ハイスクールD×D 学級崩壊のデビルマン   作:赤土

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お待たせしました。
うっかりCパート相当を先に書いてしまったので
帳尻合わせも含め時間がかかってしまいました。


The Price of Wishing Bパート

冥界・レーティングゲーム会場控室前。

 

偶然鉢合わせたセージとリアス。

聖水の使用について、セージのスポンサーでもあるユーグリットから叱責を受けた矢先に

聖水の使用による犠牲者を目の当たりにし、かつ当事者でもあるリアスから

さらなる叱責を受ける形となったセージであったが――

 

 

「……バカな、あんたともあろう者が知らないのか!?

 そりゃ確かに、匙元士郎はシトリー会長の眷属だから、あんたとの接点は比較的薄い。

 だが、あんたとシトリー会長の付き合いを考えれば知っててもおかしくないはずだ!」

 

「そんなこと言われても知らないものは知らないわよ。

 そんなに言うなら、今念話繋ぐからソーナに確認を取ってみるわよ?」

 

リアスらしからぬ物言いに思わず食って掛かるセージ。

事の発端は、ふと匙の名前を出したセージに対し

リアスが「そんな奴は知らない」と返したことなのだが

それがセージにはあまりにも不自然だったのだ。

 

リアスもリアスで、セージの血相の変え方が彼女の知るセージらしからぬところがあると考え

セージを黙らせる意味合いも込めて、ソーナに確認を取ってみることにした。

主であるソーナが、眷属である匙を知らないなんてことはあり得ない。

セージは、間違いなくそう思っていた……のだが。

 

「――返答が来たわ。『知らない』とのことよ。

 向こうも薮田先生と話していて忙しいみたいだから、これ以上は話さないわよ。

 それからセージ。薮田先生からもさっきの試合について一言あるそうだから

 後で会いに行きなさい。内容は……わかると思うけど」

 

「そうか……手間かけさせて悪かった。

 悪かったついでにお節介を焼くが、JOKER呪いには気を付けろ。

 手出しはしないと思うが、手を出したが最後碌なことにならないからな」

 

「……私達、そのJOKERに狙われてるんだけど。

 命を狙ってくる相手に願い事を告げるほど、面の皮は厚くないし

 そもそも私、願いを叶える側よ?」

 

そうだったな、と返すセージの言葉にはどこか、力が無い。

セージにとって匙はあまり印象のいい相手ではなかった。

しかし、JOKER呪いに手を出し、あまつさえ主の記憶からも消えてしまうというのは

これが「噂」に聞く「影人間(かげにんげん)」と言うものかとセージは感じ取っていた。

そのあたりの知識が無いリアスやソーナは匙を普通に「存在しないもの」として扱っているが

セージは曲がりなりにも匙が何を思って、何を夢見て戦っていたのかは知っていた。

 

(肝心な相手からも忘れられて、誰からも顧みられず、夢を叶えようとした結果がこれかよ……

 リスクとリターンがあまりにも釣り合って無さすぎる。

 これじゃ悪魔契約の方が余程……!!)

 

ヴリトラの神器(セイクリッド・ギア)の力では不足とばかりにJOKER呪いに手を染め。

それでもなおセージを倒し、理想を叶えるには至らなかった匙。

それがこのような結末を迎えてしまったことに、直接手を下したセージとしても

胸を痛めずにはいられなかったのだ。

 

 

――――

 

 

一方。その匙の主であるソーナもまた、生徒会顧問である薮田直人の質問に答えていた。

質問と言うか、叱咤激励とも言えるものであったが。

 

「シトリー君。今回の敗因はわかりますね?」

 

「……宮本君を甘く見ていました」

 

「……二割は正解、三割は半分正解。残りは不正解です。

 これが試験ならば落第点ですね。

 ああ、断っておきますが競技中の負傷を理由に採点が甘くなるなどと言った

 そう言う生易しい採点基準はありませんよ」

 

薮田はこう言っているが、ソーナ達は聖水を浴びたにもかかわらず

後遺症はほとんど残っていなかった。

貯水槽から作った聖水という事で成分が薄かったのか、さしたる後遺症も無く

既にシトリーチームの負傷は治療されていた。

聖水を浴びず、物理的に脳天を打ち付けた椿姫の方が後遺症が大きいとさえ言えよう。

 

「ではこの敗北を踏まえて問題です。

 今後、あなた方が勝利するためには何が必要だと思いますか?」

 

「より相手の事を調査し、その能力に対応できるように鍛錬し

 どんな相手でも慢心することなく戦いに臨む……ですか?」

 

薮田の問いかけに対し、ソーナは思いつく限りの答えを出した。

しかしそれは、既にセージが実践している事でもあった。

セージ達人間チームは、人間と言う悪魔に対し地力で劣る種族であるがゆえに

その力の差を埋めるべく、神器をはじめとした様々な道具の力を使い

少しでも自分達が優位に立てるように戦いを進めようとしている。

これはセージに限らず、遡れば神話の時代から行われていた事でもあるのだ。

 

「その答えは不正解ですね。

 と言うよりは、それは人間の専売特許と言っていいでしょう。

 ヘラクレスの試練、大江山の鬼退治などそうした戦いは枚挙に暇がありません。

 これらを引き合いに出せば、討たれるのはあなた方ですよ」

 

「……私達が悪魔だから、ですか?」

 

薮田の非情な宣言に、椿姫が眷属を代表して不安げに問いかける。

セージの聖水責めや薮田の宣告の前から、悪魔だからと言う理由で

駒王町では白眼視されてきていたのだ。

椿姫は違うが、「面白そうだから」と言う理由で眷属になったものもおり

ここに来て、その判断を後悔し始めているのである。

 

「人間か悪魔かなど、私に言わせれば些細な事ですが……

 あなた方には、悪魔であるという自覚や、真羅君らには人間を棄てているという自覚。

 そうしたものが欠けている――そう、私は先程の試合を観て感じましたね。

 あなた方が悪魔である以上、宮本君らが悪魔対策を練ってくるのは自明の理ですよ」

 

人間と悪魔と言う種族の壁。薮田は言葉で突き付けた形ではあるが

それを現実に突き付けた者こそ、他ならぬ先程戦ったセージ達なのだ。

 

「先生。悪魔は……悪魔は、もう人間と手を取りあうことは出来ないのでしょうか?

 フューラーを倒せば、また人間と悪魔が……」

 

「どうやらあなたには、グレモリー君に匹敵する程人々との認識の齟齬があるようですね。

 あるいは、それが悪魔の常識なのかもしれませんが。

 とは言え、私もそこまで悪魔の世情や通例に明るくないので

 見当違いの事を話していましたら悪しからず。

 

 ……結論を言いますと、今――或いは将来的にフューラーを倒したとしても。

 もっと言えば、フューラー演説を阻止していたとしても。

 いずれ別な形で人間と悪魔の対立は起きていたと思いますよ」

 

ソーナはこう考えていた。

 

「人間と悪魔の不和を招いているのはフューラーだ。

 そのフューラーを倒せば、関係は修復できる」――と。

 

確かに人間と悪魔の不和を表面化させたのはフューラーだ。

しかし、フューラーは潜在的な人々の不平不満を噴出させたに過ぎない。

この場にもしフューラーがいたならば、ソーナの愚昧さを嘲笑していただろう。

 

「そんな! リアスもですが、私達は……」

 

「もしあなた方が『人間のために何かをしてやっている』。

 そう考えているのでしたら、それは他ならぬ傲慢ですよ。

 はぐれ悪魔問題にせよ、悪魔契約の諸々にせよ、何より眷属契約にせよ。

 同意を得ているケースがあるとは言っても、その根底は悪魔の都合を一方的に押し付けた

 人間の事を慮っていない、私に言わせれば独善的な思想に基づく方針に他なりませんね」

 

傲慢。ソーナの目指していた共存の理想はこの二文字で斬って捨てられたのだ。

それも他ならぬ、神の影武者とは言え顧問教師に。

立場の違い故に薮田も「まあ、私の立場で一方的に糾弾するのは簡単なのですが」と零していた。

 

そして、咳払いを一つし薮田は改めてソーナに問いかけた。

 

「……ところで。眷属メンバーの点呼は済ませましたか?

 真羅君は医務室から戻ってきているのは、既に確認していますが」

 

ソーナ・シトリーチーム。

「王」ソーナ・シトリー以下

 

女王(クイーン)」真羅椿姫

戦車(ルーク)由良翼紗(ゆらつばさ)

騎士(ナイト)巡巴柄(めぐりともえ)

僧侶(ビショップ)花戒桃(はなかいもも)

「僧侶」草下憐耶(くさかれんや)

兵士(ポーン)仁科留流子(にしなるるこ)

 

――以上、眷属計6名。

 

その結果を聞いた薮田はただ一言「……そうですか」と返したのみだった。

 

「……会長。何度数えても『兵士』の駒が4個、足りません。

 やはり、最低でも一人足りていないのです」

 

「何を言っているんですか。ここにいる6人で私の眷属は全てですよ?」

 

何かを言いたそうにしている椿姫の言葉を、ぴしゃりとソーナが遮る。

他の者達も、椿姫の言葉に首を傾げている。

 

――自分たち眷属は、6人であるはずなのに――と。

 

この異常事態に、思わず椿姫も声を荒げてしまった。

 

「お忘れですか会長! 匙君を……匙元士郎君を!

 他の皆も! 私達にとってかけがえのない仲間では無かったのですか!?」

 

「サジ……? 椿姫、やはりあなた頭を打った後遺症があるようですね。

 私の記憶の中に、そんな者はおりません」

 

けんもほろろな対応を返される椿姫。

確かにソーナは眷属――特に匙に対し、リアス対比ではあるが厳しい対応を取っていた。

しかしそれは全て、匙の可能性に対する期待の裏返しでもあった。

それを知っていた椿姫は、ソーナのこの言葉が信じられなかったのだ。

 

匙元士郎を覚えている、認識しているのは自分だけ。

この異常事態に、椿姫も自分の認識が間違いではないかと疑い始め

ついには薮田に確認を取り始めたのだ。

 

「先生、先生ならば知っていますよね!?」

 

「……真羅君。あなたはもう一度医務室に行くべきですね。

 脳の損傷が無いかの再検査もですが……一度、気を鎮めた方がいいでしょう。

 誰か、真羅君について行って差し上げなさい」

 

「そ、そんな……!!」

 

椿姫が医務室に逆戻りという事もあり、この場は解散となった。

しかし、ソーナの胸の奥には言いようのない喪失感があるのも事実であった。

 

(サジ……匙……全く思い当たる節が無いのだけど……

 だけど何かしら……この心の中をごっそりと抜き取られた喪失感は……

 「兵士」の駒の数が合わないのも事実……だけど私の「兵士」は彼女一人。

 一体、この喪失感の正体は何だというの……!?)

 

得体の知れない喪失感に苛まれるソーナの後ろ姿に

薮田もまた、静かに心を砕いていた。

 

(紫藤イリナ、匙元士郎……

 既に二人も、私の不手際で若くして道を踏み外させてしまいましたか……

 あの様子では、シトリー君も遅かれ早かれ……

 私に何ができるかわかりませんが、教師を僭称する以上、何もしないわけにはいきませんね。

 

 ……やはり、神が人を導くのと同じようには行きませんか。

 そもそもの問題として、私には学校の教師は向いていないのかもしれませんがね……)

 

人間・薮田直人としては、確かに数多の博士号を持つほどの頭脳明晰である。

だが、それと生徒を教え導く教師の適正とは全く別の話だ。

 

神も過ちを犯す。その神の過ちの否定として生まれた概念とも言えるヤルダバオト(神の偽者)

その名を冠する薮田直人としては、実に皮肉な状況に置かれていたのだ。




改めて見たらアザゼルのテコ入れが無かったら勝てる訳が無いシトリーチーム。
寧ろこれでよく拙作世界のアインストやらインベスやら相手に戦えたなあ。
リアス達以上のワンマンチーム疑惑が。

>ソーナ
セージ視点では最初「リアスよりはマシ」だったのがだんだんメッキ剥がれて……
地金が出た、ってとこでしょうか。
そしてその地金は「方針はリアスとどっこい」。うん、類友。
そんなだから薮田先生にその経営方針を「傲慢」と斬って捨てられてます。
ソーナやリアスに限った話でも無いんですがね。

目をかけていた眷属が影人間化して喪失。
この喪失感による心の隙間を埋めようとほらそこに這い寄って……

>椿姫だけ匙を認識できていた理由
Aパート参照。神器持ちは彼女だけですし。
残りは原作で所持しているのはアザゼル謹製の人工神器。
拙作でそんなもの持ってるはずもなく。だから上述の結論に至る、と。

神器をペルソナ互換と考えると、人工神器ってP3のストレガ……
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