与えた相手を恨むことですな」

 

(……疑惑は持たれていた事だ。遅かれ早かれ露見はしただろう。

 だが、今このタイミングと言うのは最悪だ!)

 

ウォルベンの攻撃を往なしながら退路の確保に努めるサイラオーグ。

そんな中、そのサイラオーグを援護するように「穴」が生じる。

サイラオーグの「女王(クィーン)」である、クイーシャ・アバドンの力であった。

 

「……今の話、聞かせてもらいました!

 『普通の悪魔に扱えない』凶器ならば

 サイラオーグ様よりも疑い深い者がいるではありませんか!」

 

「……ああ、なるほど。確かに我々は同盟を結びましたが

 別にどこぞの魔王みたく仲良しこよしを前提とした同盟ではありませんからね。

 『そういう』リスクもまた、起こり得る話ではありますねぇ」

 

「警護やアインスト対策のために同盟を結んだ相手が

 同盟相手の重鎮を害する行いに出た……そう言う事か!?」

 

クイーシャの指摘に、ウォルベンは答えを言ったようなものであり

サイラオーグもそのウォルベンの態度に納得した。

大王殺しの真犯人はラスト・バタリオンである。クイーシャは、そう言いたいのだ。

 

「ですが発言には気を付けた方が良かったですよ。

 大事な同盟相手に対し証拠不十分での糾弾は、それ即ち国際問題になり得ます。

 我々も悪魔の利益で動いている訳ですからね……

 そう言う事を言われると対応せざるを得なくなります」

 

ウォルベンが指を鳴らすと、今までとは比べ物にならない規模の兵士が姿を現す。

その中には、悪魔の兵士ではなく旧ドイツ軍服を纏った兵士や四足歩行の機械もいる。

明らかに、ラスト・バタリオンから貸与された軍団だ。

 

さらに、上空はスツーカやフォッケウルフが押さえている。

「穴」の力やレグルスを使えば一網打尽に出来るだろうが

スツーカやフォッケウルフがいる、という事は聖槍騎士団が控えていることは想像に難くない。

そうなれば、神器であるレグルスは忽ち無力化されるだろう。

 

「投降するなら手荒な真似はしませんよ?

 ただ、今までのやり取りは全て録画録音させていただいているので

 相手方から名誉棄損で訴えられた場合、溜飲を下げるため

 相応の対応をせねばならなくなりますが」

 

「……それはつまり、バアル家の取り潰しか。

 最早形骸化した72家だが、大王職たる我がバアル家を取り潰させるわけにはいかないな」

 

「はっはっはっ。サイラオーグ殿は冗談がお好きでいらっしゃる。

 悪魔では無いというのに、悪魔の家系の心配をなさるとは。

 

 ……いや、人間から悪魔になって間もないにも関わらず

 悪魔の価値観にすぐさま染まった輩もいましたっけ。

 とは言え、貴方は転生悪魔ですら無かったでしたね。いや失敬失敬」

 

口角を上げ、サイラオーグとクイーシャの拘束を命じようとした矢先。

ウォルベンの率いていた軍勢のど真ん中に「穴」が出現したのだ。

それと同時に、クイーシャが怒号を上げる。

 

「サイラオーグ様! ここはお逃げください!」

 

「くっ、こんなど真ん中で『穴』を用いるとは……!

 主君のためならば周囲の危害はお構いなし、生まれ持った性質か、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の副作用か。

 いずれにせよ、正規軍たる我々に対し力を行使する……

 いいでしょう、そっちがその気ならば――

 

 ――サイラオーグ・バアル並びにクイーシャ・アバドンを拘束せよ!

 抵抗激しい場合は殺害しても構わん!」

 

「しかし、大王殺しの容疑者を殺せば……」

 

「構わん! 我ら正規軍の執行に対し楯突き、逃亡を試みたのだ!

 大王殺しについても、自らが行ったと自白したも同然!

 万一が起きた場合は司令には被疑者死亡として報告する、早急に拘束するのだ!」

 

抵抗を受けたウォルベンだが、問答無用とばかりにすぐさま拘束の続行を命令する。

生死不問のその命令内容に兵士も一瞬戸惑うが、相手は正規軍である自分達に対し武力で抵抗した。

即ち、公務執行妨害であるとウォルベンは言い放った。

その命令を受け、イェッツト・トイフェルの兵士達も一斉に動き出す。

それを支援するように、スツーカもサイラオーグとクイーシャ目掛けて突っ込んできた。

 

「私も後から他のものと合流して必ず後を追います! 今は御身を第一にお考え下さい!」

 

クイーシャの決死の覚悟を前に、サイラオーグも堪えながらレグルスを揮う。

クイーシャが開けた包囲網の隙間から、サイラオーグは必死に飛び出す。

最早、彼に会場に戻る余裕もなくこの場を離れる事を最優先に動くより他なかった。

それほどまでに、ウォルベンの軍勢やフォッケウルフの追撃は執拗だったのだ。

 

 

――まるで、この会場からサイラオーグを遠ざけようとしているかのように。

 

 

(……理想はサイラオーグの身柄の拘束でしたが、まあいいでしょう。

 この後の事を考えれば、サイラオーグに会場近辺に居座られるのは不都合ですからね。

 追撃の兵士を割かねばならないのは落ち度ではありますが……

 

 ……ああ。こういう時こそ、人間が作ったアレを使えばいいんですか)

 

ウォルベンがサイラオーグに対し放った追手。

それはイェッツト・トイフェルの兵士やラスト・バタリオンの軍勢のみならず

ドラゴンアップルの害虫――冥界ではその出自からはぐれ悪魔の出来損ないとも言うべき

インベスでさえも、混じっていたのだ。

 

サイラオーグを追撃しようとするインベスを止めようとするクイーシャだったが

その行動はスツーカの爆撃に阻止され、クイーシャもラスト・バタリオンや

イェッツト・トイフェルの相手に忙殺されることとなった。

そして、ついには――

 

 

「くっ……」

 

「サイラオーグ・バアルを誘き寄せる釣り餌になるか、見せしめの生贄か。

 精々、監獄の中でどちらがいいかじっくり考えることです。

 心配せずとも、主との再会の願いは叶えて差し上げますよ。

 ただし、我々にとって都合のいい形ではありますがね」

 

「穴」の力を以てしても、イェッツト・トイフェル、ラスト・バタリオンの連合軍の

数の暴力の前には、クイーシャも投降せざるを得なかった。

捕縛されたクイーシャは、心配そうにサイラオーグの逃げ去った方角を見つめていた。

 

 

(クイーシャ……必ず助ける!

 だが、奴らの動きはあまりにも手際が良すぎる……

 まるで、俺と言う存在を囮に何かを起こすのではないかと言う位には……

 もし、そうだとしたら……奴らめ、何を考えているんだ?)

 

この場からの逃走には成功したサイラオーグではあったが。

一応悪魔政府の正規軍たるイェッツト・トイフェルが追跡しているという事実は

サイラオーグ・バアルに対し「国家反逆者」としての誹りを与えるには

十分すぎる材料となってしまったのだ……




原作では主人公に殺されかけた(少なくとも殺意は向けられた)方が
こちらでは捕縛され反逆者。しかも処刑をちらつかされてる、何の因果か。
「穴」自体は数の暴力ともそこまで相性の悪い能力では無いはずですが
反逆者扱いによる士気の低下に付け込んだ形。

ゼクラムを殺したのは「普通の悪魔には扱えない凶器」。
サイラオーグは神器が使える(拙作設定)ので、この凶器を使えてもおかしくない。
だけど……?

病気の母のために戦っていたはずがいつの間にやら犯罪者(本人曰く無実とは言え)。
これ、レーティングゲームの裏で起きるにはでかすぎるスキャンダルじゃね……?(今更)
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