ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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ちょっと思ったより長引きそうです。


Highlight Sitri Bパート

先の試合において。

人間チームはフードコートを、シトリーチームは食品売り場を拠点として

ゲームがスタートしたのだが、セージ達が取った行動はフードコートの守りを最小限にして

セージは速やかに防災センターを確保。そしてゼノヴィアを屋上にある防火用貯水槽に派遣し

貯水槽の水を浄化、聖水へと変えさせたのだ。

 

 

Everyday Young life JUNES!!

 

 

――警告する。ソーナ・シトリーの速やかなる投了(リザイン)を勧告する。

  当方には屋内施設を破壊することなく広範囲を攻撃できる準備がある。

  眷属の命が惜しければ、速やかに投了せよ。

 

(これは……館内放送! という事は、サービスカウンターを押さえられたって訳ですか。

 偵察でフードコートが手薄になっているとは思いましたが、まさかそこを狙うとは……

 ……ですが!)

 

防災センターからのセージの通告に対しても、ソーナは抗戦の意思を示した。

その証拠に、シトリーチームの拠点である食品売り場へ向けて移動している

氷上(ひかみ)巡査のゲシュペンストと光実(みつざね)龍玄(りゅうげん)に対し

優位を取りやすい魔力による攻撃を敢行したのだ。

屋内の破壊は認められていないため、龍玄はキウイアームズのキウイ撃輪。

ゲシュペンストは右手のプラズマ・スライサーと徒手空拳による応戦を強いられる形となり

広域破壊をすること無く遠距離攻撃の出来るシトリーチームが優位に立っていたのだ。

 

魔力による攻撃を繰り出してくるシトリーチームとの戦いは、初めこそ人間チームが不利だったが

バックヤードからの人間チームの援軍が駆けつけた時には

シトリーチームを誘導できる程に、人間チームが優位性を得ていたのだ。

ゲシュペンストとアーマードライダーの装甲が、魔力弾を耐え抜いた証左ともなった。

さらに、魔力弾の通りが悪いからと接近戦を挑めば、接近戦はゲシュペンストも龍玄も射程範囲。

今度はパワーで押される形となってしまうのだ。

 

そんな重装歩兵のような戦い方を繰り広げるゲシュペンストと龍玄。

そんな彼らを、バックヤードから援護射撃するのが安玖(あんく)巡査。

そして、素早い動きで攪乱に入る猫姉妹。

人間チームは、ショッピングモールの「売り場」ではなく「裏口」を戦闘の生命線としたのだ。

 

このように、売り場内で迎え撃つ段取りをしていたソーナ達の裏をかくように

セージ達はバックヤードを移動経路とし、さらにソーナはアナウンスの発信源を

売り場内にあるサービスカウンターと誤認してしまった。

 

女王(クィーン)」である副会長の真羅椿姫(しんらつばき)を伴ってサービスカウンターに奇襲を仕掛けるソーナ。

しかし、当然のことながらそこにセージはいない。

ご丁寧に大型サイズのぬいぐるみが椅子に座るように置かれていただけだ。

そんなソーナ達を煽るように、館内放送が流れる。

 

 

Everyday Young life JUNES!!

 

 

――お客様のお呼び出しをいたします。宮本成二様、宮本成二様。

  支取蒼那(しとりそうな)様がお呼びです。一階サービスカウンターまでお越しください。

 

  ……とでも言っておけばいいか? 残念だったな。

  こんなところで油を売っている暇があったら、味方の援護に向かう事を勧めるがね。

  無論、ここからただで帰ることが出来れば、だが。

 

 

そしてさらに、サービスカウンター周辺に罠が張り巡らされて無い訳が無く。

カウンターの上に無造作に置かれていたロックシードが起動。

小さな初級インベスとは言え、数に物言わせる形の布陣であり

さらにその第一撃は不意打ちである。

 

時限式でのヒマワリロックシードの使用を提案したのは光実だ。

後始末やフレンドリーファイア対策など、万が一にも備えてのチョイスであった。

そもそも、ここに相手チームが来るかどうかはセージとしても半々の賭けであった。

ここに相手が来た時のために、遠隔操作ができる罠が求められ、その結果白羽の矢が立ったのが

光実がいくらか持ち込んでいたロックシードだったのだ。

 

そもそもロックシード自体、サポート対象外ではあるが素人でも簡単な改造が可能な代物だ。

今回行われた改造は、正規所有者以外でもインベス召喚を可能にする「リミッターカット」だが

それに光実が時限装置や遠隔起動システムを組み込んだ形である

(実際に改造を施したのは観戦に来ていた戦極凌馬(せんごくりょうま)だが)。

 

無論、この初級インベスの奇襲だけで倒せるほどソーナ・シトリーの眷属も甘くはない。

……甘くは無いのだが、ここに本命の奇襲が加われば話は変わってくる。

 

「――しゃあああああああああっ!!」

 

従業員口から飛び出してきたマスク・ザ・ハチワレのラリアットが椿姫の首にクリーンヒット。

纏わりついていた初級インベスを巻き込む形で

ショッピングモールのフローリングに倒れこむ形となる。

 

「椿姫!」

 

「く……油断しました……か、会長は早くみんなの下へ……!

 ここは私が……!」

 

「そんな余裕な口、すぐにきけなくしてやるにゃん!」

 

追い打ちをかけるようにマスク・ザ・ハチワレが椿姫を逆さ吊りにし

ジャイアントスイングの構えに入る。

プロレスならばここでソーナが割り込むのが流れとして正しいのだが

ソーナにプロレスの知識は無かった。そのため、椿姫の言葉を真に受けて

他のメンバーの救援のために食品売り場へと引き返してしまったのだ。

その後ろ姿を追うことなく、マスク・ザ・ハチワレは椿姫をフローリングの床に放り投げる。

場外乱闘があるとはいえ、プロレスはリング上の競技である。場外で叩きつける技を使えば

その分、ダメージは大きい。故に場外はカウントを取られるのだ。

しかし、今は通常ルールのレーティングゲーム。場外カウントは存在しない。

 

「一つ教えておいてやるにゃん。

 こういう時はカットに入るのがプロレスのルールブックだにゃん。

 だからこうして……」

 

「うっ……んっ、ああああああああっ!?」

 

液体とも称されるほどの柔軟性を持った猫の妖怪だからか、その体の柔軟性を活かした関節技。

悪魔には翼があるため関係ないが、その足を封じる意味でマスク・ザ・ハチワレは椿姫に対し

クロス・ヒール・ホールドをかけたのだ。

これが格闘技にも通じている「戦車(ルーク)」の由良ならば抜けられた可能性もあったかもしれないが

椿姫もまた、プロレスには疎かったため抜け出す手立てが無かったのだ。

魔力攻撃をしようにも、関節からの痛みと言う骨格と神経と筋肉を持つ生物ならば

無視できない場所からの痛みであるため、魔力を練る集中力をも奪っていたのだ。

 

技をかけた相手の足首や靭帯に大きな負荷を与えるこの技。

見てくれとしては美女二人が絡み合う形となっており

さらにマスク・ザ・ハチワレは元々際どいコスチュームをしていたため

この技が決まった時に一部観客が沸き立っていた。

 

それを知ってか知らずか、マスク・ザ・ハチワレが腰を扇情的に動かしたかどうかは

定かではないし、それはまた、別の話。

 

 

――――

 

 

一連の戦闘の流れを、リアスもまたモニターで観戦していた。

彼女はソーナが知りようが無い「中継された映像」に基づく知識も得ていた。

それは即ち、ゼノヴィアが防火用貯水槽に施した細工の中身と

セージはソーナの推測であるサービスカウンターにはいないこと。

この二点から、彼女にはある記憶が去来していた。

 

(セージ……まさか! またアレをやるつもりなの!?

 こうしちゃいられないわ、早くソーナを投了させないと、取り返しのつかないことが……)

 

慌てて飛び出そうとするリアスだが

その目の前にはユーグリット・ルキフグスが立ちはだかっていた。

 

「何しに来たの、邪魔しないで!」

 

「それはこっちの台詞だよ。今、どこに行こうとしたんだい?

 まさかとは思うけれど、妙な事をソーナ・シトリーに吹き込もうとして無いだろうね?」

 

「命にかかわる大事よ! 妙な事じゃないわ!」

 

ユーグリットの脇を強引に駆け抜け、リアスは周囲の反対を押し切って

試合の実況席に駆け込んできたのだ。

これには、実況席の悪魔も面食らう事となってしまった。

 

「ちょっ!? ぐ、グレモリー選手!? 今は試合中ですよ!?」

 

「関係ないわ! ソーナ、聞こえる!? 今すぐ投了しなさい!

 セージは、セージはあなたを殺すつもりでこの試合に臨んでいるわ!

 誰がこの方式での試合を提案したかはわからないけれど

 このままじゃあなた達は全滅させられてしまうわ!」

 

『……聞こえています。何ですか騒々しい。

 リアス、今は試合中ですよ? つまらない話は後にしてください。

 そもそも、レーティングゲームで死亡事故など聞いた事がありませんし

 それが起きないための設備がしっかりしているではありませんか。

 相手が誰であれ、全力を以て事に臨む。

 それがレーティングゲームの心構えでは無いのですか?』

 

「あなたは知らないのよ! 私とライザーとの試合で……

 いや、あれは試合なんてものじゃなかったわ!

 セージはライザーを再起不能にさせた実績があるのよ! あの場にいたからよく知っているわ!

 セージもセージよ! あなた、レイヴェルもこの試合を見ているというのに

 よくもこんな真似が出来たものね! 反省したんじゃなかったの!?」

 

『………対話の必要を認めない。故に以後は無視を貫き通す。

 あまり喋って不利になりたくはないんでね。

 (と言うか、タネ晴らしは普通に反則だろ……二度としないとも言って無いし)』

 

ソーナからも、セージからも素気無く返されてしまったリアスの必死の叫び。

しかも、彼女が強引に実況席に入った事で試合は一時ストップしてしまった。

これは試合運行の上においては重大な事故である。

 

「そこまでだ、リーア。これ以上の試合への干渉は君にペナルティを与えねばならなくなる」

 

「お兄様! お兄様からも言ってください! このままでは、ソーナが……」

 

「大丈夫よリアスちゃん☆ ソーナちゃんがあんな人間如きに負けるわけないって☆

 だから心配しないでソーナちゃんを応援してあげてね☆」

 

魔王からもストップがかかったことにより、リアスも引き下がらざるを得なくなる。

妹としての立場からサーゼクスに訴えかけるが

苦虫を噛み潰したような顔でサーゼクスは首を横に振っている。

彼もまた、ジオティクス経由でライザーの顛末は知っているが故の反応である。

一方セラフォルーは、その過剰ないし盲目的とも言える妹への信頼から

ソーナの負けを一切考慮していなかったのだ。

 

 

――――

 

 

因みに、リアスが引き合いに出したレイヴェルは静かに試合を見守っていた。

 

(……まあ、当事者ならばやるのは当然ですわね。聖水の有効性は証明されていますもの。

 そして、それを使用禁止とする取り決めも無い。

 人間が道具と共に進化してきたのは何よりも歴史が証明してますし

 その人間の進化の恩恵に肖ったのも私達悪魔ですもの。

 理性も無いサル相手に契約は結べませんわ)

 

「……お嬢、いいんですかい?」

 

驚くほど冷静に試合を見守っているレイヴェルに対し、奥瀬の方が声をかける。

ショッピングモールでの細かな立ち回りなどは彼からも解説が加えられており

レイヴェルはスムーズに試合観戦が出来ていたのだ。

 

「思う所はありますけれど、あの時負けたのはあの『兵士(ポーン)』……いえ、人間を見縊ったから。

 そして、その人間が(しがらみ)から解き放たれて、万全な状態で戦いに臨んでいる。

 ソーナ様には悪いですけど、どれほどのものを見せてくれるか、逆に楽しみですわ」

 

「……怖いもの見たさ、ですかね」

 

否定はしない、と奥瀬の言葉に首肯するレイヴェル。

かつてはリアスの一撃としてもやり過ぎなセージの行動を一応は黙認したレイヴェル。

兄を再起不能なまでに痛めつけた人間という事で、レイヴェルはある意味リアスと同等程度には

セージに関心を寄せていたのだ。

それは情の絡むものでは無く、悪魔として

そしてフェニックスとして打ち克つべき存在としてではあるが。

 

リアスの一撃、としたが当のセージには当時からリアスのために戦っている意思は全く無く。

それはライザーからも指摘されており、実際その通りとなった。

故にレイヴェルはこの試合以降、セージをリアスの「兵士」たる転生悪魔ではなく

扱いこそ転生悪魔のそれではあったが「人間」として見做していたのだ。

それが故に、人間をより良く知るために

新しく同じ日本人男性である奥瀬秀一を眷属に招き入れたのだ。

彼は彼でフェニックスの権能目当てでレイヴェルの提案をのんだ形であるが

弁護士を求めていた件も合わせて、利害は一致していたのだ。

実は案外珍しい、双方正常な意思を持ち、完全な同意の下行われた悪魔転生契約である。

 

「俺に言わせば、ありゃ心に何か持ってますな。

 何かしらの闇抱えてなけりゃ、あんな肝の据わった行動を高校生のガキが取ったりしませんよ。

 いや……高校生だからこそ、そう言う無茶するのかもしれませんが」

 

「そう言う意味でも、やはり眷属に入れるのは成人した方に限りますわね。

 いくら強制力が働くとは言っても、制御の利かない眷属なんて怖くて仕方ありませんわ。

 ああ、ちなみにお兄様の眷属の中には幼い見た目の子もいらっしゃいましたけど

 皆結構な年齢ですわよ? お兄様との付き合いも長いって時点で、自然とそうなりますもの」

 

レイヴェルのその言葉は、当然のことながら転生悪魔は人として死ねない。

という意味合いのものであった。

だが奥瀬はその言葉にも動じることなく相槌を打っていた。

彼もまた、病気に起因するとは言え不老不死を願っていたのだから。

フェニックスの権能によって病魔の死の恐怖から逃れる事。それが彼の願いだったのだ。

 

「お嬢は年上好みか? じゃあ残念ながら俺は対象外か。

 俺、こう見えてお嬢より生きてないし、それ以前にお嬢はブラコンだしな。

 綺麗どころが揃っていても、みんな俺に気が無いってのはそれはそれで肩身が狭いもんだねえ」

 

「ぼやかないでくださいまし。先生ならモテますわよ。

 確かに私の眷属は皆お兄様から譲り受けた方々なので

 必然的にお兄様に尽くす立場ですけれど」

 

別に仕事仲間口説くつもりも無い、と返す奥瀬であったが

その声のトーンは心なしか低かった。

ライザーの美的感覚と奥瀬の美的感覚に然程の違いは無かったのだ。

そんな彼女たちは揃ってライザーのハーレムの一員である。奥瀬は文字通り蚊帳の外なのである。

 

「ま、別に女が欲しくて契約した訳でも無いしね。生きてりゃ金や女はどうにでもなる。

 それが昔からの俺の信条でね。それに仕事はきっちりこなすよ。

 なんたって、スーパー弁護士ですから?」

 

「まあ、欲深な事」

 

おどけて見せる奥瀬に対し、レイヴェルも奥瀬の元病人とは思えない

或いは元病人だからこそなのかもしれないが。

その逞しさに関心を持っていた。

それはセージの苛烈さの原動力と合わせて、人間が強く持つ性質であると言えた。

レイヴェルはセージと奥瀬、二人の人間と出会う事で人間への関心を強めていた。

それは彼女自身が人間に憧れることではなく

自身が悪魔としてより高みを目指すための研究材料として。

悪魔にそう言う感情を植え付けるほど、人間の知恵と勇気と底力は偉大なものであったのだ。




そりゃやるんならこの二人が黙ってねえだろ、的な描写を入れた結果。
黙ってないのはリアスだけでしたが。
本当は今回聖水スプリンクラーが炸裂するはずでしたが、それは次回。

あとマスク・ザ・ハチワレの女子プロレスを少しは披露したかった。
カムカム・ミケはギミックの都合上今回はお休み。多分食品売り場で猫になって運動会してる。
床が普通にフローリングなのでバスター系の技は自重(投げたけど)。
と言うのは建前で本当は際どい衣装でのくんずほぐれつが見たかったという
赤土って奴のスケベ心の仕業なんだ。
クロスヒールホールド。詳細は各自検索してください。関節技は口頭で説明するの難しいですし。

ソーナ。確かに言われてみれば、言われてみなくともある意味リアスどころかサーゼクス以上に現実が見えてない子。
レーティングゲームに夢見すぎだと思います。
そんな奴が拙作の世界でどうなるかと言ったら……ねえ?
夢のアンチテーゼたるJOKERが手ぐすね引いてるような世界ですし。

一方兄を再起不能にされながらも「人間を嘗めたから負けた」と分析し
人間の知恵袋を更新し、そこから得るものはないかと探り始めたレイヴェル。
原作考えると某Kガリみたいな状態とも言えますが。
人間との共存ではなく、悪魔として高みを目指すために人間を研究する。
そう言う意味で良き隣人たれるかどうかは微妙ですが。
少なくとも、今のところ非人道的な方法は取ってませんとだけ。
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