――シトリーチームの「
サービスカウンター前でのマスク・ザ・ハチワレと真羅椿姫の戦いは
マスク・ザ・ハチワレのフィニッシュホールドが炸裂する形で幕が下りた。
豊満な女体の絡み合う関節技でのフィニッシュには、様々な意味で観客が沸き立った。
元来、椿姫は
その得物の長さが命取りとなったのだ。関節を極められるほどの至近距離では
長刀も神器も役には立たない。
こうして着実に追い詰められていったシトリーチーム。
一発逆転を狙うべく、拠点である食品売り場で迎え撃とうとしていた。
……しかし、それこそがセージの狙いでもあった。
Everyday Young life JUNES!!
――最後通告だ。直ちに
さもなくば、当方にて用意している攻略兵器の機動を決行する。
再度流れるアナウンス。
アナウンスを伝えるジュネスCMソングのジングルと
その肝心のアナウンスの内容の温度差は、まるで金属疲労を起こせそうなレベルであった。
「決意は変わりません。そのような脅しには、私達は屈しません!」
『セージ! 止めなさい! セージ!!』
しかし、アナウンスに対しても逆に闘志を燃やすソーナに
殴り込んだ実況席から必死に呼びかけるリアス。
彼女たちの声を知ってか知らずか、防災センターのセージはついに行動を起こすのだった。
――了解した。己の決断の甘さを呪うがいい。
ぶつり、と館内放送のスピーカーが切れたと同時に、けたたましく火災報知器が鳴り響く。
そして、ゲシュペンストから撃ち出された煙幕弾が食品売り場の天井付近で炸裂する。
フロア上では、ご丁寧にゼノヴィアや
「煙幕……? ま、まさか!!
皆さん、すぐにここから離れて下さい! これはもしや――」
ソーナがそう叫んだ瞬間だった。
天井に設置されていた防火用スプリンクラーが満を持して作動。
ノズルの真下に誘導されていたシトリーチームは、清められたスプリンクラーの水を
もろに頭から浴びる形となったのだ。悪魔にとっては硫酸にも等しい、聖水を。
当然、試合の様子は映し出されているので観客席にはどよめきと悲鳴が響き渡る。
「……悪魔には容赦しない私だが、流石にこれは酷いな……。
これはまるでアウシュビッツではないか……!」
この光景には、悪魔退治を生業としているゼノヴィアでさえも目を覆った。
何せやっていることは、彼女の祖国では禁忌とされているさる組織の所業と
そこまで大きく変わらないからだ。
聖水から逃れようとするシトリーチームだが、狙ったように足元には油が撒かれ
水が降り注ぐエリアからの脱出を困難にしていた。
聖水は天井から降り注いでいるため、飛んで逃げることもできない。
溺れる者を棒で叩き続けるが如き非道とも言える行い。
これは単に悪魔に対する感情移入が無いからこそできる行いである。
超特捜課の二人は職務とあれば冷徹に遂行することを求められる。
今は職務では無いが、手心を加えた結果、自身を苦しめる結果になるだろうことは理解していた。
ゼノヴィアは生まれからこの光景に嫌悪感を示しただけで、悪魔に対する姿勢に変わりはない。
マスク・ザ・ハチワレ――黒歌は、そもそも悪魔に恨みがある。
一応セージも事前に相談はした――特に聖水の提供元であるゼノヴィア相手には――が
それでも特に反対意見が挙がらなかったため、決行に移されたのだ。
――――
「……聞こえてるよ。こっちの戦力で各個撃破なんてやってられないから
こうやって一網打尽を狙ったんじゃないか。
それ以上でもそれ以下でもない、態と残虐なやり方で嬲り殺すなんていう
露悪趣味やってる暇だって無いんだ。それに、一応こう見えてそう言うのは好きじゃない。
……と言うか、大量の聖水を悪魔の集団目がけてぶちまければ
こういう結果になるってわかってて、こっちに聖水を提供してくれたんじゃないのか」
ゼノヴィアのぼやきに無線越しでセージからの反論が入る。
しかし、反論こそしたもののセージ自身、他にやりようがあったのではないか、と言う考えも
少しではあるが抱いていた。
(……作動させたのは自分だけど、やっぱこれは何度やっても慣れないな。
スイッチ一つで大量殺戮の引鉄とか……俺もまともな死に方しないだろうな。
それに、
やる事が同じってゼノヴィアさんの言い分もまあ……)
『……おいピンク。こいつ、本当に高校生だよな?
俺の話に聞いた人間の、日本の高校生とはまるで違うんだが。
少なくとも、死に様の心配なんかしねえと思うんだが』
『マゼンタだ、いい加減覚えろ。だが高校生が死に方の心配なんかしないってのは同意だな。
まさかとは思うが……取り込んだ負念に引っ張られて無いだろうな。
もしそうなってたら……少々マズいかもしれんぞ』
スプリンクラーの作動を見届け、一人防災センターで考え耽るセージ。
しかし、脱落のアナウンスは流れても、試合終了のアナウンスは流れていない。
それは即ち、隠れ立て籠もっている自分にも危害が及ぶ危険性が
まだ残っていることを示していた。
その証拠に、机の上に置かれていた無線機に通信が入る。
『おいセージ、聞こえるか! 今確認したが……一人足りねぇ!
辛うじて生き残ってた『
あの聖水爆撃を逃れた奴がいる、気を付けろ!』
「な、何だって!?」
安玖巡査からの無線に我に返ったセージは、慌てて監視カメラの映像を確認する。
シトリーチームはほぼ食品売り場に固めており、そこでスプリンクラーを作動させたのだから
ほぼ全員が行動不能に陥っているはずだった。
しかし、確かに数が合わない。「
匙の姿を確認すべく、必死にモニターを注視するが。
――それが、命取りとなったのだ。
「――きえええええええいっ!!」
「――っ!?」
振り向いた瞬間、セージは真正面から袈裟斬りにされてしまう。
刃を防ぐものはセージの制服と、万が一のための備えである特殊防御インナーだけであった。
そして何より、そのセージを切りつけた武器は――
『セージ! 奴が持っている刀……妖刀だぞ!』
「何っ!? 妖刀……まさか、JOKERが持っているって話の村正か!?
だとすると……匙、お前!!」
「……ああそうだ。俺はな、会長に相応しい男になるためにJOKERに願いを告げたんだ。
ヴリトラの力にJOKERの願いを叶える力が合わされば
いくらお前が訳わからねえ程能力を集めても、俺だって負けはしねえ!
だから……会長に相応しい男になるために……お前を……
…………八つ裂きにしてやるんだよぉ!! ヒャーッハッハッハッハッハ!!」
突如、匙の背後に現れた黒龍。その背中を食い破るようにして仮面の道化が姿を現す。
丁度、仮面の道化師が黒龍から生えている――
否、仮面の道化師が黒龍を従えている形となっている。
言うなれば、JOKERヴリトラであり、それを操る彼はJOKER元士郎とでも言うべきか。
その証拠に、匙の貌は今までJOKERへと変わり果てた人々と同様
白塗りに薄気味悪い笑みを浮かべた赤い口紅。
元来の匙の貌ではなく、JOKERのそれと成り果てていたのだ。
防災センターの中で、JOKER元士郎と対峙するセージ。
(そういや、JOKERの持つ妖刀には異能封じの力があるんだったか。
おまけに聖槍のコピーと違って、普通に痛いし出血もあるか……こりゃヤバいな。
止血は出来てるみたいだが、記録再生大図鑑を封じられたとなると……)
『…………ージ、セージ。悪いが……も……紐づけ…………てるからか…………』
『今のままじゃ不利だ、妖刀なら悪魔特効は無いはずだ。俺に代われ!』
記録再生大図鑑との紐づけが仇となり、効力を失いつつある紫紅帝の龍魂。
今やセージはその力の大半を奪われた状態である。
そんな中でJOKER元士郎と対等に戦うためには
セージに憑いているアモンの力に頼らざるを得ない。
…………なのだが。
(ダメだ。この中にはゼノヴィアさん直伝の魔封結界が展開されているし
そもそも入り口からして魔除けを施している。
こんな中でお前が表に出たら、盛大な自爆になっちまうぞ)
『道理で、この中に入った時居心地が悪いとは思ったが……
じゃあ、だったら何であいつは平気なんだよ?』
(……わからん。JOKERになった事で、転生悪魔としての性質がリセットされて
人間としての性質になったか、そもそもJOKERは悪魔じゃないから魔除けの対象外か。
そう言えば確かにJOKERは「怪人」だの「殺人鬼」だの噂されていたが
「悪魔」と噂されていたって話は聞いたことが無いな)
セージが防災センターを確保した際、相手チームの進入に備えて魔除けを施していた。
これは彼らが人間チームであり、特に今回は味方に悪魔がいなかったからこそ出来た芸当である。
妖怪にも多少は効果があるかもしれないが、今回施した魔除けは悪魔に対象を絞っている。
妖怪と悪魔は、近しい物こそあれども基本的には別種族である。
故に、セージは躊躇わず魔除けを施したのだ。
「ヒャッハッハハハァ!! いい気分だなぁ?
今まで散々俺や会長やリアス様に生意気な態度を取ってくれてよぉ!
お前だって神器でイキってただけじゃねえか! 俺はそれに加えて悪魔の力もある!
人間風情が会長やリアス様に逆らうんじゃねえよ!!
俺達が、悪魔が人間の世界を守ってやるって言ってるんだ!!
力のない人間にしゃしゃり出てこられると、迷惑なんだよ!!」
(……力のない人間が出てくるのは迷惑。そこはわからんでも無いがな。
だが人間の世界の平和は、人間の手で守るものだって基本的なことが抜け落ちている。
それを無くしている以上、お為ごかしを掲げた侵略者と変わらない……!!)
JOKER元士郎の掲げる理想に対し、セージは戦う決意を新たにするが
神器を封じられたセージと、神器に加えJOKERの力も加わったJOKER元士郎とでは
戦力に決定的な差があり過ぎた。
防災センターの中にあった警備員用の装備で辛うじてJOKER元士郎の攻撃は凌げているが
攻勢に転じることは、出来ないでいた。
「首だけになって、会長に詫びやがれぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「――っ!!」
振りかぶった村正が、不吉な光を放ちながらセージの首を刎ねようと唸る。
しかし、妖刀の刃は血に染まることなく空を切り裂いただけであった。
「……大丈夫ですか?」
「白音さん……じゃなかった、ミケ、どうしてここに!?」
間一髪で、カムカム・ミケによってセージは一命をとりとめた。
ここに展開されている結界はあくまでも魔除けのものであり
猫魈相手には効果が不完全だったのだ。
また、これは彼女自身も気づいていないことだったのだが
格好に招き猫と言う縁起物の意匠を取り入れたことによって
猫魈にも少なからず残っている魔に由来する部分が、福を齎すものとして属性が反転したのだ。
「セージ先輩、ここは私が」
「……なんでだよ!? なんでだよ小猫ちゃん!?
君だってリアス様の下で悪魔として活躍してたじゃないか!」
JOKER元士郎の言葉にも、カムカム・ミケは聞く耳持たずといった趣で
対峙しながらもその構えは解かれることが無く。
それどころか、必殺技を繰り出そうと気を練ってさえいた。
「私は……私が戦うのは……リアス先輩のためじゃありません。
私のために……戦います」
カムカム・ミケの右手に輝く白い光。それこそ彼女が元来持つ気が姿を変えて顕現した姿である。
その小柄な体躯には収まりきらない程のはち切れんばかりの気を、彼女は蓄えている。
そして、その気を収束させ、直接叩き込む必殺技。それこそが――
「……だから、あなたを倒します。
白光! ライトニング……フィンガァァァァァァッ!!」
カムカム・ミケの強い気の光を受け、JOKER元士郎の背後から生じていた
ペルソナを思わせる黒龍から生えた道化師の影諸共に吹き飛ばされるが
白塗りの貌を歪めながら、カムカム・ミケに反撃を敢行。
カウンターを受ける形で、JOKERの魔法を受ける形になってしまったのだ。
「……う、裏切り者め……裏切り者めぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「い、今です……セージ先輩……!」
――人間チームの「カムカム・ミケ」、脱落。
転送されるカムカム・ミケの後ろから、セージの伸ばした触手がJOKER元士郎を縛り上げる。
カムカム・ミケの脱落と同時に、神器の封印が解けたのだ。
「きっ、きっ、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
怒号を上げるJOKER元士郎を無視しながら、セージはジャイアントスイングの要領で
JOKER元士郎を天井に向けて放り投げる。
放り上げられたJOKER元士郎は、天井に叩きつけられその身動きを封じられる。
EFFECT-CHARGE UP!!
そして、身体能力を強化した上で触手を地面に叩きつけ
その勢いで空中へと飛び上がり、再度JOKER元士郎を触手で固定。
そのまま激突するような形で、セージはJOKER元士郎に渾身の蹴りを叩き込んだ。
――ボルテクストリーム。
かつて、シャドウ成二にとどめを刺したボルテクスコールの応用技。
水流や渦潮と言った水の力を使わない分、固定する威力では劣るが
攻撃そのものの衝撃に関しては変わらない。
ライトニングフィンガーの後に、立て続けに必殺技とも呼べる一撃を受けたことで
JOKER元士郎と言えど、地に伏さざるを得なかったのだ。
JOKER元士郎が斃れたのと、食品売り場で残りのメンバーが
傷ついたソーナ・シトリーを下したのは、ほぼ同時のタイミングであった。
本当なら顛末まで書くつもりだったのですが、長引いてしまいましたので。
ともあれ、こんな形で人間チームはシトリーチームを下しました。
関節極められた副会長と白音とセージの連続攻撃受けただけの匙は
聖水シャワーから逃れた形ではありますが……
と言うかシトリーチームってアザゼルのテコ入れが無かったら匙以外モブオブモブってレベルの強さじゃないですかやだー
拙作? 当然そんなテコ入れ無いので今回の聖水シャワーはもしかしたらオーバーキルかも。
……ところで、JOKERには言及してますが
「匙元士郎」には言及してませんよねえ?
しれっと新技出してるセージ。
と言ってもキン肉バスターと新キン肉バスター位の違いしかありませんが。